不動産投資を始めようと考えたとき、多くの方が最初に悩むのが「一棟マンションと区分所有、どちらを選ぶべきか」という問題です。それぞれにメリットとデメリットがあり、投資目的や資金力によって最適な選択は大きく変わります。この記事では、一棟マンションと区分所有の基本的な違いから、それぞれの投資戦略、リスク管理の方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。正しい知識を身につけることで、あなたに最適な不動産投資のスタートを切ることができるでしょう。
一棟マンションと区分所有の基本的な違い

不動産投資における一棟マンションと区分所有は、投資規模から管理方法まで大きく異なる投資手法です。まず押さえておきたいのは、この2つの投資スタイルが持つ根本的な性質の違いです。
一棟マンション投資とは、マンションやアパートの建物全体を一括で購入し、複数の部屋を賃貸する投資方法を指します。土地と建物の両方を所有するため、建物全体の管理運営を自分で決定できる自由度の高さが特徴です。例えば、外壁の色を変更したり、共用部分をリノベーションしたりといった大規模な改修も、自分の判断で実施できます。
一方、区分所有投資は、マンションの一室だけを購入して賃貸する方法です。建物全体ではなく、特定の部屋とその専有部分のみを所有します。共用部分については他の所有者と共同で管理組合を通じて管理するため、個人の判断だけでは変更できない制約があります。しかし、その分だけ初期投資額を大幅に抑えられるメリットがあります。
投資金額の面では、両者に大きな開きがあります。区分所有なら東京23区内でも2,000万円台から購入可能な物件が見つかりますが、一棟マンションの場合は最低でも5,000万円以上、都心部では1億円を超えるケースも珍しくありません。この初期投資額の違いが、投資戦略全体に大きな影響を与えることになります。
一棟マンション投資のメリットとリスク

一棟マンション投資の最大の魅力は、収益性の高さと資産価値の安定性にあります。複数の部屋を同時に運用できるため、空室が発生しても他の部屋からの家賃収入でカバーできる分散効果が期待できます。
収益面では、10室のマンションで1室が空室になっても、残り9室から収入が得られるため、キャッシュフローが完全にストップするリスクは低くなります。国土交通省の調査によると、一棟マンションの平均利回りは区分所有より1〜2%程度高い傾向にあり、長期的な収益性では優位性があります。また、土地を所有しているため、建物が老朽化しても土地の資産価値は残り続けます。
管理の自由度が高いことも大きなメリットです。入居者の審査基準を自分で設定できますし、家賃設定も市場動向を見ながら柔軟に変更できます。さらに、建物全体をリノベーションして付加価値を高めたり、用途を変更したりすることも可能です。実際に、古いアパートを大規模改修してデザイナーズマンションに生まれ変わらせ、家賃を大幅にアップさせた成功事例も数多く存在します。
ただし、リスクも相応に大きいことを理解しておく必要があります。初期投資額が大きいため、融資を受ける際の審査も厳しくなります。金融機関は年収や資産背景を詳細に審査し、一般的には年収1,000万円以上、自己資金として物件価格の20〜30%を求められるケースが多いです。
修繕費用の負担も重要な検討事項です。建物全体の外壁塗装や屋上防水工事となると、一度に数百万円から1,000万円以上の費用がかかることもあります。区分所有なら修繕積立金として毎月少しずつ積み立てていけますが、一棟所有の場合は自分で計画的に資金を準備しなければなりません。
区分所有投資のメリットとリスク
区分所有投資の最大の強みは、少額から始められる手軽さと管理の簡便性です。不動産投資の第一歩として、多くの初心者が選択する理由がここにあります。
初期投資額が比較的少ないため、サラリーマンでも住宅ローンを活用して投資を始めやすい点が魅力です。2026年3月現在、東京23区の新築マンション平均価格は7,580万円ですが、投資用の中古ワンルームマンションなら2,000万円台から購入可能です。自己資金が500万円程度あれば、金融機関の融資を受けて投資をスタートできます。
管理の手間が少ないことも大きなメリットです。建物全体の管理は管理組合が行うため、個人で対応するのは自分の部屋の維持管理だけで済みます。管理会社に委託すれば、入居者募集から家賃回収、トラブル対応まで任せられるため、本業が忙しい会社員でも無理なく運用できます。実際に、多くの投資家が複数の区分所有物件を所有し、ほぼ手間をかけずにポートフォリオを拡大しています。
