経営者の皆さんは、本業の収益を安定させながら、将来の資産形成についても考えていらっしゃるのではないでしょうか。マンション投資は、経営者特有の信用力や税制メリットを活かせる有力な選択肢です。しかし、いざ始めようとすると「何から手をつければいいのか」「本業との両立は可能なのか」と不安になる方も多いでしょう。この記事では、経営者がマンション投資を始める際の具体的な手順から、成功のポイント、注意すべきリスクまで、基礎から丁寧に解説します。読み終える頃には、自信を持って最初の一歩を踏み出せるようになるはずです。
経営者がマンション投資に向いている3つの理由

経営者は一般のサラリーマンと比べて、マンション投資において大きなアドバンテージを持っています。まず注目すべきは、金融機関からの信用力の高さです。安定した事業収入があり、決算書で財務状況を証明できる経営者は、融資審査において非常に有利な立場にあります。
実際、金融機関は経営者に対して一般のサラリーマンよりも好条件で融資を提供するケースが多く見られます。事業の実績が3年以上あり、黒字経営を続けている場合、物件価格の80〜90%まで融資を受けられることも珍しくありません。さらに、金利面でも優遇されやすく、0.5〜1.0%程度の低金利で借り入れできる可能性があります。
次に重要なのが、税制面でのメリットです。マンション投資で発生する減価償却費や諸経費は、個人の所得と損益通算できるため、所得税や住民税の節税効果が期待できます。特に所得が高い経営者ほど、この節税効果は大きくなります。例えば、年間の家賃収入が300万円、経費と減価償却費の合計が350万円の場合、50万円の赤字を他の所得から差し引くことができます。
さらに、経営者は事業運営の経験を投資にも活かせます。収支管理、リスク分析、長期的な戦略立案といったスキルは、マンション投資の成功に直結します。本業で培った経営感覚があれば、物件の収益性を冷静に判断し、感情に流されない投資判断ができるでしょう。
マンション投資を始める前に押さえておくべき基礎知識

マンション投資には、大きく分けて「区分マンション投資」と「一棟マンション投資」の2種類があります。区分マンション投資とは、マンションの一室を購入して賃貸に出す方法です。初期投資額が比較的少なく、都心の好立地物件にも手が届きやすいため、初心者に適しています。一方、一棟マンション投資は建物全体を購入する方法で、より大きな収益が見込めますが、初期投資額も数億円規模になることが一般的です。
初めてマンション投資に取り組む経営者には、区分マンション投資から始めることをおすすめします。2026年4月現在、東京23区の新築マンション平均価格は7,580万円となっていますが、中古の区分マンションであれば2,000万円〜4,000万円程度から始められます。まずは小規模で経験を積み、投資の感覚をつかんでから規模を拡大していく戦略が賢明です。
マンション投資の収益構造を理解することも重要です。収益は主に「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2つに分かれます。インカムゲインは毎月の家賃収入から得られる利益で、安定した収益源となります。一方、キャピタルゲインは物件を売却した際の売却益です。近年の不動産市場では、都心部の物件価格が上昇傾向にあるため、両方の収益を狙える可能性があります。
ただし、マンション投資には空室リスク、家賃下落リスク、修繕費用の発生など、さまざまなリスクも存在します。これらのリスクを正しく理解し、対策を講じることが成功への鍵となります。リスクを恐れすぎる必要はありませんが、楽観的すぎる見通しも禁物です。
ステップ1:投資目的と予算を明確にする
マンション投資を始める最初のステップは、投資の目的を明確にすることです。経営者がマンション投資を行う目的は人それぞれ異なります。老後の安定収入を確保したい、相続税対策として資産を組み替えたい、インフレヘッジとして実物資産を持ちたい、あるいは事業とは別の収入源を作りたいなど、目的によって最適な投資戦略は変わってきます。
