不動産投資に興味はあるものの、「自己資金は限られているし、マンション投資の実質利回りが本当にプラスになるのか不安だ」という声をよく耳にします。特に東京都心より手が届きやすい神奈川エリアで、頭金20%程度のレバレッジを効かせつつ安定収益を得られるのかは大きな関心事でしょう。本記事では、実質利回りの計算方法から頭金20%で投資するメリットと注意点、さらに2025年10月時点の神奈川市場データをもとにしたキャッシュフローシミュレーションまで、初心者でも理解できるよう順序立てて解説します。読み終える頃には、自分に合った投資判断を下すための具体的な視点が得られるはずです。
実質利回りを正しく理解する

まず押さえておきたいのは、表面利回りと実質利回りの違いです。表面利回りは年間家賃収入を物件価格で割っただけの単純指標ですが、実質利回りはそこから管理費・修繕積立金・固定資産税など運営コストを差し引いて算出します。つまり、手取りベースの収益性を測るためには実質利回りこそが重要になります。
神奈川県内のワンルーム中古マンションの平均表面利回りは2025年10月時点で4.6%前後と報告されています(神奈川県住宅供給公社調べ)。しかし管理費等を加味すると実質利回りはおよそ3.4%まで下がるのが一般的です。たとえば年間家賃72万円、物件価格1,600万円の場合、表面利回りは4.5%ですが、管理費等年15万円、固定資産税年5万円を控除すると手取りは52万円となり、実質利回りは3.25%にとどまります。このギャップを理解したうえで投資判断を行わないと、想定より手残りが少ない状態に陥るリスクが高まります。
また、利回りは地域ごとに異なります。横浜市中区の繁華街周辺は稼働率が高い一方、平均価格も高いため利回りは抑え気味です。川崎市多摩区など学生需要が見込めるエリアでは価格が手頃で表面利回り5%台の物件も散見されますが、築年数が古い場合は修繕費がかさむ点に注意が必要です。つまり、数字の裏側にあるコストや需要構造を読み解くことが実質利回りを高める鍵になります。
頭金20%が生むレバレッジ効果

ポイントは、頭金20%という資金計画が投資全体のリスクとリターンを適度にバランスさせる点です。金融機関の融資審査では自己資金比率20%を境に金利優遇が付きやすく、返済比率も抑えられるためキャッシュフローが安定しやすくなります。
仮に物件価格2,000万円の区分マンションを頭金400万円で購入し、残り1,600万円を金利2.0%・返済期間25年で借り入れた場合、月々の元利返済は約68,000円です。神奈川県の2025年平均家賃水準(横浜市内ワンルーム)月78,000円を得られるとすると、表面上のキャッシュフローは月1万円の黒字に見えます。ただし管理費・修繕積立金が月1.2万円発生するため実質キャッシュフローは月2,000円のマイナスに転じます。ここをプラスへ転換するには、賃料を上げるか、金利交渉で返済額を下げるか、運営コストを圧縮するかの三択になります。
一方で、頭金を30%に増やすと返済額が約54,000円に下がり、同条件なら月5,800円程度のプラスにできます。しかし自己資金を厚くするとレバレッジ効果が薄れ、自己資金利回りが下がる点も見逃せません。つまり頭金20%は「融資条件の優遇」と「自己資金の効率運用」の分岐点に位置し、両者のバランスをとる実用的なラインと言えます。
神奈川エリアの市場動向と立地選び
実は、同じ神奈川でもエリアによって入居需要と価格トレンドが大きく異なります。2025年版の国土交通省地価調査によると、横浜駅周辺は前年比+4.1%と堅調に上昇を続けているのに対し、相模原市中央区は+0.8%にとどまります。価格が横ばいの地域では取得価格を抑えやすい反面、将来的な資産価値の伸びは限定的です。
横浜市港北区、川崎市高津区の東急東横線・田園都市線沿線は、都内への通勤ニーズの高まりからファミリー層も含め賃貸需要が底堅く、空室率は2025年上半期で4%台にとどまっています(レインズデータ)。一方、藤沢市や茅ヶ崎市は海沿いのライフスタイル志向で人気があるものの、観光シーズン以外は賃料が伸び悩むケースもあります。