立地選択の自由度が高いことも見逃せません。予算に応じて、都心の駅近物件から郊外の広めの物件まで、幅広い選択肢から投資先を選べます。また、複数の物件に分散投資することで、地域リスクを軽減することも可能です。
しかし、区分所有特有のリスクも存在します。最も深刻なのは空室リスクです。一室しか所有していない場合、空室になると収入がゼロになり、ローン返済だけが続く状況に陥ります。総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の賃貸住宅の空室率は約18%に達しており、立地選びを誤ると長期間空室に悩まされる可能性があります。
管理組合の決定に従わなければならない制約も重要です。修繕計画や管理費の値上げなど、重要な決定事項は総会での多数決で決まります。自分の意見が通らないこともあり、予期せぬ修繕積立金の値上げで収支計画が狂うケースもあります。また、建物全体が老朽化した場合、建て替えや大規模修繕の合意形成に時間がかかり、資産価値が下落し続けるリスクもあります。
投資目的別の選び方と戦略
一棟マンションと区分所有のどちらを選ぶべきかは、あなたの投資目的と資金力によって決まります。重要なのは、自分の状況を正確に把握し、無理のない投資計画を立てることです。
資産形成を重視し、長期的に大きな収益を目指すなら一棟マンション投資が適しています。初期投資は大きくなりますが、複数の部屋からの家賃収入により、安定したキャッシュフローを確保できます。また、土地を所有しているため、インフレ対策としても有効です。ただし、年収1,000万円以上で自己資金が2,000万円以上ある方が現実的な選択肢となります。
一方、不動産投資の経験を積みたい初心者や、本業が忙しく管理に時間を割けない方には区分所有投資がおすすめです。少額から始められるため、失敗したときのダメージも限定的です。まず1室から始めて、運用のノウハウを学びながら徐々に物件を増やしていく戦略が賢明でしょう。実際に、区分所有から始めて経験を積み、最終的に一棟マンションへステップアップする投資家も多く存在します。
年齢によっても最適な選択は変わります。30代で長期的な資産形成を目指すなら、一棟マンションへの挑戦も視野に入れられます。一方、50代以降で老後の安定収入を確保したい場合は、管理の手間が少ない区分所有を複数所有する方が現実的です。ローン完済後は家賃収入がそのまま年金の補完となり、安定した老後生活を支えてくれます。
地域特性も考慮すべき重要な要素です。東京23区や大阪市内など人口が集中する都市部では、区分所有でも安定した需要が見込めます。一方、地方都市では一棟マンションの方が利回りが高く、土地の資産価値も相対的に重要になります。国土交通省の地価公示によると、地方都市の地価は横ばいから微減傾向にあるため、建物の収益性をより重視した判断が必要です。
資金計画と融資戦略の違い
一棟マンションと区分所有では、必要な資金規模も融資戦略も大きく異なります。まず理解しておきたいのは、金融機関が両者をどのように評価するかという点です。
一棟マンション投資では、物件価格の20〜30%の自己資金が求められるのが一般的です。1億円の物件なら2,000万円〜3,000万円の自己資金が必要になります。金融機関は投資家の年収だけでなく、資産背景や事業計画の妥当性を厳しく審査します。特に重視されるのは、空室率や修繕費を考慮した収支シミュレーションの現実性です。楽観的すぎる計画では融資を受けられません。
区分所有投資の場合、自己資金は物件価格の10〜20%程度で済むケースが多く、2,000万円の物件なら200万円〜400万円から始められます。サラリーマンであれば、勤務先の信用力や勤続年数も評価対象となり、比較的融資を受けやすい傾向にあります。ただし、2件目以降の融資では既存物件の運用実績が重視されるため、最初の物件選びが特に重要です。
金利面でも違いがあります。一棟マンションは事業性融資として扱われ、金利は1.5〜3.0%程度が相場です。一方、区分所有は不動産投資ローンとして1.0〜2.5%程度の金利が適用されることが多く、条件次第では住宅ローンに近い低金利で借りられる場合もあります。金利が1%違うだけでも、30年間の総返済額は数百万円の差が生じるため、複数の金融機関を比較検討することが重要です。
融資期間も戦略的に考える必要があります。一棟マンションは建物の耐用年数に応じて20〜30年の融資期間が設定されます。区分所有の場合、新築なら35年、中古なら残存耐用年数に応じた期間となります。融資期間が長いほど月々の返済額は減りますが、総返済額は増加します。自分のキャッシュフロー計画と照らし合わせて、最適な期間を選択しましょう。
管理運営の実務と注意点
不動産投資の成否を分けるのは、物件選びだけでなく、購入後の管理運営の質です。一棟マンションと区分所有では、管理の内容も責任範囲も大きく異なります。
一棟マンションの管理では、オーナー自身が経営者としての判断を求められます。入居者の募集から審査、契約、家賃回収、トラブル対応まで、すべての責任を負います。管理会社に委託する場合でも、月額家賃の5〜10%程度の管理手数料がかかります。また、共用部分の清掃や設備点検、修繕計画の立案なども自分で判断しなければなりません。
特に重要なのは、長期修繕計画の策定です。外壁塗装は10〜15年ごと、屋上防水は15〜20年ごとに必要となり、一度に数百万円の費用がかかります。これらの費用を計画的に積み立てておかないと、突然の出費で資金繰りが悪化する危険性があります。実際に、修繕費用を準備していなかったために、物件を手放さざるを得なくなった投資家も少なくありません。
区分所有の管理は比較的シンプルです。専有部分の維持管理と入居者対応が主な業務となり、多くの場合は管理会社に委託します。管理手数料は家賃の5%程度が相場で、入居者募集から退去時の原状回復まで一括して任せられます。ただし、管理会社の質によってサービス内容は大きく異なるため、実績や評判を十分に調査してから選ぶことが大切です。
管理組合への参加も区分所有オーナーの重要な責務です。年に1〜2回開催される総会では、修繕計画や管理費の改定などが議論されます。自分の投資に直接影響する決定が行われるため、できる限り出席して意見を述べることが望ましいです。特に大規模修繕の際には、工事内容や費用について十分に理解し、必要に応じて専門家の意見も求めるべきでしょう。
入居者とのコミュニケーションも重要です。一棟マンションでは、良好な住環境を維持することで入居者の満足度を高め、長期入居につなげられます。定期的な設備点検や迅速なトラブル対応により、空室率を低く抑えることができます。区分所有の場合も、管理会社任せにせず、入居者の声に耳を傾ける姿勢が大切です。
税金対策と収益最大化の方法
不動産投資では、税金対策を適切に行うことで手取り収益を大きく改善できます。一棟マンションと区分所有では、活用できる税制優遇措置にも違いがあります。
不動産所得は総合課税の対象となり、給与所得などと合算して税額が計算されます。家賃収入から必要経費を差し引いた金額が課税対象となるため、経費を適切に計上することが節税の基本です。一棟マンションでは、建物の減価償却費、修繕費、管理費、固定資産税、火災保険料、ローンの利息などを経費として計上できます。
減価償却は特に重要な節税手段です。建物の取得価額を法定耐用年数で割った金額を毎年経費として計上できます。木造アパートなら22年、鉄筋コンクリート造マンションなら47年が法定耐用年数です。例えば、建物価格5,000万円の鉄筋コンクリート造マンションなら、年間約106万円を減価償却費として計上できます。これは実際の現金支出を伴わない経費のため、キャッシュフローを改善しながら節税できる効果があります。
区分所有でも同様の経費計上が可能ですが、規模が小さい分だけ節税効果も限定的です。ただし、複数の区分所有物件を所有することで、トータルの節税効果を高めることができます。また、青色申告を選択すれば、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるため、必ず活用すべきです。
消費税還付も検討に値します。一棟マンションを新築または購入する際、建物部分の消費税は還付を受けられる可能性があります。ただし、課税事業者として届け出を行い、一定の条件を満たす必要があるため、税理士に相談しながら進めることをおすすめします。
相続税対策としても不動産投資は有効です。現金で相続するより、不動産として相続する方が評価額を圧縮できます。特に賃貸物件は、貸家建付地として土地の評価額が約20%減額され、建物も借家権割合分が減額されます。一棟マンションの場合、この効果がより大きくなる傾向があります。
リスク管理と出口戦略
