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井戸水は水道代がかからない?下水道料金と年間維持費の実額

不動産投資を進める中で、井戸水を使用している物件に出会うことがあります。「井戸水なら水道代がかからず、ランニングコストを抑えられるのでは」と期待する方も多いでしょう。確かに公共上水道を使わない物件では毎月の水道料金が発生しません。しかし、その一方で下水道使用料やポンプの電気代、定期的な水質検査といったコストが生じます。この記事では、井戸水物件で本当に水道代がゼロになるのか、維持管理にどれくらいの費用がかかるのか、そして投資判断で押さえるべきポイントまで、公的機関の情報を交えて詳しく解説します。

「水道代ゼロ」は成り立つのか

井戸水物件では公共の上水道を使用しないため、毎月の水道料金は発生しません。一般的な賃貸物件では水道代が月々数千円かかりますが、井戸水を使用する物件ではこの費用が不要になります。年間に換算すれば数万円の節約効果があり、水の使用量が多い物件ほどメリットは大きくなります。この点だけを見れば、井戸水は確かに魅力的な選択肢に映ります。

ところが、ここに大きな落とし穴があります。多くの方が見落としがちなのが下水道使用料の存在です。横浜市の説明によると、井戸水や雨水利用水、ビル湧水などを公共下水道へ排出する場合でも、下水道使用料の支払いが必要とされています。つまり、上水道を使わなくても、下水道に接続している地域では汚水を流した分の料金がかかるのです。「水道代ゼロ」という言葉が正確に当てはまるのは、あくまで上水道料金に限った話にすぎません。

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下水道使用料は自治体ごとに計算方法が異なる

下水道使用料の課金方式は自治体によって大きく異なり、大きく分けて人数認定制、メーター制、時間計制の三つがあります。井戸水は使用量を直接測れないため、世帯人数などから使用水量を認定する方式が広く採用されています。物件のある自治体がどの方式を採用しているかは、購入前に必ず確認しておくべきポイントです。

具体的な認定方法を見てみましょう。神戸市では井戸水などのみを使う一般家庭について、世帯人数1~2人で月10立方メートル、3~5人で18立方メートル、6人以上で24立方メートルとして下水道使用水量を認定しています。札幌市の場合、札幌市水道局の公式基準に基づき、井戸水等の使用量は世帯人数や設備状況に応じて認定されます。具体的な認定基準については、札幌市の公式サイトで確認することが必要です。

福岡市では、福岡市公式資料に基づき、井戸水使用家庭の認定汚水排出量が世帯人数に応じて定められています。具体的な認定表については、福岡市の公式サイトで確認することが必要です。東京都23区では方式が異なり、動力ポンプ付き井戸の使用水量は、下水道局が設置した時間計でポンプ稼働時間を測定し、時間当たり揚水量を掛けて算定します。このように、地域によって考え方がまったく違う点を理解しておく必要があります。

井戸水と水道水を併用する場合は、両方を合算した汚水排出量で課金されるのが一般的です。神戸市では水道水と井戸水を併用する一般家庭について、世帯人数3~5人なら水道使用量に月6立方メートル、6人以上なら月8立方メートルを加算して認定しています。福岡市では、水道水の使用水量が認定汚水排出量を超える場合、その使用水量を認定水量とする設計です。つまり実際に多く水を使えば、井戸水だからといって下水道費が安くなるとは限らないのです。

少量使用でもゼロにはならない下水道費

下水道使用料には基本料金が設定されているため、少量の使用でも完全にゼロになることはありません。横浜市の月額下水道使用料は、0~8立方メートルが630円の基本額とされ、11~20立方メートル帯は1立方メートル当たり118円が加算されます(いずれも税抜)。少量しか使わなくても、この最低額が土台として残ります。

他都市でも同様の傾向が見られます。神戸市の一般汚水の基本使用料は1か月500円(税抜)で、同市のFAQでは月8立方メートルの下水道使用料を税込616円と例示しています。東京都区部では0~8立方メートルが560円(税抜)で、減量制度を使って認定後の汚水排出量が0立方メートルになったとしても、最低料金560円は発生します。庭への散水などで全量を下水に流していない場合でも、ゼロ円にはなりにくいのが実態です。

自治体間の料金差も無視できません。川崎市の資料による主要都市比較では、標準的な月9立方メートルの下水道使用料(税抜)は東京670円、横浜650円、大阪550円、神戸580円、福岡877円となっており、地域によって差があります。物件の所在地によって負担が変わるため、投資判断では所在自治体の料率を必ず調べておきましょう。