目的が定まったら、次は予算設定です。自己資金としてどれくらい用意できるか、融資をどの程度受けるか、月々の返済額はいくらまで許容できるかを具体的に計算します。一般的には、物件価格の20〜30%を自己資金として用意することが理想的です。例えば、3,000万円の物件を購入する場合、600万円〜900万円の自己資金があると、融資条件が有利になります。
さらに、物件購入時には物件価格以外にも諸費用がかかります。不動産取得税、登記費用、仲介手数料、火災保険料などを合わせると、物件価格の7〜10%程度が必要です。3,000万円の物件なら、210万円〜300万円の諸費用を見込んでおきましょう。これらの費用も含めた総合的な資金計画を立てることが重要です。
キャッシュフローの試算も欠かせません。家賃収入から、ローン返済額、管理費、修繕積立金、固定資産税などを差し引いた手残りがプラスになるか、マイナスの場合はどの程度の持ち出しになるかを事前に把握します。特に新築物件の場合、当初は家賃が高めに設定できますが、経年とともに下落する可能性を考慮した保守的なシミュレーションが必要です。
ステップ2:物件選びの5つのポイント
物件選びは、マンション投資の成否を左右する最も重要なプロセスです。まず重視すべきは立地条件です。駅から徒歩10分以内、できれば5分以内の物件が理想的です。東京都心部であれば、山手線沿線や主要ターミナル駅へのアクセスが良い場所が安定した需要を見込めます。周辺環境も重要で、スーパーやコンビニ、病院などの生活利便施設が充実しているエリアは入居者に好まれます。
次に、物件の築年数と状態を確認します。新築物件は設備が新しく、当面の修繕費用が少ないメリットがありますが、価格が高く利回りは低めです。一方、築10〜20年の中古物件は価格が手頃で利回りが高い傾向にありますが、将来的な修繕費用を見込む必要があります。築年数だけでなく、実際の建物の状態、管理状況、修繕履歴なども詳しくチェックしましょう。
間取りと広さも慎重に選びます。単身者向けなら1K〜1LDK(25〜40㎡)、ファミリー向けなら2LDK〜3LDK(50〜70㎡)が一般的です。ターゲットとする入居者層を明確にし、そのニーズに合った物件を選ぶことが空室リスクを減らすコツです。都心部では単身者向け物件の需要が安定していますが、郊外ではファミリー向けの方が需要がある場合もあります。
利回りの計算も忘れてはいけません。表面利回りは「年間家賃収入÷物件価格×100」で計算しますが、より重要なのは実質利回りです。実質利回りは「(年間家賃収入−年間経費)÷(物件価格+購入時諸費用)×100」で算出します。都心の区分マンションの場合、実質利回り3〜5%程度が相場ですが、利回りだけでなく、資産価値の維持や将来の売却可能性も総合的に判断することが大切です。
最後に、管理体制を確認します。マンションの管理組合がしっかり機能しているか、修繕積立金は適切に積み立てられているか、管理会社の評判はどうかなど、物件の維持管理に関わる要素も投資判断の重要なポイントです。管理が行き届いていない物件は、将来的に大規模修繕で多額の費用が発生するリスクがあります。
ステップ3:融資を受けるための準備と交渉術
経営者がマンション投資で融資を受ける際は、事前の準備が成功の鍵を握ります。まず必要なのは、直近3期分の決算書です。金融機関は事業の安定性と収益性を重視するため、継続的に黒字を出している決算書が理想的です。一時的な赤字がある場合は、その理由を明確に説明できるよう準備しておきましょう。
個人の信用情報も審査の対象となります。過去にクレジットカードやローンの延滞がないか、他の借入状況はどうかなど、信用情報機関に登録されている情報が確認されます。不安がある場合は、事前に信用情報を開示請求して確認することをおすすめします。また、既存の借入がある場合は、その返済状況や残高も正確に把握しておく必要があります。
融資を申し込む金融機関の選択も重要です。都市銀行、地方銀行、信用金庫、ノンバンクなど、それぞれ特徴が異なります。都市銀行は金利が低い傾向にありますが、審査基準が厳しめです。地方銀行や信用金庫は、地域密着型で柔軟な対応をしてくれることがあります。複数の金融機関に相談し、条件を比較検討することが賢明です。
