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多拠点生活時代の賃貸需要予測|2026年最新データで読み解く市場動向

コロナ禍を経て、働き方や暮らし方の価値観が大きく変化しました。リモートワークの定着により、都心のオフィスに毎日通う必要がなくなった人々が増え、複数の拠点を持つ「多拠点生活」という新しいライフスタイルが注目を集めています。週末は海辺の町で過ごし、平日は都心のコンパクトな部屋で仕事をする。そんな暮らしを実現する人が確実に増えているのです。

不動産投資家にとって、この多拠点生活の広がりは大きなビジネスチャンスです。しかし、どのエリアにどんな物件を持てば良いのか、需要は本当に継続するのか、多くの疑問があるでしょう。この記事では、2026年3月時点の最新データをもとに、多拠点生活者向け賃貸市場の需要予測と投資戦略について詳しく解説します。データに基づいた客観的な分析により、あなたの投資判断をサポートします。

多拠点生活者の実態と市場規模

多拠点生活者の実態と市場規模のイメージ

多拠点生活とは、仕事や趣味、家族の事情などに応じて、複数の地域に拠点を持ち、行き来しながら暮らすライフスタイルを指します。従来の「別荘」とは異なり、それぞれの拠点で実際に生活し、地域コミュニティとも関わりを持つ点が特徴です。

国土交通省の調査によると、2025年時点で何らかの形で多拠点生活を実践している人は推定で約180万人に達しています。これは日本の総人口の約1.5%に相当し、2020年の約100万人から大幅に増加しました。特に30代から50代の働き盛り世代が中心で、リモートワークを活用しながら都市と地方を行き来するパターンが最も多くなっています。

興味深いのは、多拠点生活者の約65%が賃貸物件を利用している点です。購入ではなく賃貸を選ぶ理由として、「ライフステージに応じて拠点を変えやすい」「初期費用を抑えられる」「複数拠点の維持管理が楽」といった声が多く聞かれます。つまり、多拠点生活の広がりは、賃貸市場に新たな需要層をもたらしているのです。

さらに注目すべきは、この市場が今後も拡大する見込みである点です。総務省の推計では、2030年までに多拠点生活実践者は300万人を超えると予測されています。働き方改革の進展、地方創生政策の推進、デジタルインフラの整備などが追い風となり、多拠点生活はより一般的な選択肢になっていくでしょう。

多拠点生活者が求める物件の特徴

多拠点生活者が求める物件の特徴のイメージ

多拠点生活者向けの賃貸物件には、従来の賃貸とは異なる特徴的なニーズがあります。まず押さえておきたいのは、彼らが求めるのは「住む」だけでなく「働く」「楽しむ」機能を兼ね備えた空間だという点です。

リモートワーク環境の充実は最優先事項です。安定した高速インターネット回線は必須条件であり、光回線が利用できない物件は選択肢から外されます。また、Web会議に対応できる静かな作業スペースも重要です。1LDK以上の間取りで、リビングとは別に仕事専用の空間を確保できる物件が好まれます。実際、不動産情報サイトのデータでは、「ワークスペース付き」を条件に検索する人が2020年比で3.2倍に増加しています。

次に重要なのが、短期契約や柔軟な契約形態への対応です。多拠点生活者の多くは、季節や仕事の状況に応じて滞在期間を変えたいと考えています。従来の2年契約ではなく、1ヶ月単位や3ヶ月単位での契約が可能な物件に人気が集まっています。マンスリーマンションやサブスクリプション型の賃貸サービスが注目されているのも、この柔軟性へのニーズを反映しています。

立地条件については、都心部と地方で求められるポイントが異なります。都心の拠点では、駅から徒歩10分以内のアクセスの良さ、コンビニやスーパーなど生活利便施設の充実が重視されます。一方、地方の拠点では、自然環境の豊かさ、静かな環境、駐車場の有無が重要視されます。特に地方拠点では車での移動が前提となるため、駐車場付き物件の需要が高まっています。

