不動産融資

マンション経営で金利上昇に備える実践戦略

マンション経営を検討しているものの、「金利が上がったら返済が厳しくなるのでは」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。実際、借入金利が上昇すれば毎月の返済額は増加し、キャッシュフローが圧迫される恐れがあります。しかし、適切な物件選定と資金計画を立てれば、金利上昇局面でも安定した収益を維持することは十分に可能です。

本記事では、金利動向がマンション経営に与える影響を具体的な数値で解説し、返済シミュレーションの方法やローン商品の選び方、さらには2025年度に利用できる優遇制度まで丁寧にお伝えします。読み終えるころには、金利上昇期でも自信を持って投資判断できる視点が身につくでしょう。

金利上昇が不動産市場に与える影響

金利上昇が不動産市場に与える影響

まず理解しておきたいのは、金利上昇が不動産市場全体にどのような変化をもたらすかという点です。日本銀行は2024年にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的な金利引き上げを実施してきました。2025年9月の金融政策決定会合では長期金利の誘導目標を1.0%前後に引き上げる方針が示され、10年国債利回りは1.08%前後で推移しています。

この動きは住宅ローン金利にも波及しています。マンションリサーチによると、DH住宅ローン指数(変動金利の目安)は2026年1月時点で0.902%となり、フラット35の最頻金利は2.26%(2026年2月)まで上昇しました。つまり、同じ家賃収入を得ても、借入条件によっては手取りが大きく減少するリスクがあるわけです。

一方で、金利上昇が即座に物件価格の下落につながるわけではありません。不動産経済研究所によると、2025年10月時点の東京23区新築マンション平均価格は7,580万円で前年比プラス3.2%を維持しています。都市部の需要が依然として強く、建築費や人件費の高騰が価格を下支えしているためです。

また、インフレ局面では実物資産である不動産が資産価値の保存手段として注目されます。このため投資家による買い支えが入り、価格下落を抑制する効果も生まれています。重要なのは、金利上昇の影響は物件ごとに異なり、立地や管理レベルによって収益力への影響度合いが大きく変わるという点です。

住宅ローン商品の比較と選び方

住宅ローン商品の比較と選び方

マンション経営の資金調達において、どのローン商品を選ぶかは収益性を左右する重要な判断です。ここでは変動金利型、固定金利型、全期間固定型(フラット35)の特徴を整理し、金利上昇期に適した選び方を解説します。

変動金利型のメリットとリスク

変動金利型は、短期プライムレートに連動して金利が変動するタイプです。現時点では固定金利より低い水準で借入できるため、当初のキャッシュフローを確保しやすいというメリットがあります。実際、多くの投資家が変動金利を選択しており、初期の返済負担を抑えながら投資をスタートさせています。

しかし、金利上昇期には返済額が増加するリスクを常に意識しておく必要があります。一般的に、変動金利型では金利見直しが半年ごとに行われますが、返済額への反映は5年ごとに制限されるルールを設けている金融機関も多いです。ただし、この間も利息負担は増えていくため、元本の減りが遅くなる点には注意が必要です。

固定金利型と全期間固定型の安心感

固定金利型は一定期間、全期間固定型(フラット35やフラット35S)は借入期間全体を通じて金利が変わりません。金利上昇局面では返済計画が立てやすく、キャッシュフローの予測が安定するという大きなメリットがあります。SUUMOの調査によれば、金利上昇への不安から固定金利型を選ぶ投資家が増加傾向にあります。

特にフラット35Sは、省エネ性能や耐震性などの基準を満たす物件を対象に、当初一定期間の金利が引き下げられる制度です。条件を満たせば0.25%から0.5%程度の優遇を受けられるため、該当する物件を選ぶ際には積極的に活用を検討すべきでしょう。

