不動産の税金

木造アパート空室対策|家賃を下げずに埋める方法

不動産価格が高止まりする一方で、全国のアパート空室率は依然として二割を超えています。特に築年数が進んだ木造アパートでは「募集をかけても内見が少ない」「家賃を下げても決まらない」といった悩みが後を絶ちません。

しかし、空室問題は家賃の値下げだけでは解決しません。本記事では、木造アパート経営における空室対策を市場分析・原因解明・リノベーション・運営術・支援制度の5つの視点から体系的に解説します。読み進めることで、一棟アパート経営を安定軌道に乗せるための具体的なヒントが得られるはずです。

木造アパートを取り巻く市場環境

空室対策の第一歩は、市場環境を正しく理解することです。国土交通省の住宅統計(2025年7月速報)によれば、全国のアパート空室率は21.2%で前年より0.3ポイント改善しました。ただし、都市部と郊外では状況が大きく異なります。

エリア 空室率 特徴
政令指定都市中心部 約17% 競争が激しいが需要も堅調
郊外ベッドタウン 25%超 人口減少の影響を受けやすい
地方都市 20〜25% エリアによって差が大きい

つまり、立地が同じでも競合物件の築年数や設備によって空室リスクは大きく変わります。木造アパートは築20年以上の物件が多く、更新需要を満たす投資が欠かせません。

一方で若年単身者の転居回数は増加傾向にあります。内閣府の「住生活総合調査」では、18〜34歳の約3割が3年以内の引越しを検討中という結果が出ました。移動しやすい層を取り込むには、柔軟な設備更新とオンライン対応が重要です。

木造アパートは間取り変更や部分リノベがしやすいという構造的メリットがあります。コンクリート造より低コストで市場ニーズに合わせた改修が可能なため、この強みを生かした戦略が空室対策の出発点となります。

空室が起こる本当の原因を探る

空室の原因は「家賃水準」だけとは限りません。実際には複数の要因が複合的に影響しています。

空室を生む3つの主要因

  • 情報量不足:ポータルサイト掲載写真が少ない物件は、クリック率が平均より25%低い(不動産テック協会2025年レポート)
  • 物件イメージのずれ:内見時の第一印象が成約率を左右し、特に玄関と水回りの清潔感が評価のポイントになる
  • 退去後の修繕遅れ:原状回復に時間がかかるほど機会損失が増える

さらに見落としがちなのが、更新時に他物件へ流れるケースです。更新料やインターネット使用料など、明細化されていない費用を理由に移転先を探す入居者が20%を超えるというデータもあります。

言い換えると、料金体系を透明にし、長く住むほど得をする仕組みを提示すれば、空室発生自体を抑えられるのです。木造アパートは小規模運営が多く、オーナーの判断で柔軟に条件を変更できる点が大きな強みになります。

実践的なリノベーション戦略

一棟アパートの空室対策リフォームで重要なのは、投資対効果の高い改修を選ぶことです。やみくもにお金をかけるのではなく、費用回収を意識した計画が求められます。

費用対効果の高い改修例

筆者が関わった築28年の木造アパートでは、以下の3点を実施しました。

改修内容 費用目安 効果
玄関扉のスマートロック化 約8万円 防犯性・利便性向上
照明のLED一体型交換 約5万円 室内の明るさ改善
アクセントクロス施工 約12万円 内見時の印象アップ

一戸あたり約25万円の改修費で家賃を月3,000円アップできた結果、年間収入増は36,000円、投資回収期間は約7年となりました。

水回り設備の刷新

水回り設備の改修は費用がかさみますが、空室期間を短縮する効果が大きいです。国交省「賃貸住宅市場調査」によれば、バス・トイレ別かつ独立洗面台がある物件は、ない物件より平均7.3日早く成約しています。

