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立地選定 北海道で失敗しない投資エリアの見極め方

北海道での不動産投資は、雄大な自然や観光資源に魅せられて始める方が多い一方、都市部と郊外で収益構造が大きく異なるため、立地選定に悩む声をよく耳にします。札幌の安定した賃貸需要、ニセコや富良野のリゾート人気、そして物流拠点として伸びる道東エリアなど、エリアごとに戦略は大きく変わります。本記事では最新の人口動態やインフラ計画を踏まえつつ、初心者にも分かりやすくエリアの特徴とリスクを整理します。読み終えたとき、あなたは北海道投資における第一歩を自信を持って踏み出せるはずです。

北海道の人口動態が示す投資エリアのヒント

北海道の人口動態が示す投資エリアのヒントのイメージ

まず押さえておきたいのは、人口が集まる場所へ資金も情報も集中するという原則です。総務省の住民基本台帳人口移動報告(2024年版)によれば、道内で唯一転入超過が続くのは札幌市とその周辺自治体です。

札幌市の人口は2025年1月時点で約199万人と横ばいを維持し、札幌圏(石狩・小樽を含む)ではテレワーク需要により郊外宅地の成約件数が前年比12%増えました。一方で旭川や函館は緩やかな減少傾向にあり、空室率も17%前後へ上昇しています。つまり、長期保有で安定賃料を狙うなら札幌圏が第一候補になりますが、郊外や地方都市で高利回りを求める場合は、空室リスクと出口戦略がより重要になります。

人口が減る地域でも、再開発や公共投資が進むと需給バランスが変わることがあります。例えば釧路市は国の港湾強化計画により物流関連企業が誘致され、単身者向け賃貸需要が生まれています。このように人口統計だけでなく、産業構造の変化を併せて確認することで投資チャンスを見つけやすくなります。

インフラとアクセスで見る札幌圏の強み

インフラとアクセスで見る札幌圏の強みのイメージ

重要なのは、人流を生む交通インフラが物件価値を底上げする点です。札幌市営地下鉄は2024年に全駅ホームドア設置が完了し、バリアフリー化の進展で高齢者にも利用しやすくなりました。また、JR函館線の複線化工事が順調に進み、札幌~小樽間の所要時間短縮が予定されています。これらは郊外駅近物件のニーズを押し上げる要因です。

札幌中心部では再開発ビルが相次ぎ、オフィス需要が底堅いことから、ワンルーム投資でも表面利回り4〜5%の物件が依然として取引されています。利回りだけを見ると低く感じるものの、入居期間の平均が4.6年と全国平均を上回るため、実質的な収益安定度は高いといえます。

一方で固定資産税評価額が上昇し続けている点には注意が必要です。固定費が増えることでキャッシュフローが圧迫されるため、融資利用時は返済比率を余裕を持って設定しましょう。地方銀行の2025年度投資用ローン金利は変動で年2.0%前後ですが、政策金利の先行きが読みにくいので固定型との比較が欠かせません。

リゾート需要を狙う道央・道南の選択肢

実は、観光客の回復によってリゾート物件の短期賃貸が活況を呈しています。観光庁の宿泊旅行統計(2024年)では、ニセコ町の外国人延べ宿泊者数がコロナ前比118%へ回復し、富良野市も同109%と伸長しました。これに伴い、コンドミニアム型物件の表面利回りは7〜8%が相場です。

リゾートエリアで利益を出す鍵はオフシーズンの稼働率です。例えば富良野では夏のラベンダーシーズン後に予約が落ち込みますが、地元企業向けの長期滞在プランを設定することで、年間稼働率を60%から75%へ改善させた事例があります。言い換えると、需要の谷間を埋める工夫ができる投資家ほど収益が安定します。

ただし、リゾート地は物件価格が海外投資家の動向に左右されやすい点がリスクです。円安が進行すると買いが集中し、価格が急騰しますが、為替が戻ると取引が停滞しやすい傾向があります。出口を見据えて、周辺の建築規制やホテル開発計画を調べ、過剰供給の兆しがないか確認することが欠かせません。

物流拠点として注目される道東・道北

ポイントは、EC需要の拡大で地方都市にも物流関連施設が増えていることです。国土交通省の港湾統計によると、釧路港と稚内港のコンテナ取扱量は2020年比でそれぞれ32%と19%増加しました。この動きに合わせ、倉庫併設型の小規模アパートや社員寮需要が高まっています。

釧路市では2025年春開業予定の「道東自動車道 釧路連絡線」により、帯広市までの所要時間が約30分短縮される見込みです。物流会社は車両コストを削減できるため、周辺で従業員を囲い込む動きが活発化しています。賃料相場はワンルームで月4万円前後と札幌の半額程度ですが、土地価格も低いため利回りが10%台に乗るケースが珍しくありません。

もっとも、地域全体の人口は減少傾向であり、賃貸需要の持続性は企業動向に左右されます。法人契約が終了した場合、個人入居者では埋まらない可能性があるので、契約期間中に元本を回収できるかどうか、返済スケジュールを厳しめに設定することが求められます。

北海道で避けたい立地とリスク管理

まず、豪雪地帯で除雪体制が整っていないエリアは維持費が想定以上に膨らみます。屋根の雪下ろしやロードヒーティングの電気代が年間で家賃1か月分を超えることも珍しくありません。また、JRローカル線の廃線が発表された地域は、公共交通の選択肢が減り入居希望者が大幅に減る恐れがあります。

さらに、漁業や一次産業が中心の町では、景況が天候や市況に左右されやすいことに注意しましょう。漁獲高が落ち込むと雇用が急減し、空室率が一気に上がる事例が過去にもありました。こうした町では、複数の産業が存在する隣接都市へのアクセスを重視し、将来的な転用や売却もしやすい土地形状を選ぶとリスクを抑えられます。

最後に、融資条件です。北海道内の地銀や信金はエリアに詳しい反面、物件所在地が支店管轄外だと評価が伸びづらい傾向があります。事前に金融機関へエリア評価の基準を確認し、想定より低い融資額が提示された場合は、頭金を厚くするか他県のネット銀行を併用するなど柔軟に対処すると良いでしょう。

まとめ

本記事では、北海道の人口動態、交通インフラ、リゾート需要、物流拠点化という四つの視点から立地選定の考え方を整理しました。札幌圏は安定収益、リゾート地は季節変動と為替リスク、道東・道北は企業動向が鍵という違いを押さえておくと、物件選びの軸が明確になります。結論として、数字と現地調査を組み合わせてエリアの将来像を描ける投資家ほど、北海道での成功確率が高まります。まずは気になる市町村を訪れ、役所や地元金融機関から一次情報を集める行動を始めてみてください。

参考文献・出典

  • 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
  • 国土交通省 港湾統計 – https://www.mlit.go.jp
  • 観光庁 宿泊旅行統計調査 – https://www.mlit.go.jp/kankocho
  • 北海道庁 経済部データバンク – https://www.pref.hokkaido.lg.jp
  • 日本銀行 主要指標統計 – https://www.boj.or.jp

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