融資交渉では、事業計画書の提出が効果的です。物件の収支シミュレーション、返済計画、リスク対策などを具体的に示すことで、金融機関の信頼を得やすくなります。特に、空室率や家賃下落を想定した保守的なシミュレーションを提示すると、リスク管理能力の高さをアピールできます。また、自己資金比率が高いほど融資条件は有利になるため、可能な範囲で自己資金を増やす努力も検討しましょう。
金利交渉も忘れてはいけません。提示された金利が相場より高い場合は、他行の条件を引き合いに出して交渉する余地があります。0.1%の金利差でも、30年間では数十万円の差になるため、積極的に交渉する価値があります。ただし、金利だけでなく、繰上返済手数料の有無、団体信用生命保険の内容なども総合的に比較することが大切です。
ステップ4:購入後の管理体制を整える
物件を購入したら、次は管理体制の構築です。経営者は本業が忙しいため、マンション投資の管理をすべて自分で行うのは現実的ではありません。そこで重要になるのが、信頼できる管理会社の選定です。管理会社は入居者募集、家賃回収、クレーム対応、設備トラブルの対処など、日常的な管理業務を代行してくれます。
管理会社を選ぶ際は、管理手数料だけでなく、サービスの質を重視しましょう。一般的な管理手数料は家賃の5〜8%程度ですが、安さだけで選ぶと対応が遅かったり、入居者募集力が弱かったりすることがあります。実際に管理している物件の入居率、対応の迅速さ、オーナーへの報告体制などを確認することが重要です。
空室対策も事前に考えておく必要があります。どんなに良い物件でも、退去は必ず発生します。退去が決まったら、すぐに次の入居者を募集できるよう、管理会社と連携体制を整えておきましょう。また、定期的に物件の状態をチェックし、必要に応じて設備の更新やリフォームを行うことで、競争力を維持できます。
家賃設定も重要な管理業務の一つです。周辺相場を定期的に調査し、適切な家賃を設定することが空室期間を短縮するコツです。相場より高すぎると入居者が決まらず、安すぎると収益性が低下します。管理会社と相談しながら、市場動向に応じた柔軟な家賃設定を心がけましょう。
さらに、収支管理を徹底することも忘れてはいけません。毎月の家賃収入、管理費、修繕積立金、ローン返済額、固定資産税などを記録し、年間の収支を把握します。確定申告の際には、これらの記録が必要になるため、日頃から整理しておくことが大切です。会計ソフトやスプレッドシートを活用すれば、効率的に管理できます。
ステップ5:税務対策と確定申告の準備
マンション投資を行う経営者にとって、税務対策は収益性を大きく左右する重要な要素です。まず理解しておきたいのが、不動産所得の計算方法です。不動産所得は「家賃収入−必要経費」で計算され、この金額が他の所得と合算されて課税されます。必要経費には、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理会社への手数料、減価償却費などが含まれます。
減価償却は、マンション投資における最も重要な節税手段の一つです。建物部分の取得価額を、法定耐用年数に応じて毎年経費として計上できます。鉄筋コンクリート造のマンションの場合、法定耐用年数は47年です。例えば、建物価格が2,000万円の物件なら、年間約42万円を減価償却費として計上できます。この減価償却費は実際の支出を伴わない経費のため、キャッシュフローを改善しながら節税効果を得られます。
青色申告を選択することで、さらなる節税メリットが得られます。青色申告特別控除として最大65万円を所得から控除できるほか、赤字を3年間繰り越せる、家族への給与を経費にできるなどの特典があります。ただし、青色申告には複式簿記による記帳が必要なため、税理士に依頼することをおすすめします。
確定申告の準備は、日頃からの記録が重要です。家賃収入の入金記録、各種経費の領収書、固定資産税の納税通知書、管理会社からの報告書などを月ごとに整理しておきましょう。確定申告の時期になって慌てることがないよう、年間を通じて計画的に準備を進めることが大切です。
