不動産の税金

不動産投資を現金一括で始めるメリットと注意点

不動産投資に興味はあるものの、「ローンを組むのは不安」「借金せずに始めたい」と悩む方は少なくありません。自己資金だけで物件を購入する現金一括の手法には、初心者にとって見逃せない利点があります。

本記事では、現金一括購入のメリット・デメリットをローン利用と比較しながら解説します。2025年の制度や金融環境を踏まえた実践ステップも紹介しますので、自分に合った資金計画を描く参考にしてください。

現金一括購入とローン利用の比較

現金一括購入とローン利用の比較

まず、現金一括購入とローン利用の違いを整理しましょう。下表のとおり、両者はリスクとリターンの構造が大きく異なります。

項目 現金一括 ローン利用
金利リスク なし あり(変動金利は特に注意)
レバレッジ効果 なし 自己資金の数倍規模で投資可能
キャッシュフロー 返済負担ゼロで安定 返済額分を差し引く必要あり
購入スピード 審査不要で早い 審査に1〜2か月かかる場合も
団体信用生命保険 利用不可 加入可能(万一の際に残債免除)
抵当権設定 なし あり
節税余地 ローン利息控除は使えない 利息を経費計上可能

日本銀行は2025年6月の金融政策決定会合で無担保コールレートを0.5%程度に据え置きましたが、長期的には金利上昇が見込まれています。金利変動の影響を受けない現金一括は、安定志向の投資家にとって有力な選択肢です。

現金一括購入のメリット

現金一括購入のメリット

金利リスクを完全に排除できる

現金一括購入の最大のメリットは、金利変動の影響を一切受けない点です。変動金利で借りた場合、金利が1%上昇するだけで年間返済額は数十万円増える可能性があります。現金一括なら、こうした不確実性を排除できます。

購入スピードと交渉力が高まる

融資審査が不要なため、契約から決済までの期間を大幅に短縮できます。売主にとって早期決済は大きなメリットとなるため、5%前後の価格交渉に成功するケースも珍しくありません。

キャッシュフローが安定する

ローン返済がないため、家賃収入の大部分が手残りになります。表面利回り5%の物件を2,800万円で購入した場合、年間家賃約140万円がほぼそのままキャッシュフローとなります。空室が出ても返済に追われないため、精神的な余裕を保てます。

抵当権が付かない安心感

ローンを組むと物件に抵当権が設定されますが、現金一括なら抵当権は付きません。売却時の手続きが簡素化され、相場上昇時に即時売却でキャピタルゲインを確定しやすい点も強みです。

現金一括購入のデメリット

流動性が低下するリスク

自己資金をすべて不動産に固定すると、急な資金需要に対応できません。手元に少なくとも半年分の生活費と予備費を残すことが重要です。年間家賃収入の20%程度を修繕積立として留保する「内部留保」の確保も欠かせません。

レバレッジ効果を得られない

ローンを使えば自己資金2,800万円で複数戸を保有できる可能性がありますが、現金一括では1戸分の投資に限られます。資産拡大スピードを重視する場合はデメリットとなります。

団信を利用できない

ローン利用時に加入できる団体信用生命保険は、契約者が死亡した場合に残債が免除される仕組みです。現金一括では団信が使えないため、遺族への資産承継を別途検討する必要があります。

節税手段が限定される

ローン利息は経費として計上できますが、現金一括ではこの控除が使えません。ただし、減価償却費は取得方法にかかわらず計上可能です。築22年超の木造物件なら残存耐用年数4年で短期償却でき、所得圧縮効果が期待できます。

投資家タイプ別の判断基準

現金一括とローン利用のどちらが適しているかは、投資家の属性や目的によって異なります。

投資家タイプ おすすめ手法 理由
自己資金に余裕がある 現金一括 金利負担なく安定運用が可能
勤続年数が短い・収入が不安定 現金一括 融資審査が厳しく通りにくい場合に有効
資産拡大スピードを重視 ローン利用 レバレッジで複数物件を取得可能
初心者でリスクを抑えたい 現金一括 返済リスクがなく学びながら運用できる

