賃貸需要は減ると聞くし、金利は上がるかもしれない――そんな不安から「アパート経営 やめとけ 収益性」と検索する人が増えています。実際、2025年の市場では利回り低下や空室長期化が指摘されますが、数字だけを追えばチャンスも埋もれています。本記事では、初心者が悩む「本当に儲かるのか」という疑問に専門家の視点で寄り添いながら、リスクの正体と収益改善策を体系的に解説します。読了後には、自分に向くか否かを自信を持って判断できるようになるはずです。
空室率21%時代に何が起きているのか

まず押さえておきたいのは、市場全体の空室動向です。国土交通省住宅統計によると、2025年7月の全国アパート空室率は21.2%で、前年より0.3ポイント改善しました。数字だけ見れば小幅な好転ですが、二つの背景を理解すると慎重姿勢が必要なことがわかります。
一つ目は人口構造の変化です。総務省の推計では25〜34歳人口が2020年比で2025年に約4%減少します。この層は賃貸市場の主力であり、地域によっては空室の重しになります。二つ目は供給過多です。低金利政策が長く続いた結果、ここ数年で地方にアパート新築が集中し、競合物件の家賃ダンピングが常態化しました。つまり、空室率が下がっても賃料も下がる可能性があるため、表面的な改善だけでは楽観できません。
一方で都心部の駅近や大学周辺の単身向けは稼働率90%超を維持しています。同じ21%という平均値でも、立地と間取りが異なれば体感は大きく変わるということです。収益性を語る際は、全国平均ではなく自分が狙う商圏の需給バランスを具体的に調査する必要があります。
表面利回りに潜む三つの落とし穴

重要なのは、物件広告でよく見掛ける「表面利回り」に飛びつかないことです。表面利回りとは年間家賃収入を購入価格で割っただけの数値で、運営コストや空室期間を考慮していません。初心者が陥りやすい落とし穴は三つあります。
まず、管理費や修繕費です。2025年度の平均は家賃収入の20%前後とされますが、築20年を超えると30%に達する例も珍しくありません。次に、固定資産税と都市計画税が毎年かかり、地方築古で20室規模なら年額70万円前後になるケースもあります。そして空室損失です。前節の空室率21.2%を当てはめると、満室想定賃料の約2割が吹き飛ぶ計算になります。
言い換えると、表面利回り9%の地方アパートでも実質利回りが5%を切ることは十分あり得ます。広告の数値を真に受けず、最低でもキャッシュフロー表を自作してネット収益をシミュレーションする姿勢が不可欠です。
金利上昇リスクをどう読むか
実は、2025年のアパート経営で最も注目されるのが金利動向です。日本銀行は2024年末にマイナス金利を解除し、短期金利は0.25%台で推移しています。変動型アパートローンの多くは短期プライムに連動するため、今後さらに0.5%程度の上昇余地があると見る金融機関が増えています。
金利が1%上がると、借入額1億円・残期間25年の場合で年間返済額は約60万円増加します。家賃が横ばいならキャッシュフローの目減りは避けられません。そこでポイントになるのが借入期間と元本返済スピードです。期間を延ばしすぎると支払利息が膨らみ、短くしすぎると毎月の負担が重くなります。金融機関から提示された条件を鵜呑みにするのではなく、残債と家賃収入のバランスを試算しながら期間と金利タイプを交渉することが大切です。
一方で、固定金利2%台の商品が再注目されています。初期利回りが高くない物件では返済額が読める固定型で保守的に進め、家賃アップ余地が大きい再生案件では変動型で攻めるなど、戦略の使い分けが重要です。金利リスクは避けられませんが、シナリオを複数持つことで致命傷を防げます。
収益性を底上げする三つの打ち手
ポイントは、購入前よりも購入後の運営で差がつくことです。まず、設備投資の優先順位を明確にしましょう。インターネット無料や宅配ボックスは導入コストの回収期間が3〜5年と短く、家賃3000円アップに直結しやすいと実務で感じます。次に、共用部の清掃頻度を上げるだけでも内見者の印象が変わり、空室期間を1カ月短縮できることがあります。
さらに、家賃保証会社の利用で賃料滞納リスクを抑えつつ、入居審査を柔軟にする方法も有効です。保証料は年間家賃の0.5〜1カ月分ですが、滞納率が高いエリアでの安心コストと捉えれば合理的です。最後に忘れがちなのが出口戦略です。築年数が進むにつれ建物価値は下がりますが、土地値が高い都市部なら更地売却で想定以上のキャピタルゲインを得られる例もあります。保有し続けるか、5〜10年で売却して資金を次の物件に回すか、あらかじめ決めておくことで総合的な収益性が向上します。
アパート経営は本当にやめとくべきか
結論として、アパート経営を一律に「やめとけ」とは言えません。空室率、金利、修繕費という三つの変数をコントロールできれば、依然として年利5%前後の安定投資になり得ます。しかし、表面利回りだけで物件を選び、長期シミュレーションを怠ると収益性は簡単に崩れます。経験上、初心者が成功する鍵は「リスクを数値化し、意思決定を後回しにしない」ことです。数字を恐れず向き合い、自分の許容度を超える物件には手を出さない冷静さがあれば、2025年市場でも勝機は十分にあります。
まとめ
本記事では、2025年の市場データを踏まえてアパート経営の収益性を検証しました。空室率21.2%という平均値の裏にある地域差、表面利回りの落とし穴、そして金利上昇への備えが重要であることを解説しました。さらに、設備投資・管理改善・出口戦略の三つの打ち手がキャッシュフローを底上げする現実的な方法であると示しました。まずは周辺賃料と融資条件を具体的に調べ、ネット収益ベースでの利回り5%を目安にシミュレーションしてください。そのうえで、自分の資金計画に合致する物件だけを選ぶ姿勢が、リスクを抑えて安定収益を得る近道になります。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年7月速報 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 人口推計 2025年4月発表 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合議事要旨 2025年6月 – https://www.boj.or.jp
- 国税庁 固定資産税・償却資産税の概要 2025年度版 – https://www.nta.go.jp
- 不動産流通推進センター 不動産運用実務者調査2025 – https://www.retpc.jp