老後資金への不安や年金だけでは足りないという声は、60代の方々から特によく聞かれます。長年のキャリアで蓄えた自己資金をどう運用すれば、家族に負担をかけず安定した収入を得られるのか。そんな悩みを解決する手段の一つが、ファミリー向け物件への不動産投資です。
本記事では、60代が無理なく始められる投資戦略と、ファミリー向け物件を選ぶメリットについて詳しく解説します。資金計画からリスク管理まで一連の流れを理解することで、老後の安心につながる具体的な行動指針が見えてくるはずです。
60代が投資を始めやすい時代背景

実は今、60代を取り巻く社会環境は不動産投資にとって追い風となっています。総務省の家計調査によると、60歳から69歳世帯の金融資産保有額中央値は約1,200万円に達しており、10年前と比較して150万円も増加しています。これは長寿化によって働く期間が伸び、定年後も収入源を求める人が増えている証拠といえるでしょう。
厚生労働省の発表では、65歳以上の就業者数が2025年に1,000万人を突破する見通しとなっています。この数字は、年金以外のキャッシュフローを確保することの重要性が、ますます高まっていることを示しています。老後の生活を豊かにするためには、複数の収入源を持つことが欠かせない時代になってきたのです。
融資環境についても、60代だからといって諦める必要はありません。返済期間を15年以内に設定すれば、地方銀行や信用金庫で年1.5%前後の固定金利が提示されるケースも増えています。つまり、自己資金と短期ローンを組み合わせた「低レバレッジ投資」は、年齢を重ねた投資家のリスク許容度にぴったりマッチする手法なのです。
ファミリー向け物件が安定収益を生む理由

60代からの不動産投資で特におすすめしたいのが、ファミリー向け物件への投資です。単身者用と比較して、家族向け物件には明確なメリットがあります。国土交通省の住宅市場動向調査によれば、2LDK以上の賃貸物件の成約期間は平均1.8カ月なのに対し、ワンルームは2.6カ月と約30%も長くかかっているのです。
この差が生まれる理由は、家族世帯の住まいに対する考え方にあります。子どもの学校や配偶者の職場との兼ね合いがあるため、単身者のように気軽に引っ越すことができません。一度入居すれば長期間住み続けてくれる傾向が強く、これが空室リスクの低減につながります。
さらに注目すべきは、家族世帯が物件を選ぶ際の基準が明確であることです。子どもの学区、通勤の利便性、買い物環境といった具体的な条件を重視するため、立地条件さえ押さえておけば安定した入居需要が見込めます。具体的には、最寄り駅から徒歩10分以内、小学校まで1キロ圏内、スーパーが500メートル以内にあるエリアが高い人気を集めています。
こうした好条件の物件は取得価格がやや高めになりますが、長期間にわたって安定した家賃収入を得られることを考えれば、トータルリターンは十分に見込めます。60代という投資期間の制約があるからこそ、リスクを抑えながら着実に収益を積み上げられるファミリー向け物件が最適な選択肢となるのです。
立地選びで失敗しない三つの視点
不動産投資で最も重要なのは立地選びといっても過言ではありません。特に60代からの投資では、将来にわたって賃貸需要が見込めるエリアを慎重に見極める必要があります。そこで押さえておきたいのが、人口動態、都市計画、交通インフラという三つの視点です。
人口動態から見る有望エリア
総務省の住民基本台帳人口移動報告によれば、東京圏、名古屋圏、福岡市圏は2024年も転入超過が続いています。特に注目すべきは、これらの都市圏で子育て世帯の流入が多いという点です。ファミリー向け物件への投資を考えるなら、こうした人口が増え続けているエリアを優先的に検討すべきでしょう。
一方で、地方都市でも人口が安定しているエリアは存在します。県庁所在地や地方中核都市の駅周辺は、地方移住のトレンドも相まって、一定の賃貸需要が維持されています。重要なのは、投資を検討しているエリアの人口推移を過去10年、将来予測ともにしっかり調べることです。
都市計画で将来性を見極める
自治体が公開している都市計画マスタープランは、将来の資産価値を予測するうえで貴重な情報源となります。再開発計画や新駅の開業予定があるエリアでは、数年後に不動産価値が大きく上昇する可能性があります。逆に、人口減少を見越して縮小が計画されているエリアは避けるべきです。
都市計画の情報は各自治体のホームページで無料で閲覧できます。専門的な用語が多く読み解きに時間がかかりますが、地元の不動産会社に相談すれば、どのエリアが将来有望かアドバイスをもらえるでしょう。
交通インフラの将来像をチェック
鉄道路線だけでなく、BRTやLRTといった新しい公共交通システムの開業計画にも目を向けることをおすすめします。富山市では、LRTの整備によってファミリー層の定住率が7%向上したという市のデータがあります。交通政策と人口定着には明確な相関関係があるのです。
こうした複合的な視点で立地を評価することで、長期的に賃貸需要が底堅い物件を見極めやすくなります。物件単体の魅力だけでなく、周辺環境の将来性まで含めて判断することが、60代からの不動産投資を成功に導く鍵となります。