設備面では、家具・家電付き物件への需要が顕著です。複数の拠点に家具を揃えるのは経済的負担が大きいため、最低限の生活に必要な設備が整っている物件が選ばれます。ベッド、テーブル、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの基本的な家電が揃っていれば、スーツケース一つで移動できるという利便性が評価されています。

エリア別の需要予測と投資戦略

多拠点生活者向け賃貸市場は、エリアによって需要の性質が大きく異なります。投資を成功させるには、各エリアの特性を理解し、適切な戦略を立てることが不可欠です。

都市部では、平日の仕事拠点としての需要が中心です。東京23区、大阪市、名古屋市などの大都市圏では、コンパクトな1K〜1LDKの物件が求められています。家賃相場は月7万円から12万円程度で、駅近であることが絶対条件です。特に山手線沿線や地下鉄主要駅周辺の物件は、空室期間が短く安定した収益が見込めます。ただし、物件価格も高額なため、利回りは3〜5%程度と控えめです。都市部への投資は、キャピタルゲインよりも長期的な安定収益を重視する戦略が適しています。

地方都市では、週末や長期滞在の拠点としての需要が高まっています。軽井沢、熱海、那須などの従来からのリゾート地に加え、最近では長野市、金沢市、松本市といった地方中核都市も注目されています。これらのエリアでは、2LDK〜3LDKの広めの物件が好まれ、家賃相場は月5万円から8万円程度です。重要なのは、東京や大阪から新幹線や特急で2〜3時間以内でアクセスできる立地であることです。

海辺や山間部のリゾートエリアは、趣味や休養を目的とした拠点として人気です。千葉県南房総、静岡県伊豆、沖縄県などでは、自然環境を活かした物件への需要が増加しています。このエリアでの投資ポイントは、季節変動を考慮した収支計画です。夏季や連休期間は高稼働が見込めますが、冬季は空室リスクが高まります。年間を通じた平均稼働率を60〜70%程度と保守的に見積もり、それでも収益が確保できる物件を選ぶことが重要です。

新幹線や高速道路のインフラ整備も需要予測の重要な要素です。北陸新幹線の延伸により、福井県や石川県の一部エリアで多拠点生活者向け需要が増加しています。今後も、リニア中央新幹線の開業を見据えた山梨県や長野県南部、北海道新幹線延伸を控えた札幌周辺など、交通インフラの改善が予定されているエリアは投資の有望候補となります。

需要を左右する社会的要因

多拠点生活向け賃貸需要は、社会環境の変化に大きく影響されます。2026年現在、この市場を支える主要な要因を理解することで、より正確な需要予測が可能になります。

働き方改革の進展は、最も大きな推進力です。厚生労働省の調査によると、2025年時点でリモートワークを週2日以上実施している企業は全体の42%に達しました。特に情報通信業、金融業、専門サービス業では70%を超える企業がリモートワークを導入しています。この傾向は今後も続くと予想され、場所にとらわれない働き方がさらに一般化していくでしょう。

地方創生政策も重要な後押しとなっています。多くの自治体が、移住・二拠点生活支援制度を設けており、住宅取得補助や家賃補助、起業支援などを提供しています。例えば、長野県では「信州リゾートテレワーク」として、県内でのテレワーク実践者に対する支援を行っています。こうした自治体の取り組みは、多拠点生活のハードルを下げ、新規参入者を増やす効果があります。

デジタルインフラの整備状況も見逃せません。総務省の「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」により、2025年度末までに光ファイバーの世帯カバー率は99.9%に達する見込みです。これまで通信環境の問題で多拠点生活が難しかった地方部でも、快適なリモートワークが可能になりつつあります。5G通信エリアの拡大も、モバイルワーク環境の向上に寄与しています。

一方で、需要を抑制する要因にも注意が必要です。経済状況の悪化や企業業績の低迷は、多拠点生活という比較的コストのかかるライフスタイルの実践者を減少させる可能性があります。また、企業がオフィス回帰の方針を打ち出せば、リモートワーク前提の多拠点生活は難しくなります。実際、一部の大手企業では2024年以降、週3日以上の出社を求める動きも見られます。

