不動産の税金

実家を賢く守る相続対策 体験談集

不動産を含む相続は「遠い未来の話」と感じがちですが、相続税の基礎控除が縮小した2015年以降、課税対象となる家庭は確実に増えています。突然の相続で資金繰りに困り、せっかくの実家や収益物件を手放したという相談も後を絶ちません。本記事では、筆者自身と相談者から得たリアルな「相続対策 体験談」を交えつつ、2025年10月時点で有効な制度や専門家活用のコツを解説します。最後まで読めば、自分に合った対策のヒントと行動プランが明確になります。

相続対策が必要になる背景

相続対策が必要になる背景のイメージ

まず押さえておきたいのは、相続税の課税割合が年々上昇している事実です。国税庁の2024事務年度統計によると、死亡者に占める課税対象割合は10.6%と10年前のほぼ2倍になりました。理由は基礎控除の縮小だけでなく、都市部の不動産価格上昇が続いたことも大きいです。例えば東京都23区の住宅地価格は、総務省地価公示で2025年までの5年間に平均18%上昇しています。つまり「うちは普通の家庭だから大丈夫」と油断していると、評価額の急増で税負担が想定外になる恐れがあります。

一方で、相続対策は早く始めるほど選択肢が増えます。贈与税の暦年課税制度は年間110万円まで非課税ですが、10年続ければ合計1100万円を無税で移転できます。さらに2024年改正で相続財産加算の「7年ルール」が導入されましたが、2025年度も基礎控除内なら大きな影響は限定的です。こうしたルールを正確に理解し、計画的に活用することが節税の出発点になります。

贈与と法人化のリアルな選択肢

贈与と法人化のリアルな選択肢のイメージ

ポイントは、生前贈与と不動産管理法人のどちらが自分の状況に適するか見極めることです。私が相談を受けた港区在住のAさんは、賃貸マンション1棟を持つ会社員で、評価額1億5000万円が相続税の課税ラインを超えていました。Aさんは子ども二人に毎年100万円ずつ贈与しながら、並行して不動産の一部を資本金として管理法人を設立しました。法人へ移すことで所得分散が可能になり、年間の所得税と住民税が約120万円減少したと報告しています。

一方で、生前贈与だけに頼ると「持ち分」が分散し、将来の修繕や売却決定が難しくなる場合があります。特に兄弟姉妹間で意見が合わないケースでは、共有名義がトラブルの種になります。法人化なら株式に換えることで意思決定を一本化しやすく、議決権の調整も柔軟です。ただし、法人設立費用およそ30万円と毎年の会計・税務コストがかかるため、物件規模が小さいと費用倒れになります。つまり、贈与と法人化はメリットとデメリットを比較し、家族構成や物件規模に合わせて組み合わせる発想が欠かせません。

築古アパートを活用した節税の実例

実は、評価額を抑える手段として「築古アパートへの投資」が現場では注目されています。筆者の実家では、2023年に築30年の木造アパート(購入価格4000万円)を取得し、2025年現在も満室経営が続いています。国税庁の財産評価基本通達によれば、建物の相続税評価額は固定資産税評価額を利用するため、購入価格の約40%となりました。この結果、キャッシュフローは年間150万円の黒字を生み出しながら、評価圧縮で将来の相続税額が約700万円下がる試算になっています。

ただし築古アパートは修繕リスクが高いため、購入前に長期修繕計画を描くことが重要です。筆者の場合も外壁と屋根に400万円を投じ、空室リフォームに備えて別途300万円の積立を実践しています。また、賃貸需要を確かめるため周辺5物件の空室率を半年追跡し、平均8%以内で推移することを確認しました。こうしたデータに基づく投資判断が、節税だけでなく安定収益を両立させるカギになります。

家族会議で見えた効果と落とし穴

重要なのは、制度活用より先に「家族間の合意形成」を進めることです。相続を巡る争いは、法務省の遺産分割調停件数が2024年に1万6000件を超え、10年前より14%増えています。筆者の実家では、税理士を交えた家族会議を3回開催し、それぞれの希望と不安を洗い出しました。結果として母は自宅を住み続ける権利を確保しつつ、賃貸アパートの株式を子どもへ段階的に移す方針で一致しました。

しかし家族会議は感情論になりやすく、議事録を残さないと後で「言った・言わない」の対立が起こります。筆者はオンライン共有ドキュメントに全員分の発言と決定事項を整理し、後日のトラブル予防に役立てました。また、介護が必要になった場合の費用負担や居住権の扱いも論点になります。公正証書遺言や家族信託を活用すると、万一の判断能力低下にも備えられるため、早期の専門家相談が現実的です。

専門家に依頼するタイミングと費用感

まず専門家選びで迷う人は、税理士と司法書士の役割を区別しましょう。税理士は税金計算と申告書作成が主業務で、2025年度の相続税申告報酬は財産額1億円で平均70万円前後が相場です。一方、司法書士は遺産分割協議書の作成や登記移転を担当し、報酬は物件1件あたり10万円前後が一般的です。複雑なケースでは弁護士を加えると安心ですが、着手金30万円程度からとなるため費用対効果を見極める必要があります。

私が同行したBさん一家は、相続財産総額9000万円で税理士報酬65万円、司法書士報酬15万円でした。親族間の争いはなかったため、弁護士費用は不要でしたが、税理士が不動産の路線価評価を適正に下げ、税額を約120万円圧縮できたため、報酬以上のメリットが得られました。つまり、相談費用を惜しんで自己判断に頼ると、かえって税負担が増えることがあります。目安として財産額5000万円を超えたら、早期に専門家へ試算を依頼し、複数見積もりを比較する姿勢が重要です。

まとめ

本記事では、贈与や法人化、築古アパート投資など多様な「相続対策 体験談」を通じて、2025年時点の制度と実務の要点を紹介しました。課税対象者が増える今こそ、家族で資産を見える化し、専門家の助言を受けながら長期計画を立てることが不可欠です。最初の一歩として、財産目録を作り、贈与可能額や法人設立の採算を簡単に試算してみてください。行動を先延ばしにしなければ、大切な実家や収益物件を守りつつ、家族の絆も強まるはずです。

参考文献・出典

  • 国税庁 – https://www.nta.go.jp
  • 総務省地価公示 – https://www.mlit.go.jp
  • 法務省 司法統計 – https://www.moj.go.jp
  • 日本税理士会連合会 – https://www.nichizeiren.or.jp
  • 全国賃貸住宅新聞社データ – https://www.zenchin.com

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