不動産融資

未経験から始める収益物件の探し方ガイド

収益物件を買って家賃収入を得たいものの、「未経験の自分に探し方が分かるのだろうか」と感じる人は少なくありません。情報が多すぎて何から始めればよいのか迷うのも当然です。本記事では、エリア選定から数字のチェックポイントまで、筆者が15年間で培った手順を初心者向けに整理しました。読み終わるころには、ネット情報に振り回されず、自分の判断軸を持って物件を絞り込めるようになります。

初めてでも失敗しない物件検索の流れ

初めてでも失敗しない物件検索の流れのイメージ

まず押さえておきたいのは、探し方を「順番」で考えることです。いきなりポータルサイトの写真を眺めても、判断基準がなければ時間だけが過ぎてしまいます。そこで私は①投資目的の言語化、②資金計画、③エリア候補の絞り込み、④物件選定、という四段階で整理するよう勧めています。

最初に投資目的を具体的に書き出すと、利回りだけでなく空室リスクや売却時期の目安まで可視化できます。たとえば「月3万円のプラス収支を5年間続ける」と決めれば、自己資金やローン年数が自ずと決まります。また、目的が明確になるほど家族や金融機関との交渉もスムーズになる点も見逃せません。

次に資金計画ですが、自己資金を2割以上用意するとローン審査が通りやすく、金利も優遇されやすい傾向があります。日本政策金融公庫の2025年度平均金利は1.5%前後ですので、自己資金10%と20%では総返済額に約200万円の差が生じるケースもあります。数字で実感すると、貯蓄ペースを上げる動機づけにもなります。

このように、目的と資金を先に固めることで、物件検索は「条件に合うかどうかの確認作業」へと変わります。未経験者でも焦らず、段階を踏むことで失敗を避けやすくなるのです。

エリア分析は人口動態と賃料相場が鍵

エリア分析は人口動態と賃料相場が鍵のイメージ

重要なのは、エリア選定を感覚ではなくデータで行うことです。総務省「住民基本台帳人口移動報告」では、2024年から2025年にかけて20代単身世帯が増えた自治体が首都圏で18、市内地下鉄沿線が7と示されています。つまり若年層の流入が続く地域ほど、今後も安定した賃貸需要が期待できるわけです。

ただし人口が増えていても、賃料が下落しては収益が伸びません。そこで国土交通省「住宅市場動向調査」の平均賃料指数を参照し、過去3年間で5%以上下落していないか確認します。指数が横ばいか微増のエリアは、賃料改定の際も家主が優位に立ちやすいといえます。

一方で、郊外でも大学や工業団地が新設される地域は例外的に需要が高まることがあります。たとえば愛知県刈谷市は2025年度の企業投資計画が前年比8%増と公表されており、社宅不足が懸念されています。人口動態と産業動向を掛け合わせることで、表面的な賃料相場だけでは見えない成長余地を把握できます。

最終的には、自分が管理しやすい距離かどうかも考慮が必要です。管理会社に丸投げする場合でも、年1回は現地を確認した方がトラブルを未然に防ぎやすくなります。エリア分析は数字→現地確認→生活動線の確認、という三層で行うと精度が上がります。

物件情報の入手先と信頼度の見極め方

ポイントは、情報源を複数持ち「鮮度」と「裏付け」をチェックすることです。ポータルサイトは物件数が多く便利ですが、掲載までに数日遅れるため、競争力のある物件は仲介会社の顧客リストで先に成約するケースが少なくありません。したがって未経験者でも、地元に強い仲介会社に早めに登録し、条件を伝えておくと情報が流れてきやすくなります。

さらに、指定流通機構のデータベース「レインズマーケットインフォメーション」は成約事例を無料で確認できる貴重な公的情報です。過去6か月の取引価格を確認し、現在の売り出し価格が割高かどうかを判断できます。数字をもとに交渉できるため、不当な価格で購入するリスクを減らせます。

信頼度を測るもう一つの指標が「登記情報」です。法務局で取得できる全部事項証明書には、所有者の担保設定や差押えの有無が記載されています。抵当権が多すぎる物件は、売主の資金繰りが厳しく追加費用が発生する可能性があるため要注意です。

以上のように、サイト、仲介会社、レインズ、登記と四つのデータをクロスチェックすると、情報の偏りが減り、未経験者でも安心して意思決定できるようになります。

数字で見抜くキャッシュフローの安全ライン

実は、キャッシュフローを確認する際に最も差がつくのは「空室率」と「修繕積立」の設定です。国土交通省「賃貸住宅市場景況調査」によると、2025年時点の平均空室率は全国で18%ですが、首都圏の築10年以内は11%、地方築25年超は28%とばらつきがあります。そこで、物件の築年数と立地を踏まえ、空室率を平均値より5%高く設定してシミュレーションするのが安全ラインといえます。

また、修繕費は家賃収入の10%を毎月積み立てると、屋上防水や外壁改修など大規模工事にも対応できます。例えば家賃収入が月50万円なら、5万円を別口座に移すだけで年間60万円が確保できます。これを怠ると、突然の修繕でキャッシュフローが一気にマイナスへ転落しかねません。

ローン金利については、2025年度の主要地銀で変動1.0〜1.3%、固定1.6〜2.0%が目安です。返済比率は家賃収入の35%以内に抑えると、空室が長期化しても持ちこたえやすくなります。こうした数値基準を先に設定しておくと、物件を見た瞬間に「買えるかどうか」を即断でき、チャンスを逃しにくくなります。

最後に、収支シミュレーションは楽観・標準・悲観の三通りを作成しましょう。悲観シナリオでキャッシュフローが月1万円以上プラスなら、実務上はほぼ問題なく運営できると考えられます。数字を味方につけることで、未経験者でもリスクを可視化し、投資判断がブレなくなるのです。

まとめ

結論として、未経験者が収益物件を探す際は「目的と資金を固める」「データでエリアを選ぶ」「情報源を複数持つ」「厳しめの数値で試算する」という四つの手順を守ることが成功への近道です。焦らず段階を踏めば、物件選びは不安からワクワクへと変わります。今日からできる行動として、まず金融機関で融資条件を聞き、次に気になるエリアの人口動態をチェックしてみましょう。小さな一歩が、安定した家賃収入という大きな成果につながります。

参考文献・出典

  • 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本政策金融公庫 融資情報 – https://www.jfc.go.jp
  • 不動産流通機構 レインズマーケットインフォメーション – https://www.reins.or.jp
  • 法務省 登記情報提供サービス – https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp

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