店舗物件への投資を検討する際、多くの方が悩むのが「変動金利と固定金利、どちらを選べばいいのか」という問題です。住宅ローンとは異なり、店舗物件の融資は金額も大きく、テナントの入れ替わりによる収益変動リスクも考慮しなければなりません。金利タイプの選択を誤ると、長期的に数百万円から数千万円もの差が生じることもあります。
この記事では、店舗物件投資における変動金利と固定金利の特徴を詳しく解説し、それぞれのメリット・デメリット、そしてあなたの投資スタイルに合った選択方法をお伝えします。金利動向の見極め方から、実際のシミュレーション例まで、初心者の方でも理解できるよう丁寧に説明していきます。
変動金利と固定金利の基本的な違いとは

店舗物件の融資における変動金利と固定金利は、それぞれ全く異なる特性を持っています。まず押さえておきたいのは、この選択が投資の成否を大きく左右する可能性があるという点です。
変動金利は、市場の金利動向に応じて定期的に金利が見直される仕組みです。一般的に半年ごとに金利が見直され、返済額は5年ごとに変更されます。2026年3月現在、店舗物件向けの変動金利は年1.5%〜2.5%程度が相場となっており、固定金利と比較して低い水準に設定されています。この低金利が最大の魅力であり、金利が上昇しなければ総返済額を大幅に抑えることができます。
一方、固定金利は契約時に決めた金利が返済期間中ずっと変わらない仕組みです。店舗物件の場合、10年固定や全期間固定などの選択肢があり、金利は年2.0%〜3.5%程度が一般的です。変動金利より高めに設定されていますが、将来の金利上昇リスクを完全に回避できるという安心感があります。
重要なのは、どちらが絶対的に有利というわけではなく、投資家の状況や市場環境によって最適な選択が変わるという点です。店舗物件は住宅と異なり、テナントの退去による空室リスクや、景気変動による賃料下落リスクも考慮する必要があります。そのため、金利タイプの選択は、これらのリスクと合わせて総合的に判断することが求められます。
変動金利を選ぶメリットとリスク

変動金利の最大のメリットは、何といっても当初の金利負担が軽いことです。固定金利と比べて0.5%〜1.0%程度低い金利でスタートできるため、月々の返済額を抑えられます。例えば、5,000万円を25年返済で借り入れた場合、金利1.8%の変動金利なら月々の返済額は約21万円ですが、金利2.8%の固定金利では約23万円となり、月2万円の差が生まれます。
この差額を修繕費の積立や空室対策の資金に回せることは、店舗物件投資において大きなアドバンテージとなります。特に投資初期は物件の改装費用やテナント誘致のための広告費など、予想外の出費が発生しやすい時期です。変動金利による返済額の軽減は、こうした初期投資の負担を和らげる効果があります。
さらに、金利が低下した場合には自動的に返済額も減少するため、市場環境が有利に働けば大きな恩恵を受けられます。実際、2010年代は長期にわたって低金利が続いたため、変動金利を選択した投資家の多くが固定金利より有利な条件で返済を続けることができました。
しかし、変動金利には見逃せないリスクも存在します。最も大きいのは金利上昇リスクです。日本銀行の金融政策が転換し、金利が上昇局面に入った場合、返済額が大幅に増加する可能性があります。仮に金利が2%上昇すれば、月々の返済額が3万円〜5万円増えることも珍しくありません。
店舗物件の場合、このリスクはさらに深刻です。テナントとの賃貸借契約は通常2〜3年ごとに更新されますが、金利上昇に合わせて賃料を引き上げることは容易ではありません。つまり、収入は変わらないのに支出だけが増える状況に陥る可能性があるのです。また、景気後退期には金利上昇とテナント退去が同時に起こるリスクもあり、資金繰りが一気に悪化する恐れがあります。
固定金利を選ぶメリットとリスク
固定金利の最大の魅力は、将来の返済計画が確定することです。契約時に決めた金利が最後まで変わらないため、25年後まで毎月の返済額を正確に把握できます。この予測可能性は、長期的な事業計画を立てる上で非常に重要です。
店舗物件投資では、テナントとの長期契約を前提に収支計画を立てることが一般的です。固定金利を選択すれば、賃料収入と返済額の差額である実質的な利益を、契約期間中ずっと正確に計算できます。これにより、修繕計画や次の投資計画を立てやすくなり、安定した資産形成が可能になります。
