不動産投資を始めたいけれど、ローンはいくらまで借りられるのか──府中市で物件を探す読者の多くが最初にぶつかる壁です。年収や自己資金、物件の評価額など気になる項目は多いものの、ネットの情報は全国平均が中心で「府中ならでは」の事情が見えにくいのが実情でしょう。本記事では、府中エリアの金融機関が重視する審査基準と、借入限度額を押し上げる実践的な方法を解説します。読み終えるころには、自分の上限額を試算し、次のアクションを自信を持って決められるはずです。
府中で利用できる投資ローンの特徴

重要なのは、府中市に支店を構える金融機関が「都心近郊の住宅需要」をどう評価しているかを知ることです。東京都の多摩地域に位置する府中は、新宿まで最短20分圏内という利便性があり、総務省の統計でも2024年時点の人口は横ばいで推移しています。つまり空室リスクを低く見積もる金融機関が多く、借入期間を最長35年まで認めるケースも珍しくありません。
一方で物件価格は都心より抑えめとはいえ、平均坪単価は2025年上半期で約190万円と、全国平均を大きく上回ります。銀行は物件評価額の70〜80%を上限とするローン・トゥ・バリュー(LTV)を採用しているため、自己資金を20%用意できるかが第一のハードルになります。また、2025年9月時点の変動金利は1.5〜2.0%ですが、地方銀行の一部はエリア限定の優遇金利として1.3%前後を提示しています。融資窓口で「府中市内の物件」と明言すると、固定金利から変動金利への振り替え提案を受けやすい点も覚えておきましょう。
借入額に直結するもう一つの要素が、家賃相場と想定賃料です。府中駅周辺のワンルーム平均賃料は2025年8月のレインズデータで約7.9万円、築10年以内なら8.5万円を超えます。金融機関は賃料収入の70〜80%を返済原資として採用するため、賃料が1万円上がると年間返済余力は約8万円増え、理論上は150〜200万円の追加借入が可能になる計算です。
借入限度額を決める四つの審査ポイント

まず押さえておきたいのは、銀行が借入限度額を「個人属性」と「物件属性」の二軸で判断する点です。個人属性では年収が重視され、目安として年収の7〜10倍が上限になります。年収600万円の人なら4,200万〜6,000万円が一つの目安です。しかし、これはあくまでフルローンが通った場合の理論値であり、実際には既存の住宅ローンや自動車ローンがあれば減額されます。
物件属性ではLTVに加え、デット・サービス・カバレッジ・レシオ(DSCR)が評価されます。DSCRとは年間の純収益を年間返済額で割った指標で、1.2以上が安全圏とされます。例えば年間家賃収入が120万円、経費が20万円、返済額が80万円ならDSCRは1.25となり合格ラインに達します。銀行はこの数値が1.0を下回ると即座に否決するため、シミュレーションの段階で経費と空室率を厳しめに設定しておくと安心です。
加えて、府中市では築古アパートでもJR武蔵野線や京王線の駅徒歩10分以内であれば、修繕計画を提出することで評価額が上がる傾向があります。金融機関は2025年度から導入された「省エネ改修ローン加点」を活用し、外壁断熱やLED化を見込むと最大0.2%の金利優遇を付けるケースもあります。この制度は2027年3月申込分までの時限措置なので、利用するなら早めの申請が肝心です。
最後に忘れてはならないのが自己資金比率です。自己資金が10%未満だと金利が0.3〜0.5%上乗せされる銀行が多く、長期で見れば数百万円の差になります。最低でも物件価格の15%、理想は20%を目標にすると、借入限度額だけでなく返済負担率も良好に保てます。
府中の2LDKマンションで試算する限度額
実は、具体的な数字に落とし込むとイメージが格段に鮮明になります。想定物件は府中駅徒歩8分、築12年、専有面積55㎡の2LDKマンション、価格は4,800万円とします。家賃相場は月14万円、年間家賃収入は168万円です。管理費と修繕積立金が年間24万円、固定資産税が8万円なので、経費総額は32万円となり、純収益は136万円です。
ここで自己資金を1,000万円(約20%)投入し、借入額は3,800万円とします。金利1.6%、期間35年の元利均等返済を想定すると、年間返済額は約145万円です。DSCRは136万円÷145万円で0.94となり、このままでは基準を下回ります。ところが、LED照明への交換と宅配ボックス設置を条件に、先ほど触れた省エネ改修ローン加点を受け、金利が1.4%に下がると年間返済額は約139万円まで縮小します。DSCRは0.98に改善するものの、まだ不足です。
そこで家賃を15万円に設定できる「ペット可+Wi-Fi無料」の差別化を図ると、年間賃料は180万円になり、純収益は148万円へ増加します。この時点でDSCRは1.06となり審査通過ラインの1.0を超えます。結論として、府中の中古マンションでも付加価値を付けることで借入限度額を維持しながら審査をクリアできることが分かります。
限度額を引き上げるための具体策
ポイントは、銀行が見る数字を意図的に改善する工夫を重ねることです。第一に効果が大きいのは共同担保の活用です。例えば既に持ち家に1,000万円の担保余力があれば、LTVを60%まで下げられ、自己資金を追加しなくても金利を優遇される可能性があります。共同担保を提供する際は評価額を保守的に見積もられるため、査定前に外壁塗装や書類整備を済ませておくと評価が上がりやすくなります。
次に検討したいのが法人化です。個人での借入限度額は年収に比例して頭打ちになりますが、合同会社を設立し、代表者貸付として資本金を多めに入れると、資本金×10倍程度の与信枠が生まれることがあります。府中市役所への法人住民税は均等割7万円と比較的軽く、管理費も経費計上できるためキャッシュフロー改善効果が高い点も利点です。
さらに、生活用ローンの整理も見逃せません。車の残債やカードローンが年収比10%を超えると、投資ローン審査は一気に厳しくなります。繰上返済をして総返済負担率を下げると、借入限度額は想像以上に伸びることがあります。また、直近2年間の確定申告で医療費控除や寄付金控除を活用し、課税所得を減らしすぎると見かけの年収が下がる点に注意してください。税負担軽減と与信力は表裏一体なので、計画的にバランスを取ることが重要です。
リスク管理と出口戦略
まず大切なのは、借入限度額が増えるほどリスクも拡大する意識を持つことです。変動金利が1%上昇すると、今回の試算では年間返済額がおよそ24万円増加します。東京都が公表する金利上昇シナリオでは、2027年までに最大1.2%上がる可能性も示唆されています。金利上昇局面では、早期繰上返済や部分固定への切り替えを含めた金利ヘッジ策を持つことが必須です。
次に、出口を想定した保守的なシミュレーションを行います。築30年での売却価格を現在価格の60%と仮定し、元本残高がそれを下回るタイミングを確認することで、売却益の有無が判断できます。府中は再開発計画が複数進行しており、京王線連続立体交差事業が完了予定の2030年以降に資産価値が底上げされる見込みもあります。再開発地区の近隣なら、将来的な売却益を加味して高めの借入を許容する戦略も合理的です。
最後に、空室リスクへの備えです。府中市では2024年の住宅・土地統計調査で空室率が10.8%と東京都平均より低いものの、駅から遠い立地や築古物件は例外です。家賃保証会社を活用すれば入居率が90%以下に落ち込んだ際の家賃補填を受けられますが、保証料は年間賃料の約5%を要します。保証料を先に組み込んだキャッシュフローを作成すると、審査で保守的な銀行にも好印象を与えられます。
まとめ
府中で不動産投資ローンを組む際の借入限度額は、年収倍率だけでなく物件の収益性や共同担保の有無、省エネ改修による金利優遇など多面的に決まります。自己資金を20%確保し、DSCRを1.2前後まで高める工夫をすれば、審査通過率と借入額の両方を引き上げることができます。再開発による将来価値を見込むなら、法人化や変動金利ヘッジも視野に入れて戦略を立てましょう。行動に移す第一歩として、地元銀行に事前相談し、具体的な試算表を持参することをおすすめします。数字に基づく議論ができれば、あなたの投資計画は一気に現実味を帯びます。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 東京都 都市整備局 再開発情報 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 国土交通省 レインズマーケットインフォメーション – https://www.reins.or.jp
- 総務省 統計局 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp
- 東京都 多摩府中地区 連続立体交差事業資料 – https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp