家賃収入は安定しているのに、ローン返済で手元資金が思うように残らない――そんな悩みを抱えていませんか。不動産投資ローンは返済期間が長く、金利差がわずかでも総支払額が大きく変わります。しかし、金融機関の比較や手続きの煩雑さを理由に、踏み出せない人が多いのも現実です。本記事では「不動産投資ローン 借り換え 今から」をテーマに、基礎知識からシミュレーション方法、2025年9月時点の最新金利までを網羅的に解説します。読み終えるころには、借り換えによってキャッシュフローを改善する具体的な手順が見えるはずです。
借り換えの基本を押さえる

重要なのは、借り換えが単なる金利引き下げではなく投資戦略の再設計につながる点です。まずは用語と仕組みを正しく理解しましょう。
不動産投資ローンの借り換えとは、現在のローン残高を新しいローンで一括返済し、より有利な条件へ置き換えることを指します。住宅ローンと異なり、投資ローンは金利が高めに設定されやすいため、わずかな利率低下でも効果が出やすい特徴があります。また、返済期間を延長することで月々の返済額を抑え、手元のキャッシュを厚くする方法も選択できます。
一方で、繰上げ返済手数料や保証料の清算、新規事務手数料など諸費用が発生します。残高が少ない、残期間が短いといったケースでは、コストを上回るメリットが得られない場合もあるので注意が必要です。さらに、借り換え審査では物件収益だけでなく個人の信用情報も再評価されます。自己資金や追加担保の要求がある点も把握しておきましょう。
つまり、借り換えは金利だけを見て判断するのではなく、期間・諸費用・リスク許容度の三点を総合的に比較し、長期的な投資目的に沿うかどうかを確かめることが出発点になります。
金利差と総返済額を可視化するシミュレーション

まず押さえておきたいのは、具体的な数字で効果を確認することです。感覚的に「安くなりそう」ではなく、総返済額の差を可視化してください。
たとえば残債3,000万円・残り20年・現行金利2.8%の場合、毎月返済額は約16.4万円になります。これを金利1.7%のローンへ借り換えると、月々約14.8万円に下がり、年間で約19万円、20年間ではおよそ380万円の削減効果が期待できます。全国銀行協会の2025年9月時点データでは、変動金利の平均が1.5〜2.0%ですから、上記シミュレーションは現実的な前提といえます。
もっとも、借り換えには事務手数料や抵当権設定費用など合計50〜100万円程度が必要です。差額がコストを上回るかを確かめるには、最低でも300万円以上の利息軽減が目安になるでしょう。住宅金融支援機構のオンライン試算ツールを用いれば、金利・残期間・諸費用を入力するだけで損益分岐点が瞬時に表示されるので活用してください。
さらに、将来金利が上昇した場合のシナリオも併せて検証することが大切です。変動金利を選ぶなら、2%程度の上昇余地を組み込んだ厳しめの計算を行い、十分な返済余力があるか確認しましょう。可視化された数字は意思決定の強力な根拠となり、金融機関との交渉材料にもなります。
借り換えに適したタイミングを見極める
ポイントは、金利動向と物件・個人の属性がバランス良くそろう時期を選ぶことです。
日本銀行が2025年春に実施した緩やかな利上げにより、固定10年の平均金利は2.5〜3.0%で推移しています。一方、変動金利は過去最低水準近辺の1.5〜2.0%にとどまっており、固定と変動の差が拡大している状況です。この環境では、短中期で売却 exit を考えている投資家は変動、長期保有を想定するなら固定または期間選択型への借り換えが有効といえます。
借り換えメリットが生まれやすいのは、残期間が10年以上、残高が1,000万円以上残っているケースです。残期間が短いと、利息部分より元金返済の割合が増えるため、金利低減効果が薄くなります。また、築年数が経過し過ぎている物件は評価額が低下し、追加担保を求められる可能性があるので注意しましょう。
さらに、確定申告で高額な赤字を計上している年は審査評価が下がりやすい傾向があります。法人保有の場合でも、決算書に過度な減価償却を入れていると金融機関の見方が厳しくなるため、借り換え前には財務内容を整えることが欠かせません。
借り換え手続きの流れと注意点
実は、手続き自体はシンプルですが、事前準備を怠ると時間とコストが膨らみます。要点を把握してスムーズに進めましょう。
最初に行うのは、複数の金融機関へ条件を打診する「事前審査」です。その際、確定申告書3期分、賃貸借契約一覧表、レントロールなどの提出が求められます。ここで提示される仮審査金利と融資額が、おおよその借り換え条件になります。
次に、物件の再評価が行われます。投資用不動産では、収益還元法を用いた査定が中心となり、空室率や家賃下落リスクも加味されます。評価額が低く出た場合は、担保余力を補うために自己資金を追加でいれるか、別物件を担保差し入れする方法が検討されます。
正式承認が下りたら、旧ローンの一括返済手続きと新ローンの実行を同日に行う「つなぎ」決済が一般的です。司法書士報酬、印紙税、抵当権抹消・設定費用などがこの段階で確定するため、事前に見積もりを取ることが重要です。最後に、返済口座の設定や火災保険の変更を済ませれば、借り換えは完了します。
2025年度の金融商品と制度動向
まず押さえておきたいのは、金融機関ごとの商品多様化が進み、選択の幅が広がっている点です。
都市銀行は変動型の金利を抑える一方、固定期間選択型を拡充し、途中で固定から変動へ切り替えられるオプション付き商品を投入しています。地銀や信用金庫は地域密着を強みに、返済比率50%以下の投資家に対して優遇金利を提示するケースが増えてきました。ノンバンク系は築古アパートやシェアハウスといった、銀行が敬遠しがちな物件にも対応していますが、金利は3%超と高めなので慎重な比較が欠かせません。
2025年度の税制では、不動産所得に対する大きな変更はなく、減価償却の耐用年数なども据え置きです。ただし、国土交通省はESG要素を評価する「グリーンリノベローン」ガイドラインを公表しており、断熱改修を行った物件への金利優遇が始まっています。もし大規模修繕と借り換えを同時に検討するなら、こうした商品を選ぶことで、追加工事費の一部を金利優遇で相殺できる可能性があります。
金融市場全体では、世界的な金利上昇の影響を受けつつも、日本の長期金利は緩やかな上昇にとどまる見通しです。そのため、今から借り換えを実行し、固定または長期間の上限金利設定型を選択しておけば、将来的な負担増リスクをある程度抑えられると考えられます。
まとめ
本記事では、不動産投資ローンの借り換えを成功させるためのポイントを網羅しました。重要なのは、金利だけに目を奪われず、残期間・諸費用・物件評価を総合的に判断し、数字で効果を可視化することです。さらに、2025年の金融商品や金利動向を把握し、適切なタイミングで行動すれば、キャッシュフローを大幅に改善できます。まずは試算ツールで現在のローンを分析し、複数の金融機関に事前審査を申し込む一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 日本銀行「金融政策決定会合資料」 – https://www.boj.or.jp
- 国土交通省「不動産市場動向レポート」 – https://www.mlit.go.jp
- 住宅金融支援機構「ローンシミュレーター」 – https://www.jhf.go.jp
- 財務省「法人企業統計季報」 – https://www.mof.go.jp