ポンプの電気代という「もうひとつの水道代」

井戸水を汲み上げるにはポンプの稼働が欠かせず、そのための電気代が発生します。よく「ポンプ代で月数千円かかる」と語られますが、実際は使用するポンプの出力や使用時間、揚程、配管条件によって幅があります。信頼できる一律の相場を示すことは難しく、物件の規模や使用量に応じて個別に試算する姿勢が大切です。

電気代を抑える工夫としては、省エネタイプのポンプの採用が挙げられます。ポンプの出力や運転時間を把握したうえで、物件ごとに実際の電気代を見積もっておくと、収支計画の精度が高まります。上水道料金がかからない代わりに、この電気代が「もうひとつの水道代」として毎月かかる点を念頭に置いてください。

飲用に使うなら必須となる水質検査

井戸水を飲用に使う場合、安全性の確認は欠かせません。環境省の飲用井戸等衛生対策要領では、小規模貯水槽水道等について毎年1回以上の定期水質検査を行うものとし、それ以外の飲用井戸でも毎年1回以上が望ましいとしています。賃貸物件として運用する場合は入居者の健康を守る責任があるため、定期的な水質検査が実質的に欠かせません。「水道代ゼロ」でも、この検査費が毎年の負担として積み上がります。

検査費用は項目数によって変わります。さいたま市保健所の一般13項目の井戸水検査手数料は6,540円で、千葉市の一般的な井戸水等の必須11項目は9,730円とされています。基本的な項目でも数千円から1万円前後を見込む必要があるとわかります。さらに汚染懸念のある項目を加えると費用は跳ね上がり、取手市経由の検査では13項目が8,800円(税込)であるのに対し、トリクロロエチレンなどを加えた15項目では22,000円(税込)とされています。

飲用に適した水として維持するハードルの高さも押さえておきましょう。さいたま市は、井戸水が「飲用に適する水」と判断されるには水道法の52項目基準への適合確認が必要と明記しています。地下水は環境変化の影響を受けやすいため、同市では飲料水には水道を勧めています。物件の立地によっては、飲用利用を前提にせず、飲用以外の生活用水として位置づける運用も現実的な選択肢になります。

井戸設備の状態確認と更新コスト

井戸設備の状態確認は、購入後のトラブルを避けるために極めて重要です。井戸には浅井戸と深井戸があり、浅井戸は地表の影響を受けやすく水質が変動しやすい特徴があります。一方、深井戸は深い層から水を汲み上げるため水質が比較的安定しています。それぞれに適したポンプが設置されているか、まず確認しておきましょう。

ポンプは更新前提の設備として捉える必要があります。あるメーカーの浅井戸用給水ポンプの参考価格は税抜66,000円から145,200円の機種が並んでおり、これに工事費が加わるため、更新だけでも数万円から十数万円の帯を見込むべきです。修繕費の規模感の参考として、横浜市の災害応急用井戸修繕補助では、ポンプの修理または交換の補助上限が75,000円、1井戸の総額上限が10万円とされています。設置年数が経過している物件では、こうした更新コストを価格交渉の材料として活用できます。

井戸の構造面では、周囲がコンクリートで固められているか、雨水や汚水が流れ込まない高さが確保されているかを確認します。蓋がしっかり閉まり、小動物や異物が入らない構造かどうかもチェックすべきポイントです。配管については、地面が不自然に湿っている箇所がないか、漏水の兆候がないかを注意深く観察しましょう。

下水道に接続していない場合の落とし穴

下水道に接続していない物件では下水道使用料が発生しません。しかし、その代わりに浄化槽の維持費がかかる点を見落としてはいけません。浄化槽を使う場合は法定検査が必要で、環境省は11条検査を毎年1回受検するものと整理しています。「下水道ゼロ」であっても、維持費までゼロになるわけではないのです。

日本地下水学会のQ&Aでは、一般論として井戸の維持経費は水道より安価としつつも、地下水汚染の有無や浄化槽メンテナンスの自己責任、水道水の安全性などを総合的に考慮すべきだとしています。「安いからノーリスク」という発想ではなく、井戸水ならではの管理責任が伴う点を理解しておくことが大切です。

井戸水物件の投資判断で押さえるべき基準

井戸水物件への投資を判断する際は、メリットとデメリットを総合的に評価することが大切です。水道料金がかからない点は確かに魅力ですが、下水道使用料やポンプ電気代、水質検査、設備更新といった実際のコストを差し引いたうえで、純粋な節約効果がどの程度あるのかを冷静に計算する必要があります。上水道料金の節約分だけで単純に得をするわけではありません。

