会社経営をされている方の中には、本業の収益を安定させながら、さらなる資産形成の方法を模索している方も多いのではないでしょうか。実は、経営者という立場だからこそ、アパート経営には大きなメリットがあります。本記事では、経営者がアパート経営を検討すべき理由を、節税効果から資産形成、リスク分散まで具体的に解説していきます。これから不動産投資を始めようと考えている経営者の方に、実践的な知識をお届けします。
経営者がアパート経営で得られる節税メリット

経営者にとって最も魅力的なのは、アパート経営による節税効果です。個人事業主や法人経営者は、一般のサラリーマンと比べて税負担が大きくなりがちですが、アパート経営を適切に活用することで、合法的に税負担を軽減できます。
まず押さえておきたいのは、不動産所得の損益通算という仕組みです。アパート経営で発生した赤字は、本業の所得と相殺することができます。特に初年度は物件取得費用や各種経費が多く発生するため、大きな節税効果が期待できます。たとえば、本業で年間2000万円の所得がある経営者が、アパート経営で初年度に500万円の赤字を計上した場合、課税所得は1500万円となり、所得税・住民税合わせて約200万円の節税が可能になります。
さらに、減価償却費を活用した節税も見逃せません。建物部分は法定耐用年数に応じて毎年減価償却できるため、実際の現金支出がなくても経費として計上できます。木造アパートの場合、法定耐用年数は22年ですので、建物価格が5000万円なら年間約227万円を経費計上できる計算です。この減価償却費は実際にお金が出ていかない「帳簿上の経費」であるため、キャッシュフローを圧迫せずに節税効果を得られます。
また、法人で不動産を所有する場合は、さらに多様な節税手法が使えます。役員社宅として活用すれば、家賃の一部を経費計上できますし、法人税率が個人の所得税率より低い場合は、法人所有のほうが有利になることもあります。経営者の所得水準や事業形態に応じて、個人所有と法人所有を使い分けることが重要です。
安定したキャッシュフローによる収入の多角化

経営者にとって、本業以外の安定収入源を持つことは大きな安心材料となります。アパート経営は、適切な物件選びと管理を行えば、長期的に安定したキャッシュフローを生み出す資産になります。
本業の収益は景気変動や業界動向に左右されやすいものです。一方、住居用不動産の需要は比較的安定しており、景気が悪化しても人々は住む場所を必要とします。国土交通省の住宅統計によると、2026年2月の全国アパート空室率は21.2%で、前年比0.3%改善しています。適切な立地と物件管理を行えば、安定した入居率を維持できる環境が整っています。
具体的な収益イメージを見てみましょう。たとえば、1億円で利回り7%のアパートを購入した場合、年間家賃収入は700万円です。ここから管理費、修繕費、固定資産税などの経費を差し引き、さらにローン返済を行っても、手元に残るキャッシュフローは年間100万円から200万円程度になることが一般的です。これは月額8万円から17万円の安定収入に相当します。
また、経営者は融資を受けやすいという大きなアドバンテージがあります。安定した本業収入と事業実績があれば、金融機関からの信用度が高く、有利な条件で融資を受けられる可能性が高まります。自己資金を最小限に抑えながら、レバレッジを効かせた投資ができるのは、経営者ならではの特権といえるでしょう。
相続税対策としてのアパート経営の有効性
経営者が将来を見据えて考えるべき重要な課題の一つが相続対策です。アパート経営は、相続税の負担を大幅に軽減できる有効な手段となります。
現金や株式をそのまま相続する場合、評価額は時価となります。しかし、不動産の場合は相続税評価額が時価よりも低く算定されるため、同じ資産価値でも税負担が軽くなります。特にアパートなどの賃貸用不動産は、さらに評価減の特例が適用されます。
具体的には、土地は貸家建付地として評価され、更地の評価額から約20%減額されます。建物は固定資産税評価額で評価されますが、これは建築費の50〜70%程度です。さらに賃貸中の建物は借家権割合30%が控除されるため、実質的には建築費の35〜49%程度の評価となります。つまり、1億円で建築したアパートが、相続税評価額では3500万円から4900万円程度になる計算です。
