多忙な仕事を続けながら安定した不労所得を得たい――そんな思いから収益物件に関心を寄せる人は年々増えています。しかし物件選びを誤ると、空室や修繕費に悩まされ「不労」どころか「本業以上の労力」を要する事態にもなりかねません。本記事では、初めてでも実践しやすい収益物件の選び方を、立地・資金・管理・税制の4視点から体系的に解説します。読み終えた頃には、自分に合った投資戦略を描けるようになるはずです。
収益物件で不労所得が生まれる仕組み

まず押さえておきたいのは、家賃収入が不労所得となるまでの現金の流れです。家賃総額からローン返済や管理費、固定資産税などを差し引き、最終的に手元に残る金額がキャッシュフローと呼ばれます。
実際に不労所得を実感できるかどうかは、このキャッシュフローが毎月プラスで安定しているかに尽きます。国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査」によると、自己資金比率20%以上で購入した物件の約7割が5年連続黒字を維持しています。つまり適切な自己資金と返済計画を組めば、初心者でも黒字化は十分可能です。
一方で空室が発生すると家賃収入が途絶え、固定費だけが出ていく点に注意が必要です。首都圏の平均空室率は約11%ですが、築年数20年超の地方物件では20%を超えるケースも珍しくありません。立地や物件スペックがキャッシュフローに与える影響は大きく、この後の見出しで詳しく触れます。
結論として、収益物件で不労所得を得るには「安定した家賃収入」「適正な運営コスト」「長期的な空室対策」の三本柱を揃えることが前提条件となります。
まず押さえておきたい立地と需要の読み方

重要なのは、将来にわたり需要が継続するエリアを選ぶことです。単に駅から近いだけでなく、人口動態や再開発計画を合わせて確認すると、空室リスクを大幅に下げられます。
例えば東京都心部では、千代田区や港区の人口は伸び悩んでいるものの、単身世帯比率は過去10年で1.3倍に増加しました。ワンルーム需要が底堅いと分かれば、多少築年数が古くても一定の賃料を維持しやすいと判断できます。また、国勢調査の町丁別データを地図上に重ねれば、通勤時間30分圏内でも人口微減の地域と微増の地域が混在していることが一目瞭然です。
一方で郊外のファミリー向け物件は、学区や商業施設の充実度が決め手になります。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、2024年以降は子育て世帯の郊外回帰が再び進んでおり、駅徒歩15分以内かつ保育園併設の大型分譲跡地は高い入居率を維持しています。つまりターゲットとなる入居者像を明確にし、それに合う社会インフラを持つエリアを選ぶことがポイントです。
最後に、近隣競合物件の賃料水準を調査しましょう。REINSや不動産情報サイトで似た条件の平均賃料を把握し、想定家賃が過度に楽観的でないか確認します。ここで5〜10%控えめな数字を使うと、後々の修繕や金利上昇にも耐えやすい計画になります。
資金計画と融資条件を最適化する方法
ポイントは、自己資金と融資期間のバランスを最初に固めることです。自己資金を厚くすれば返済負担は軽くなりますが、手元資金が枯渇すると突発的な修繕に対応できません。目安として物件価格の25%を頭金に充て、さらに家賃6か月分の予備費を別口座で確保すると安心です。
金利選択にも注意が必要です。2025年9月時点で地方銀行の投資用不動産ローンは固定2.3%前後、変動1.5%前後が主流ですが、今後の金利上昇リスクを考えると、返済比率(年間返済額÷年間家賃収入)は30%以内に抑えるのが望ましいといえます。日本銀行が2024年3月にマイナス金利を解除して以降、長期金利は緩やかに上昇傾向にあるため、固定金利で安全領域を確保する投資家が増えています。
収支シミュレーションは3段階で作りましょう。第一に「想定通り」のケース、第二に「空室率15%、金利+1%」のストレスケース、第三に「購入後10年で大規模修繕」が重なる最悪ケースです。この3つでキャッシュフローが赤字にならないか検証すれば、長期運用の耐性を客観的に測れます。
また、法人化のタイミングも資金計画と密接です。所得が年間900万円を超える見込みなら、法人税実効税率が個人の最高税率より低くなり、節税効果が出始めます。ただし設立・会計コストが増えるため、複数棟を保有する中長期計画があるかどうかで判断すると良いでしょう。