不動産投資で長期的に成功するには、リスクを適切に管理し、明確な出口戦略を持つことが不可欠です。一棟マンションと区分所有では、想定すべきリスクも対策も異なります。
空室リスクは両者に共通する最大の課題です。一棟マンションでは複数の部屋があるため、1〜2室の空室なら他の部屋でカバーできます。しかし、立地が悪かったり建物が老朽化したりすると、空室率が30%を超えることもあります。国土交通省の調査によると、築30年以上の賃貸住宅の空室率は25%を超える傾向にあり、定期的なリノベーションが重要です。
区分所有の場合、空室になると収入がゼロになるため、より深刻です。対策としては、駅から徒歩10分以内、都心へのアクセスが良好な立地を選ぶことが基本です。また、家賃保証会社を利用することで、空室時でも一定の収入を確保できる仕組みもあります。ただし、保証料として家賃の10〜15%程度を支払う必要があるため、収支計画に織り込んでおきましょう。
災害リスクへの備えも重要です。地震や水害による建物の損傷は、投資の継続を困難にする可能性があります。火災保険や地震保険への加入は必須ですが、一棟マンションの場合、保険料も高額になります。ハザードマップを確認し、災害リスクの低い地域を選ぶことが根本的な対策となります。
金利上昇リスクも見逃せません。変動金利で融資を受けている場合、金利が上昇すると返済額が増加し、キャッシュフローが悪化します。2026年現在、日本の金利は依然として低水準ですが、将来的な上昇リスクは常に存在します。金利が2%上昇した場合でも返済を続けられるか、シミュレーションしておくことが大切です。
出口戦略については、購入時から考えておく必要があります。一棟マンションの場合、売却先は投資家に限られるため、流動性は低めです。しかし、収益性が高く維持管理が良好な物件なら、適正価格で売却できる可能性は高いです。築年数が経過しても土地の価値が残るため、最悪の場合は建物を解体して土地として売却する選択肢もあります。
区分所有は比較的流動性が高く、売却しやすい特徴があります。特に都心の駅近物件なら、実需の購入者も対象となるため、買い手が見つかりやすいです。ただし、築年数が古くなると価値が大きく下落するため、築15〜20年を目安に売却を検討するのが一般的です。売却益が出た場合は譲渡所得税がかかりますが、5年超保有すれば長期譲渡所得として税率が約20%に軽減されます。
まとめ
一棟マンションと区分所有は、それぞれ異なる特性を持つ不動産投資の選択肢です。一棟マンションは初期投資が大きく管理の手間もかかりますが、高い収益性と資産価値の安定性が魅力です。一方、区分所有は少額から始められ、管理も比較的簡単ですが、空室リスクへの対策が特に重要になります。
どちらを選ぶべきかは、あなたの資金力、投資経験、時間的余裕、そして投資目的によって決まります。初心者の方は、まず区分所有から始めて経験を積み、徐々にステップアップしていく戦略が現実的でしょう。重要なのは、自分の状況を正確に把握し、無理のない投資計画を立てることです。
不動産投資は長期的な視点が求められる投資です。短期的な利益を追求するのではなく、10年、20年先を見据えた計画を立て、着実に資産を形成していきましょう。適切な物件選び、堅実な資金計画、そして丁寧な管理運営により、不動産投資はあなたの人生を豊かにする強力なツールとなるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 – 不動産市場動向マンスリーレポート – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省統計局 – 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/
- 不動産経済研究所 – 首都圏マンション市場動向 – https://www.fudousankeizai.co.jp/
- 国土交通省 – 地価公示 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000043.html
- 金融庁 – 不動産投資に関する注意喚起 – https://www.fsa.go.jp/
- 公益財団法人 不動産流通推進センター – 不動産統計集 – https://www.retpc.jp/
- 一般社団法人 日本不動産研究所 – 不動産投資家調査 – https://www.reinet.or.jp/