不動産投資に興味はあるものの、「税金の仕組みが複雑で自分には難しそう」と感じている方は多いのではないでしょうか。実は、基本的なルールを正しく理解すれば、所得税や住民税を効率的に減らすことができます。さらに、節税によって手元に残るお金が増えれば、次の投資資金としても活用できるため、資産形成のスピードが加速します。
本記事では、2025年最新の税制改正を踏まえながら、不動産投資における節税の基礎から応用までをわかりやすく解説します。どのような経費が認められるのか、どんな手続きが必要なのかを理解することで、具体的な行動計画を立てられるようになるはずです。
不動産投資で節税できる仕組みとは

不動産投資が節税に有効な理由は、「事業」として認められている点にあります。サラリーマンの給与所得とは異なり、不動産投資では家賃収入から必要経費を差し引いた金額に対して課税されます。つまり、経費として認められる支出が多ければ多いほど、課税対象となる所得を減らせるということです。
国税庁の統計によると、2023年度に不動産所得を申告した個人のうち、約65%が経費計上によって課税所得を圧縮しています。代表的な経費としては、管理会社への委託料、建物の修繕費、住宅ローンの利息部分などが挙げられます。これらを適切に計上することで、実際に支払う税金を大幅に抑えられるケースも珍しくありません。
また、日本の所得税は累進課税制度を採用しています。課税所得が増えるほど税率が高くなる仕組みのため、経費計上によって課税所得を下げられれば、適用される税率そのものも低くなる可能性があります。年収が高い会社員ほど、不動産投資による節税効果が大きくなるのはこのためです。
ただし、経費として認められない支出を無理やり計上すると、税務調査で否認されるリスクがあります。たとえば、家族旅行の費用を「物件視察費」として処理するような行為は、指摘を受けやすい典型例です。領収書をきちんと保管し、その支出が不動産収入を得るために必要だったと説明できる状態にしておくことが大切です。
減価償却を味方につける具体的な方法

不動産投資における最大の節税ツールが「減価償却」です。減価償却とは、建物の購入費用を一度に経費化するのではなく、法定耐用年数にわたって少しずつ経費として計上していく会計処理のことを指します。この仕組みの最大の特徴は、実際にお金が出ていかないのに経費を計上できる点にあります。
建物の法定耐用年数は構造によって異なります。木造アパートであれば22年、RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションであれば47年が基準となります。新築物件を購入した場合は、この年数で建物価格を割った金額が毎年の減価償却費になります。一方で、中古物件を購入した場合は計算方法が異なり、より短期間で償却できるケースがあります。
たとえば、築30年の木造戸建てを購入した場合を考えてみましょう。法定耐用年数の22年をすでに超えているため、簡便法と呼ばれる計算方法が適用されます。具体的には「法定耐用年数×20%」で残存耐用年数を算出するため、22年×20%で4年となります。つまり、建物価格を4年間で一気に償却できるのです。
この短期間での償却を活用すれば、購入後数年間は帳簿上で大きな赤字を計上できます。不動産所得の赤字は給与所得など他の所得と「損益通算」できるため、結果として所得税や住民税の還付を受けられる可能性があります。高所得者が築古物件を購入して節税するスキームは、この仕組みを利用したものです。
ただし、注意点もあります。建物と設備の区分けを過度に細分化する「コストセグリゲーション」という手法は、税務署から否認される可能性があります。設備部分を分離して短期間で償却しようとする場合は、建築士による内訳証明書を取得するなど、根拠資料をしっかり揃えておくことが重要です。
青色申告で得られる3つのメリット
不動産投資を始めたら、確定申告の方法として「青色申告」を選択することを強くおすすめします。青色申告には、白色申告にはない税制上の優遇措置が複数用意されているからです。2025年度においても、これらの優遇措置は継続されています。
最も大きなメリットは「青色申告特別控除」です。e-Taxを利用して電子申告を行うことで、最大65万円の控除が受けられます。この控除は所得税だけでなく住民税にも適用されるため、合計で年間約15万円前後の節税効果が期待できます。帳簿付けの手間はかかりますが、その価値は十分にあると言えるでしょう。
2つ目のメリットは「専従者給与」の活用です。配偶者や親族を従業員として雇用し、給与を支払うことで経費として計上できます。たとえば、配偶者に月額8万円の給与を支払えば、年間96万円を経費にできるのです。ただし、支払額が業務内容に見合わない高額な場合は、税務調査で否認されるリスクがあるため注意が必要です。
3つ目は「損失の繰越控除」です。青色申告では、不動産所得の赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。初年度に大規模な修繕を行って赤字になった場合でも、翌年度以降の黒字と相殺することで、長期的な税負担を平準化できます。この制度を知っているかどうかで、投資計画の立て方が大きく変わってきます。
法人化を検討すべきタイミングとは
不動産投資の規模が大きくなってくると、「法人化」を検討する段階がやってきます。個人として投資を続けるか、会社を設立して法人名義で物件を保有するかは、年間所得や将来の事業計画によって判断が分かれます。