実は管理体制で長期収益が決まる
まず押さえておきたいのは、外部管理会社を選ぶ基準です。賃料集金や入居者募集の手数料だけで比較しがちですが、入居審査の厳格さやクレーム対応の早さが空室期間を大きく左右します。
たとえば管理戸数1万戸を超える大手はブランド力で入居付けが早い一方、担当者が頻繁に変わり細やかな報告が遅れがちです。逆に地域密着型の中小会社は担当者が固定されやすく、軽微なトラブルを現場で即座に処理してくれる傾向があります。オーナーとしては、月1回の定期報告と退去時の原状回復見積もりを48時間以内に提示するなど、具体的なサービス水準を契約書に盛り込みましょう。
建物管理も見逃せません。共用部の清掃頻度やLED照明の設置は一見細かな項目ですが、入居者の満足度に直結します。国土交通省「賃貸住宅管理業法」では2021年以降、管理受託契約の書面化と重要事項説明が義務化されました。2025年現在、登録事業者でない管理会社は違法となるため、必ず登録番号を確認してください。
最後に、レントロール(賃貸借条件一覧)の更新を年1回以上行うことをおすすめします。更新時に周辺相場と乖離した賃料を是正すれば、入居者の退去防止と家賃下落の抑制を同時に実現できます。ここまでの仕組みを整えることで、文字通り「労力ゼロ」に近い形で賃料収入を享受できるでしょう。
2025年度の税制・制度を活かすポイント
実は、2025年度も投資用不動産に直接的な補助金はありませんが、税制優遇と環境性能向上の支援制度を組み合わせるとキャッシュフローを向上させられます。代表的なのが「住宅耐震改修特別控除」と「ZEH-M支援事業」です。
住宅耐震改修特別控除(2025年度)は、築25年以上の木造アパートを耐震基準適合に改修した際、改修費用の10%(上限250万円)が所得税から控除される仕組みです。控除額は1棟当たりでなく納税者単位なので、法人保有なら法人税、個人なら所得税で適用できます。控除を受けるためには、改修後3か月以内に適合証明を取得し、翌年の確定申告で提出する必要があります。
ZEH-M支援事業(集合住宅のネット・ゼロ・エネルギー化補助)は、2025年度も予算が継続し、断熱強化や太陽光発電を導入する新築物件に対し1戸あたり最大70万円の補助が得られます。さらに登録免許税と固定資産税がそれぞれ50%、25%軽減されるため、初期費用とランニングコストを同時に下げられます。期限は2026年3月着工分までなので、新築区分や一棟物を検討する場合は早めの申請が不可欠です。
このほか、減価償却費は課税所得を圧縮する基本的な手法です。築古木造なら耐用年数22年から4年の簡便法が使え、初期数年で大きく費用計上できます。ただし短期で減価償却を取りすぎると、売却時に譲渡所得税が重くなるため、保有期間と出口戦略を合わせて検討しましょう。
こうした制度は年ごとに変更されるため、国土交通省や経済産業省の最新発表を確認し、税理士と綿密に相談することが成功への近道です。
まとめ
ここまで、不労所得を生む収益物件の選び方を立地・資金・管理・税制の4軸で解説しました。需要が続くエリアを選び、自己資金25%と返済比率30%以内で計画を立て、登録管理会社と具体的なサービス水準を契約し、2025年度の税制優遇を最大限活用すれば、安定したキャッシュフローを実現できます。読者の皆さんも今日から情報収集を始め、自分の投資目的に合った物件を一本ずつ増やしていく行動を起こしてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査(令和6年度版) – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告(2024年版) – https://www.soumu.go.jp
- 日本銀行 金融政策決定会合議事要旨(2024年3月) – https://www.boj.or.jp
- 国勢調査 町丁別人口・世帯数(2020年) – https://www.stat.go.jp
- 国土交通省 賃貸住宅管理業法ガイドライン – https://www.mlit.go.jp/housoukanri
- 経済産業省 ZEH-M支援事業 2025年度公募要領 – https://www.enecho.meti.go.jp