人口動態の変化も長期的な需要に影響します。多拠点生活の中心層である30〜50代人口は、2030年以降減少に転じる見込みです。ただし、定年退職後のシニア層による多拠点生活も増加傾向にあり、市場の年齢構成は徐々に変化していくでしょう。シニア層は若年層とは異なるニーズを持つため、ターゲット層に応じた物件選びが重要になります。

投資リスクと対策

多拠点生活者向け賃貸投資には、通常の賃貸投資とは異なる特有のリスクが存在します。これらを事前に理解し、適切な対策を講じることが成功の鍵となります。

最も大きなリスクは、需要の変動性です。多拠点生活というライフスタイルは、まだ歴史が浅く、社会情勢や働き方の変化によって需要が大きく変動する可能性があります。企業のリモートワーク方針の転換、経済不況による可処分所得の減少などが起これば、市場が急速に縮小するかもしれません。このリスクへの対策として、多拠点生活者だけでなく、通常の単身者や地元住民にも訴求できる汎用性の高い物件を選ぶことが重要です。立地や間取りが良ければ、需要層が変化しても対応できます。

短期契約が中心となることによる空室リスクも考慮が必要です。1ヶ月や3ヶ月単位の契約では、入退去の頻度が高くなり、空室期間が発生しやすくなります。また、入退去のたびにクリーニングや設備チェックが必要となり、管理コストも増加します。対策としては、複数の予約プラットフォームに登録して露出を増やす、リピーター向けの割引制度を設けて長期利用を促す、閑散期の家賃を下げて稼働率を維持するなどの工夫が有効です。

設備投資の回収リスクも見逃せません。多拠点生活者向け物件では、高速インターネット環境、ワークスペース、家具・家電などの初期投資が必要です。これらの設備は定期的なメンテナンスや更新も必要となり、通常の賃貸物件よりもランニングコストがかかります。投資判断の際は、これらのコストを含めた収支シミュレーションを行い、10年程度の期間で投資回収できるかを慎重に検討しましょう。

地域特性によるリスクも重要です。リゾート地や観光地では、季節による需要変動が大きく、年間を通じた安定収益の確保が難しい場合があります。また、自然災害リスクが高いエリアでは、台風や豪雪による物件損傷、アクセス遮断などのリスクも考慮が必要です。火災保険や地震保険への加入はもちろん、災害時の対応マニュアルを整備し、入居者への情報提供体制を構築しておくことが大切です。

競合の増加も今後のリスク要因です。多拠点生活向け賃貸市場の成長性が認識されるにつれ、新規参入者が増加し、競争が激化する可能性があります。特に人気エリアでは、供給過剰による家賃下落や稼働率低下のリスクがあります。差別化戦略として、独自のサービスや付加価値を提供することが重要です。例えば、地域の観光情報提供、コワーキングスペースの併設、地元コミュニティとの交流イベント開催などが考えられます。

成功する投資物件の選び方

多拠点生活者向け賃貸投資で成功するには、物件選びの段階で明確な戦略を持つことが不可欠です。ここでは、具体的な選定基準と評価方法を解説します。

立地選定では、「アクセス性」と「地域性」のバランスが重要です。都市部の拠点では、主要駅から徒歩10分以内、できれば5分以内の物件を選びましょう。多拠点生活者は頻繁に移動するため、駅近であることの価値は通常の賃貸以上に高くなります。地方拠点では、新幹線駅や高速道路インターチェンジから車で30分以内のエリアが理想的です。さらに、スーパーマーケット、コンビニ、病院などの生活インフラが半径2km以内に揃っていることも確認しましょう。

