不動産投資を始めようとすると、「結局どのエリアの物件を買えばいいのか」「細かい分析は難しそう」と戸惑う人が多いものです。私も相談を受けるたびに、最初の壁は情報量の多さだと実感します。そこで本記事では、「不動産投資 物件選び どこで シンプル」という視点に絞り、初心者でも実践しやすい判断軸を整理します。読み終えたとき、自分に合ったエリアを短時間で絞り込めるようになるはずです。
物件選びで最初に押さえる立地の基本

重要なのは、立地を「需要の強さ」と「供給の少なさ」の両面から評価することです。具体的には駅距離、生活利便性、人口動態の三点が出発点になります。駅徒歩10分圏内は家賃が安定しやすく、総務省「住民基本台帳人口移動報告」でも都心部への単身世帯流入が続いています。ただし都心は価格が高いので、利回りとの兼ね合いが欠かせません。
次に生活利便性ですが、スーパーマーケットや病院の有無は現地調査で確認しましょう。近年はオンライン地図で簡単に調べられますが、自分の足で昼と夜の雰囲気を確かめることで入居者目線が得られます。また、国土交通省の都市計画図を閲覧すると、将来の再開発計画がわかりやすく、資産価値の見通しを立てやすくなります。
人口動態は市区町村単位より、最寄り駅の乗降客数を見ると実感がつかめます。鉄道会社の開示資料では、2025年も東京23区内の多くの駅で微増傾向が続いています。一方、郊外でも大学新設や物流拠点の誘致で人口が底堅い地域も存在します。数字だけで白黒つけず、物件周辺の雇用環境まで含めて判断することがポイントです。
地域データの読み方と最新トレンド

まず押さえておきたいのは、データは単体ではなく組み合わせて使うという姿勢です。国交省「地価公示」は土地価格の推移を示しますが、空室率や賃料動向は反映されません。そこで不動産流通推進センターの「不動産価格指数」と、民間ポータルの平均掲載賃料を合わせると、市場の温度感が具体的に見えてきます。
さらに、2025年9月時点で注目を集めるのが「二極化」の進行です。都心5区と駅徒歩15分以上の郊外で、賃料成長率に最大3%の差が開いています。一方、地方政令市の中心部ではテレワーク普及に伴う移住ニーズが増え、空室率が改善しています。言い換えると、単に都心か地方かではなく、駅近か中心市街地かで投資判断が分かれる時代になったのです。
また、短期的な数字に振り回されないためには、総務省統計局の将来人口推計を三つのシナリオでチェックすると効果的です。高位・中位・低位のうち、私は中位と低位の間を想定し、悲観的条件でもキャッシュフローが黒字になるかを試算します。これがシンプルながら再現性の高い方法です。
シンプルなキャッシュフロー計算術
ポイントは、家賃収入から費用を引いただけの「表面利回り」に頼らないことです。まず家賃収入には空室率を10%程度見込んでおきます。次に金融機関への返済、管理費、修繕積立、固定資産税を差し引き、年間手残り額を算出します。この手残り額が自己資金の7〜8%を超えれば、初心者にも扱いやすい水準と言えます。
たとえば購入価格3,000万円、家賃収入年間240万円、ローン金利1.5%・35年返済と仮定します。空室率10%で家賃216万円、返済額は約107万円、諸費用40万円を引くと、年間手残りは約69万円です。自己資金500万円なら利回りは約13.8%で、数字上は合格ラインに届きます。実は、この「手残り÷自己資金」という一指標だけでも、物件をふるいにかける際は十分に役立ちます。
さらに、2025年度税制では減価償却の早期化が維持されており、木造アパートなら22年、鉄骨造なら34年で費用計上できます。節税効果を加味すれば、実質利回りはもう1〜2%上乗せされるケースが多いです。ただし税金を先送りしているだけだと理解し、売却時の譲渡所得税まで見通しておくことが大切です。
2025年度の融資・税制を踏まえた戦略
まず押さえておきたいのは、金融機関の融資姿勢が「物件の収益性」と「投資家の属性」の両方を厳しく見る方向に変わっている点です。日本政策金融公庫では自己資金1割以上が原則ですが、収益計算が明瞭な物件に対しては2%台の固定金利が出ています。地方銀行の中には、耐震性チェック済みの築古RC物件へ積極融資する動きもあり、物件選びと銀行選びはセットで考える必要があります。
税制面では、2025年度も「住宅性能向上計画認定住宅」の取得費用に対し、不動産取得税の軽減措置が続きます。期間は2026年3月31日までと発表されているため、これから新築区分を検討する人には追い風です。一方で既存住宅の長期譲渡所得の税率優遇は据え置きとなり、保有期間が5年を超える計画を立てると売却益に対する税負担を抑えられます。
融資と税制を組み合わせると、自己資金を抑えつつキャッシュフローを確保し、5〜8年後の出口で税率を下げるルートが現実的です。つまり、物件選びは購入時の数字だけでなく、融資条件と税制が変わる出口時点のシミュレーションまで含めて行うことで、リスクを最小化できます。
実例で学ぶ失敗しない選択プロセス
実は、成功事例だけでなく失敗事例を研究すると判断力が磨かれます。たとえば私がサポートした30代会社員Aさんは、都内駅徒歩18分の築浅マンションを検討していました。周辺駅の乗降客数は横ばいでしたが、入居者ターゲットが学生なのに最寄り大学までバス便しかなく、将来の空室リスクが高いと判断し購入を見送りました。
代わりに選んだのは、同価格帯で駅徒歩7分の築15年物件です。築年数は古いものの、周囲にスーパーと保育園があり、ファミリー層の需要が安定していました。購入後1年で入居者が入れ替わりましたが、退去期間はわずか20日で済み、家賃も据え置きできています。このように、需要の質を読み解くことで、築浅より築古の方が安全な場合もあるのです。
失敗事例では、地方都市で利回り重視のRCマンションを購入したBさんが、想定より空室が長期化しキャッシュフローが赤字になりました。原因は鉄道廃線計画が持ち上がり、移動手段が車に限定されたことです。データ上の人口減少率は緩やかでも、交通インフラの変化は賃貸市場へ直結します。現地の自治体広報を確認するだけで避けられたリスクでした。
この二つの事例から分かるのは、最終的な成否を決めるのは「数字の裏にある生活者の動き」をどこまで具体的に想像できるかという点です。数字をシンプルに整理しつつ、生活導線や行政計画を重ね合わせることで、初心者でもプロに近い洞察が得られます。
まとめ
本記事では「不動産投資 物件選び どこで シンプル」という疑問を、立地選定、データ活用、キャッシュフロー計算、2025年度の融資・税制、実例の五つの観点から整理しました。要するに、需要と供給をバランス良く見る姿勢さえ身につければ、複雑に見える不動産投資も驚くほど分かりやすくなります。まずは気になるエリアを一つ決め、今回紹介した指標で手残り額を試算してみてください。行動を起こすことで、数字と現場感覚が結びつき、次の一歩が具体的に見えてくるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 地価公示・地価調査 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告 – https://www.stat.go.jp
- 不動産流通推進センター 不動産価格指数 – https://www.retpc.jp
- 日本政策金融公庫 融資制度のご案内(2025年度) – https://www.jfc.go.jp
- 東京都都市整備局 都市計画情報 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp