不動産の税金

アフターコロナ時代の表面利回り戦略

コロナ禍で落ち込んだ賃貸需要は、リモートワーク定着と都市回帰の二極化を経て、2025年には予想以上の回復を見せています。それでも「表面利回り アフターコロナは本当に下がったのか」「今から参入しても遅いのでは」と疑問を抱く人は少なくありません。本記事では、最新データと現場感覚を交えつつ、表面利回りの基礎からアフターコロナ特有の着眼点までを丁寧に解説します。読み終えた頃には、自分の投資スタンスをアップデートし、次のアクションを具体的に描けるようになるでしょう。

表面利回りとキャッシュフローの基本

表面利回りとキャッシュフローの基本のイメージ

ポイントは、表面利回りが“入口の目安”に過ぎず、手残りを示すキャッシュフローとは明確に異なることです。

まず表面利回りとは、年間家賃収入を物件価格で割った単純な割合を指します。計算が容易なため広告にも多用されますが、管理費や固定資産税といったコストを加味していません。そのため、同じ利回りでも実質収益が大きく異なるケースが頻発します。

一方でキャッシュフローは、家賃から諸経費とローン返済を差し引いた後に残る現金の流れです。これは投資家の生活と将来計画を支える実質的な収益を示します。表面利回りが高くても、修繕積立金が膨らむマンションではキャッシュフローが赤字になる例も珍しくありません。

実は、金融機関もキャッシュフローを重視しています。審査の際には返済比率や空室リスクを厳しく検証し、表面利回りだけで融資可否を判断することはありません。つまり、初心者ほど両者の違いを理解し、表面利回りを入口として深掘りする姿勢が欠かせないのです。

アフターコロナで変わる賃貸需要の読み方

アフターコロナで変わる賃貸需要の読み方のイメージ

まず押さえておきたいのは、コロナ終息後もライフスタイルの多様化が続き、賃貸ニーズが一本調子で伸びているわけではない点です。

テレワークニーズが一段落した今、都心回帰の動きが顕在化しています。総務省の住民基本台帳によると、2024年度に東京23区へ転入した20〜39歳の若年単身層は前年より6%増加しました。彼らは駅徒歩5分以内のワンルームを好む傾向が強く、空室リスクを下げる要因になっています。

一方で、地方中核都市ではリモートワーク常態化によりファミリー層の定着が進みました。住宅金融支援機構の調査では、仙台市と福岡市の平均入居年数が2020年の5.8年から2024年には6.4年へ延びています。これにより家賃下落リスクが緩和され、安定利回りを確保しやすくなりました。

さらに外国人労働者の回復も見逃せません。出入国在留管理庁によれば、2025年6月時点の在留外国人数は前年同月比11%増です。とりわけ技能実習生向けのシェア型アパートは高稼働率を維持し、表面利回りが1ポイント以上押し上げられる事例も報告されています。

利回りを左右する物件タイプとエリア選定

実は、物件タイプごとにアフターコロナの影響度合いが異なります。東京23区の最新平均表面利回りは、日本不動産研究所のデータでワンルーム4.2%、ファミリー3.8%、アパート5.1%です。この数字だけで判断するとアパートが魅力的に映りますが、維持管理の手間や築年による修繕費の跳ね上がりを考慮する必要があります。

ワンルームマンションは設備更新費が抑えやすく、都心部では空室期間が短い特徴があります。さらに、家賃保証会社の普及により滞納リスクも縮小しました。つまり、低い利回りでも安定性が高い点が強みと言えます。

一方で木造アパートは土地値が残りやすく、建物減価償却による節税メリットが期待できます。ただし、築古の場合は同時期に複数の設備が故障しやすく、年間20万円以上の大規模修繕を前提にキャッシュフローを組む必要があります。また、サブリース契約の条件が厳格化しており、賃料改定条項を細かく確認しなければなりません。

郊外のファミリーマンションは価格が抑えられる反面、将来の人口減少リスクが大きい点に注意が要ります。自治体の都市計画や再開発情報を調べ、長期的な賃貸需要を見極める姿勢が求められます。こうした視点を持つと、数字だけでは見えない“裏の利回り”を把握できます。

2025年度の金融環境と利回り計算の落とし穴

ポイントは、金利環境が表面利回りの実質的な意味合いを大きく変えることです。日本銀行は2025年3月に長短金利操作のレンジを0.00〜0.25%へ引き上げましたが、住宅ローンの実行金利は依然として1%台前半で推移しています。これにより、借入比率を高めても月々の返済負担は抑えやすい状況が続いています。

しかし、金利が横ばいでも返済期間の短縮要請が強まっています。主要地銀では中古アパートローンの最長期間を35年から30年に短縮するケースが増えました。期間が短くなれば月々のキャッシュフローが圧迫され、結果として必要表面利回りは1ポイントほど上昇します。利回り計算時には、金融機関ごとの返済年数を織り込むことが欠かせません。

さらに固定資産税の負担増も見逃せません。総務省の公示地価は2023年から3年連続で上昇し、都心の商業地では累計6%超の増加となりました。土地評価額が上がれば税額も上がり、実質利回りを年間0.2〜0.3ポイント削る可能性があります。これを想定せずに投資判断を下すと、後からキャッシュフローが計画を下回る結果になりかねません。

最後に、サブリース家賃の下落条項や管理委託手数料の変動も要注意です。特に繁忙期と閑散期で手数料率を変える管理会社が増えており、年間コストが想定より10万円以上増える事例があります。数字を一つひとつ洗い直し、表面利回りだけに頼らない慎重な計算が求められます。

まとめ

ここまで、表面利回り アフターコロナを切り口に基礎知識から最新市場動向、金融環境の変化までを確認しました。表面利回りは便利な指標ですが、家賃動向や金利、税負担を加えた実質分析こそが投資成功の鍵となります。まずは気になる物件の収支シートを作り、空室率15%や金利1%上昇など複数シナリオで検証してみてください。そのプロセスを通じて、自分に合ったリスク許容度と投資基準が見えてくるはずです。次の一歩を確実に踏み出し、アフターコロナの市場を味方につけましょう。

参考文献・出典

  • 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
  • 総務省 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.stat.go.jp
  • 住宅金融支援機構 住生活総合調査 – https://www.jhf.go.jp
  • 出入国在留管理庁 在留外国人統計 – https://www.moj.go.jp
  • 日本銀行 金融政策決定会合公表資料 – https://www.boj.or.jp

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