不動産投資に興味はあるけれど、数千万円の物件を直接購入するのはハードルが高い。そんな方にとって、少額から始められるREIT(リート)は魅力的な選択肢に映るでしょう。しかし「分散投資できるから安心」と考えて購入したものの、思わぬ値下がりや減配に直面して後悔する投資家も少なくありません。
本記事では、REITの代表的なデメリットを11項目に整理し、最新データとともに解説します。読み終えるころには、REITを選ぶべきか現物不動産を買うべきか、あなた自身の判断基準が明確になるはずです。
REITの仕組みと基本構造をおさらい

REITとは、投資家から集めた資金で複数の不動産を取得・運用し、賃料収入や売却益を分配する仕組みの金融商品です。正式名称は「不動産投資信託」で、証券取引所に上場しているため株式と同じように売買できます。この手軽さがメリットである一方、株式市場の影響を受けやすいという特性も持っています。
2025年9月時点で上場しているJ-REIT(国内上場REIT)は69銘柄、総資産は約21兆円に達しています。投資対象は都心オフィスや物流施設が中心ですが、ホテルや住宅、商業施設に特化した銘柄もあります。用途によってリスク特性が異なるため、「REITならすべて同じ」と考えるのは危険です。
また、REITの運用会社は物件取得のために金融機関から借入れを行います。この借入比率をLTV(Loan to Value)と呼び、金融庁の2025年度統計によれば平均LTVは46%です。低金利環境では収益を押し上げる効果がありますが、金利が上昇すると利払い負担が増え、分配金を圧迫します。この基本構造を理解しておくことが、デメリットを正しく評価する出発点となります。
REITの11大デメリットを徹底解説

1. 元本割れリスク
REITは預金や債券と異なり、元本が保証されていません。投資したタイミングによっては、売却時に購入価格を下回る可能性があります。トーシンマガジンの調査でも「やめとけと言われる理由」の筆頭に挙げられているリスクです。
実際、2020年3月のコロナショック時にはJ-REIT指数が約40%も下落しました。その後回復したものの、短期で資金が必要になった投資家は大きな損失を被っています。長期保有を前提にしていても、急な資金需要に備えた余裕資金での投資が不可欠です。
2. 投資法人の倒産リスク
REITを運用する投資法人が経営破綻する可能性もゼロではありません。2008年にはニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生法を申請し、投資家に大きな衝撃を与えました。上場している以上、経営状況は開示されますが、財務内容の悪化を見抜けなければ被害を受けることになります。
倒産リスクを軽減するには、LTVの水準や借入先の分散状況、格付け機関の評価をチェックすることが重要です。特にLTVが50%を超える銘柄は、金利上昇時の影響を受けやすい点に注意しましょう。
3. 金利変動リスク
REITの価格は長期金利の動向に敏感に反応します。東証REIT指数は2024年10月に年初来高値の2,200ポイントを付けましたが、日銀の政策修正を受けた2025年3月には1,930ポイントまで下落しました。わずか半年で約12%の値下がりです。
金利が上昇すると、10年国債など安全資産の利回りが相対的に魅力を増します。その結果、REITの配当利回りに対する優位性が薄れ、売り圧力が高まるのです。一方、現物不動産は短期的な価格変動が小さいため、REITの方がボラティリティ(価格変動率)が高いと言えます。
4. 流動性リスク
上場しているとはいえ、すべての銘柄が十分な売買高を持つわけではありません。時価総額が小さい銘柄や市場全体が冷え込んでいる局面では、希望する価格で売却できないケースがあります。
青山地所の記事でも指摘されているとおり、大口の売買を行う際にはスプレッド(買値と売値の差)が広がりやすく、想定以上のコストがかかることがあります。売却を急ぐほど不利な条件を受け入れざるを得なくなるため、余裕を持った資金計画が求められます。
5. 物件・セクター集中リスク
特定の用途や地域に集中したREITは、その分野が不調に陥ると大きな打撃を受けます。たとえばオフィス系REITは、テレワークの定着により空室率が2023年秋の6%から2025年夏には8%台へ上昇しました。賃料収入の減少は分配金に直結します。
一方、物流特化型REITはEC需要の拡大で人気を集めましたが、需要が一巡すると供給過剰に転じるリスクもあります。地方の商業施設に偏った銘柄は、人口減少による空室リスクを抱えています。投資先の用途・地域分布を確認し、自分自身のポートフォリオ内でも分散を図ることが大切です。
6. 自然災害・事故リスク
地震や台風、火災といった突発的なリスクも見落とせません。日本は災害大国であり、保有物件が被災すれば修繕費用の発生や賃料収入の途絶が起こります。保険でカバーできる範囲には限界があり、運用会社の対応力が問われます。
災害リスクを軽減するには、物件の立地や築年数、耐震性能を確認することが有効です。運用報告書には保有物件の詳細が記載されているため、定期的にチェックする習慣をつけましょう。
7. NAV倍率のプレミアム・ディスカウントリスク
NAV倍率とは、REITの市場価格を一口当たり純資産価格(NAV)で割った指標です。1倍であれば適正水準、1倍を超えればプレミアム(割高)、下回ればディスカウント(割安)と判断されます。
市場が過熱すると、物流特化型REITのNAV倍率が1.3倍を超えるケースも報告されています。このような局面で購入すると、物件の実勢価格以上の値段を払っていることになります。市場心理が冷めた途端に価格が調整され、含み損を抱える可能性が高まります。
8. 分配金カットリスク
REITは利益の90%以上を分配すれば法人税が実質免除されるため、高い分配利回りが魅力とされています。しかし、この仕組みは分配金の安定を保証するものではありません。国土交通省の2025年度レポートによると、上場REITの一口当たり分配金は平均で前年比3%増でしたが、個別には20%以上減少した銘柄もあります。
