家賃相場が高く人口も増え続ける目黒区で「収益物件を持ちたい」と考えたものの、物件価格の高さや競争の激しさに不安を覚える人は多いでしょう。実際、区内の中古ワンルームは平均利回りが5%台前半にとどまり、地方高利回り物件と比べると見劣りします。しかし、空室リスクの低さや将来の資産価値維持力を含めて総合判断すると、堅実なリターンが期待できるのも事実です。本記事では、目黒区の市場動向から物件タイプ別の収益性、融資の組み方、運営と出口戦略までを体系的に解説します。読み終える頃には、自身の投資目的に合った目黒区の収益物件を選ぶ基準が明確になるはずです。
目黒区が投資先として注目される理由

ポイントは、目黒区が「住みたい街」としてのブランドを確立し続けている点です。東京都都市整備局の2024年度人口推計によると、目黒区の総人口は28万2千人で前年より約1,800人増加しました。特に25〜39歳の単身世帯が全体の31%を占め、安定した賃貸需要を支えています。
まず、交通利便性が高いことが強みです。東急東横線やJR山手線に加え、2023年開業の相鉄・東急直通線が渋谷―新横浜間を直結し、目黒区の主要駅から都心と横浜方面への移動時間がさらに短縮されました。この改善は通勤圏を拡大し、賃貸需要を底上げしています。
さらに、再開発による街の魅力向上も見逃せません。中目黒駅前では2025年春に商業・オフィス複合ビルが竣工予定で、飲食・サービス業の新規出店が相次いでいます。周辺の家賃指数は2022年比で6%上昇し、区全体の賃料水準を牽引しています。また、目黒川沿いの景観保全により居住満足度が向上し、長期入居が期待できる点も収益安定化に寄与します。
一方で、地価が高いことから表面利回りは平均5.3%(2025年7月アットホーム調査)と全国平均7.1%を下回ります。しかし、国税庁の路線価データでは過去5年間で年平均3.2%の上昇を続けており、キャピタルゲイン(値上がり益)も視野に入れた複合戦略が有効です。つまり、目黒区はインカムとキャピタルのバランスを取りたい投資家にふさわしいマーケットと言えます。
物件タイプ別の収益性とリスク

まず押さえておきたいのは、物件タイプにより収益構造が大きく異なるという事実です。目黒区内の収益物件は大きく「中古ワンルーム」「築浅アパート」「一棟RCマンション」の三つに分類できます。それぞれの特徴を理解することで、資金規模やリスク許容度に合った選択が可能になります。
中古ワンルームは、1戸あたり2,500万円前後と参入しやすい価格帯です。築25年前後でも人気駅徒歩10分圏内であれば賃料8万〜10万円が見込め、実質利回り4%台を確保できます。ただし、修繕積立金と管理費が高くなりがちで、長期保有時にキャッシュフローが圧迫される点は要注意です。
築浅アパートは、木造2階建て8戸程度で1億2千万円前後が目安になります。利回りは6%前後とワンルームより高いものの、建物の劣化スピードが早く、固定資産税も割高です。借地権付きや旗竿地を避け、整形地に建つ駅近物件を選ぶことで、将来の売却時に査定が下がりにくくなります。
一棟RC(鉄筋コンクリート)マンションは、10億円規模とハードルが高い一方、耐用年数47年を活かした長期融資が可能です。2025年度のメガバンク融資では金利1.2%前後、期間35年の事例が報告されています。空室リスクを抑えるために、共用部のリノベーションとIoT設備導入を計画に織り込むと、入居継続率が向上し実質利回り5.5%を実現したケースもあります。
購入前に押さえておきたい数字と指標
重要なのは、表面利回りだけでなく「実質利回り」と「DSCR」を併せて確認することです。実質利回りとは、家賃収入から管理費や固定資産税、修繕費を差し引いたネット収入を購入価格で割った値です。目黒区の中古ワンルームであれば、表面5.3%に対し実質は約3.8%まで低下するケースが多く、資金計画を楽観的に組むと赤字に陥りかねません。
次に、融資返済に対する安全度を示すDSCR(Debt Service Coverage Ratio)を見ます。家賃収入が年間700万円、年間返済額が500万円の場合、DSCRは1.4となり金融機関の基準1.2を上回ります。東京都都市整備局の2025年版空室率データでは、目黒区のワンルーム空室率は2.6%にとどまるため、家賃2割減・空室率2倍のストレスシナリオを設定してもDSCR1.1を確保できる物件が望ましいと言えます。
また、土地の将来価値を判断する指標として「基準地価」と「用途地域」に注目します。目黒区の商業地平均は1㎡あたり156万円で前年より3.8%上昇し、特に山手通り沿いは5%超の伸びです。用途地域が「近隣商業」に変更されるエリアでは容積率が緩和され、将来の建替えで延床面積を拡大できる可能性があります。こうした規制面の余地がある土地は、含み益を生みやすいと覚えておきましょう。
