不動産の税金

新築収益物件で始める相続対策の基本

不動産を活用した相続対策に興味があっても、専門用語や制度が多く、最初の一歩でつまずく方は少なくありません。とくに新築や築浅の収益物件を使う方法は、節税効果と安定運用を同時に狙える一方で、購入価格が高めになる点が気になるところです。

本記事では、築十年以内の物件を中心に、相続税評価の考え方から2025年度の税制優遇、ローンを活用した債務控除、そして出口戦略までを丁寧に解説します。読み終えたときには、新築・築浅物件を使うメリットと注意点が整理でき、ご自身に合った相続対策の方向性が見えてくるはずです。

新築・築浅物件が相続対策に向く理由

新築・築浅物件が相続対策に向く理由

ポイントは、資産価値の目減りが小さい一方で、相続税評価額を時価より抑えられる点にあります。土地と建物を合わせても、現金で保有するより納税額が低くなる可能性が高いのです。

建物評価額の圧縮効果

建物の相続税評価は、固定資産税評価額を基準に計算されます。築浅でも評価額は建築費の5〜6割程度に圧縮されるため、現金で持つより税負担が軽くなります。さらに、賃貸に出している場合は「貸家」として3割程度の評価減が適用されます。

土地評価の仕組み

土地は路線価方式で評価され、公示地価の約8割が目安となります。賃貸用不動産の敷地は「貸家建付地」として、借地権割合と借家権割合に応じてさらに評価額が下がります。都市部では15〜20%程度の減額が見込めるケースが多いです。

以下の表は、現金1億円をそのまま相続する場合と、築浅の賃貸マンションに組み替えた場合の評価額の違いを示しています。

資産形態 相続税評価額 圧縮率
現金1億円 1億円 0%
築浅賃貸マンション(土地+建物) 約5,500万円〜6,500万円 35〜45%

国税庁の令和6年相続税申告データによると、相続財産のうち現金・預金が37.7%を占め、次いで土地が34.4%です。現金比率が高いほど課税対象が膨らむ傾向があるため、収益物件への組み替えは有効な分散策になります。

新築・築浅物件を選ぶ際のチェックポイント

新築・築浅物件を選ぶ際のチェックポイント

単に築年数が浅いだけでなく、賃貸需要を長期的に見込めるエリアを選ぶことが重要です。具体的には、人口が緩やかに増加している政令市や、大学・病院が集積する駅徒歩圏が狙い目となります。

空室率データの確認

立地を絞り込んだら、周辺の平均空室率を必ず調べましょう。東京都の住宅市場動向調査(2025年版)によると、23区内の築5年以内マンションの空室率は3.1%と、築20年以上の9.4%を大きく下回ります。ただし、築浅物件でも郊外やバス便エリアでは空室リスクが高まるため、データ確認は欠かせません。

売主の属性と瑕疵担保

価格交渉では、売主が個人か法人かで進め方が変わります。法人売主の物件は瑕疵担保保険が付帯しやすく、長期修繕計画が明示されるため安心材料となります。個人間売買のほうが値下げ余地が大きいケースもあるので、仲介会社に過去の成約事例を確認しておくと良いでしょう。

ローン活用による債務控除のメリット

相続対策で見落とされがちなのが、借入金を活用した「債務控除」です。相続税の計算では、被相続人の借入残高を課税財産から差し引くことができます。

たとえば、1億円の新築収益物件を8,000万円のローンで購入した場合、相続税評価額が6,000万円まで圧縮され、さらにローン残高7,500万円が債務として控除されると、課税上は資産がマイナスになる計算も成り立ちます。

項目 金額
物件購入価格 1億円
相続税評価額(圧縮後) 約6,000万円
ローン残高(債務控除) ▲7,500万円
差引課税対象 ▲1,500万円

ただし、融資期間は建物の法定耐用年数に左右されます。RC造マンションなら残存耐用年数の範囲で30年程度のローンを組めるため、月々のキャッシュフローも安定しやすくなります。