分配金が減る主な要因は、空室率の上昇、賃料の下落、修繕費の増加、物件売却損の発生です。表面利回りの高さだけで銘柄を選ぶと、実際の分配金が想定を下回るリスクを見落としがちです。
9. 税制・NISA損益通算不可リスク
REITの分配金は配当所得として20.315%が源泉徴収されます。この税率自体は株式と同じですが、NISA口座で保有する場合は注意が必要です。新しい成長投資枠ではREITも非課税対象となりますが、損失が出ても課税口座の利益と通算できません。
つまり、NISA口座で大きく値下がりした場合、他の投資で得た利益と相殺して税負担を軽減することができないのです。節税効果を期待してNISAを選んだ結果、損失補填が難しくなる皮肉な事態も起こり得ます。
10. 外国REIT二重課税リスク
米国REITなどを円建てETFで購入すると、分配金に現地で課税された上に日本でも課税される二重課税が発生します。確定申告で外国税額控除を受ければ一部取り戻せますが、手続きの手間がかかり、控除には上限もあります。
外国REITは分散投資の観点から魅力的ですが、税務コストを考慮すると実質利回りが想定より低くなることがあります。投資前に課税の仕組みを理解しておくことが大切です。
11. 管理報酬・運用コストリスク
REITには運用会社に支払う管理報酬や、資産保管会社・事務委託会社への報酬がかかります。これらは分配金が支払われる前に差し引かれるため、投資家が直接意識しにくいコストです。
運用報酬の体系は銘柄によって異なり、成功報酬型を採用しているケースもあります。高い報酬体系の銘柄は、運用成績が良くても投資家の取り分が減る可能性があります。運用報告書でコスト構造を確認し、同じ用途のREIT同士で比較検討することをおすすめします。
物件の老朽化と増資リスク
REITが保有する物件は年月とともに老朽化します。日本不動産研究所の2025年調査によれば、築20年を超える物件の増加に伴い、J-REIT全体の修繕積立金は前年度比15%増加しました。大規模修繕が実施されると一時的にキャッシュフローが細り、分配金に影響します。
さらに、築古物件の評価額が下がればNAVが縮小し、格付け機関がレーティングを引き下げる可能性もあります。格付けが下がると借入金利が上昇し、利払い負担が増える悪循環に陥りかねません。
一方、成長を続けるREITは新規物件の取得やリノベーションを積極的に行いますが、その資金調達のために増資が実施されることがあります。増資で発行口数が増えると、一口当たり分配金が希薄化しやすくなります。投資家は物件ポートフォリオの築年数分布や増資履歴を定期的に確認することが求められます。
2025年度税制で押さえておきたいポイント
2025年度の税制改正ではREITに対する大きな優遇や不利変更はありませんでした。ただし、金融所得課税の一体化に関する議論が進んでおり、将来的に課税ルールが変わる可能性があります。制度変更によって税コストが増減するリスクを念頭に置いてポートフォリオを組むことが賢明です。
また、相続税の評価額は上場株式と同様に時価評価されます。現金よりも評価額が高くなる傾向があり、相続対策としてREITが必ずしも有利とは言えません。相続を見据えた資産配分を検討している方は、税理士など専門家への相談をおすすめします。
REITが向いている人・向いていない人
ここまで多くのデメリットを解説しましたが、REITが悪い投資先というわけではありません。重要なのは、自分の投資スタイルやリスク許容度に合っているかどうかを見極めることです。
REITが向いている人は、少額から不動産に分散投資したい方、流動性を重視し売買のタイミングを自分で判断したい方、そして値動きがあっても長期で保有できる方です。配当収入を得ながら資産を積み上げていく戦略に適しています。
一方、向いていない人は、元本割れを絶対に避けたい方、短期で大きなリターンを求める方、そして価格変動に精神的なストレスを感じやすい方です。また、不動産を直接所有してコントロールしたいという志向が強い方にも向いていません。
リスク軽減のためのチェックリスト
REITへの投資を検討する際には、以下のポイントを確認しましょう。まず、銘柄のLTVが50%以下かどうかをチェックします。次に、NAV倍率が1.0〜1.1倍程度の適正水準にあるかを確認します。物件ポートフォリオの用途・地域が分散されているかも重要です。
さらに、借入金の返済期限が分散されているか、長期固定金利の比率が高いかを調べましょう。築年数分布を見て、大規模修繕の集中時期がないかも確認すべきポイントです。最後に、運用報酬の水準が同業他社と比較して妥当かどうかを検討してください。
まとめ
本記事では、元本割れリスク、投資法人倒産リスク、金利変動リスク、流動性リスク、物件集中リスク、自然災害リスク、NAV倍率リスク、分配金カットリスク、税制・NISA関連リスク、外国REIT二重課税、管理報酬リスクという11のデメリットを解説しました。
REITは少額で不動産に分散投資できる便利な商品ですが、市場の変調や金利上昇に敏感な金融商品でもあります。投資を検討する際は、指数のボラティリティ、運用会社のLTVや築年数分布、税制変更の可能性をセットで確認しましょう。
自分のリスク許容度と投資期間に合った比率で組み込めば、ポートフォリオ全体のバランスを保ちながら資産形成を進められます。デメリットを正しく理解した上で、REITを賢く活用してください。
参考文献・出典
- 日本取引所グループ(JPX) – https://www.jpx.co.jp
- 国土交通省 不動産市場動向報告2025年度版 – https://www.mlit.go.jp
- 金融庁 J-REIT年次報告2025 – https://www.fsa.go.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合資料2025年3月 – https://www.boj.or.jp
- 日本不動産研究所 不動産投資インデックス2025 – https://www.reinet.or.jp
- JAPAN-REIT.COM – https://www.japan-reit.com