物価がじわじわ上がる一方で給料の伸びが追いつかない――そんな状況に不安を抱く人は多いはずです。特に預金だけに頼ると実質的な資産価値が目減りするため、インフレ対策をどう組み立てるかが大きなテーマになります。本記事では不動産投資を軸に、インフレに強い資産形成の考え方と気になるデメリットを丁寧に整理します。読み終えるころには、自分に合う対策をイメージできるようになるでしょう。
インフレが家計に与える影響

重要なのは、インフレが「物価上昇=支出増」だけでなく「実質金利低下=借入メリット増」という二面性を持つ点です。総務省の消費者物価指数によると、2021年以降の上昇率は年2%前後で推移し、2025年も緩やかながら上向きと予測されています。つまり同じ給料でも買える量が減るため、現金中心の資産は実質価値が縮むわけです。
一方で、住宅ローンなどの固定金利で負った債務は、インフレが進むほど実質返済負担が軽くなる傾向にあります。資産と負債のバランスを見直せば、インフレを逆手に取ることも可能です。しかし生活費が直撃を受けるのは避けられず、家計のキャッシュフローが圧迫される点は看過できません。
また、国内外で利上げ局面に入ると変動金利のローンは返済額が増える恐れがあります。金利とインフレ率の差を示す実質金利がプラスに転じると、資産運用のハードルも上がります。したがって、単に物価上昇を恐れるより、その背後にある金利動向と家計構造の関係を把握することが大切です。
不動産投資が有効とされる理由

まず押さえておきたいのは、賃料収入と物件価格がインフレに連動しやすい点です。国土交通省の住宅市場動向調査では、都心部の中古マンション価格は2020年比で約15%上昇し、賃料も同期間に平均5%伸びています。これは建築コストの高騰と人口流入が重なった結果で、物価上昇局面での資産保全効果を示唆します。
さらに、不動産は金融資産と違い価格が急落しにくいという特徴があります。土地は供給が限られ、建物は実物として使用価値を持つからです。言い換えると、インフレ期にモノの価値が相対的に高まる論理が働きます。加えて、長期固定金利でローンを組めば実質返済負担が年々軽くなる可能性があります。
しかし、インフレ対策を目的に物件を選ぶ際は、人口動態と賃貸需要を冷静に分析する必要があります。特に2025年以降は高齢化が加速するため、ファミリー向けよりコンパクトな単身世帯向けの需要が伸びると予測されています。物件タイプと立地を誤ると、インフレ効果より空室リスクが上回る点に留意しましょう。
また、不動産は流動性が低く売却まで時間がかかります。短期でキャッシュ化したい場面では他の金融資産に劣るため、ポートフォリオ全体で現金比率を確保しておくことが安心につながります。
デメリットを理解しリスクを抑える方法
ポイントは、「デメリット インフレ対策」を両立させる具体的な手順を把握することです。まず空室リスクですが、賃貸需要の高いエリアでも将来の人口減少は避けられません。自治体の将来人口推計や大学・企業の移転計画を調べ、10年以上先も需要が続く場所に絞る姿勢が欠かせません。
次に金利上昇リスクがあります。2025年時点で長期金利は1%台後半ですが、日銀が金融正常化を進めると2%を超える可能性も指摘されています。固定金利と変動金利を組み合わせ、元本の30〜50%は固定で抑える「ハイブリッド返済」を採用すると、急激な支払い増を回避しやすくなります。
修繕費の膨張も無視できません。建物価格の約1〜2%を年間修繕積立として見積もり、さらにインフレ率分を上乗せする計画が現実的です。たとえば築10年のRCマンションを想定した場合、年間80万円の修繕予算に対し、インフレ率2%なら翌年は82万円を準備するイメージです。こうした保守的な試算はキャッシュフローの健全性を保つ鍵となります。
最後に、相続や税制変更リスクにも触れておきます。固定資産税評価額が見直されると保有コストが増えるため、市町村の評価替え時期を把握し、増税に耐えられる収支計画を立てましょう。税務署や自治体の相談窓口を早めに活用することで、制度変更への備えが強化できます。
2025年度の具体的インフレ対策と制度活用
実は、公的制度を組み合わせると個人でもインフレ防衛力を高めやすくなります。2025年度時点で有効な「住宅ローン減税」は、脱炭素性能を満たす新築・中古物件の控除率を最大0.7%、控除期間を13年間としています。一定の省エネ基準をクリアすれば、毎年の所得税還付により実質利回りが向上します。
また、賃貸住宅の省エネ改修を行う場合、国土交通省の「既存住宅省エネ改修補助金」が利用可能です。補助率は工事費の3分の1以内、上限200万円で、申請は2026年3月まで受け付けています。高騰する光熱費を抑えつつ賃料の競争力を高められるため、インフレ下でも長期運営がしやすくなります。
さらに、個人型確定拠出年金(iDeCo)は掛金が全額所得控除となり、投資信託でインフレ連動債やREIT(不動産投資信託)を選べば、実質的なインフレヘッジとなります。拠出限度額は月2.3万円(企業年金なしの会社員の場合)ですが、税引き前収入で運用できる点が強みです。
補助金や税制を使う際は募集枠や期限に注意が必要です。情報は公式サイトで随時更新されるため、毎年9月頃に翌年度予算案を確認し、スケジュールを逆算して計画を立てると取りこぼしを防げます。
まとめ
本記事では、物価上昇が家計に与える影響を整理し、不動産投資を活用したインフレ対策とそのデメリットを具体的に見てきました。インフレ環境では賃料と物件価格が上昇しやすく、長期固定ローンも有利に働く一方、空室や金利変動などのリスク管理が不可欠です。2025年度の住宅ローン減税や省エネ改修補助金を活用しつつ、修繕積立とハイブリッド金利で安全域を確保することが鍵になります。まずは家計のキャッシュフローを点検し、制度や市場動向を踏まえた長期計画を立て、一歩踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
 - 国土交通省 住宅市場動向調査 – https://www.mlit.go.jp
 - 日本銀行 経済・物価情勢の展望 – https://www.boj.or.jp
 - 財務省 税制改正資料 – https://www.mof.go.jp
 - 独立行政法人住宅金融支援機構 – https://www.jhf.go.jp