物件タイプの選択では、ターゲット層を明確にすることが先決です。単身のビジネスパーソンをターゲットとするなら、都市部の1K〜1LDK、35〜45㎡程度の物件が適しています。家族での利用を想定するなら、地方の2LDK〜3LDK、60〜80㎡程度の物件が良いでしょう。築年数は、設備の充実度と価格のバランスを考えると、築10〜20年程度の物件が投資効率が高い傾向にあります。新築や築浅物件は価格が高く利回りが低くなりがちですが、築古物件は設備更新コストがかさむリスクがあります。

収益性の評価では、表面利回りだけでなく実質利回りを重視しましょう。多拠点生活者向け物件では、通常の賃貸よりも管理コストが高くなる傾向があります。家具・家電のメンテナンス費用、頻繁な入退去に伴うクリーニング費用、インターネット回線の維持費用などを含めた実質利回りで5%以上を確保できる物件が望ましいです。また、空室率を保守的に見積もることも重要です。都市部で20%、地方で30%程度の空室率を想定し、それでも収支がプラスになる物件を選びましょう。

設備投資の優先順位を明確にすることも成功のポイントです。必須投資は、光回線の導入、エアコンの設置、基本的な家具・家電の配置です。これらがなければ多拠点生活者の選択肢に入りません。次に優先すべきは、ワークデスクとチェア、防音性の向上、収納スペースの充実です。一方、過度な設備投資は避けるべきです。高級家具や最新家電は入居者に喜ばれますが、投資回収期間が長くなり、収益性を圧迫します。

管理体制の構築も物件選びと同時に検討しましょう。遠隔地の物件を購入する場合、信頼できる管理会社の存在は必須です。多拠点生活者向け物件の管理実績がある会社を選び、短期契約への対応、24時間サポート体制、オンライン契約システムなどが整っているか確認しましょう。管理委託費用は家賃の5〜8%程度が相場ですが、サービス内容と費用のバランスを慎重に評価することが大切です。

まとめ

多拠点生活者向け賃貸市場は、働き方改革とライフスタイルの多様化を背景に、今後も成長が見込まれる有望な投資分野です。2026年現在、約180万人の実践者がおり、2030年には300万人を超えると予測されています。この市場の拡大は、不動産投資家にとって新たな収益機会をもたらしています。

成功の鍵は、多拠点生活者の具体的なニーズを理解することです。高速インターネット環境、ワークスペース、柔軟な契約形態、家具・家電付き物件といった要素が重視されます。また、都市部と地方では求められる物件特性が異なるため、エリアごとの戦略が必要です。都市部では駅近のコンパクト物件、地方では自然環境と利便性を兼ね備えた広めの物件が好まれます。

投資判断では、需要の変動性、空室リスク、設備投資の回収期間などのリスク要因を慎重に評価しましょう。通常の賃貸投資よりも管理コストが高くなる傾向があるため、実質利回りで5%以上を確保できる物件を選ぶことが重要です。また、多拠点生活者だけでなく、通常の賃貸需要にも対応できる汎用性の高い物件を選ぶことで、市場変化へのリスクヘッジができます。

多拠点生活という新しいライフスタイルは、まだ発展途上の市場です。だからこそ、早期に参入し、ノウハウを蓄積することで競争優位性を築けます。最新の市場動向を常にチェックし、入居者の声に耳を傾けながら、柔軟に戦略を調整していくことが長期的な成功につながります。データに基づいた冷静な分析と、新しい市場への挑戦意欲を持って、多拠点生活時代の賃貸投資に取り組んでいきましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 – 多拠点居住等の推進に関する調査研究 – https://www.mlit.go.jp/
  • 総務省 – テレワークの実施状況に関する調査 – https://www.soumu.go.jp/
  • 厚生労働省 – 働き方改革関連データ – https://www.mhlw.go.jp/
  • 不動産流通推進センター – 不動産市場動向調査 – https://www.retpc.jp/
  • 国立社会保障・人口問題研究所 – 日本の将来推計人口 – https://www.ipss.go.jp/
  • 内閣府 – 地方創生に関する施策 – https://www.cao.go.jp/
  • 総務省 – デジタル田園都市国家インフラ整備計画 – https://www.soumu.go.jp/

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