不動産投資に興味はあるものの、安全なのか、それとも大きなデメリットが潜んでいるのかと不安に感じていませんか。実は、物件選びや資金計画を誤らなければ着実に資産形成を目指せます。本記事では長年の現場経験に基づき、安全といわれる理由、見落としやすいリスク、そして2025年度の制度動向まで、初心者が今知っておくべきポイントをやさしく解説します。
なぜ不動産投資は安全だと語られるのか

重要なのは、不動産投資が「現物資産」である点です。株式のように一夜で価値が大幅に下落する可能性は低く、土地と建物という実態が価値を支えます。
まず、日本銀行の資金循環統計によれば、2024年度末時点で個人の金融資産に占める不動産の割合は16.5%でした。これは預金に次ぐ大きな比率であり、多くの家庭が資産保全手段として不動産を選んでいる証拠です。一度取得した物件は突然消失しないため、長期での安定感が期待できます。
さらに、総務省の「住宅・土地統計調査」によると、都心三区の空室率は2023年時点で4%前後にとどまりました。需要の底堅さが示されており、適切なエリアを選べばキャッシュフローの読みにくさを軽減できます。また、家賃はインフレに連動しやすい収益なので、物価上昇局面でも実質価値を守りやすい仕組みです。
一方で、金融機関の融資を活用できる点も安全性を高めます。低金利環境が続いているため、自己資金を抑えながら資産規模を拡大できるからです。つまり、レバレッジを適切に使うことで、少ない元手でも資産形成を加速できる可能性があります。
見過ごされがちなデメリット

ポイントは、不動産投資にも確実にデメリットが存在することです。安全といわれる一方で、リスクの全体像を把握しなければ思わぬ損失を招きます。
まず、空室リスクは避けて通れません。総務省の同調査では全国平均の空き家率が13.8%に達しており、地方や築古物件で顕著です。満室を前提にした収支計画は、実際の運用フェーズでつまずく典型例となります。
次に、流動性の低さが挙げられます。株式なら売却ボタン一つで換金できますが、不動産は売却まで数か月を要し、価格交渉も不可欠です。急な資金需要が生じた際に対応できず、機会損失を被る点は大きなデメリットです。
さらに、修繕費や固定資産税などの維持コストも軽視できません。築年数が進むほど修繕頻度は高まり、家賃は横ばいになりやすい傾向があります。特にエレベーター付きの小規模マンションでは大規模修繕が家賃収入を上回る時期が訪れるケースも見られます。
安全性を高めるリスク管理の実践
まず押さえておきたいのは、数字とエリアデータを根拠に投資判断を行うことです。家賃相場サイトや公的統計を照合し、購入前に現地を歩く基本を徹底しましょう。
一方で、キャッシュフロー計算は保守的に行います。筆者は空室率20%、金利上昇1.5%、修繕費年額15万円を同時に織り込んだシミュレーションを推奨しています。厳しめの想定でも黒字を保てる案件は、実運用での安全余地が大きいからです。
保険の活用も忘れてはいけません。火災保険はもちろん、家賃保証会社との契約で滞納リスクを抑えられます。2025年度の主要保証会社の平均保証料は賃料の4.5%程度ですが、長期の安定収入を得るための必要経費と捉えましょう。
最後に、管理会社選定がリスク管理の要です。手数料が安いだけでなく、入居募集力や修繕提案力を確認します。実績物件の稼働率やオーナー向けレポートの充実度を面談でチェックすると、運用後のトラブルを大幅に減らせます。
2025年度の制度と市場環境
実は、制度面を理解することで安全性をもう一段引き上げられます。2025年度も「住宅ローン減税」が適用されますが、投資用物件は対象外ですので混同しないよう注意してください。
一方、国土交通省は2025年度に「賃貸住宅管理業適正化法」の運用を強化しています。登録業者の監督が厳格化され、管理会社の突然の倒産リスクが下がる見通しです。オーナーにとっては安心材料になります。
また、住宅金融支援機構は2025年4月から「フラット50リフォームプラン」の融資枠を拡充しました。賃貸併用住宅の大規模改修に活用でき、固定金利で最長50年まで設定可能です。利率は1.72%(2025年8月時点)のため、長期修繕計画を立てやすくなります。
市場動向としては、国土交通省の不動産価格指数によれば、2025年6月の全国住宅総合指数は前年同月比4.2%上昇しました。特に都心部のマンション価格が堅調で、資産価値の維持に寄与しています。ただし、地方では横ばい傾向が続いており、エリア格差が広がっている点は要警戒です。
初心者が踏み出すための実務ポイント
重要なのは、小さく始めて経験値を積むことです。いきなり一棟マンションに挑むのではなく、区分マンションや築浅の戸建てから着手するとリスクを限定できます。
資金計画では、自己資金は物件価格の20%を目安にし、手元に半年分の返済額を残すと安心です。これにより、突発的な空室や修繕にも冷静に対処できます。
情報収集は複数の仲介会社を比較する姿勢が欠かせません。同じ物件でも取得できる情報量と価格交渉力が異なるためです。内見時には昼夜の環境を確認し、騒音や治安を体感することで入居者ニーズを把握できます。
最後に、確定申告の準備を早めに行いましょう。青色申告特別控除(2025年度は65万円)が使えると税負担を軽減でき、キャッシュフローの改善につながります。帳簿付けをクラウド会計と連携すると、作業時間を短縮でき、経営に専念できます。
まとめ
本記事では、不動産投資の安全といわれる理由から、空室・流動性・維持費といったデメリット、さらに2025年度の制度や市場環境まで解説しました。安全性を高める鍵は、保守的な収支計画とデータに基づくエリア選定、そして信頼できる管理体制です。まずは小規模な物件で経験を積み、数字とリスクを可視化しながら一歩ずつ規模を拡大していきましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/
- 日本銀行 資金循環統計 – https://www.boj.or.jp/
- 住宅金融支援機構 融資商品情報 – https://www.jhf.go.jp/
- 法務省 賃貸住宅管理業適正化法関連資料 – https://www.moj.go.jp/