立地を選ぶ際は、賃料相場に加えて「公共交通の利便性」「大学や大規模企業の集積」「再開発計画の有無」を合わせて確認することが欠かせません。たとえば2025年度から始まる横浜駅西口大規模再開発プロジェクトは、完了後に周辺物件の資産価値上昇が期待されています。このように、将来の需要と供給の変化を見越して物件を取得できれば、実質利回りの押し上げと資産価値向上の両方を狙えます。
シミュレーションで見るキャッシュフロー
基本的に、投資判断を数字で裏付けるためには詳細なキャッシュフローシミュレーションが不可欠です。以下は前述の2,000万円区分マンションをモデルに、頭金20%・賃料下落率年1%・空室率10%を想定した10年間の累積キャッシュフロー例です。
- 初年度手取り収入:約▲12,000円
- 5年目累積手取り:約+180,000円
- 10年目累積手取り:約+630,000円
上記試算では、賃料が年1%下がる前提でも5年目以降は黒字が積み上がっています。これは元金返済が進むにつれて返済元利の利息割合が減るためです。さらに、10年目時点のローン残高は約1,230万円となり、仮に市場価格が購入時と同じ2,000万円で売却できれば、約370万円のキャピタルゲイン(売却益)も期待できます。もちろん将来価格の保証はありませんが、運用益と売却益の両方を視野に入れると実質利回りは大きく改善します。
注意したいのは修繕積立金の上昇です。築25年頃から大規模修繕に備え毎月2,000〜3,000円の増額が一般的に行われます。シミュレーションにはこうした長期コストも組み込み、引き渡し時点で管理組合の長期修繕計画を確認することが重要です。長期的な数字を可視化することで、表面的な利回りに惑わされず堅実な判断ができるようになります。
リスク管理と長期戦略
重要なのは、リスクを前もって把握しコントロール策を仕込んでおくことです。神奈川エリアは比較的空室率が低いといっても、周辺に新築物件が大量供給されれば競争は激化します。家賃設定を柔軟に見直すとともに、Wi-Fi無料や宅配ボックス導入など付加価値を提供して入居者満足度を高める施策が欠かせません。
また、金利上昇リスクにも目を向ける必要があります。金融庁の2025年マクロプルーデンシャル・レビューでは、住宅ローン金利の緩やかな上昇予測が示されています。変動金利で借りる場合は、金利が1%上がると年間返済額が約13万円増える試算となるため、繰上返済用のキャッシュリザーブを確保しておくと安心です。固定金利への借り換えや一部固定・一部変動のミックスローンを活用する方法もあります。
さらに、災害リスク対策として火災保険・地震保険は必須です。神奈川は海溝型地震の想定震度が高いため、保険料は高めですが想定外の損失を防ぐための必要経費と割り切りましょう。最後に、出口戦略としての売却時期を意識しておくことも長期的な成功を左右します。インバウンド回復や再開発完了など、価格が上振れしやすいタイミングで売却できれば、実質利回りをトータルで大きく底上げできます。
まとめ
頭金20%で始めるマンション投資は、適度な自己資金負担で金融機関の優遇も引き出せる実践的な方法です。実質利回りを高めるには、運営コストを丁寧に見積もり、神奈川エリア内でも賃貸需要の強い立地を選ぶことが欠かせません。さらに、修繕積立金の上昇や金利変動をシミュレーションに組み込むことで、長期的なキャッシュフローのブレを抑えられます。今日紹介した視点をもとに、ご自身の資金計画とリスク許容度を再確認し、数字で裏付けた投資判断を行ってください。堅実な準備と継続的な改善が、神奈川でのマンション投資を成功に導く最短ルートになります。
参考文献・出典
- 国土交通省 地価調査 2025年 – https://www.mlit.go.jp
- 神奈川県住宅供給公社 住宅市場動向レポート2025 – https://www.kosha33.com
- 日本不動産研究所 住宅マーケットインデックス2025 – https://www.reinet.or.jp
- 不動産経済研究所 新築マンション市場動向2025 – https://www.fudosankeizai.co.jp
- 金融庁 マクロプルーデンシャル・レビュー2025 – https://www.fsa.go.jp