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不動産投資 ローン VS現金 一括購入はどちらが得か?

不動産投資 ローン VS現金 一括購入はどちらが得か?

導入文 不動産投資を始めようと考えたとき、多くの人が真っ先に迷うのが「ローンを組むか、現金で買うか」という資金調達の方法です。資金計画は収益性だけでなく、リスク許容度や将来の選択肢にも直結します。そこで本記事では、2025年9月時点の金利や税制を踏まえながら、ローン利用と現金購入のメリット・デメリットを丁寧に比較します。読み終える頃には、ご自身の投資戦略にどちらが適しているかを判断できるようになるはずです。

ローン活用と現金購入の基本構造

ローン活用と現金購入の基本構造のイメージ

まず押さえておきたいのは、ローンと現金では投資の仕組みが根本的に異なることです。ローン利用は「レバレッジ効果」と呼ばれる資金拡大が可能で、少ない自己資金でも大きな物件へアクセスできます。一方、現金購入は支払い後すぐに物件を自己所有するため金利負担がなく、月々の返済も存在しません。

ローンを組む際は、購入額の80%程度を借り入れるケースが一般的です。全国銀行協会の2025年9月データによると、変動金利は1.5〜2.0%、10年固定は2.5〜3.0%が目安です。仮に3,000万円を1.8%、30年元利均等で借りた場合、月々の返済は約10万円になります。これに対し、同額を現金で支払えば返済はゼロですが、手元資金は大幅に減少します。

現金購入の最大の利点は、最初からローン残高がないため心理的な負担が軽い点です。しかし、大規模修繕や設備更新が重なったとき、手元の運転資金が不足すると追加借り入れを余儀なくされる可能性があります。つまり、安心感と資金流動性はトレードオフの関係にあると言えます。

キャッシュフローとレバレッジの違い

キャッシュフローとレバレッジの違いのイメージ

ポイントは、同じ家賃収入でも負債の有無で手取り額が変わることです。ローン返済があるとキャッシュフロー(手残り)は減りますが、自己資金に対する投下利益率は高まります。例えば家賃月18万円の物件を前出の条件で購入した場合、管理費や税金を差し引くと手残りは約5万円です。自己資金600万円でこの利益を得れば年間利回りは10%を超え、現金購入の約3%を大きく上回ります。

一方、家賃が下落したり空室が続くとローン返済が重くのしかかります。不動産経済研究所の調査によれば、首都圏の平均空室率は2025年上期で11.2%です。空室が1カ月続くだけでも年間の手残りは半減します。この不確実性こそがレバレッジ効果の裏側に潜むリスクです。

現金購入はキャッシュフローが読みやすく、空室が出ても赤字化しにくい点が魅力です。さらに、融資審査が不要で購入スピードが速いため、割安物件を機動的に押さえられる場合があります。ただし、同じ資金で複数物件を分散保有できないため、収益機会が限定されやすい点は忘れないでください。

リスク管理で見るローン VS 現金

実は、ローンを活用していても適切な備えをすれば破綻リスクを抑えられます。第一に、空室率20%、金利上昇2%といった厳しめのシミュレーションを行い、耐えられる物件だけを選ぶことが大切です。第二に、家賃収入の3〜6カ月分を現金でプールし、突発的な支出に備える方法も有効です。これにより急激な収入減でも返済遅延を防げます。

一方で、現金投資でもリスクはゼロではありません。火災や地震などの災害リスクは、保険でカバーできるものとできないものがあります。特に築古物件の場合、耐震基準を満たしていないと修繕費が跳ね上がるケースがあります。日本政策投資銀行の2024年度レポートでは、築30年以上の賃貸マンションの平均修繕費が10年間で600万円に達すると試算されています。現金購入者はこうした長期修繕計画を自ら管理する必要があります。

リスクを数値化しやすいのはローン利用です。返済額が確定しているため、キャッシュフローシートでシナリオ分析ができます。反対に、現金購入は金融負債ゼロゆえに安心ですが、逆に費用が発生したときのインパクトが大きく、計画外支出が利益を圧迫しやすい点に注意が必要です。

税制と2025年度の融資環境

重要なのは、税制上の取り扱いがローン利用と現金購入で異なることです。ローンを組むと支払利息は損益計算書上、必要経費として計上できます。家賃収入が黒字でも、利息分で課税所得を圧縮でき、結果として手取りが増える場合があります。2025年度税制改正では、この損金算入ルールに大きな変更はなく、個人の不動産所得でも引き続き適用可能です。

また、減価償却費も節税効果を左右します。特に木造アパートは耐用年数が22年と短く、築古物件を購入すると数年間は大きな減価償却が見込めます。ローン返済と相殺することでキャッシュフローが黒字でも税負担を抑えられるため、レバレッジとの相性が良い投資手法といえます。

一方、現金購入は利息控除が使えません。減価償却費だけでは課税所得が大きく残ることがあり、結果として納税額が増える傾向があります。そのため、現金投資家は法人化を検討したり、相続対策と組み合わせるなど、別の節税策を練る必要があります。

2025年の融資環境を見ると、金融庁の統計では地方銀行の不動産向け融資残高が前年同期比1.2%増と緩やかに拡大しています。審査は依然として厳格ですが、賃貸需要が安定するエリアであればフルローンに近い融資が出るケースもあります。つまり、金利が低い今のうちに長期固定で借り入れ、リスクを固定化する戦略が有効です。

投資家タイプ別の最適解

まず、勤続年数が長く安定収入のあるサラリーマン投資家は、ローンを活用して複数物件へ分散投資する戦略が適しています。給与所得と家賃収入を合算した与信力を背景に、低金利で大きな資産形成が狙えるからです。

次に、退職金や相続資金などまとまった現金を持つ投資家は、現金購入で負債ゼロの安定運営を目指す選択肢が有効です。融資審査を通さずに購入でき、毎月のキャッシュフローを確保しやすい点が魅力で、生活費補填を目的とする場合に向いています。

最後に、副業規制がない個人事業主やフリーランスは、融資枠が限られることが多いため、自己資金とローンを組み合わせたハイブリッド型が現実的です。まず自己資金で中古区分マンションを1戸購入し、実績を作った上で追加融資を受け、ポートフォリオを拡大するステップアップ方式がリスクを抑えながら成長できます。

まとめ

本記事ではローン利用と現金購入の違いを、キャッシュフロー、リスク管理、税制、融資環境の四つの観点から整理しました。ローンはレバレッジで高い利回りを狙える一方、空室や金利上昇リスクに備えるシミュレーションが欠かせません。現金購入は返済負担がなく安定しますが、資金効率や節税面で劣る場合があります。ご自身の資金力、リスク許容度、将来設計を総合的に考え、最適な資金調達方法を選びましょう。早めにシミュレーションを作り、金融機関や税理士へ相談する行動が、後悔しない投資への第一歩になります。

参考文献・出典

  • 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
  • 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 金融庁「金融モニタリングレポート2025」 – https://www.fsa.go.jp
  • 国土交通省 住宅局「令和6年度住宅市場動向調査」 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本政策投資銀行「賃貸住宅修繕費用レポート2024」 – https://www.dbj.jp

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