不動産投資を始めたいけれど、収益物件への融資条件が複雑で一歩を踏み出せない――そんな悩みを抱える方は多いでしょう。金融機関ごとに審査基準が異なり、同じ物件でも提示される金利や借入期間が変わるため、判断材料が多すぎて混乱しがちです。本記事では、2025年10月時点で実際に使える融資制度と金利環境を踏まえつつ、金融機関別・物件タイプ別・投資家属性別の「収益物件 融資条件 違い」を整理します。読み終えた頃には、自分に合った資金調達ルートが見えてくるはずです。
融資条件が投資成否を左右する根本理由

重要なのは、融資条件がキャッシュフローを直撃し、長期の運用計画に大きく影響する点です。たとえば金利が0.5%違うだけで、1億円を25年で借りた場合の総返済額は約700万円変わります。これは国土交通省「令和6年度不動産投資実態調査」にも示され、返済比率の差が直接的に自己資金の回収速度へ跳ね返ると分析されています。
まず融資条件には金利、借入期間、自己資金比率、担保評価の四つがあり、このバランス次第で毎月の返済額が増減します。金利が低くても期間が短ければ月々の返済は重くなり、逆に期間が長くても金利が高いと総返済額が膨らむ構造です。つまり表面利回りだけでなく、金融機関から提示される条件を踏まえた実質利回りを計算することが不可欠です。
一方で、融資条件は市場環境によって変動します。2024年春の「日銀長短金利操作(YCC)修正」以降、長期金利は緩やかに上昇し、2025年10月時点で主要地銀のアパートローン固定金利は年2.3%前後が中心です。それでも変動金利は年1.5%程度にとどまっており、金利上昇リスクと固定化コストのどちらを取るかが投資家の判断ポイントになります。
金融機関別に見る審査ポイントの違い

ポイントは、金融機関ごとに「重視する指標」と「リスク許容度」が違うことです。その結果、同一物件でも提示条件が大きくズレるケースがあります。
まず都市銀行は自己資金3割以上を求める傾向があり、融資総額よりも返済原資となる家賃収入の安定性を重視します。賃貸需要が強い都心ワンルームや築浅レジデンスであれば、表面利回りが低くても評価が高く、金利1%台前半の変動商品が通る例も珍しくありません。また、都市銀行は借入期間を最長35年まで伸ばせる場合があり、月々のキャッシュフローを楽にできる点が魅力です。
一方、地方銀行や信用金庫はエリアの経済活性化を目的に融資枠を設定しているため、地元の収益物件に強みがあります。自己資金は2割前後でも通りやすいものの、対象エリアが限定されるため、投資家が他地域へ進出する際は支店間連携の有無を確認する必要があります。金利は固定2%台後半が多いものの、空室補償などの独自サービスを付帯していることがあり、トータルコストで考えると競争力があります。
日本政策金融公庫の「新規開業資金(2025年度)」は、個人事業として賃貸経営を始める場合に活用でき、自己資金1割からでも最大7200万円まで融資可能です。ただし審査では事業計画書の完成度が問われ、家賃需要の調査や修繕計画の具体性を示す必要があります。固定金利2.0%前後とやや高めですが、保証料不要のため総返済額は民間より低くなる場合もあります。
物件タイプで変わる融資条件の差
まず押さえておきたいのは、物件タイプが担保評価を左右し、その評価が融資割合を決めることです。金融機関は「収益還元法」と「積算評価」を組み合わせて担保価値を算出しますが、アパートと区分マンションでは計算結果が大きく異なります。
アパート一棟物件は土地値が評価の中心になるため、駅近や商業集積地など立地が良い場合はフルローンに近い80〜90%まで伸ばせる例があります。さらに木造よりRC造(鉄筋コンクリート造)の方が耐用年数が長く取れるため、借入期間を30年まで引き延ばせる可能性があります。その代わり、修繕費が高くつく点を事業計画で説明できなければ審査でマイナスに働くことがあります。
区分マンションの場合、専有部のみが担保となり土地値が薄いので、融資割合は60〜70%に抑えられることが一般的です。利回りが高くても自己資金を厚めに積む必要があり、初期費用が重くなる点に注意が必要です。しかし空室リスクが限定的で管理も委託しやすいため、勤続年数や年収を重視する都市銀行ではローン審査に通りやすい傾向があります。
さらに、商業系ビルや倉庫など特殊用途物件は、テナント契約の長期安定性が評価されれば融資期間を短くする代わりに金利を下げる提案が行われることがあります。日本銀行「金融システムレポート2025年春号」でも、ノンリコースローン市場が拡大し、用途特化型物件への資金流入が進むと指摘されています。
投資家属性で変わる融資ハードル
実は投資家のバックグラウンドによって、同じ金融機関でも提示条件が変わります。年収、勤続年数、保有資産、そして過去の取引実績が主な評価項目です。
サラリーマン投資家は安定収入が強みとなり、年収700万円以上で勤続5年以上なら、都市銀行から金利1%台・期間35年の好条件を引き出せる可能性があります。ただし借入総額は年収の7〜10倍が上限とされるため、規模拡大には物件売却や共同担保の活用が必要になるケースが多いです。
一方、個人事業主やフリーランスは収入変動が大きいとみなされ、課税所得が同額でも条件が厳しくなりがちです。この場合、決算書や確定申告書で安定したキャッシュフローを示し、複数年の実績を提示すると審査で有利になります。信用金庫では地域経済への貢献度を評価する傾向があるため、地元での経営活動をアピールすると金利優遇を受けられる事例もあります。
法人化して資産管理会社を設立する方法もあります。金融庁「貸出動向2025年版」によると、法人向けアパートローンの平均金利は個人向けより0.2ポイント低く、節税効果も得られるためキャッシュフローが向上します。ただし法人設立費用や維持コストが発生するため、保有物件が2棟以上になってから検討するのが一般的です。
2025年度の支援策と金利環境を読み解く
まず2025年度の金利環境ですが、日銀は物価安定目標に向け緩和的な金融政策を継続しており、短期プライムレートは1.475%で据え置きが続いています。そのため、変動金利型のアパートローンは引き続き低い水準を維持しています。一方で米国金利上昇の影響から長期国債利回りはやや上昇しており、固定金利型は2023年比で0.3ポイント程度高くなっています。
支援策としては、日本政策金融公庫の「生活衛生改善貸付」「新規開業資金」などが2025年度も継続中です。融資上限や金利は毎年見直されますが、10月時点の公表値では固定金利2.03%(保証人あり)と民間より低く、担保設定が不要な場合もあります。また、中小企業庁の「小規模事業者持続化補助金<不動産賃貸版>」が2025年も継続し、空室対策のリノベ費用に対して最大200万円を補助しています。申請締切は2026年3月末予定で、審査には地域需要を示すデータ添付が必須です。
金利上昇局面に備える方法として、期間選択型固定金利や繰上返済を組み合わせる戦略があります。実際、総務省統計局「家計調査2025年上期」によると、返済負担率を年収の25%以下に抑えた世帯は、金利上昇局面でも投資継続率が高いと報告されています。資金繰りに余裕を持たせることが、長期の不動産運用を安定させる鍵となります。
まとめ
ここまで、金融機関別・物件タイプ別・投資家属性別に「収益物件 融資条件 違い」を整理しました。金利、借入期間、自己資金比率は表面利回りよりも強くキャッシュフローを左右します。まずは自身の属性と投資戦略に合った金融機関を選び、複数行から条件を取り寄せて比較しましょう。その際、2025年度に利用可能な公的融資や補助金も合わせて検討すると、自己資金を効率的に活用できます。最適な融資条件を引き出せれば、長期安定運用への道が大きく開けます。ぜひ本記事を参考に、自分の投資計画をブラッシュアップしてみてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 不動産投資実態調査(令和6年度) – https://www.mlit.go.jp
- 日本銀行 金融システムレポート2025年春号 – https://www.boj.or.jp
- 金融庁 貸出動向等に関する統計2025年版 – https://www.fsa.go.jp
- 総務省統計局 家計調査2025年上期 – https://www.stat.go.jp
- 日本政策金融公庫 融資制度案内(2025年度) – https://www.jfc.go.jp