また、金利上昇局面では固定金利の優位性が際立ちます。2026年現在、世界的なインフレ傾向や各国の金融政策正常化の動きを受けて、今後金利が上昇する可能性は十分にあります。固定金利で契約していれば、こうした市場環境の変化に一喜一憂することなく、安心して事業を継続できます。
さらに、金融機関との交渉においても、固定金利は有利に働くことがあります。返済計画が明確なため、追加融資を受ける際の審査がスムーズに進みやすく、複数物件への投資を検討する場合にも計画を立てやすくなります。
一方で、固定金利にもデメリットは存在します。最も明確なのは、当初の金利負担が重いことです。変動金利と比べて0.5%〜1.0%高い金利を支払い続けることになるため、金利が上昇しなかった場合には「払い損」になる可能性があります。
5,000万円を25年返済で借り入れた場合、変動金利1.8%なら総返済額は約6,300万円ですが、固定金利2.8%では約6,900万円となり、600万円もの差が生じます。この差額は決して小さくありません。特に投資初期は収益が安定しにくいため、高めの返済額が経営を圧迫するリスクがあります。
また、固定金利期間中に金利が大幅に下落した場合でも、その恩恵を受けられません。借り換えという選択肢もありますが、手数料や保証料などのコストがかかるため、必ずしも有利とは限りません。さらに、固定金利は中途解約時の違約金が高額になることが多く、投資戦略の柔軟性が制限される面もあります。
金利タイプ選択で考慮すべき重要な要素
金利タイプを選ぶ際には、自分の投資スタイルと物件の特性を総合的に判断する必要があります。まず考えるべきは、自己資金の余裕度です。
自己資金が潤沢にあり、金利上昇時にも追加返済できる余力がある投資家は、変動金利を選択しやすい立場にあります。一方、自己資金をギリギリまで投入し、月々の返済がすでに収支の限界に近い場合は、固定金利で安定性を確保する方が賢明です。国土交通省の調査によると、不動産投資の失敗事例の約40%は、想定外の支出増加に対応できなかったことが原因とされています。
次に重要なのは、物件の立地と収益安定性です。都心部の一等地で、大手企業や安定した業種のテナントが入居している物件なら、長期的な賃料収入が見込めます。このような物件では、固定金利で長期的な収支計画を立てることが効果的です。実際、東京23区内の好立地店舗物件では、10年以上同じテナントが入居し続けるケースも珍しくありません。
逆に、郊外の物件や流行に左右されやすい業種のテナントが多い場合は、柔軟性の高い変動金利が適している場合もあります。ただし、この場合は金利上昇リスクと空室リスクの両方に備える必要があるため、より慎重な資金計画が求められます。
投資期間も重要な判断材料です。5〜10年程度の短期投資を考えているなら、変動金利の低金利メリットを享受しやすくなります。一方、25年〜30年の長期保有を前提とする場合は、その間に金利が上昇する可能性が高いため、固定金利の安定性が魅力的です。
さらに、年齢やライフプランも考慮すべき要素です。若い投資家で今後の収入増加が見込める場合は、変動金利で始めて将来的に繰り上げ返済を行う戦略も有効です。一方、定年退職が近い、または既に退職している投資家は、収入が減少する可能性を考えて固定金利で安定性を重視する方が安心です。
実際のシミュレーションで比較する
具体的な数字で変動金利と固定金利を比較してみましょう。5,000万円を25年返済で借り入れる場合を想定します。
変動金利1.8%でスタートした場合、当初の月々返済額は約21万円です。金利が変わらなければ、25年間の総返済額は約6,300万円となります。一方、固定金利2.8%を選択すると、月々の返済額は約23万円、総返済額は約6,900万円です。この時点で600万円の差が生まれています。
しかし、変動金利は市場環境によって変化します。仮に5年後に金利が0.5%上昇して2.3%になった場合、月々の返済額は約22万円に増加します。さらに10年後に2.8%まで上昇すれば、月々の返済額は約23万円となり、固定金利と同水準になります。この時点で総返済額を計算すると、約6,700万円となり、固定金利との差は200万円程度に縮まります。
もし15年後に金利が3.3%まで上昇した場合、月々の返済額は約24万円を超え、固定金利を上回ります。最終的な総返済額は約7,100万円となり、固定金利より200万円多く支払うことになります。
