北海道でのアパート経営に興味はあるものの、「人口減少が進む地方で本当に借り手は付くのか」「雪国特有の修繕費が心配」など、不安を抱える人は多いはずです。しかし、実はエリア選定や資金計画を工夫すれば、北海道ならではの強みを生かした安定経営が可能です。本記事では、最新データと2025年度の制度を踏まえつつ、立地戦略から融資のポイント、雪害対策まで丁寧に解説します。最後まで読めば、北海道でアパート経営を始める具体的な手順と注意点がつかめるはずです。
北海道でアパート経営が注目される理由

まず押さえておきたいのは、北海道が持つ独自の市場環境です。観光需要とU・Iターン人気の高まりにより、札幌市を中心に賃貸ニーズが底堅く推移しています。国土交通省の住宅統計によると、2025年7月時点の全国空室率は21.2%ですが、札幌市内の主要エリアは18%前後にとどまり、中央値を下回っています。
一方で、地価は東京圏よりも抑えられているため、同じ予算でも広い土地と部屋数を確保できる点が魅力です。表面利回りは新築でも6〜7%台、中古なら8%を超える事例も珍しくありません。つまり、購入価格と家賃水準のバランスを取りやすいことが、投資家から注目される大きな要因です。
さらに、北海道は自治体が移住・定住を促進しており、単身者向けだけでなくファミリー層向けの住宅需要も一定数存在します。賃貸ニーズが多様化していることで、築古物件をリノベーションして差別化する戦略が有効に働きます。経営の余地がまだ大きい市場といえるでしょう。
立地選びとエリア別の需要動向

ポイントは、同じ北海道でもエリアごとに需要が大きく違うことです。札幌市中心部は地下鉄沿線の駅近物件が依然として強く、家賃設定も強気にできます。ただし仕入れ価格が上昇傾向にあるため、利回り低下に注意が必要です。
一方、帯広・旭川・函館といった地方中核都市では、大学や市立病院の近くに単身者向け需要が集中しています。家賃は札幌より下がりますが、土地価格がさらに安いため、表面利回りは7%台を確保しやすいのが特徴です。人口流出リスクを抑えるには、雇用の安定したエリア、たとえば工業団地近辺も選択肢になります。
郊外やリゾート地では、短期滞在やワーケーションを想定した家具付き賃貸が伸びています。ニセコや富良野では国際的な観光需要が盤石で、平均稼働率が70%を超えるケースも確認されています。ただし観光客依存型はシーズン変動が大きいので、複数年の稼働率を必ずシミュレーションしてください。
立地を選ぶ際は、札幌市内ならば地下鉄南北線・東西線から徒歩10分圏、旭川ならJR旭川駅から車で10分以内というように、交通利便性を数値化して比較すると判断しやすくなります。
収支計画と融資事情(2025年版)
重要なのは、北海道特有の維持費を織り込んだ収支計画です。雪害対策として毎年の除雪費用が1戸あたり平均2〜3万円、新築木造アパートでも10年目以降は外壁の凍害補修費が発生します。これらを見落とすと、表面利回りだけでは黒字でも、実質利回りが下がる原因になります。
融資面では、地方銀行や信金がエリア密着型で前向きです。2025年9月現在、北海道銀行の投資用アパートローン固定金利は1.8%台から、北洋銀行は変動で1.5%台が目安です。金融機関は除雪費用を計画に組み込んでいるかを厳しくチェックするため、見積もりを添付して審査に臨むと評価が上がります。
自己資金は物件価格の20〜30%を推奨しますが、札幌圏の築古物件なら15%程度の持ち出しでも融資が通った事例があります。返済比率を年収の35%以内に抑えることが安全な目安です。また、金利上昇リスクを考え、固定・変動のミックスローンを検討する投資家が増えています。
キャッシュフローを保守的に見るためには、空室率を想定20%、金利上昇2%、修繕費を家賃収入の15%といった厳しめ条件で試算します。このシナリオでも手残りが黒字なら、長期的に安定した経営が見込めるでしょう。
運営で気を付けたい空室対策とリノベーション
まず押さえておきたいのは、入居者のニーズが年々細分化している点です。札幌圏ではWi-Fi無料と宅配ボックスが標準装備になりつつあり、この二つがないだけで内見数が3割近く減るというデータもあります。また、道内はペット飼育可物件がまだ少なく、差別化要素として有効です。
築20年以上の物件を購入する場合、設備更新と同時に断熱性能を高めるリフォームを行うと運営コストを圧縮できます。特に窓サッシを複層ガラスに変更すると暖房費が10%前後下がり、入居者満足度も向上します。家賃を月2,000円上げても退去率が上がらなかった実例もあります。
空室対策としては、エリアの仲介会社と定期的に情報交換し、インターネット広告の掲載順位を毎週チェックすることが欠かせません。入居申込みから契約までのフローをオンライン化すると、遠方投資家でもレスポンスが早まり成約率が上がります。
さらに、長期入居者向けのリテンション施策として、更新時に室内クリーニングを無料提供する方法があります。更新率が10ポイント改善した事例があり、結果的に原状回復費の削減にもつながるため一石二鳥です。
税制・補助制度の基礎知識(2025年度)
実は、2025年度も適用できる税制優遇が複数あります。新築アパートであれば、不動産取得税の軽減措置が土地・建物ともに継続中です。固定資産税についても新築後3年間は2分の1、建物延べ床面積120㎡までの住宅用地は評価額の6分の1になる特例が存続しています。これらは申告しないと適用されないため、取得後早めに手続きを行いましょう。
また、一定の省エネ基準を満たす賃貸住宅には、2025年度の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」が利用できます。補助率は工事費の3分の1、上限100万円で、断熱改修やバリアフリー改修が対象です。雪国での断熱改修は入居率向上にも直結するため、活用する価値が高い制度です。
所得税面では、減価償却費を活用して家賃収入と給与所得を損益通算できる点が魅力です。ただし、2025年の税制改正で築年数が古い木造住宅の耐用年数判定が厳格化されています。購入前に構造と築年数を必ず確認し、期待した節税効果が得られるか税理士にシミュレーションを依頼すると安心です。
最後に、賃貸住宅管理業法の届け出義務が2025年4月に一部改正され、管理戸数200戸未満のオーナーでも一定の管理業務を外部委託する場合は届出が必要になりました。罰則も強化されたため、委託契約書と管理報告の保存を徹底してください。
まとめ
北海道でのアパート経営は、地価の割安感と多様な賃貸ニーズが相まって、今も堅実な投資先として機能しています。ポイントは、交通利便性を数値で比較して立地を選び、雪害対策と断熱改修を含む収支計画を立てることです。さらに、2025年度も継続する税制優遇や省エネ補助金を使えば、実質利回りを押し上げられます。この記事を参考に、まずは希望エリアの家賃相場と除雪費用を調べ、融資相談へ一歩踏み出してみてください。リスクを管理しながら地域の需要に応えることで、長期安定経営への道が開けるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025年版 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 住宅・土地統計調査2023 – https://www.stat.go.jp
- 北海道庁 移住定住ポータル2025 – https://www.pref.hokkaido.lg.jp
- 北海道銀行 金利情報(2025年9月) – https://www.hokkaidobank.co.jp
- 財務省 税制改正の概要2025 – https://www.mof.go.jp
- 日本銀行 主要銀行貸出動向2025年8月 – https://www.boj.or.jp