不動産の税金

REIT 資産形成入門 手堅く増やす基本戦略

不動産に興味はあるものの、まとまった資金や管理の手間がネックになり、最初の一歩をためらう人は少なくありません。そこで注目されるのが、不動産投資信託であるREITです。少額から始められ、運用や修繕をプロに任せられる点が魅力ですが、仕組みやリスクを理解せずに購入すると思わぬ損失を招くおそれがあります。本記事では、REIT 資産形成のメリットと注意点を中心に、2025年度NISAの活用法や購入手順までをやさしく解説します。

REITが資産形成に向く理由

REITが資産形成に向く理由のイメージ

重要なのは、REITが株式と債券の中間の性格を持つ点をつかむことです。総務省家計調査によると、2024年の日本の個人金融資産に占める不動産投資信託の割合は3%弱に過ぎませんが、配当利回りは平均4%前後と国内株式を上回る水準で推移しています。つまり、高いインカムゲインを安定的に得やすい構造が初心者にとって魅力となります。

次に、少額から分散投資が可能なことが挙げられます。東京証券取引所に上場するJ-REITは、最低投資額が5万円前後の銘柄も多く、複数物件に間接的に投資できる仕組みです。都心オフィスや物流施設、ホテルなど物件用途が多彩で、組み合わせることで景気変動の影響を抑えやすくなります。また、REITは法律上、利益の90%以上を分配することで法人税が実質免除されるため、個人投資家が受け取る分配金が高水準になりやすい点も見逃せません。

一方で価格変動リスクは株式市場と同様に存在します。2020年のパンデミック時にはJ-REIT指数が一時50%以上下落しました。しかし、2023年以降は物流施設やデータセンター系銘柄を中心に回復基調となり、2025年10月時点でコロナ前の水準を上回っています。価格変動を理解しつつ、長期で分配金を再投資する戦略が、資産形成を加速させる鍵となります。

2025年度NISAで広がる投資枠

2025年度NISAで広がる投資枠のイメージ

まず押さえておきたいのは、2024年から開始された新しいNISAが2025年度も継続している点です。年間投資枠は成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円で、非課税保有限度額は合計1800万円に拡大しました。REITやREIT ETFは成長投資枠で購入でき、分配金にも売却益にも税金がかからないため、手取り利回りを高める絶好の機会となります。

具体例として、利回り4.2%のREITを年間100万円購入し、分配金をそのまま再投資したと仮定しましょう。税引き前と非課税の差は年0.85%程度ですが、20年複利では総額で約40万円の差となります。金融庁のシミュレーションでも、非課税効果が長期運用ほど大きくなることが示されています。つまり、NISA枠に優先的に組み入れることで、複利効果を最大化できるわけです。

ただし、成長投資枠は個別株や投資信託との競合が避けられません。枠を有効に使うには、株式より安定したインカムを重視したい部分にREITを配分し、値上がり益狙いの部分を他資産に当てるとバランスが取りやすくなります。NISA口座と特定口座を併用し、目標利回りとリスク許容度に合わせた住み分けを意識しましょう。

リスク管理と分配金の読み方

ポイントは、分配金の原資と内部留保に注目することです。上場REITの開示資料「資産運用報告書」には、一口当たり分配金のうち営業利益からの支払いと、内部留保の取り崩し分が明記されています。投資口数の増加による希薄化や、一時的な売却益で分配金を底上げしている場合は、長期安定性に欠ける可能性が高まります。

また、LTV(負債比率)も重要な指標です。日本不動産研究所の2025年上期レポートでは、J-REIT平均LTVは43%ですが、物流系が35%、ホテル系が55%と用途で差があります。金利上昇局面では負債比率の高いREITほど利払い負担が増え、分配金が圧迫されるリスクがあります。実は、固定金利比率も一緒に確認することで、金利感応度をより正確に把握できます。

さらに、物件の立地とテナント分散もチェックが欠かせません。都心オフィスに偏るREITは景気敏感ですが、長期賃貸契約が多い物流施設は比較的景気に左右されにくい特徴があります。複数のREITを組み合わせる際は、用途と地域の分散効果を意識することで、全体のリスクを抑えた安定した資産形成につながります。

ポートフォリオにどう組み込むか

基本的に、REITはインカムゲインを補強する「安定収入の柱」として位置づけると運用が組み立てやすくなります。金融庁の「資産運用に関する基本指針」では、年金基金のモデルポートフォリオでも不動産比率を10%前後に設定しています。個人でも株式60%、債券30%、REIT10%をひとつの目安にすると、分散効果と利回りのバランスを取りやすくなります。

一方で、REITには流動性が高いという利点があります。株式と同様に平日の日中であればいつでも売買でき、急な資金需要にも対応できます。ただし、短期売買を繰り返すと、分配金再投資の効果が薄れるばかりか、スプレッドや手数料がパフォーマンスを削る点に注意が必要です。したがって、配当月が異なる複数銘柄を保有し、年間を通じて分配金を受け取りながら、長期保有を前提にするスタイルが適しています。

投資対象の選定では、個別REITに加えてREIT ETFも検討する価値があります。東証REIT指数連動型ETFは1万円台から購入でき、50銘柄以上に一括で分散投資できます。個別銘柄の分析に自信が持てない場合や投資初期の段階では、ETFを核にして運用をスタートし、徐々に自分で選んだREITを追加する方法がリスクを抑えやすい進め方となります。

初心者が失敗しない購入手順

まず、証券会社の口座開設と同時にNISA口座の申し込みを行いましょう。手続きにはマイナンバーカードが必要で、開設完了までおよそ2週間かかるのが一般的です。つぎに、スクリーニング機能を使い、利回り4%以上、LTV50%未満、固定金利比率70%以上の銘柄を候補に絞ると、安定性の高いラインナップが見えてきます。

候補が決まったら、目論見書と運用報告書を読んで、物件用途やテナント構成を確認します。具体的には、物流系70%、住居系20%、その他10%といった形でバランスが取れているかがポイントです。この段階で、家賃収入が1社に偏っていないか、空室率が異常に高くないかも合わせて見ておくと安心できます。

最後に、定期的なフォローアップを忘れないことが成功の秘訣です。四半期ごとの決算発表で稼働率や賃料改定率をチェックし、目標値から大きく乖離した場合のみ売却を検討するというルールを決めておくと、感情に流されない運用が可能になります。これらを地道に続けることで、REIT 資産形成は長期的なキャッシュフローを着実に生み出す仕組みとなるでしょう。

まとめ

ここまで、REITが少額で始められる不動産投資であり、高利回りの分配金を通じて資産形成を後押しする仕組みを見てきました。2025年度NISAを活用すれば、非課税効果により複利の力が一段と高まります。また、LTVや内部留保といった指標を確認し、用途と地域を分散させることでリスクを抑えつつ安定収入を得られます。最初はREIT ETFで広く分散し、慣れてきたら個別REITを追加する段階的な進め方が現実的です。ぜひ今回の内容を参考に、早めに行動し、ゆとりある将来を手に入れてください。

参考文献・出典

  • 金融庁 – https://www.fsa.go.jp
  • 総務省統計局 家計調査 – https://www.stat.go.jp
  • 日本不動産研究所 J-REIT市場動向レポート – https://www.reinet.or.jp
  • 東京証券取引所 J-REIT一覧 – https://www.jpx.co.jp
  • 日本取引所グループ ETFデータ – https://www.jpx.co.jp/markets/etf-etc

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