最後に、管理会社の選定も数字で比較します。平均管理料は家賃の3〜5%ですが、新築時に大幅なフリーレントを提案する会社もあります。その分を利回りに反映し、初年度のキャッシュフロー悪化を許容できるかを試算しておくことで、投資後の想定外を抑えられます。
資金計画と融資のポイント
実は、資金計画を甘く見たために目黒区投資で失敗する例が後を絶ちません。まず自己資金は物件価格の20%を目安に確保します。自己資金が少ない場合、フルローンも可能ですが金利は1%台後半に設定され、月々の返済負担が重くなります。
2025年度の法人向け不動産融資では、メガバンクよりも地方銀行や信用金庫の方が金利交渉に柔軟です。例えば、自己資金3割を入れることで固定1.05%・期間30年の融資条件を引き出せた例があります。ただし、頭金を多く入れると手元資金が細り、突発的な修繕に対応できなくなるため、別途300万円程度の予備費を用意しておくと安心です。
金利タイプの選択も重要です。変動金利は低金利の恩恵を受けられますが、日本銀行が2024年1月にマイナス金利を解除して以降、短期プライムレートは緩やかに上昇しています。仮に金利が0.5%上がると、1億円を30年返済で借りた場合の総返済額は約900万円増加します。固定金利は安心感がありますが、初期金利が高めです。金利上昇リスクとキャッシュフローの余裕度を比較し、自分のリスク許容度に合った選択を心がけましょう。
さらに、減価償却費による節税効果も計画に組み込みます。鉄骨造やRC造の耐用年数はそれぞれ34年・47年で、築年数が経過した物件ほど償却期間が短くなり、年間の経費計上額が大きくなります。所得の高い給与所得者が個人名義で購入する場合、課税所得の圧縮効果が高まり、実質利回りが1%近く改善するケースも珍しくありません。
保有後の運営戦略と出口
まず押さえておきたいのは、運営段階でいかに「長期入居」と「賃料維持」を両立させるかです。区内の入居者アンケート(2024年首都圏不動産研究所)では、インターネット無料と宅配ボックスの有無が満足度を大きく左右するとの結果が出ています。導入コストは1戸あたり10万円前後ですが、平均退去率を年2.8%から2.0%に下げる効果が期待でき、空室損失の低減につながります。
また、近年は短期運用として「マンスリーマンション」や「外国人駐在員向け賃貸」の需要も伸びています。目黒区は国際基督教大学や大使館が多く、多言語対応の管理体制を整えると月額家賃が通常相場の1.3倍で成約した事例があります。ただし、滞在期間が短いため清掃コストが膨らみやすく、ライセンス要件を含めた法令順守を徹底する必要があります。
出口戦略としては、物件価値がピークに達するタイミングでの売却が基本です。国土交通省の不動産価格指数によると、築15〜20年のRC物件は価格下落が緩やかで、賃料は安定しています。そのため、築20年近くで大規模修繕前に売却し、利益確定を図る投資家が多い傾向です。一方、ワンルームの場合は築30年を超えると金融機関融資が付きにくくなるため、サブリース契約を活用し、実質利回りを維持したまま個人投資家へ売却する手法も有効です。
最後に、2025年度税制では長期譲渡所得の税率20.315%は現行のままですが、特定取得費の控除要件が厳格化される方向です。売却にあたり取得費が証明できないと課税所得が増える恐れがあるため、仲介手数料や登記費用などの領収書を保管し、適正な譲渡所得申告を行うことが重要になります。
まとめ
目黒区の収益物件は表面利回りこそ高くありませんが、人口増とブランド力による安定した賃貸需要、そして地価上昇を背景に堅実なキャッシュフローと将来のキャピタルゲインを同時に狙える魅力があります。物件タイプごとの特性を理解し、実質利回りやDSCRといった指標で慎重に選別すれば、空室率の低さが中長期の安全運用を支えてくれます。さらに、金利上昇シナリオを織り込んだ資金計画と、入居者満足を高める運営施策を併用することで、投資成果を最大化できるでしょう。まずは自分の投資目的と資金力を整理し、本記事で紹介したチェックポイントを活用して、目黒区での物件選びを一歩前進させてください。
参考文献・出典
- 東京都都市整備局「東京都人口推計 2024年度版」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp
- 国税庁 路線価図・評価倍率表 2025年分 – https://www.rosenka.nta.go.jp
- アットホーム株式会社「不動産投資向け利回り調査 2025年7月」 – https://www.athome.co.jp
- 首都圏不動産研究所「賃貸住宅入居者アンケート2024」 – https://www.reins.or.jp
- 日本銀行「短期プライムレート推移」 – https://www.boj.or.jp