また、小規模宅地等の特例を活用すれば、一定の条件下で土地の評価額をさらに50%減額できます。たとえば、200平方メートルまでの賃貸用地であれば、評価額を半分にできるため、相続税の負担を大幅に軽減できます。
経営者の場合、事業承継と合わせて不動産の相続計画を立てることで、より効果的な資産承継が可能になります。生前贈与と組み合わせることで、段階的に資産を移転し、相続時の税負担を最小化する戦略も検討できます。
リスク分散による資産ポートフォリオの最適化
経営者は本業に多くの資産を投じているため、事業リスクに資産全体が左右されやすい状況にあります。アパート経営は、このリスクを分散し、資産ポートフォリオを最適化する有効な手段となります。
本業と不動産投資は、基本的に異なる市場で動いています。たとえば、製造業を営む経営者の場合、景気後退期には本業の収益が減少する可能性がありますが、住宅需要は比較的安定しているため、アパート経営からの収入は維持されやすいのです。このように、収入源を複数持つことで、一つの収入が減少しても全体の収入を安定させることができます。
また、不動産は実物資産であるため、インフレに強いという特性があります。物価が上昇すれば、家賃も上昇する傾向にあり、資産価値も維持されやすくなります。一方、現金や預金はインフレによって実質的な価値が目減りしてしまいます。経営者として長期的な資産保全を考えるなら、実物資産への投資は重要な選択肢となります。
さらに、アパート経営は比較的手離れの良い投資です。管理会社に委託すれば、日常的な管理業務はほとんど任せられるため、本業に集中しながら資産運用ができます。株式投資のように日々の値動きを気にする必要もなく、長期的な視点で安定した収益を得られるのは、多忙な経営者にとって大きなメリットです。
経営者の信用力を活かした有利な融資条件
経営者がアパート経営を始める際の大きなアドバンテージは、本業での実績と信用力を活かして有利な融資条件を引き出せることです。金融機関は融資審査において、借入者の返済能力を重視しますが、経営者は一般のサラリーマンと比べて高い評価を得やすい立場にあります。
まず、安定した事業収入があることは、金融機関にとって大きな安心材料となります。過去3年間の決算書が黒字で推移していれば、返済能力が高いと判断され、融資額や金利面で優遇される可能性が高まります。実際に、優良企業の経営者であれば、年収の10倍以上の融資を受けられるケースも珍しくありません。
また、法人で不動産を購入する場合、法人の信用力を活用できます。法人の財務状況が良好であれば、個人保証なしで融資を受けられることもあります。これにより、個人資産と事業資産を分離し、リスクを限定することが可能になります。
金利交渉においても、経営者は有利な立場にあります。複数の金融機関と取引実績があれば、競争原理を働かせて好条件を引き出せます。たとえば、メインバンクに他行の提示条件を示すことで、金利を0.2〜0.5%引き下げてもらえることもあります。30年ローンで1億円を借りる場合、金利が0.5%違えば総返済額は約800万円も変わってきます。
さらに、経営者は事業拡大の経験があるため、不動産投資においても戦略的な判断ができます。物件の収益性分析や市場調査など、本業で培ったスキルを活かせるのは大きな強みです。
法人化によるさらなるメリットの拡大
アパート経営を法人で行うことで、個人経営では得られない追加のメリットを享受できます。すでに法人を持っている経営者であれば、既存の法人を活用することも、不動産専用の法人を新設することも検討できます。
法人化の最大のメリットは、税率の違いです。個人の所得税は累進課税で最高税率55%(住民税含む)に達しますが、法人税の実効税率は約30%程度です。高所得の経営者であれば、法人で不動産を所有することで大幅な節税が可能になります。また、法人であれば赤字を最大10年間繰り越せるため、長期的な税務戦略が立てやすくなります。
経費計上の幅が広がることも見逃せません。法人であれば、役員報酬、退職金、生命保険料など、個人では認められない経費を計上できます。たとえば、将来の退職金として毎年一定額を積み立てることで、課税所得を抑えながら将来の資金を確保できます。
