投資用マンションの利回りが伸び悩む一方、訪日客の急増で「民泊」を併用した運用が注目されています。しかし「法規制は難しそう」「空室リスクが高まるのでは」といった不安から、一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。本記事では、民泊新法の基本から収益シミュレーション、2025年度に利用可能な補助金まで、初心者がつまずきやすいポイントを丁寧に解説します。読み終えたとき、マンション投資と民泊を組み合わせるメリットと具体的な手順がクリアになるはずです。
なぜマンション投資と民泊を組み合わせるのか

重要なのは、民泊を導入することで従来型の賃貸よりも収益の上振れが期待できる点です。観光庁統計によると、2025年上半期の訪日外国人延べ宿泊者数はコロナ前比112%まで回復し、都市部のホテル平均稼働率は80%前後で推移しています。マンションの一室を短期貸しすれば、月間売上が賃料の1.3〜1.8倍になるケースも珍しくありません。
さらに、東京23区の新築マンション平均価格は7,580万円と高止まりしており、表面利回りは3%台にとどまります。民泊運用を組み合わせれば、稼働率70%でも実質利回り5%超を目指せる計算です。つまり既存の賃貸モデルだけでは利益が限られる局面で、民泊はキャッシュフローを押し上げる有効な手段となります。
一方で、運営コストや手間が増える点は無視できません。清掃費、リネン交換、ゲスト対応を外部委託すると、売上の15〜25%が経費として消える可能性があります。利益を最大化するには、客室単価の設定だけでなく、運営会社の手数料や稼働率の目標をシビアに見積もる必要があります。
民泊運用で押さえておきたい法規制

まず押さえておきたいのは、2018年に施行された住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法です。この法律により、住居専用地域でも年間180日以内なら民泊運営が可能になりました。ただし、各自治体は条例で独自の制限を設けており、東京の一部区では営業日を「平日のみ」「学校休業期間のみ」と限定している例もあります。
許可取得には、住居表示や間取り図、消防設備の確認書類をそろえ、自治体へ届け出が必要です。2025年4月からはオンライン申請システムが刷新され、書類の電子提出が義務化されました。手続きに不備があると最長3か月の再提出期間が発生するため、早めの準備が欠かせません。
また、旅館業法による「簡易宿所」許可を取得すれば、営業日数の制限なく運営できます。ただし、共用廊下の幅員や窓先空地など、建築基準法上のハードルが上がります。マンション管理規約で短期賃貸を禁止しているケースもあるので、購入前に総会議事録や管理会社への確認が必須です。
収益シミュレーションとキャッシュフローの考え方
ポイントは、固定費と変動費を分けて試算し、複数の稼働率シナリオを用意することです。固定費にはローン返済、管理費、修繕積立金、固定資産税が含まれます。変動費としては清掃費、光熱費、OTA(旅行サイト)の手数料が代表的です。
たとえば、物件価格5,000万円、自己資金1,500万円、借入金利1.6%・期間30年の場合、毎月の返済額は約12.5万円です。管理費・修繕積立金が2.5万円、固定資産税が1.2万円とすると、民泊にかけられる変動費を含めた損益分岐点はおよそ16.2万円になります。
ここで客室単価を1泊1.2万円、稼働率60%と仮定すると、月間売上は1.2万円×0.6×30日で21.6万円です。清掃とOTA手数料を売上の25%と見込むと経費は5.4万円、最終的なキャッシュフローは21.6万円−5.4万円−16.2万円でゼロ付近に落ち着きます。稼働率70%なら手取りは約4万円に増えるため、収益改善には稼働率アップがカギになると分かります。
加えて、2025年の電気料金上昇を想定し、光熱費を前年比10%高で計算しておくと、予期せぬ赤字を防げます。つまり、シミュレーション時には「賃料ベース」「保守的な民泊ベース」「楽観的な民泊ベース」の3パターンを用意し、最悪でもキャッシュフローがマイナスにならない水準を見極めることが安全策です。
物件選びと運営会社の活用ポイント
実は、民泊向きのマンションには共通する特徴があります。最寄り駅から徒歩7分以内で、空港アクセスが良い路線であること、コンビニや飲食店が近いこと、そして管理規約に「宿泊」を明確に禁止する条項がないことが重要です。2025年現在、浅草や新宿エリアでは観光客ニーズが高く、1Kでも平均稼働率75%前後を維持しています。
さらに、建物管理会社との関係も見逃せません。騒音やゴミ出しトラブルが頻発すると、理事会から営業停止を求められる事例が増えています。信頼できる民泊運営会社に24時間対応を委託し、クレーム発生時の一次受け窓口を設けることで、オーナー自身の負担を大幅に軽減できます。
運営会社を選ぶ際は、手数料率だけでなく「稼働率保証」や「レビュー点数の平均」を比較すると良いでしょう。レビュー4.5点以上を維持している会社は、予約サイトでの検索順位が高く、広告費を抑えて集客できます。長期的には手数料20%でも、高稼働によって総収入が上回るケースが多いのです。
2025年度の税制優遇と補助金活用法
まず押さえておきたいのは、住宅宿泊事業者が対象となる「観光産業強化税制(2025年度)」です。これは客室改装費用の10%を所得控除できる制度で、上限は300万円までとなっています。申請には改装工事の請負契約書と写真付き報告書が必要ですが、設備投資を計画しているオーナーにとっては大きな節税効果があります。
また、観光庁が公募する「インバウンド対応施設整備補助金(2025年度)」では、スマートロックや多言語サイネージの導入費用の2/3を補助(上限200万円)しています。申請期限は2026年2月末までなので、リフォーム計画と合わせてスケジュールを組むと資金効率が高まります。
加えて、自治体独自の支援も活用できます。大阪市では2025年度、騒音測定器の設置費用を最大30万円補助する制度が継続中です。こうしたローカル施策は公募期間が短いことが多いため、自治体の公式サイトを定期的にチェックし、早めに事業計画書を準備することがポイントになります。
まとめ
本記事では、マンション投資に民泊を組み合わせるメリット、法規制のチェックポイント、収益シミュレーションの作り方、物件選びの勘所、そして2025年度の優遇策まで解説しました。最終的に成功を左右するのは、稼働率とコスト管理をバランスさせる綿密な計画です。まずは管理規約と地域条例を確認し、数字に基づくシミュレーションを作成するところから始めてみてください。自分のリスク許容度に合った物件と運営体制を選べば、民泊はマンション投資の収益を力強く押し上げる選択肢になります。
参考文献・出典
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年7月速報値 – https://www.mlit.go.jp/kankocho
- 不動産経済研究所「首都圏新築マンション市場動向 2025年8月」 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 国土交通省「住宅宿泊事業法に関する手引き(改訂版2025)」 – https://www.mlit.go.jp
- 国税庁「観光産業強化税制の概要(2025年度)」 – https://www.nta.go.jp
- 観光庁「インバウンド対応施設整備補助金 公募要領 2025」 – https://www.mlit.go.jp/kankocho
- 大阪市経済戦略局「民泊騒音対策設備導入支援事業 2025」 – https://www.city.osaka.lg.jp