逆に、金利が低下または横ばいで推移した場合はどうでしょうか。変動金利が1.5%に下がり、そのまま推移した場合、総返済額は約6,100万円となり、固定金利より800万円も少なくなります。このように、金利の動向次第で結果は大きく変わるのです。
店舗物件特有のリスクも考慮する必要があります。例えば、テナントが退去して3ヶ月間空室になった場合、その間の賃料収入はゼロです。月々の返済額が21万円の変動金利なら、3ヶ月で63万円の持ち出しですが、23万円の固定金利では69万円となります。一見小さな差に見えますが、この時期に金利が上昇すれば、変動金利の返済額はさらに増加し、資金繰りが一気に厳しくなる可能性があります。
金利動向の見極め方と今後の予測
金利タイプを選択する上で、今後の金利動向をある程度予測することは重要です。ただし、金利の将来予測は専門家でも難しく、確実な予測は不可能であることを理解しておく必要があります。
2026年3月現在、日本の金融政策は転換期を迎えています。日本銀行は長年続けてきた大規模な金融緩和政策を段階的に修正しており、政策金利の引き上げが行われています。これは、物価上昇率が目標の2%を安定的に達成する見通しが立ってきたためです。
国際的な環境も金利に影響を与えます。アメリカやヨーロッパの中央銀行は、インフレ抑制のために政策金利を引き上げてきました。日本との金利差が拡大すると円安が進行し、輸入物価の上昇を通じて国内のインフレ圧力が高まります。これが日本の金利上昇につながる可能性があります。
ただし、日本経済の構造的な課題も考慮する必要があります。少子高齢化による経済成長率の低下や、政府債務の大きさを考えると、急激な金利上昇は経済に大きな負担をかけます。そのため、金利上昇があったとしても、緩やかなペースになる可能性が高いと多くのエコノミストは予測しています。
金利動向を見極めるためには、定期的に経済指標をチェックすることが有効です。日本銀行の政策決定会合の内容、消費者物価指数の推移、為替レートの動向などが重要な指標となります。また、財務省が発表する国債の利回りも、将来の金利動向を予測する上で参考になります。
しかし、最も重要なのは、金利予測に頼りすぎないことです。どんなに綿密な分析を行っても、予想外の経済ショックや政策変更によって金利は大きく変動する可能性があります。そのため、金利がある程度上昇しても耐えられる資金計画を立てることが、長期的な投資成功の鍵となります。
ミックスプランという選択肢も検討する
変動金利と固定金利のどちらかを選ぶだけでなく、両方を組み合わせる「ミックスプラン」という選択肢もあります。これは借入金額を分割し、一部を変動金利、残りを固定金利で借りる方法です。
例えば、5,000万円の融資を受ける場合、3,000万円を変動金利、2,000万円を固定金利で借り入れます。この方法なら、変動金利の低金利メリットを享受しながら、固定金利で一定の安定性も確保できます。金利が上昇した場合でも、影響を受けるのは変動金利部分だけなので、リスクを分散できるのです。
ミックスプランの最大のメリットは、柔軟性と安定性のバランスが取れることです。金利が低位安定すれば変動金利部分で総返済額を抑えられ、金利が上昇しても固定金利部分が損失を緩和してくれます。また、将来的に繰り上げ返済を行う際も、変動金利部分を優先的に返済することで、金利上昇リスクをさらに軽減できます。
店舗物件投資では、この方法が特に有効な場合があります。例えば、1階を店舗、2階以上を住宅として貸し出す複合物件の場合、店舗部分の賃料収入を変動金利の返済に、住宅部分の賃料収入を固定金利の返済に充てるという計画が立てられます。店舗は賃料が高い反面、空室リスクも高いため、変動金利の柔軟性が活きます。一方、住宅は賃料が安定しているため、固定金利の確実性と相性が良いのです。
ただし、ミックスプランにもデメリットはあります。まず、管理が複雑になることです。2つの異なる金利タイプを同時に管理する必要があり、返済計画の作成や見直しに手間がかかります。また、金融機関によってはミックスプランに対応していない場合や、手数料が割高になることもあります。
さらに、中途半端な選択になるリスクもあります。金利が全く上昇しなかった場合、固定金利部分が完全に「払い損」になりますし、逆に大幅に上昇した場合は、変動金利部分の負担が重くのしかかります。つまり、どちらの状況でも「完全に正解」とはならない可能性があるのです。
金利タイプ変更のタイミングと方法