重要なのは、物件価格と周辺相場との比較です。井戸水物件は市場価格より安く設定されていることが多いため、その価格差が維持管理コストや将来の設備更新費用を上回るかどうかを検証します。たとえば、同条件の上水道物件より200万円安く購入できる場合、年間の維持管理コストが多少増えても、長期で見れば十分に回収できる可能性があります。

地域の特性も判断材料になります。井戸水の使用が一般的な地域では入居者の抵抗感も少なく、物件の流動性も比較的高くなります。一方、上水道が当たり前の都市部では敬遠される傾向があり、入居者募集や売却時に苦労する可能性があります。前述のとおり都市部では井戸水を飲用に維持するハードルも高いため、飲用以外の生活用水として位置づける運用も含め、出口戦略を見据えた総合的な判断が求められます。

まとめ

井戸水物件には毎月の上水道料金がかからない魅力がある一方、「負担ゼロ」とは限りません。下水道に接続している地域では下水道使用料が残り、少量使用でも基本料金が土台として発生します。これに加えてポンプの電気代、毎年の水質検査費、設備の更新費用が積み重なります。上水道料金の節約分だけで単純に得をするわけではない点を、まず正しく理解しておきましょう。

購入前には水質検査を実施し、飲用に使うなら基本項目で数千円から1万円前後、汚染懸念項目を含めれば2万円超という費用感を踏まえて検討してください。ポンプは更新前提の設備であること、下水道に接続していなければ浄化槽の法定検査が毎年必要になることなど、見落としやすいリスクも含めて見極めることが大切です。

最新の課金方式や検査の依頼先、料率の詳細などは個別事情によって異なるため、物件のある自治体や各公的機関の公式情報で必ず確認してください。コストとリスクを正確に把握したうえで物件価格の妥当性を判断すれば、井戸水物件もランニングコストを抑えながら安定した収益を狙える選択肢になり得ます。

参考文献・出典

  • 横浜市 下水道使用料 – https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kasen-gesuido/gesuido/keiei/gesuidoushiyouryou.html
  • 大阪市 下水道使用料のご案内 – https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000010493.html
  • 札幌市 下水道使用料 – https://www.city.sapporo.jp/suido/fees/charges.html
  • 神戸市 下水道使用水量(排除汚水量)の認定・減量認定 – https://www.city.kobe.lg.jp/a78445/kurashi/sumai/sewage/fee/nintei.html
  • 神戸市 下水道使用料とは – https://www.city.kobe.lg.jp/a78445/kurashi/sumai/sewage/fee/fee.html
  • 神戸市 下水道への質問事例 – https://www.city.kobe.lg.jp/a78445/kurashi/sumai/sewage/faq/index.html
  • 福岡市 井戸水をご使用の一般家庭の方 – https://www.city.fukuoka.lg.jp/doro-gesuido/eigyo/hp/well.html
  • 福岡市 生活環境委員会関係環境局資料 – https://www.city.fukuoka.lg.jp/gikaizimukyoku/chosahousei/shigikai/jimukyoku-siryo/documents/06-08youran-seikatsukankyou.pdf
  • 東京都下水道局 井戸水(雨水)の使用水量 – https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/qa/fqmenu3/fq3002
  • 東京都下水道局 下水道料金の計算方法 – https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/living/fee/keisan/ryokinhyo
  • 東京都下水道局 減量制度について – https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/living/fee/genryo
  • 環境省 飲用井戸等衛生対策要領 – https://www.env.go.jp/content/000334925.pdf
  • さいたま市 令和8年度井戸水等の水質検査について – https://www.city.saitama.lg.jp/002/002/011/012/p087500.html
  • 千葉市 井戸水等の水質検査のご案内 – https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/khoken/kkagaku/suishitsukensa_annai.html
  • 横浜市 令和8年度災害応急用井戸修繕補助金 – https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/seikatsu/kaiteki/idosyuzenhojokin.html
  • 環境省 令和6年度における浄化槽の設置状況等について – https://www.env.go.jp/press/press_02896.html
  • 川崎市 水道事業及び下水道事業の料金制度等 – https://www.city.kawasaki.jp/980/cmsfiles/contents/0000175/175702/0705332%281%29s.pdf
電宅男
監修 電宅男 宅地建物取引士 / MBA|株式会社青山地所 営業部

一橋大学大学院MBA修了。大手デベロッパー法人部門、買取再販会社を経て現職。区分リノベ再販・都心事業用物件の買取再販を手がけ、業界7年の知見で記事を監修。

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