不動産の税金

不動産投資を現金一括で買うメリット

不動産投資に興味はあっても、ローンを組むことに不安を感じる人は少なくありません。金利上昇リスクや長期返済のストレスを考えると、「現金一括で買えたら楽なのに」と感じるのは自然なことです。本記事では、現金一括購入がもたらすメリットと注意点をわかりやすく解説します。資金計画から税制まで最新情報を整理するので、読み終える頃には自分に最適な資金調達方法を判断できるはずです。

現金一括購入とは何か

現金一括購入とは何かのイメージ

まず押さえておきたいのは、現金一括購入の定義です。これは物件価格と諸費用をすべて自己資金で支払い、金融機関からの借入を一切行わない取引を指します。住宅ローン控除などの優遇策は原則使えませんが、返済義務がないため精神的負担は軽くなります。現金を準備するには相応の時間がかかりますが、近年は株式や暗号資産で得た利益を投資に回す人も増え、手元資金で不動産を買うケースが身近になりつつあります。

一括購入では購入時の諸費用が総額の約6〜8%程度に収まることが多く、融資関連費用が不要な点が特徴です。たとえば3,000万円の区分マンションを買う場合、ローン利用時に発生する保証料や事務手数料を合わせて100万円前後節約できる計算になります。つまり、初期費用を抑えながら手残りを最大化できる点が魅力だと言えます。

また、取引スピードが速いのも一括購入の利点です。売主は融資審査待ちによる決済遅延を嫌うため、現金買付けに対して優先交渉権を与える傾向があります。結果として好条件の物件を競合より先に押さえやすくなるのです。

キャッシュフローとリスク低減の効果

キャッシュフローとリスク低減の効果のイメージ

重要なのは、現金一括がキャッシュフローに与えるインパクトを正しく理解することです。毎月の返済がないため、家賃収入の大半をそのまま手元に残せます。仮に表面利回り6%の物件を購入した場合、管理費や固定資産税を差し引いても年4%前後の純利回りが期待できます。融資利用で返済比率が高い投資家に比べ、資金ショートに陥るリスクは大幅に下がります。

空室や家賃下落への耐性も強化されます。例えば30平米の都心ワンルームで家賃8万円が1カ月空室になっても、ローン返済がなければ赤字にはなりません。これが自己資金2割・ローン8割で購入していれば、空室1カ月で収支はマイナスに転じるでしょう。言い換えると、現金一括は収益のブレを小さくし、長期保有を可能にする防波堤となります。

さらに、金利変動リスクを完全に排除できる点も見逃せません。日銀が2024年末にマイナス金利を解除し、2025年は緩やかな利上げが続くと予想されています。変動金利ローンを抱える投資家は利払い負担増に備える必要がありますが、一括購入であれば金利上昇は直接的な脅威になりません。安定した家賃収入を確保しつつ、将来の売却時に値上がり益も狙う“ダブルリターン”戦略を取りやすくなります。

金融機関を使わないという戦略的メリット

ポイントは、金融機関を使わない自由度の高さです。融資を受ける場合、貸出条件により物件種別や築年数、エリアが制約されます。特に地方築古アパートやリゾート物件は融資付けが難しく、資金調達に苦労します。一括購入なら融資審査基準を気にせず、潜在的に高利回りのニッチな市場へも参入可能です。

さらに、不動産投資 現金一括 メリットの一つとして、交渉力の強さが挙げられます。売主は「ローン特約による解約リスク」を嫌うため、現金買主には価格交渉で5%程度の値引きに応じるケースが珍しくありません。3,000万円の物件なら150万円のディスカウントが期待でき、これだけで実質利回りを0.3〜0.4ポイント引き上げる効果があります。

加えて、将来的に別の投資チャンスを捉える際の信用力向上も大きなメリットです。現金で不動産を保有すると、金融機関からは担保価値を評価されたうえで追加融資の提案が届くことがあります。つまり、最初は現金一括で“無借金経営”を確立し、次のフェーズでレバレッジをかける二段階戦略が選択肢に入るわけです。