2025年度の税制優遇を活用する方法

2025年度も相続対策に使える代表的な制度は大きく三つあります。それぞれの適用要件を把握し、新築・築浅物件への投資計画に組み込みましょう。

小規模宅地等の特例

被相続人の自宅や賃貸用不動産の土地評価を減額できる制度です。賃貸経営用の「貸付事業用宅地等」なら、200㎡まで50%の評価減が適用されます。ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した宅地は適用外となる「3年縛りルール」があるため、早めの取得が肝心です。

住宅取得資金贈与の非課税枠

父母や祖父母からの贈与で最大1,000万円(省エネ住宅は1,500万円)まで非課税となります。2025年12月31日までの契約締結が要件です。子世代が自宅として使用する必要がありますが、将来的に賃貸へ転用する戦略も選択肢に入ります。

相続時精算課税制度

2,500万円まで贈与税がゼロとなり、相続時に合算して精算する仕組みです。2024年の税制改正で年間110万円の基礎控除が併用可能になったため、複数年にわたり築浅物件の頭金を贈与し、残りをローンで賄う組み立ても有効です。

相続後を見すえた運用・出口戦略

新築・築浅物件は時間の経過とともに減価償却が進み、評価額も下がるため、相続発生後は税務上の負担がいっそう軽くなります。それでも、保有し続けるか売却するかは、家族構成と資産ポートフォリオ次第です。

保有継続の場合

築20年目前後で大規模修繕が必要になる点を忘れてはいけません。修繕積立金の積み立てが不足している場合、追加の一時金が発生し、キャッシュフローを圧迫します。購入時に長期修繕計画書を精査し、毎年の積立額を試算しておきましょう。

売却を検討する場合

新築から15年以内が有利とされています。不動産ポータルの成約事例では、築15年を境に坪単価の下落スピードが加速する傾向があります。相続人が複数いて分割が難しいときは、早期に売却して現金で分けるほうがトラブルを避けやすいでしょう。

売却時は、長期譲渡所得の税率20.315%を念頭に、取得費加算の特例や譲渡損失の繰越控除など、出口時の税制にも目配りが必要です。

リスク管理と注意点

新築・築浅物件による相続対策にはメリットが多い一方、以下のリスクも認識しておく必要があります。

  • 税務否認リスク:相続直前の駆け込み購入は、税務署から「租税回避目的」と判断されるケースがあります。
  • 空室リスク:立地選定を誤ると、築浅でも入居者が決まらない可能性があります。
  • 金利上昇リスク:変動金利でローンを組んだ場合、将来の金利上昇でキャッシュフローが悪化する恐れがあります。
  • 共有名義のトラブル:複数の相続人で不動産を共有すると、売却や管理で意見が割れやすくなります。

これらのリスクを軽減するには、購入前のシミュレーションと専門家への相談が欠かせません。税理士や不動産会社と連携し、長期的な視点で計画を立てることをおすすめします。

まとめ

新築・築浅の収益物件を使った相続対策は、節税効果と資産運用の両面で魅力があります。建物評価額の圧縮、債務控除の活用、長期融資による安定キャッシュフロー、そして2025年度の各種税制優遇が重なり合うことで、現金より効率的な資産移転が可能です。

ただし、立地の将来性や修繕計画の精査を怠ると、空室リスクや追加負担に悩まされます。まずは自分と家族の資産状況を整理し、専門家とシミュレーションを行いながら、最適な物件と活用制度を選び取ってください。

参考文献・出典

  • 国税庁「令和6年分 相続税の申告状況」 – https://www.nta.go.jp
  • 国土交通省「地価公示2025年」 – https://www.mlit.go.jp
  • 東京都都市整備局「住宅市場動向調査2025」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
  • 日本不動産研究所「不動産投資家調査2025」 – https://www.reinet.or.jp
  • 財務省「2025年度税制改正のポイント」 – https://www.mof.go.jp

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