法人化の最大のメリットは、税率の違いにあります。個人の所得税は累進課税で最高税率が45%に達しますが、法人税の実効税率は中小法人で約23%程度に抑えられています。不動産所得が年間900万円を超えるあたりから、法人化による節税効果が個人での投資を上回るケースが増えてきます。
また、法人であれば役員報酬として所得を分散することが可能です。自分自身への報酬に加えて、家族を役員にして給与を支払えば、一人に集中していた所得を分けることができます。それぞれの所得が累進課税の低い税率帯に収まれば、トータルの税負担を大きく減らせます。さらに、将来的に退職金を支給することで、そのタイミングでも節税が可能です。
ただし、法人化にはデメリットもあります。設立時の登記費用や毎年の決算・申告にかかる税理士費用、さらには社会保険料の負担など、個人事業にはない固定コストが発生します。年間所得が500万円程度の段階で法人化すると、かえってコスト負担が増えてしまう可能性が高いでしょう。
まずは個人で青色申告を活用しながら投資規模を拡大し、所得が一定水準を超えたタイミングで法人化を検討するという段階的なアプローチが、実務上は最も効率的です。具体的な判断基準は個々の状況によって異なるため、税理士に相談しながら最適なタイミングを見極めることをおすすめします。
2025年度税制改正で押さえておきたいポイント
税制は毎年のように改正が行われるため、最新情報をキャッチアップしておくことが節税対策の基本となります。2025年度の税制改正では、不動産投資に関わるいくつかの重要なポイントがあります。
まず、固定資産税の負担調整措置が継続されている点です。住宅用地に対する課税標準の特例も延長されており、敷地の200㎡以下の部分については課税標準が6分の1に軽減されます。一棟マンションへの投資を検討している方にとっては、この特例を活用できるかどうかで固定資産税の負担が大きく変わってきます。
次に注目したいのが、中小企業経営強化税制です。ZEB(ゼロエネルギービル)基準を満たす高効率設備への投資を行った場合、特別償却または税額控除のいずれかを選択できます。法人で物件を所有している場合、共用部の照明をLEDに交換したり、空調設備を高効率機種に更新したりするタイミングでこの制度を活用すれば、通常の減価償却以上の節税効果が得られます。ただし、設備投資計画の認定を事前に受ける必要があるため、施工会社や税理士との早めの連携が欠かせません。
さらに、2023年10月に導入されたインボイス制度の影響も考慮すべきです。課税事業者を選択したオーナーは、仕入税額控除によって消費税の実質負担を軽減できます。賃貸住宅の家賃収入は消費税が非課税ですが、外壁塗装や大規模修繕、管理委託費などの支出には消費税が含まれています。適格請求書(インボイス)を受け取れる管理会社や工事業者を選定することが、キャッシュフローの改善につながる時代になっています。
節税効果を最大化する日常の管理術
節税対策は、年に一度の確定申告時だけ頑張れば良いというものではありません。日々の管理を仕組み化することで、経費の計上漏れを防ぎ、節税効果を最大限に引き出すことができます。
基本となるのは、領収書や請求書の電子保存です。2024年1月から電子帳簿保存法の完全義務化が始まり、電子データで受け取った書類は電子データのまま保存することが必要になりました。クラウド会計ソフトを導入して銀行口座やクレジットカードと連携させれば、取引データが自動で取り込まれ、仕訳作業の手間が大幅に削減できます。人為的なミスも減らせるため、正確な帳簿管理が可能になります。
月次での試算表チェックも習慣化したいところです。毎年1月から2月の確定申告シーズンにまとめて処理しようとすると、領収書の紛失や記憶違いによる計上漏れが発生しやすくなります。月に一度でも収支状況を確認しておけば、家賃の入金遅延や想定外の修繕発生を早期に把握できます。また、年末時点で利益が大きくなりそうだとわかれば、翌年に予定していた設備投資を前倒しするなど、タイムリーな節税対策を講じることも可能です。
税務調査への備えも忘れてはいけません。物件の写真、工事の見積書、契約書などを一元管理しておくと、いざというときの説明がスムーズになります。最近ではオンラインストレージにタイムスタンプ機能が搭載されているサービスも増えており、保存日時の証明にも活用できます。日頃からの管理体制を整えることは、節税と同時に長期的なリスクヘッジにもつながるのです。
まとめ
不動産投資における節税は、複雑に見えて実は基本を押さえれば誰でも実践できるものです。経費計上の幅広さを理解し、減価償却を戦略的に活用し、青色申告の特典をフル活用することが第一歩となります。投資規模が拡大してきたら、法人化のタイミングを見極めることで、さらなる税負担の軽減が可能になります。
2025年度の税制改正では、固定資産税の特例措置やカーボンニュートラル関連の優遇税制など、活用できる制度が複数あります。これらの情報をキャッチアップしながら、日々の帳簿管理を仕組み化することで、節税効果を最大限に引き出せるはずです。まずは月次での収支確認と、認められる経費の漏れなき計上から始めてみましょう。小さな積み重ねが、長期的な資産形成において大きな差を生み出します。
参考文献・出典
- 国税庁 – https://www.nta.go.jp
- 総務省統計局 – https://www.stat.go.jp
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱」 – https://www.mof.go.jp
- 経済産業省 中小企業経営強化税制パンフレット – https://www.meti.go.jp
- 国土交通省 住宅・建築物省エネ改修支援事業資料 – https://www.mlit.go.jp