ミックスローンと繰上返済の活用

変動金利と固定金利を組み合わせたミックスローンを活用する方法もあります。たとえば借入額の半分を変動金利、残り半分を固定金利で組むことで、金利変動リスクを分散しながら当初の返済負担も抑えられます。また、手元資金に余裕が出たタイミングで繰上返済を行い、変動金利部分の残高を優先的に減らしていく戦略も有効です。

金利上昇時の返済シミュレーション

金利上昇がキャッシュフローにどの程度影響するかを事前に把握しておくことは、マンション経営において極めて重要です。ここでは具体的な数値を使ってシミュレーションを行います。

1%・2%上昇時の返済額変化

たとえば1億円を変動金利1.0%、返済期間25年で借り入れた場合、毎月の返済額は約37万7,000円です。もし金利が1%上昇して2.0%になると、毎月の返済額は約42万4,000円となり、月額で約4万7,000円、年間では約56万円の負担増となります。さらに金利が2%上昇して3.0%に達した場合、毎月の返済額は約47万4,000円まで上がり、当初と比べて月額約9万7,000円、年間では約116万円もの差が生じます。

総返済額で見ると、金利1.0%時の総返済額は約1億1,310万円ですが、2.0%では約1億2,720万円、3.0%では約1億4,220万円となります。つまり、金利が2%上昇するだけで約2,910万円もの追加負担が発生する計算です。このシミュレーション結果を踏まえると、金利上昇に備えた資金的な余裕を持つことがいかに重要かがわかります。

DSCRと返済比率の考え方

金融機関がローン審査で重視する指標の一つにDSCR(Debt Service Coverage Ratio:元利金返済カバー率)があります。これは年間の家賃収入を年間の元利返済額で割った数値で、1.0を下回ると家賃収入だけでは返済が賄えないことを意味します。一般的には1.2以上を確保することが望ましいとされています。

また、返済比率(年間返済額÷年間家賃収入)も重要な指標です。多くの金融機関では50%を上限としており、これを超えると融資条件が厳しくなる傾向があります。金利上昇を見越して、当初から返済比率を40%以下に抑えた計画を立てておくと、将来の金利変動にも柔軟に対応できます。

マンション経営で資産価値を守る三つの視点

金利上昇期に安定した収益を維持するためには、物件そのものの競争力を高めておくことが不可欠です。ここでは立地、管理組合の健全性、建物スペックという三つの観点から解説します。

立地の選定が収益の基盤となる

総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2025年も東京都の世田谷区や目黒区など人気エリアでは転入超過が続いています。駅徒歩5分圏内や再開発エリアに位置するワンルームマンションは家賃が下がりにくく、金利上昇で返済額が増えてもキャッシュフローを維持しやすいという強みがあります。

都市再生機構のデータによると、同一築年・同一面積でも駅からの距離が徒歩10分伸びると家賃水準は平均8%から12%下落します。つまり、金利が上がっても利回りを守るには、賃料を維持できる立地を選ぶことが大前提となります。物件を選定する際には、エリアの人口動態や開発計画を必ず確認しましょう。

管理組合の財務健全性を確認する

国土交通省の「マンション総合調査」によれば、修繕積立金が不足しているマンションは築30年超で4割に達しています。積立不足が続くと大規模修繕時に一時金の徴収が必要となり、入居者や買い手がリスクを感じて物件価値が下落する原因となります。

購入前には必ず管理組合の総会議事録や長期修繕計画を確認し、適正な積立金が確保されているかを点検してください。日本マンション管理センターによると、築20年以上でも管理評価が高い物件は空室率が平均3%台にとどまり、評価が低い物件と比べて半分以下の水準です。管理の質は目に見えにくいものの、収益性と資産価値の両方に大きく影響します。

省エネ性能と建物スペックの重要性

新耐震基準(1981年以降)を満たすことは最低条件ですが、2025年度の省エネ基準に適合する断熱性能や給湯効率も評価ポイントになっています。特にZEH-M(ゼッチ・マンション)対応物件はエネルギーコストが低いだけでなく、居住者の満足度が高く退去率も低い傾向があります。

省エネ性能の高い物件は、後述するグリーンリース支援融資やフラット35Sの適用対象となることも多く、資金調達面でも有利です。将来の賃料下落リスクを抑制しながら、金利優遇も受けられるという二重のメリットがあるため、物件選定時には建物のエネルギー性能にも注目してください。

2025年度に活用できる金利優遇・税制制度

金利上昇期でも条件の良い融資を得る余地は十分にあります。ここでは2025年度時点で利用可能な主要な優遇制度を紹介します。

グリーンリース支援融資

環境性能の高い建物に対して低利融資を行う「グリーンリース支援融資」は、全国銀行協会加盟行で継続中です(2027年3月申請分まで)。適用金利は店頭金利から最大0.3%の優遇があり、ZEH-MやBELS(建築物エネルギー性能表示制度)五つ星の物件が対象となります。省エネ物件を検討している方は、この制度の活用で返済負担を軽減できます。

フラット35リノベと住宅金融支援機構の制度

賃貸住宅向けの「フラット35リノベ」は2025年度も存続しており、一定の省エネ改修を前提に借入金利が0.5%優遇されます。中古マンションを購入してリノベーション後に賃貸転用するケースでも適用可能です。期限は2026年3月契約分までとなっているため、利用を検討している方は早めに金融機関へ相談することをおすすめします。

省エネ改修促進税制と固定資産税減免

省エネ改修を行った賃貸住宅に対しては、固定資産税の減額措置も用意されています。一定の断熱改修工事を実施した場合、翌年度の固定資産税が3分の1減額される制度があります。これらの税制優遇と金利優遇を組み合わせることで、金利上昇期でもキャッシュフローの健全性を高めることが可能です。

融資審査を通過するためのポイント

金利上昇期には金融機関の審査基準も厳格化する傾向があります。融資を受けやすくするための準備についても押さえておきましょう。

まず、保守的な収支計画を提示することが信頼獲得につながります。空室率は10%ではなく20%、金利は現状ではなく2%上昇した想定でシミュレーションを作成しましょう。厳しめの条件でも収支がプラスになる計画を示すことで、金融機関からの評価が高まります。

次に、自己資金比率を高めておくことも重要です。物件価格の2割以上の自己資金を用意できれば、融資条件が有利になるケースが多いです。また、既存のローンを整理して借入残高を減らしておくことで、返済比率の改善にもつながります。

さらに、物件の管理状態が良好であることを示す資料を準備しましょう。管理評価が高い物件は担保評価も上がりやすく、金利上昇期でも借り換えや追加融資が受けやすくなります。管理組合の財務諸表や修繕履歴を事前に取り寄せておくと、審査がスムーズに進みます。

まとめ

本記事では、マンション経営における金利上昇リスクへの対策を多角的に解説しました。金利が上昇すると返済負担は確実に増加しますが、立地選定や管理の質を重視し、適切なローン商品を選ぶことで、キャッシュフローを安定させることは十分に可能です。

特に重要なのは、金利上昇を織り込んだシミュレーションを事前に行い、DSCRや返済比率といった指標で収支の健全性を確認しておくことです。また、グリーンリース支援融資やフラット35リノベなどの優遇制度を活用すれば、金利負担を軽減しながら投資を進められます。

まずは検討中の物件について、立地データと管理状況を徹底的に調査してください。そのうえで金利2%上昇を想定したシミュレーションを作成し、金融機関との相談に臨むことをおすすめします。準備を万全にすれば、金利上昇期でも資産価値を守りながらマンション経営を成功させることができるでしょう。

参考文献・出典

  • 日本銀行 – https://www.boj.or.jp
  • 不動産経済研究所 – https://www.fudousankeizai.co.jp
  • 国土交通省「マンション総合調査」 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省「住民基本台帳人口移動報告」 – https://www.stat.go.jp
  • マンションリサーチ – https://mansionresearch.co.jp
  • 住宅金融支援機構 – https://www.jhf.go.jp

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