不動産の税金

アパート経営の収支計算|初心者向け完全ガイド

アパート経営に興味はあるけれど、収支計算が苦手で一歩踏み出せない方は少なくありません。家賃はいくら入るのか、経費や税金はどのくらい掛かるのか、毎月手元に残る金額はいくらなのか。こうした疑問を解消しないまま物件を購入すると、思わぬ赤字に苦しむことになりかねません。

この記事では、アパート経営の収支計算を初心者でも理解できるよう体系的に解説します。読了後には、ご自身でキャッシュフロー表を作成し、投資判断ができる力が身につくでしょう。

収支計算の全体像をつかむ

収支計算を単なる数字合わせではなく、物件の将来価値を見極めるプロセスとして捉えることが重要です。まずは全体像を俯瞰し、後の詳細計算へスムーズに進める土台を作りましょう。

表面利回りと実質利回りの違い

最初に確認すべきは、年間家賃収入と年間支出の差額である「ネット収益」です。表面利回りは購入価格に対する年間家賃収入の割合に過ぎません。管理費や固定資産税などを差し引いた実質利回りを把握することが欠かせません。

指標 計算式 特徴
表面利回り 年間家賃収入 ÷ 購入価格 × 100 経費を考慮しない簡易指標
実質利回り (年間家賃収入 − 年間経費)÷ 購入価格 × 100 実態に近い収益性を把握できる

数字を追う際は月ごとではなく年ベースで捉えると、季節変動の影響をならすことができます。

融資条件とキャッシュフローの関係

金融機関からの融資条件を加味したキャッシュフローシミュレーションも欠かせません。金利、返済期間、元利均等か元金均等かによって毎月の返済額は大きく変化します。

投資用ローンの金利は物件種別や借入者の属性で差があるため、複数の金融機関へ打診することが大切です。借入額が変われば自己資金比率と年間収支の安全度も変わるので、早めに数字を当てはめて確認しましょう。

出口戦略を含めたトータルリターン

保有期間中のキャッシュフローだけでなく、売却益または損失を合算した内部収益率(IRR)を把握すると、他の資産クラスとの比較が容易になります。IRRは複利思考で投資効率を示す指標のため、長期保有を前提とする不動産投資との相性が良いといえます。

家賃収入と経費の具体的な算出方法

家賃収入を多めに見積もり、経費を少なめに見積もると失敗しやすい点を押さえておきましょう。ここでは適切な数字の拾い方を解説します。

家賃収入の設定方法

家賃収入は、国土交通省の「賃貸住宅市場概況調査」やポータルサイトの成約事例を参考に、周辺相場の中央値で設定します。募集賃料の上限で試算すると想定利回りが実現しないケースが多いため注意が必要です。

毎年1%程度の下落シナリオも同時に組み込むことで、長期的な安全余裕を確保できます。

空室率の見積もり

空室率は自治体が公表する統計よりも、エリアの築年数や間取りに近い物件の実績を優先します。たとえば東京都23区の平均空室率は約10%ですが、築30年のワンルームなら12%前後に悪化する傾向があります。

年間家賃収入は以下の式で計算すると現実的です。

年間家賃収入 = 年間満室想定賃料 ×(1 − 空室率)

経費の内訳と目安

経費は固定費と変動費に分かれます。それぞれの主な項目と目安は以下のとおりです。

区分 主な項目 年間家賃収入に対する目安
固定費 管理委託料、固定資産税・都市計画税、火災保険料 約15%
変動費 修繕費、広告料、原状回復費 5〜8%(築年数により変動)

築年が古いほど修繕費比率は高まります。国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、築20年を超える物件で年間家賃収入の5〜8%を修繕費に充当する想定が推奨されています。

減価償却費を忘れずに

所得税計算を左右する減価償却費も重要な要素です。木造住宅の法定耐用年数は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造は47年です。中古取得の場合は残存耐用年数を簡便法で求められるため、購入後に減価償却費が急激に減るリスクを把握しておきましょう。

キャッシュフロー分析で見るリスクとリターン

単年度の黒字に安心せず、将来キャッシュフローの持続性を検証することがポイントです。ここではリスクとリターンを数値化し、可視化する方法を示します。

キャッシュフロー表の作り方

キャッシュフロー表は、縦に年次、横に項目を並べるシンプルな形式が見やすいです。以下の手順で作成しましょう。

  1. 家賃収入を入力する
  2. 経費(管理費、税金、修繕費など)を差し引く
  3. 借入返済額を差し引く
  4. 税引前キャッシュフローを算出する

借入の金利が変動型の場合、金利上昇シナリオを2%刻みで用意しておくと安心です。金利が1%から3%に上がると、年間返済額が100万円以上増えるケースもあるため、影響を早めに把握できます。

感度分析の活用

感度分析を取り入れると意思決定が格段に楽になります。空室率、家賃下落率、金利、修繕費比率といった主要変数を1%ずつ動かし、最終的な収益がどこまで耐えられるか確認しましょう。

リスクが高いと判断された場合は、以下のような対策が考えられます。

  • 自己資金を厚くして借入額を減らす
  • 家賃設定を保守的に見直す
  • 変動金利から固定金利へ切り替える

ストレステストの実施

家賃下落3%、空室率15%、金利上昇2%を同時に起こした「最悪シナリオ」も作成します。黒字幅がゼロを下回る場合でも、売却益で補えるかまで検証するとより実践的です。

逆に好調シナリオがどれだけ魅力的かも数字で比較でき、心理的なバイアスを排除した判断ができます。

シミュレーションを活かした投資判断の進め方

シミュレーションは作って終わりではなく、投資判断に落とし込むまでがセットです。ここでは作業手順と意思決定のポイントをまとめます。

DSCR(債務返済余裕率)を基準にする

ネット収益が年間返済額の120%以上を確保できるかを一つの基準とします。これはDSCR(債務返済余裕率)1.2倍に相当し、金融機関も重視する指標です。

DSCR = ネット収益 ÷ 年間返済額

感度分析シートを使い、目標DSCRを下回る条件を洗い出しましょう。金利2.5%以上で赤字に転落する場合は、固定金利への切り替えや自己資金の増額を検討してください。

税引後キャッシュフローの確認

不動産所得が赤字の場合、給与所得と損益通算して税金を抑えられるメリットがあります。ただし、税制改正により損益通算額が制限される可能性もあるため、税効果は保守的に見積もると計画にブレが出にくくなります。

投資シナリオの作成と共有

購入から保有、売却までを時系列で並べた投資シナリオを作成し、家族や専門家と共有しましょう。人的リスクやライフプランの変化にも目を向けると、計画を実践へ落とし込む道筋がクリアになります。

まとめ

アパート経営の収支計算を全体像から詳細、リスク分析、意思決定の流れまで解説しました。要点を整理すると以下のとおりです。

  • 表面利回りではなく実質利回りで収益性を判断する
  • 家賃収入は相場の中央値、空室率は実績ベースで設定する
  • 経費は固定費15%、変動費5〜8%を目安に見積もる
  • 感度分析とストレステストで複数シナリオを検証する
  • DSCR1.2倍以上を目標に投資判断を行う

難しそうに見えても、一度自分の数字を入れてみれば意外とシンプルだと気づくはずです。今日から試算表を作り、数字と向き合う一歩を踏み出しましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省 賃貸住宅市場概況調査 – https://www.mlit.go.jp/
  • 国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン – https://www.mlit.go.jp/
  • 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/

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