判断材料として「利回りギャップ(イールドギャップ)」も重要です。物件の表面利回りから借入金利を引いた値が2%以上あればローン活用の優位性が高まります。現在の金利環境では、利回り5%の物件に2%台で借りると利回りギャップは約3%となり、レバレッジを効かせる意味があります。

2025年度の制度と金融環境

2025年度は現金一括投資家にとって追い風となる制度がいくつかあります。

  • 不動産取得税の特例措置:一定の耐震基準を満たす中古住宅は課税標準が1,200万円控除されます(2026年3月31日まで有効)。
  • 既存住宅省エネ改修補助金:登録事業者を通じた断熱改修で工事費の1/3・上限120万円を受給可能です。省エネ性能向上は空室対策にもつながります。
  • 日本政策金融公庫の生活衛生貸付:リフォーム資金を年1.5%程度で借りられます。本体は現金で購入し、改修のみ低利で借りるハイブリッド戦略も検討に値します。

令和7年第1四半期の不動産価格指数では、住宅価格は前四半期比0.3%上昇にとどまり、横ばい傾向が続いています。過度な値上がりが一服した今は、買い手にとって交渉しやすいタイミングといえるでしょう。

現金一括を活かす実践ステップ

現金一括購入を成功させるための具体的なステップを紹介します。

ステップ1:資金計画を立てる

物件価格の110%を購入資金の上限とし、残りを流動資産として確保します。諸費用は物件価格の6〜8%が目安です。例えば2,800万円の物件なら約200万円の諸費用を見込んでおきましょう。

ステップ2:エリアと物件を選定する

賃貸需要の高いエリアを選ぶことが重要です。人口動態と鉄道アクセスを重視し、管理組合の積立金や長期修繕計画が健全かどうかも確認してください。

ステップ3:価格交渉と契約

現金一括は売主にとって早期決済のメリットがあるため、価格交渉を有利に進められます。5%前後の値引きを目標に交渉しましょう。

ステップ4:入居者募集と運営

購入後は室内クリーニングや設備更新を早めに行い、入居者募集に備えます。省エネ補助金を活用してエアコンやLED照明を更新すれば、自己負担を抑えつつ家賃維持につなげられます。

ステップ5:出口戦略の検討

5年ごとに周辺成約事例を調査し、資産価値を点検します。ローン残債がないため、相場上昇時には即時売却でキャピタルゲインを確定しやすく、下落局面でも賃料収入があれば保有を続ける選択肢が残ります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 現金一括で始めるには最低いくら必要ですか?

物件価格に加え、諸費用として6〜8%を見込みます。1,000万円の物件なら約1,100万円が目安です。さらに半年分の生活費と予備費を手元に残しましょう。

Q2. 団信が使えないデメリットへの対策は?

生命保険や収入保障保険で遺族への資産承継をカバーする方法があります。保険料と保障内容を比較検討してください。

Q3. 現金一括とローンを併用する方法はありますか?

本体は現金で購入し、リフォーム費用のみ日本政策金融公庫の低利融資を活用するハイブリッド戦略が有効です。

Q4. 節税効果を高めるにはどうすればよいですか?

青色申告特別控除65万円を活用し、減価償却費を最大化できる築古物件を選ぶと課税所得を抑えられます。小規模企業共済やiDeCoとの併用も検討しましょう。

まとめ

現金一括購入には、金利リスクの排除・キャッシュフローの安定・交渉力の向上といったメリットがあります。一方で、流動性の低下・レバレッジ効果を得られない・団信を利用できないといった課題も存在します。

自分の資金量とリスク許容度を把握し、制度活用や改修投資を組み合わせることで、現金一括は堅実かつ再現性の高い戦略となります。まずは購入総額の110%を上限に資金を確保し、需要の強いエリアで良質な物件を探すことから始めてみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/
  • 日本銀行 金融政策決定会合 2025年6月 – https://www.boj.or.jp/
  • 総務省 人口推計 – https://www.stat.go.jp/
  • 環境省 既存住宅省エネ改修補助金 – https://www.env.go.jp/
  • 日本政策金融公庫 生活衛生貸付 – https://www.jfc.go.jp/

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