住宅ローンを完済した友人が次に選んだのはマンション投資でした。「私にもできるのだろうか」「どこから勉強すればいいのか」と感じている方は多いはずです。本記事では、立地や資金計画といった基本から2025年度の最新制度までを整理し、初めての一歩を踏み出すための道筋を提示します。読み終えたころには、自分に合った投資戦略を描けるようになるでしょう。
マンション投資の仕組みと魅力

まず押さえておきたいのは、マンション投資が「家賃収入を得るビジネス」である点です。物件を購入し、入居者からの賃料でローン返済や諸経費を賄いながら利益を狙います。東京23区の新築平均価格は7,580万円(不動産経済研究所・2025年10月)と高額ですが、都心物件は空室リスクが低く賃料も安定しやすい傾向があります。
次に、少額からスタートしやすいワンルーム投資を例に取ると、自己資金300万円と年収500万円前後の会社員でも金融機関の融資を活用すれば参入可能です。また、不動産はインフレに強いと言われ、物価上昇局面では資産価値が目減りしにくい点も魅力となります。一方で修繕費や税金などのランニングコストが欠かせないため、表面利回りだけで判断しない姿勢が必要です。
さらに、長期的なリスク分散として「年金の補完」に使える点も見逃せません。現在の公的年金だけでは老後資金に不安を感じる人が増えており、家賃収入が年金受給開始後の生活費を補う役割を果たします。ただし、出口戦略として売却益を狙う場合、将来の市場価格と税制を予測しながら買い進める視点が欠かせません。つまり、収益構造と資産形成の両面を理解することがスタートラインになります。
資金計画と融資で失敗しないコツ

ポイントは、毎月のキャッシュフローを黒字で維持できる借入条件を組むことです。自己資金は物件価格の20〜30%を用意すると、金利優遇を受けやすく返済比率も安定します。例えば4,000万円の中古区分を購入する場合、頭金800万円なら返済額を抑えつつ、空室1か月でも赤字になりにくい収支を描けます。
融資先としては、都市銀行、地方銀行、ノンバンクの順に金利が高くなる傾向があります。2025年10月の平均金利は、都市銀行の変動型で1.7%、ノンバンクで3.2%です。金利差1.5%は30年返済で約600万円の総支払差につながるため、複数行を比較する手間を惜しむべきではありません。
一方で、金融機関は返済負担率と担保評価を重視します。年収に対する年間返済額が30%を超えると審査が厳しくなるため、先に住宅ローンや自動車ローンを整理しておくと通りやすくなります。さらに、修繕積立金や管理費を含めたシミュレーションを作成し、担当者に提示すると信頼度が上がる点も意識しましょう。
最後に、予備費として家賃収入の3か月分をプールしておくと、突発的な空室や設備故障にも冷静に対応できます。資金繰りに余裕がある人ほど、複数物件へステップアップしやすくなることを覚えておきましょう。
物件選びで押さえるべき視点
重要なのは、立地・築年数・管理体制を総合評価する姿勢です。都心駅徒歩5分圏の築浅物件は家賃が高水準で流動性も高い一方、利回りは低めです。郊外駅徒歩10分圏の築20年超なら取得価格が下がり利回りは上がりますが、将来の人口減少リスクを受けやすくなります。つまり、利回りと安定性のバランスを自分の投資目的に合わせて調整する必要があります。
築年数については、耐震基準が現行となった1981年6月以降の「新耐震」物件を基本ラインにするとローン審査や賃貸需要の面で有利です。さらに、適切な修繕計画が実行されているかを議事録で確認し、大規模修繕の積立不足がないかを見極めます。積立不足が深刻な物件は、将来の一時金徴収や資産価値下落のリスクを孕みます。
管理体制は、共用部の清掃状況やエントランスの掲示物から読み取れます。管理会社の担当者が巡回スケジュールを公開している場合はトラブル対応も迅速です。また、賃貸管理も同一グループに任せる「ワンストップ型」を選ぶと、仲介業者間の連携不足による空室期間を短縮しやすくなります。
