不動産融資

空室知らずを目指すアパート経営 立地選定 方法の完全ガイド

アパート経営に興味はあるものの、「どこに建てれば入居者が集まるのか」「失敗しない選び方はあるのか」と不安を抱える人は多いはずです。立地が悪ければ、どれほど設備を充実させても空室が埋まらず、ローン返済に追われてしまいます。本記事では、最新データを踏まえた立地選定の基本から、現地調査の具体的な手順、2025年度の支援策までを体系的に解説します。読み終えるころには、ゼロからでも実践できる判断軸が手に入り、安心して次の一歩を踏み出せるでしょう。

立地選定が収益を左右する理由

立地選定が収益を左右する理由のイメージ

重要なのは、立地がアパート経営のキャッシュフローを根本から決定づけるという事実です。国土交通省住宅統計によれば、2025年7月時点の全国アパート空室率は21.2%、前年より0.3ポイント改善したものの、依然として五戸に一戸が空いています。この差を生む主因がエリア格差であり、好立地ほど空室率は一桁に収まります。

まず家賃水準は周辺の雇用環境と交通利便性に比例します。駅から徒歩10分以内、または主要バス路線沿いの物件は、地方都市でも強い需要を維持しています。一方で通勤時間が長くなる地域は家賃を下げても決まりにくく、結果として利回りが想定以下に落ち込みます。

さらに、立地は修繕コストにも影響します。入居者が入り代わる頻度が高いエリアは、原状回復や設備更新がこまめに行われ、結果として建物の資産価値も保たれます。つまり、単に「人が多い場所」を選ぶのではなく、「滞在期間が長く、更新が期待できる層」がいる地域を見極めることが収益最大化の近道です。

データで読むエリアの将来性

データで読むエリアの将来性のイメージ

まず押さえておきたいのは、人口動態と再開発計画の掛け合わせです。総務省「地域別人口推計」では、都心三区(千代田・中央・港)は2025年以降も年間0.4%の微増が見込まれています。対照的に郊外の一部では1%以上の減少が続く予測です。数字が示すように、長期的な賃貸需要を担保するには人口維持または微増地域を狙うのが安全策となります。

次に、再開発による雇用創出を確認します。たとえば、横浜市の「みなとみらい21中央地区」では2027年までに約1万人分のオフィス需要が追加される予定です。完成前から周辺家賃は年2%ペースで上昇しており、近隣の中古アパートも売り急ぎが減っています。再開発情報は自治体の都市計画課で公開されているので、購入前に必ずチェックしましょう。

交通インフラの拡充も見逃せません。大阪モノレール延伸や名古屋地下鉄東部線計画など、開業が確定している路線は周辺地価を押し上げる傾向があります。用地買収が完了しているか、工期が具体化しているかが判断材料となり、計画段階のうわさだけで動くのは危険です。

需要を生むターゲット設定と周辺環境

実は、同じ立地でも想定入居者を変えるだけで収益構造が大きく変わります。単身社会人を狙う場合は、駅近と飲食店の充実度が成約率を左右します。一方、ファミリー層には小学校やスーパーの距離が重視されるため、徒歩15分圏内に生活利便施設がそろう郊外ターミナルが人気です。

具体的には、単身者向け物件の平均入居期間は2.8年、ファミリー物件は5.6年という民間調査結果があります。長期入居ほど退去時の空室損失とリフォーム費が減るため、安定収益を望むならファミリー層をターゲットに含める選択肢も検討しましょう。

また、周辺環境は昼夜で表情が変わります。昼間は静かな住宅街でも、夜になると繁華街の音が届く場合があります。必ず時間帯を変えて現地を歩き、駅から物件までのルートを体感してください。この行程で治安や街灯の有無、道幅の広さを確認することで、入居者の生活イメージを具体化できます。

初心者でもできる現地調査のコツ

ポイントは、机上データと肌感覚のギャップを埋めることにあります。まず不動産会社に空室一覧を取り寄せ、同じエリアで築年と家賃が近い競合物件を把握します。この時点で募集後何日で成約したかを聞き出すと、潜在需要の強さが見えてきます。

次に、平日と休日の2回に分けて現地を歩きます。平日の通勤時間帯は駅の混雑度やバスの本数を確認し、休日は商業施設や公園の利用状況を観察してください。住民の年齢層やベビーカーの数で、ファミリー需要の厚さを推測できます。

最後に、市役所の都市計画課で用途地域を確認しましょう。近隣が第1種低層住居専用地域なら、高層マンションが急に建つ恐れがなく、長期視点で賃貸環境が維持されます。一方、商業地域であれば将来的な騒音リスクを想定し、遮音性能を高める改修費を織り込むと安全です。

2025年度の支援策と金融環境を活かす

まず、資金調達を有利に進めるには公的支援の活用が欠かせません。2025年度も継続が決定している「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、賃貸アパートの耐震・断熱改修に対して最大200万円の補助を受けられます。申請期限は2026年3月末ですが、予算枠に達し次第受付終了となるため早めの検討が必要です。

金融機関の姿勢も追い風です。日本銀行は2025年6月の金融政策決定会合で短期金利を0.1%引き上げましたが、地方銀行の投資用アパートローン金利は平均1.7%前後にとどまっています。変動金利は上昇局面にありますが、10年以上の固定金利型を選べば金利1.9%台が提示されるケースもあります。事前に複数行へ仮審査を申し込み、自己資金2割以上を用意することで条件交渉が進みやすくなります。

なお、エネルギー効率の高い設備を導入する場合、「賃貸住宅エネルギー性能向上推進事業(2025年度)」が利用可能です。LED照明や高効率給湯器への更新で工事費の3分の1(上限150万円)が補助されるため、中長期の運営コスト削減にも寄与します。これらの制度は毎年内容が微調整されるため、着工前に最新版を必ず確認してください。

まとめ

立地選定はアパート経営の成否を分ける最重要プロセスです。人口動態と再開発計画で長期需要を読み解き、ターゲット層に合わせた周辺環境を検証することで、空室リスクを大幅に下げられます。さらに、現地調査で生活動線を体感し、公的支援と金融条件を組み合わせれば、初期費用と運営コストを抑えつつ収益性を高めることが可能です。まずは気になるエリアの役所と金融機関に足を運び、データと現場の両面から情報を集めましょう。その一歩が、安定経営への確かなスタートになります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省 地域別人口推計 2025年版 – https://www.stat.go.jp
  • 横浜市 都市整備局 みなとみらい21中央地区計画資料 – https://www.city.yokohama.lg.jp
  • 金融庁 金利動向レポート 2025年7月号 – https://www.fsa.go.jp
  • 国土交通省 長期優良住宅化リフォーム推進事業 2025年度概要 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
  • 環境省 賃貸住宅エネルギー性能向上推進事業 2025年度要綱 – https://www.env.go.jp

関連記事

TOP