2025年度の税制上のポイント

基本的に、資金調達方法が変わっても減価償却費や固定資産税評価額の計算方法は同じです。しかし、2025年度税制改正で不動産取得税の軽減措置が延長され、取得後3年以内に賃貸住宅として供する場合、課税標準から1,200万円が控除される制度が継続しています。現金一括でも適用可能なので、物件価格2,000万円の木造アパートなら取得税負担を約12万円減らせます。

また、登録免許税の軽減措置も2025年3月31日までだった期限が2年間延長され、住宅用家屋の保存登記は0.15%(通常0.4%)に据え置かれました。投資用マンションを住宅として賃貸する場合にも要件を満たせば対象になります。ローン利用者が受けられる住宅ローン控除は当然使えませんが、それを補う形で取得時コストを下げられる点は知っておくと得です。

一方、相続税対策で重視される小規模宅地等の特例は、現金一括かローン利用かを問いません。相続開始前3年以上賃貸していれば、貸付事業用宅地として50%評価減が可能です。現金購入で借入金がないと債務控除は使えませんが、物件評価減と家賃収入の両方を享受できるため、資産形成と承継を同時に設計できます。

現金一括に向く投資家と注意点

実は、現金一括が万能というわけではありません。手元資金をすべて物件に注ぎ込むと、緊急時の流動性が不足するリスクがあります。日本政策金融公庫の「中小企業景況調査」によると、突発的な修繕費は築20年以上のアパートで1戸あたり年間平均12万円に上ります。万一の設備故障に備え、購入価格の5〜10%を別枠で確保しておくことが現実的です。

また、レバレッジ(てこの原理)を活用できないため、資金効率はローン利用より劣る場合があります。自己資金1億円で利回り6%の物件を現金購入すると年収入は600万円ですが、同じ資金を頭金2,000万円×5物件に分散し、残りをローンで賄えば年収入は1,500万円前後まで伸びる可能性があります。資産規模を拡大したい場合は、一括とローンのハイブリッド戦略を検討する価値があります。

さらに、資金を一つの物件に集中させると地震や地域経済の変動に影響されやすくなります。国土交通省「地価LOOKレポート」では、地方圏の商業地で下落傾向が続くエリアも報告されています。地域分散を図るか、J-REITや国内株式と組み合わせるポートフォリオ運用を行うことでリスクを相殺できます。

最後に、購入時の名義にも注意が必要です。家族の将来的な相続を見据えるなら、持分を分ける共同名義や法人名義を検討しましょう。法人化すれば所得分散による節税効果が期待でき、赤字の場合は損失繰越が最長10年間可能です。ただし、法人維持費や税理士報酬が発生するため、年間家賃収入が900万円を超えるかどうかが一つの目安となります。

まとめ

現金一括購入は、返済リスクをゼロにして安定したキャッシュフローを得られる手堅い手法です。金利上昇や融資審査の制約を避けられるうえ、値引き交渉や税制軽減策を活用すれば初期コストも抑えられます。一方で、資金効率や流動性の低下などデメリットも存在するため、自己資金の範囲と将来の投資計画を照らし合わせて判断することが大切です。まずは現金一括とローン活用を比較するシミュレーションを行い、自分に合った資金調達戦略を立ててみましょう。

参考文献・出典

  • 国土交通省「住宅市場動向調査 2025」 – https://www.mlit.go.jp
  • 国土交通省「地価LOOKレポート 第4四半期」 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo
  • 日本銀行「金融システムレポート 2025年4月」 – https://www.boj.or.jp
  • 法務省「不動産登記統計 2025年版」 – https://www.moj.go.jp
  • 総務省統計局「家計調査 家計収支編」 – https://www.stat.go.jp
  • 日本政策金融公庫「中小企業景況調査 2025年度版」 – https://www.jfc.go.jp
  • 東京カンテイ「中古マンション価格推移レポート 2025」 – https://www.kantei.ne.jp

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