木造物件は床下配管が露出しているケースが多く、配管更新のハードルが低い点がメリットです。この特性を生かせば、将来の漏水リスクも同時に軽減できます。

共用部の改善

共用部の印象を変えることも有効な空室対策です。外壁塗装や宅配ボックス設置は、物件検索の一次選考で残る確率を高めます。

外壁には遮熱塗料を選ぶと夏場の室温を最大2度下げる効果があり、省エネ志向の入居者へのアピールにもなります。木造アパートの改修は、小ぶりな投資を積み重ねることで費用回収と付加価値向上を両立させることが可能です。

入居者維持につながる運営術

空室を減らす最大の近道は「退去を防ぐこと」です。新規入居者を獲得するコストより、既存入居者を維持するコストの方がはるかに低いためです。

レスポンス速度の改善

管理アプリを導入し、修理依頼を24時間受け付ける体制を整えた物件では、退去率が年平均2.1ポイント低下したというデータがあります(日本賃貸管理協会2025年調査)。

木造アパートはオーナーが自主管理する割合が高いものの、クラウド型の管理システムなら月数千円で導入可能です。初期投資を抑えながら入居者満足度を高められます。

定期的なコミュニケーション

入居者への定期的なアンケートを通じて、要望に優先順位を付けて改善することも効果的です。騒音トラブルやごみ出しルールは小さな問題に見えても、不満が蓄積すると退去動機になります。

第三者の管理会社を活用して客観的なルールを設ければ、オーナーと入居者双方の心理的負担が軽減されます。また、更新時に選択制の家電レンタルやインターネット無料サービスを提案すると、長期入居率の向上が期待できます。

2025年度に活用できる支援制度

アパート経営の空室対策では、公的支援を上手に組み合わせて初期負担を抑えることも重要です。2025年度に利用可能な主な制度を紹介します。

長期優良住宅化リフォーム推進事業

国土交通省が実施する本制度は、耐震補強や省エネ改修を行う賃貸住宅に最大250万円の補助を用意しています。木造アパートが対象となるケースが多く、外壁断熱や高効率給湯器の導入で補助率が引き上げられる仕組みです。

自治体の既存住宅改修補助

地方自治体独自の補助制度も見逃せません。例えば東京都は2025年度予算で、共同住宅の省エネ改修に対し戸当たり20万円を上限に助成しています。

自治体により名称や金額は異なりますが、国の補助と併用できる場合が多く、実質負担を半減できるケースもあります。

固定資産税の減額措置

認定長期優良住宅化した賃貸物件は、固定資産税が3年間半減される措置があります。この措置は2026年度末まで延長が決まっており、計画的なリフォームを検討する好機といえます。

支援制度 補助上限 ポイント
長期優良住宅化リフォーム推進事業 最大250万円 耐震・省エネ改修が対象
自治体の省エネ改修助成 戸当たり20万円程度 国の補助と併用可能な場合あり
固定資産税減額措置 3年間税額半減 2026年度末まで延長

まとめ

木造アパートの空室問題を解決するためのポイントを整理します。

  • 市場環境を把握し、エリア特性に合った戦略を立てる
  • 家賃を下げる前に、情報発信の質と物件イメージを見直す
  • 投資対効果の高いリノベーションを優先する
  • 退去を防ぐ運営で安定したキャッシュフローを確保する
  • 2025年度の補助制度を活用して実質負担を軽減する

アパート経営において空室対策は避けて通れない課題ですが、木造アパートには改修しやすいという構造的なメリットがあります。地道な改善の積み重ねが、一棟アパート経営の未来を大きく変えるはずです。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
  • 内閣府 住生活総合調査 2024年度版 – https://www.cao.go.jp
  • 不動産テック協会 賃貸Webマーケティングレポート2025 – https://www.re-tech.or.jp
  • 日本賃貸管理協会 2025年賃貸管理実態調査 – https://www.jpm.jp
  • 国土交通省 2025年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業概要 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
  • 東京都環境局 2025年度 省エネ改修助成案内 – https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp

関連記事

TOP
不動産売買なら青山地所