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アパート経営 北海道で後悔しない立地選定のコツ

北海道でアパート経営を始めたいものの、「人口減が進む地方で本当に入居は埋まるのか」「寒冷地特有のコストが心配」と感じる方は多いはずです。筆者も相談を受けるたびに、立地選定こそ成果を左右する最大の要因だと痛感します。本記事では、最新データと現場経験をもとに、北海道のエリア特性や融資環境を踏まえた具体的な判断軸を提示します。読了後には、自分に合ったエリアを絞り込み、投資計画を組み立てられる状態を目指します。

北海道市場を数字で捉える

北海道市場を数字で捉えるのイメージ

まず押さえておきたいのは、北海道全体の空室率と人口動態です。国土交通省住宅統計によると、2025年7月の全国アパート空室率は21.2%で前年より0.3ポイント改善しました。一方、北海道住宅統計室の同月データでは道内平均が24.9%と全国よりやや高く、エリア間格差も大きいと報告されています。つまり、物件取得前に市区町村レベルまで掘り下げて需給を確認しなければなりません。

重要なのは、人口が減少していても世帯数が維持または増加しているエリアがある点です。札幌市は総人口が微減傾向でも単身世帯の増加で賃貸ニーズは底堅く、空室率も18%台にとどまります。逆に道北の一部地域では世帯数も減り続け、築浅物件でも空室期間が長期化しやすい状況です。エリア平均だけを鵜呑みにするとリスクを見誤るため、自治体が公表する世帯構成データまで必ず確認しましょう。

また、北海道の新設住宅着工戸数は2024年度比で2.3%減少しましたが、札幌市内の賃貸着工は横ばいでした。供給が絞られる地方中核都市では、築古物件のリノベーションが入居者獲得の鍵になります。投資規模や戦略に応じて、新築か中古か、リフォーム費用をどう配分するかを判断すると良いでしょう。

人口と賃貸需要をエリア別に読み解く

人口と賃貸需要をエリア別に読み解くのイメージ

ポイントは、人口動態だけでなく就業先と学生数の動きまで把握することです。札幌圏はIT企業の拠点集約が進み、20〜30代の流入が続いています。北海道大学や各専門学校への通学需要も根強く、地下鉄東豊線沿線のワンルームは平均入居期間が4.2年と全国平均より長い傾向にあります。

一方で、旭川市や函館市の中心部は医療・介護産業が地元就業を支え、高齢単身者向け物件のニーズが増加中です。家賃よりもバリアフリーや見守りサービスが選択基準になるため、ファミリータイプよりエレベーター付き1LDKの方が稼働率を高めやすいと言えます。

郊外や道東エリアでは企業社宅の縮小が影響し、複数戸まとめて借り上げる需要が減少しました。しかし、物流拠点周辺では外国人技能実習生向け住戸の需要が点在しています。行政が公表する産業別雇用者数を確認し、賃貸ターゲットの属性を具体化することで空室リスクを最小化できます。

交通インフラと生活利便性の見極め方

実は、北海道の立地評価は徒歩圏だけでなく冬季の交通事情を加味する必要があります。積雪期にはバス停から建物までの除雪状況が入居決定に直結するため、敷地内にロードヒーティング(融雪設備)があるかを必ずチェックしましょう。

また、JRや地下鉄の駅距離だけでなく、終電時刻と本数も重要です。札幌市営地下鉄東西線は終電が23時台後半ですが、近郊JR線では22時台に終わる区間もあります。夜勤シフトの多い医療・介護従事者向け物件を運営するなら、深夜帯でも帰宅しやすい路線沿いが望ましいでしょう。

さらに、生活利便施設までの距離は徒歩“10分圏内”が全国的な基準ですが、北海道では気温や路面状況を考慮し“徒歩7分以内”が好まれます。コンビニ・スーパー・ドラッグストアの配置を地図上で可視化し、冬の移動ストレスを軽減できる立地かを判断すると入居者満足度が上がります。

北海道特有の気候と設備コストを織り込む

重要なのは、寒冷地仕様の設備投資をあらかじめ収支計画に組み込むことです。具体的には、断熱性能を示すUA値(外皮平均熱貫流率)0.46以下を目安にすると、灯油・電気代の差が月額2,000円程度削減できます。入居者にとっては年間2万円以上の光熱費節約になり、募集広告での差別化に直結します。

暖房方式は都市ガスFF式より灯油ボイラーの方が燃料単価が安い反面、メンテナンス頻度が高くなります。長期保有を前提とするなら、イニシャルコストが高くても都市ガス床暖房を採用するほうが減価償却後のキャッシュフローが安定しやすいです。

排雪費やロードヒーティングの光熱費は年間10〜15万円かかるケースが多く、固定費として見落とすと赤字経営に陥ります。管理会社に見積もりを依頼し、想定利回りから1〜1.5ポイント控除したネット利回りで判断するのが安全です。

2025年度の融資環境と支援策

まず、金融機関の姿勢ですが、2025年度は日銀のマイナス金利政策が段階的に解除される一方、地域金融機関は賃貸住宅ローンの取り扱いを継続しています。道内の地銀2行では、自己資金20%投入を条件に金利1.3〜1.6%(固定5年)で貸付けが可能です。借入期間も最長35年まで選択でき、キャッシュフローを確保しやすい状況といえます。

さらに、2025年度に利用可能な「既存住宅省エネ改修補助金」は、外壁断熱や高断熱窓への改修費の1/3(上限120万円)が支給されます。工事完了後10年間は家賃値上げを抑制する要件がありますが、リフォーム費用を抑えつつ競争力を高められるメリットが大きいです。

ほかにも、札幌市の「中小企業省エネ設備導入支援補助金」が賃貸オーナーにも開放され、LED照明や高効率給湯器の導入費用の1/5を補助しています(2025年12月申請締切)。期限付きの制度は早期に予算枠が埋まるため、物件取得を決めた段階で速やかに申請準備を始めることが成功の鍵になります。

まとめ

結論として、アパート経営 北海道 立地選定で失敗しないためには、エリアごとの人口動態と就業構造、冬季の交通・気候リスク、そして寒冷地特有の設備コストを総合的に読み解く必要があります。最新データを活用し、補助金や低金利融資を組み合わせれば、道内でも安定したキャッシュフローを実現できます。まずは気になる市区町村の世帯数推移を確認し、現地視察で生活導線と除雪状況をチェックするところから一歩を踏み出しましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅局住宅政策統計 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/
  • 北海道住宅統計室 空室率調査2025 – https://www.pref.hokkaido.lg.jp/
  • 札幌市統計ポータル 世帯構成データ – https://www.city.sapporo.jp/
  • 総務省 人口推計2025年版 – https://www.stat.go.jp/
  • 日本政策金融公庫 融資情報2025年度 – https://www.jfc.go.jp/
  • 経済産業省 省エネ補助金ポータル – https://www.enecho.meti.go.jp/

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