不動産の税金

専門家が解説!始め方 相続物件で失敗しないコツ

相続した家や土地を前に、「どう動けばいいのだろう」と立ち尽くしていませんか。固定資産税だけ払い続けるのは避けたい一方で、売却か活用かの判断材料が足りないと感じる人も多いはずです。本記事では、相続物件を不動産投資の入り口として活用するための具体的なステップを示します。税制や手続きの最新情報を踏まえ、初心者でも迷わず行動できる流れを解説します。

相続物件を受け取ったら最初に確認すべきこと

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まず押さえておきたいのは、現状把握です。相続登記の完了と物件の法的・物理的状態を調べることで、のちのトラブルを防げます。

登記簿を取得すると、所有権や抵当権の有無が一目でわかります。仮に故人が住宅ローンを組んでいた場合、抵当権が残っていると売却も賃貸も思うように進みません。また、建築時の図面や修繕履歴を探し、構造上の瑕疵がないかを確認しましょう。これらの情報は、賃貸への転用や買い手への説明に必須となります。

次に必要なのが周辺相場の把握です。国土交通省の不動産価格指数やレインズの成約事例を見ると、おおよその売却価格帯がつかめます。賃貸を検討するなら、近隣の家賃相場と空室率をチェックしましょう。数字を揃えることで、感情に流されない判断軸が作れます。

最後に、名義人全員による意思確認が欠かせません。複数の相続人がいる場合、共有状態のまま放置すると意思決定が遅れ、機会損失が膨らみます。早めに話し合い、方針を共有することがスムーズなスタートにつながります。

2025年度の税制で押さえるポイント

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ポイントは、税負担を最小限に抑える手続きを時期を逃さず行うことです。

2025年度も、相続登記の義務化が継続しています。取得を知った日から3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。また、小規模宅地等の特例は引き続き有効で、自宅敷地を相続する場合、330㎡までは評価額が最大80%減額されます。賃貸併用住宅であっても、一定要件を満たせば対象になるため、活用策を検討する際の強力な後押しとなります。

さらに、2025年度分の固定資産税は、空き家対策特例により条件を満たさない空き家の税額が最大6倍に跳ね上がる仕組みが維持されます。つまり、放置コストは年々高まるということです。早期に賃貸か売却で利用価値を生み出す方が、手元資金の流出を抑えられます。

譲渡所得税については、取得から5年超で長期譲渡扱いとなり、税率が20.315%に下がります。居住用財産の3000万円特別控除と併用すると、実質的な税負担を大きく減らせる場合があります。制度ごとに適用条件が細かく定められているため、税理士へ事前相談することで取りこぼしを防げます。

活用か売却か、判断基準のつくり方

重要なのは、数字とライフプランの両面から比較することです。

キャッシュフロー表を作り、売却一時金と賃貸運用による年間手取りを並べると、収益性の差が可視化されます。例えば、都心駅徒歩10分圏のワンルームを売却すると2500万円、賃貸なら年間家賃収入が135万円、経費を差し引いた手残りは95万円程度と想定します。単純計算で27年運用すれば売却益と並びますが、途中の修繕費を加味すると実質回収期間は30年超に延びるケースもあります。

一方で、現物資産を持ち続けることでインフレヘッジや次世代への資産承継がしやすくなる側面があります。総務省の人口推計では、地方圏の人口減少が続く見通しですが、都市部は緩やかな増加が見込まれています。エリアの将来性を織り込むことで、長期保有のメリット・デメリットをより立体的に判断できます。

リノベーション費用の採算も忘れてはいけません。築30年超の木造戸建てを賃貸用に改装する場合、1000万円前後かかる例が珍しくありません。改装後の家賃が月12万円を超えないと回収が難しいなど、投資効率が合わないケースもあります。数字が示す現実を冷静に受け止め、感情に左右されない判断が求められます。

相続物件で不動産投資を始める手順

実は、相続物件は初期費用を抑えて投資を始める絶好のチャンスです。

第一歩は、金融機関にリフォームローンや投資用ローンの利用可否を相談することです。担保評価額が高い物件なら自己資金ゼロでも改修費を賄える場合があります。ただし、家賃収入の三分の一以内に返済額を抑えるのが安全ラインです。

次に、賃貸管理会社を選定します。管理手数料は家賃の3〜5%が相場ですが、入居者募集力やトラブル対応の早さで差が出ます。国土交通省の「賃貸住宅管理業者登録制度」検索サイトで登録業者を絞り込み、複数社から提案を受けましょう。

入居者ターゲットを明確にすることも欠かせません。ファミリー層向けなら学区や公園、単身者向けなら駅距離やコンビニの充実度が決め手になります。ターゲットに合わせて設備を最適化すると、家賃の下落を防ぎやすくなります。

最後に、収支シミュレーションを厳しめに設定します。空室率15%、将来金利1%上昇などの条件でも黒字が続くかを試算し、クリアできれば実行フェーズへ進みましょう。数字で裏付けを取ることで、投資開始後の心理的負担を軽減できます。

専門家との連携でリスクを減らす

ポイントは、ワンストップ体制を築き、判断の質を高めることです。

相続に強い税理士は、各種特例の適用可否を即座に判定してくれます。司法書士は登記の正確性を担保し、弁護士は共有者間のトラブルを予防します。不動産会社は市場動向を提供し、建築士は改修プランとコストの妥当性をチェックします。専門家同士をつなげることで、情報の齟齬が減り、意思決定が加速します。

2025年時点では、国が運営する「空き家活用相談窓口」が各地方自治体に設けられています。無料で制度説明や専門家紹介を受けられるため、まず相談してみるとスタートラインが定まります。

費用を抑えたい場合は、オンライン面談を活用しましょう。全国対応のサービスが増え、交通費や時間を節約しながら複数の意見を比較できます。結果として、不要なリフォームや割高な手数料を避けられるようになります。

まとめ

本記事では、始め方 相続物件をテーマに、登記・税制・活用判断・運用手順・専門家連携の流れを示しました。結論として、相続物件を放置するほどコストとリスクが膨らみます。情報を集め、数字で比較し、信頼できる専門家と組むことで、資産を「負担」から「収益源」に変えられます。今日できる行動として、登記状況の確認と周辺相場の把握から着手してみてください。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp/
  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/
  • 総務省 統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp/
  • 法務省 登記統計 – https://www.moj.go.jp/
  • 国土交通省 賃貸住宅管理業者登録制度 – https://www.mlit.go.jp/house/lease/

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