最後に、周辺の賃料相場と空室率を自治体のオープンデータで確認し、家賃下落余地を数値化します。例えば23区平均空室率が4.0%のエリアで、自社管理物件の実績が2.5%なら競争力が維持しやすいと言えます。データに基づく選定は感覚的な失敗を避ける近道です。
購入後の運営とリスク管理
実は、購入後こそオーナーの腕の見せどころです。家賃設定を誤ると意思決定が遅れ、たった1か月の空室で年間収益が数%吹き飛びます。新築ワンルームであれば近隣築浅の平均より1,000円低くスタートし、即入居を優先する戦略が有効です。その後、更新時期に市場家賃を再調査し、段階的に引き上げる方法が長期稼働を支えます。
修繕については、法定耐用年数を超えた設備から故障が起きやすいので、エアコンや給湯器の交換周期を10年ごとに計画し、費用を積み立てておくと資金ショックを回避できます。火災保険は再調達価額方式を選択し、漏水事故などオーナー責任での費用負担を抑えましょう。
リスク管理では、他の収入とのバランスも重要です。不動産所得が黒字の場合、給与所得と合算して税負担が増えるケースがあります。青色申告で65万円の控除を受ける、減価償却で課税所得を圧縮するといった方法を組み合わせることで、キャッシュアウトを抑えつつ手取りを最大化できます。
また、災害リスクを軽視しない姿勢が不可欠です。東京都が公開する洪水・液状化ハザードマップを確認し、リスクが高い物件は購入価格を調整するか回避します。地震保険料は割高ですが、木造アパートよりRC造マンションの料率が低いことを踏まえ、保険料と保全効果のバランスを検討しましょう。
2025年度に使える制度と税メリット
まず押さえておきたいのは、投資用区分マンションにも適用できる「固定資産税の新築減額措置」です。2025年度も継続しており、住宅用として貸す50平方メートル以上の新築は、税額が3年間2分の1になります。また、耐震・バリアフリー改修に伴う所得税特別控除も2025年12月まで延長され、改修費の10%(上限25万円)が還付対象です。賃貸向けに改修しても利用できるため、築古物件を取得してリノベする戦略には追い風になります。
一方で、個人が所有する中古マンションを法人へ売却する形で組織を組み替える場合、2025年度税制改正で注目された「適格現物出資の要件緩和」が活用可能です。要件を満たすと譲渡益課税を繰り延べられるため、規模拡大を目指す中級者にもメリットがあります。
減価償却については、RC造の法定耐用年数47年を超えた物件でも「残存耐用年数×2」で計算する定額法が認められており、初年度から費用を多く落とすことができます。税金を抑えた余剰資金を次の投資に回すことで、複利的にポートフォリオを拡大するサイクルが生まれます。
ただし、税制は毎年見直されるため、購入時点での優遇が10年後も続くとは限りません。顧問税理士にシミュレーションを依頼し、制度変更の影響を年1回はアップデートする姿勢が長期的なリスク管理につながります。
まとめ
今回取り上げたように、マンション投資は仕組みを理解し、資金計画、物件選定、運営、税制の各段階で丁寧に判断すれば、初心者でも安定収益を目指せます。まずは自己資金の確保とシミュレーション作成から取り組み、金融機関や専門家と連携して具体的な購入プランを練りましょう。そして、小さく始めて経験値を積み重ねることが、将来のポートフォリオ拡大と資産形成への近道です。今日の行動が5年後、10年後の安心につながると意識して最初の一歩を踏み出してください。
参考文献・出典
- 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
- 東京都都市整備局「住まいの統計データ」 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp
- 国土交通省「不動産価格指数」 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局「家計調査報告」 – https://www.stat.go.jp
- 国税庁「令和7年度税制改正のあらまし」 – https://www.nta.go.jp