また、事業承継の面でも法人化は有効です。株式の贈与や譲渡を通じて、段階的に資産を次世代に移転できます。個人所有の不動産を相続する場合と比べて、より柔軟で税負担の少ない承継が可能になります。
ただし、法人化にはコストもかかります。設立費用、毎年の税理士費用、法人住民税の均等割など、年間数十万円の維持費が必要です。したがって、物件規模や収益性を考慮して、法人化のメリットがコストを上回るかを慎重に判断することが重要です。一般的には、年間の不動産所得が500万円を超える場合、法人化を検討する価値があるといわれています。
成功するアパート経営のための物件選びのポイント
経営者がアパート経営で成功するためには、適切な物件選びが不可欠です。本業での経営判断力を活かしながら、不動産投資特有のポイントを押さえることが重要になります。
立地選びは最も重要な要素です。人口が増加している、または維持されている地域を選ぶことが基本となります。駅から徒歩10分以内、周辺に商業施設や医療機関がある、治安が良いといった条件を満たす物件は、長期的に安定した入居率を維持できます。国土交通省のデータによると、駅徒歩10分以内の物件は、それ以上離れた物件と比べて空室率が約5%低いという調査結果もあります。
利回りだけで判断しないことも大切です。表面利回りが高い物件は魅力的に見えますが、築年数が古く修繕費がかさむ、立地が悪く空室リスクが高いといった問題を抱えていることがあります。実質利回り(経費を差し引いた後の利回り)を計算し、さらに将来の修繕費用や空室リスクも考慮した上で判断しましょう。
新築と中古の選択も重要なポイントです。新築は入居者が集まりやすく、当面の修繕費が少ないというメリットがありますが、価格が高く利回りは低めです。一方、中古物件は価格が抑えられ利回りが高い反面、修繕費用や空室リスクを慎重に見極める必要があります。経営者としての判断力を活かし、物件の状態を専門家と共に詳しく調査することが成功の鍵となります。
また、管理会社の選定も成功を左右します。入居者募集、家賃回収、クレーム対応など、日常的な管理業務を任せる管理会社は、アパート経営のパートナーです。実績、対応の質、管理費用のバランスを見て、信頼できる会社を選びましょう。
まとめ
経営者がアパート経営を始めることには、節税効果、安定収入の確保、相続対策、リスク分散など、多くのメリットがあります。特に、本業での信用力を活かした有利な融資条件や、法人化による税務上の優遇措置は、経営者ならではの大きなアドバンテージです。
ただし、成功するためには適切な物件選びと長期的な視点が不可欠です。立地、利回り、物件の状態を総合的に判断し、信頼できる管理会社と協力しながら運営することが重要になります。また、個人所有と法人所有のどちらが有利かは、所得水準や事業形態によって異なるため、税理士などの専門家に相談しながら最適な方法を選択しましょう。
アパート経営は、適切に運営すれば長期的に安定した収益をもたらす資産となります。本業で培った経営スキルを活かしながら、新たな収入源を確保し、より強固な資産基盤を築いていきましょう。まずは信頼できる不動産会社や税理士に相談し、自分に合った投資計画を立てることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2.html
- 国税庁 不動産所得の計算方法 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
- 国税庁 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 – https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm
- 国税庁 相続税の計算 – https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html
- 金融庁 不動産投資に関する留意事項 – https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/fudousan.html
- 一般社団法人 不動産流通経営協会 市場動向調査 – https://www.frk.or.jp/