一度選んだ金利タイプを途中で変更することも可能です。変動金利から固定金利への切り替え、あるいは別の金融機関への借り換えなど、いくつかの選択肢があります。
変動金利で借りている場合、金利上昇の兆候が見えたら固定金利への切り替えを検討するタイミングです。多くの金融機関では、既存の借入を固定金利に変更できるサービスを提供しています。ただし、切り替え時の金利は市場金利に連動するため、すでに金利が上昇している場合は、当初の変動金利より高い固定金利になる可能性があります。
借り換えは、より有利な条件を提示する金融機関に融資を移す方法です。例えば、変動金利で借りていて金利が上昇してきた場合、他の金融機関の固定金利に借り換えることで、将来の金利上昇リスクを回避できます。また、固定金利で借りている場合でも、金利が大幅に下落したら、変動金利への借り換えで総返済額を削減できる可能性があります。
しかし、借り換えには相応のコストがかかることを忘れてはいけません。事務手数料、保証料、登記費用などを合わせると、借入額の2%〜3%程度、つまり5,000万円の借り換えなら100万円〜150万円のコストが発生します。これらの費用を考慮しても借り換えのメリットがあるかどうか、慎重に計算する必要があります。
一般的に、金利差が1%以上あり、残存期間が10年以上ある場合は、借り換えを検討する価値があるとされています。ただし、店舗物件の場合は、借り換え審査が住宅ローンより厳しいことも考慮すべきです。テナントの状況、物件の収益性、投資家の財務状況などが総合的に審査されるため、必ずしも希望通りの条件で借り換えできるとは限りません。
金利タイプの変更を検討する際は、複数の金融機関に相談し、シミュレーションを依頼することが重要です。また、不動産投資に詳しいファイナンシャルプランナーや税理士に相談することで、税制面も含めた総合的なアドバイスを得られます。
まとめ
店舗物件投資における変動金利と固定金利の選択は、投資の成否を左右する重要な決断です。変動金利は当初の金利負担が軽く、金利が上昇しなければ総返済額を大幅に抑えられる魅力があります。一方、固定金利は返済計画が確定し、金利上昇リスクを完全に回避できる安心感があります。
どちらを選ぶべきかは、自己資金の余裕度、物件の収益安定性、投資期間、そして自分のリスク許容度によって変わります。自己資金が潤沢で、金利上昇にも対応できる余力がある投資家は変動金利を選びやすく、安定した収益を長期的に確保したい投資家は固定金利が適しています。また、両方のメリットを取り入れたミックスプランという選択肢も検討する価値があります。
重要なのは、金利予測に頼りすぎず、どのような状況でも耐えられる資金計画を立てることです。店舗物件は空室リスクや賃料変動リスクもあるため、金利上昇と他のリスクが重なった場合でも対応できる余裕を持つことが、長期的な投資成功につながります。
金利タイプの選択に迷ったら、複数の金融機関でシミュレーションを依頼し、専門家のアドバイスも参考にしながら、自分の投資スタイルに最も合った選択をしてください。そして、一度決めた後も定期的に見直しを行い、必要に応じて借り換えや金利タイプの変更も検討することで、より有利な条件で投資を続けることができます。
参考文献・出典
- 日本銀行 – 金融政策決定会合の運営 – https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/index.htm
- 国土交通省 – 不動産市場動向マンスリーレポート – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 財務省 – 国債金利情報 – https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm
- 住宅金融支援機構 – 民間住宅ローンの実態に関する調査 – https://www.jhf.go.jp/about/research/loan_user.html
- 金融庁 – 金融機関の貸出動向等について – https://www.fsa.go.jp/policy/chusho/index.html
- 総務省統計局 – 消費者物価指数 – https://www.stat.go.jp/data/cpi/index.html
- 不動産投資家調査(一般財団法人日本不動産研究所) – https://www.reinet.or.jp/research/