また、将来的な相続税対策としてもマンション投資は有効です。現金で相続するよりも、不動産として相続する方が評価額が下がるため、相続税の負担を軽減できます。特に賃貸中の物件は、さらに評価額が下がる仕組みになっています。ただし、相続税対策を主目的とする場合は、専門家に相談しながら総合的な対策を立てることをおすすめします。
経営者が陥りやすい失敗パターンと対策
マンション投資で成功するためには、よくある失敗パターンを知り、事前に対策を講じることが重要です。経営者が陥りやすい最も多い失敗は、本業の成功体験を過信してしまうことです。事業経営とマンション投資は似ている部分もありますが、不動産特有のリスクや市場動向を軽視すると、思わぬ損失を被る可能性があります。
新築物件への過度な投資も注意が必要です。新築プレミアムにより、購入直後から物件価値が下がるケースが多く見られます。新築時の家賃は高めに設定できますが、数年後には周辺相場まで下がることが一般的です。新築物件を選ぶ場合は、将来的な家賃下落を織り込んだ収支計画を立てることが不可欠です。
利回りだけを重視した物件選びも危険です。高利回り物件は、立地が悪い、築年数が古い、管理状態が悪いなど、何らかの理由があることが多いものです。表面利回りが10%を超えるような物件は、空室リスクや修繕費用のリスクが高い可能性があります。利回りと資産価値のバランスを考えた物件選びが重要です。
複数物件への急速な拡大も慎重に検討すべきです。最初の物件で成功すると、すぐに2件目、3件目と増やしたくなりますが、市場環境の変化や金利上昇リスクを考慮すると、段階的な拡大が賢明です。1件目の運用が安定し、ノウハウが蓄積されてから次の物件を検討しても遅くありません。
さらに、管理会社任せにしすぎることも問題です。管理を委託していても、オーナーとして定期的に物件の状態を確認し、収支をチェックすることが大切です。年に数回は実際に物件を訪れ、周辺環境の変化や建物の状態を自分の目で確認しましょう。こうした地道な努力が、長期的な投資成功につながります。
まとめ
経営者がマンション投資を始めるには、明確な目的設定と綿密な計画が不可欠です。経営者特有の信用力や税制メリットを活かしながら、立地条件の良い物件を選び、適切な融資を受けることが成功への第一歩となります。物件購入後は、信頼できる管理会社と連携し、定期的な収支管理と税務対策を行うことで、安定した収益を確保できます。
マンション投資は、本業とは異なる収入源を確保し、将来の資産形成に大きく貢献する可能性を秘めています。ただし、不動産市場特有のリスクを理解し、保守的な計画を立てることが重要です。焦らず、まずは1件の物件から始め、経験を積みながら徐々に規模を拡大していく戦略が賢明でしょう。
この記事で紹介した5つのステップを参考に、あなたも経営者としての強みを活かしたマンション投資を始めてみてはいかがでしょうか。最初は不安もあるかもしれませんが、適切な知識と準備があれば、マンション投資は経営者にとって有力な資産形成の手段となります。まずは信頼できる不動産会社や税理士に相談し、具体的な一歩を踏み出してみましょう。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産市場動向 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
- 不動産経済研究所 マンション市場動向 – https://www.fudousankeizai.co.jp/
- 国税庁 不動産所得の計算方法 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 金融庁 投資用不動産に関する注意喚起 – https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/
- 日本銀行 金融機関の貸出動向 – https://www.boj.or.jp/statistics/index.htm/
- 総務省統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
- 東京都 不動産取引の手引き – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/