資金計画とローン戦略は保守的に
60代からの不動産投資で特に気をつけたいのが資金計画です。若い世代のようにレバレッジを効かせた投資はリスクが高く、慎重な姿勢が求められます。金融機関も60代の融資審査では返済比率を最も重視しており、年収に占める返済額を30%以下に抑えるよう求めてきます。
こうした条件を踏まえると、物件価格の70%以上を自己資金で賄うのが現実的な目安となります。仮に2,000万円の物件であれば、1,400万円以上は現金で用意し、残りの600万円をローンで調達するイメージです。これにより返済期間を10年から15年に短縮でき、完済時の年齢を80歳以下に収めやすくなります。
全額自己資金で購入する場合でも、手元には300万円程度の予備資金を残しておくことをおすすめします。日本賃貸住宅管理協会の統計によると、築20年超の3LDK物件では設備更新に平均120万円が必要とされています。給湯器やエアコンの交換、水回りの修繕など、予期せぬ出費は必ず発生するものです。
「家賃収入の半年分プラス100万円」を目安に現金をプールしておけば、突発的な支出でキャッシュフローが崩れるリスクを回避できます。保守的な資金計画こそが、60代からの不動産投資を長続きさせる秘訣なのです。
管理運営の基本を押さえる
物件を購入したら、次は管理運営のフェーズに入ります。ここで重要になるのが管理会社選びです。自主管理も選択肢の一つですが、60代以降は体力面や緊急対応の負担を考慮して、専門の管理会社に委託するのが賢明でしょう。
管理委託料は家賃の5%前後が一般的な相場となっています。この費用は一見すると負担に感じるかもしれませんが、24時間の駆け付けサービスやIT設備の定期点検を標準で含む会社であれば、結果的に入居者の満足度を高め、空室期間の短縮につながります。長い目で見れば、質の高い管理サービスへの投資は十分に元が取れるのです。
サブリース契約を検討する場合は、更新時の賃料改定幅や中途解約の条件を細かく確認することが欠かせません。契約書の細かい条項まで目を通し、不明点があれば必ず質問して解消しておきましょう。数十年にわたる契約だからこそ、最初の段階でしっかり内容を把握しておくことが大切です。
出口戦略を見据えた長期プランニング
不動産投資において、出口戦略を考えずに始めるのは危険です。60代からの投資であればなおさら、将来的にどうするかを最初から描いておく必要があります。賃貸運営10年目を目安に、売却益の実現と継続保有のシミュレーションを並行して行うことをおすすめします。
売却を選択する場合、現行制度では長期譲渡所得の税率が20.315%で固定されています。売却益が1,000万円を超えるケースでも、各種控除を活用することで税負担をある程度圧縮できる可能性があります。ただし税制は改正されることもあるため、売却を検討する際には必ず税理士に相談して最新の情報を確認してください。
継続保有を選ぶ場合は、次の10年を見据えた再投資計画が必要です。長期固定金利への借り換えを検討したり、大規模修繕に備えて積立金を増額したりと、先を見越した準備を進めておきましょう。建物は年数とともに確実に劣化していくため、計画的なメンテナンスが資産価値の維持には欠かせません。
また、相続を見据えた対策も60代からの投資では重要なテーマとなります。不動産は現金と比較して相続税評価額が低くなる傾向がありますが、分割しにくいという特性も持っています。家族構成や相続人の意向も踏まえて、専門家と相談しながら最適な出口を模索していくことが大切です。
まとめ
本記事では、60代からのファミリー向け不動産投資について、始め方から出口戦略まで幅広く解説してきました。家族世帯向け物件は長期入居による安定収益が期待でき、低レバレッジであれば60代でも融資を組みやすい環境が整っています。
成功の鍵は、人口動態と都市計画を読み解いた立地選び、そして修繕費まで考慮した保守的な資金計画にあります。焦らず慎重に検討を重ねることで、老後の生活にゆとりをもたらす堅実な投資が実現できるはずです。
まずは信頼できる不動産会社と金融機関に相談し、自身のライフプランに合った一歩を踏み出してみてください。60代からでも遅くはありません。むしろ、豊富な人生経験と蓄えた資金を活かせる今こそ、不動産投資を始める絶好のタイミングといえるでしょう。
参考文献・出典
- 総務省 家計調査年報2024 – https://www.stat.go.jp/
- 総務省 住民基本台帳人口移動報告2024 – https://www.soumu.go.jp/
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025 – https://www.mlit.go.jp/
- 日本賃貸住宅管理協会 賃貸管理統計2024 – https://www.jpm.jp/
- 富山市 市勢要覧2024 – https://www.city.toyama.toyama.jp/
- 厚生労働省 就業構造基本調査2024 – https://www.mhlw.go.jp/
- 国税庁 譲渡所得の課税のしかた(令和6年版) – https://www.nta.go.jp/