相続で突然マンションや古家を受け継ぎ、どう扱えばいいか悩んでいませんか。放置すれば固定資産税がかさみ、空き家のままでは傷みも進みます。しかし視点を変えれば、相続物件は初期費用を抑えつつ不動産投資を始める大きなチャンスです。本記事では「不動産投資 相続物件」をキーワードに、評価方法から資金計画、2025年度に活用できる制度までを分かりやすく解説します。読み終えるころには、相続物件を収益源へと転換する具体的な手順が見えてくるはずです。
相続物件とは何かを正しく捉える

まず押さえておきたいのは、相続物件が「取得費ゼロの資産」ではないという事実です。不動産取得税や登記費用、場合によっては相続税がかかります。また、法務省の改正不動産登記法により2024年から相続登記は義務化され、正当な理由なく放置すると過料の可能性があります。つまり、相続した瞬間から所有者としての責任が生じるわけです。
一方で市場価格を超える借入をせずに物件を手に入れられる点は、大きなメリットとなります。自己資金を温存できるため、リフォーム費用や突発的な修繕費に回しやすく、キャッシュフローを安定させやすいからです。総務省統計局の家計調査でも、自己資金比率が高い投資家ほど返済負担率が低い傾向が示されています。相続物件はその点で有利なスタートラインに立てるといえます。
価値を見極めるための評価とリスクチェック

重要なのは、相続物件の価値を客観的に判定し、潜むリスクを洗い出すことです。まず路線価と固定資産税評価額を比較すると、土地の相対的な市場水準が把握できます。国税庁の路線価図を確認し、周辺の売買事例と合わせれば、売却価格の目安もつかめます。
建物については築年数だけで判断せず、構造や管理状況を丁寧に調べます。日本建築学会によると、RC造でもメンテナンスの有無で耐用年数が20年以上変わるケースがあります。躯体や配管の傷みが進んでいれば、収益化には大規模改修が必要になり、初期の利回りが低下します。
また、法的リスクとして都市計画法の用途地域や接道義務を確認することも欠かせません。再建築不可の土地を知らずに相続すると、融資も販売も難しくなりがちです。専門家による現況調査を依頼し、リノベーション費用や将来の売却可能性まで試算すると、失敗を避けやすくなります。
キャッシュフロー計算と税金対策の基本
ポイントは、相続物件でも徹底した収支シミュレーションが必要だということです。家賃相場は国土交通省の賃貸住宅市場データで把握でき、空室率は地域別に5〜15%が一般的とされています。家賃収入から管理費、修繕積立、固定資産税、火災保険料を差し引き、借入がある場合は金利1.5%前後で返済額を試算しましょう。
税金面では減価償却が利益圧縮に役立ちます。築古RCなら耐用年数47年から経過年数を差し引き、残存年数で均等償却可能です。また小規模宅地等の評価減を適用していれば、相続税負担は抑えられたはずですが、将来の譲渡所得税は取得費加算の特例が使えなくなるケースがあります。言い換えると、保有期間と売却タイミングの戦略が税金に直結するのです。
さらに個人保有か法人化かで実効税率が変わります。2025年度の法人実効税率はおおむね30%前後ですが、所得900万円を超える個人の場合は最大45%になるため、将来的に規模拡大を目指すなら法人を検討する価値があります。ただし設立費用や社会保険料負担も増えるため、慎重な比較が必要です。
リフォーム投資と出口戦略をデザインする
実は相続物件の収益化では、リフォーム計画がキャッシュフローを左右します。国交省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業(2025年度)」は、一定の性能向上工事に対し最大250万円まで補助を受けられる制度です。期限は2026年3月末の工事完了分までとされているので、採択スケジュールを逆算して工程を組む必要があります。
賃貸向けには、水回りと断熱性能の改善が入居率を大きく左右します。例えば築30年の区分マンションで、キッチンと浴室を更新し、内窓を設置したケースでは、家賃が月1万円上がり、投資回収期間が6年に短縮した事例もあります。利回りだけでなく、空室期間の短縮効果も同時に考えることが大切です。
出口戦略として、将来の売却益を狙う「キャピタルゲイン型」と、長期保有で家賃を得る「インカムゲイン型」があります。日本銀行の不動産市況モニターによれば、2025年時点でも都市部の価格上昇は緩やかですが継続中です。そのため立地が良ければ3〜5年での転売も検討できます。一方で地方物件は価格が横ばいか下落傾向が続くため、長期保有を前提に資本的支出を抑える運営が現実的です。
2025年度に使える支援策と金融機関の動向
まず押さえておきたいのは、金融機関の融資姿勢がコロナ禍以降やや慎重ながら、相続物件では自己資金割合が高いことで審査が通りやすいという点です。日本政策金融公庫の統計では、相続物件のリフォーム目的融資に占める自己資金比率は平均35%と、一般投資物件より10ポイント高い結果が出ています。
補助金は前述の長期優良住宅化リフォームのほか、環境省の「先進的窓リノベ事業2025」が利用可能です。断熱窓への改修に対し1戸あたり最大200万円まで補助され、受付は予算上限に達し次第終了します。早期に計画を立てるほど有利です。また、空き家となる可能性が高い相続一戸建てでは、地方自治体が独自に解体費を支援する例もあるため、自治体窓口で確認しておくと費用負担を抑えられます。
金融商品の面では、地銀や信金が取り扱うリフォームローンの固定金利が2.0〜3.0%台に下がりつつあります。長期固定で金利リスクを消せるため、賃料上昇が見込みづらいエリアでは有利です。将来的な物件売却時に一括返済可能か、繰上げ手数料の有無までチェックしておくと出口が柔軟になります。
まとめ
相続物件は「負動産」と揶揄されることもありますが、適切な評価と計画さえあれば、自己資金を抑えて始められる有望な不動産投資素材です。価値の見極め、キャッシュフロー計算、リフォーム戦略、支援制度の活用という四つの視点を順序立てて検討することで、収益化への道筋が明確になります。まずは専門家の調査でリスクを数値化し、2025年度の補助金や低金利ローンを最大限に活用してみてください。実践的な一歩を踏み出すことで、相続物件は安定した資産形成のパートナーへと変わるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅市場動向調査2025 – https://www.mlit.go.jp
- 国税庁 路線価図・評価基準書 – https://www.rosenka.nta.go.jp
- 法務省 不動産登記法改正Q&A – https://www.moj.go.jp
- 総務省統計局 家計調査年報2024 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行 不動産市場モニター報告2025 – https://www.boj.or.jp