不動産の税金

広島で狙うREIT利回り戦略の核心

不動産投資は首都圏の話と思われがちですが、地方都市にも堅実なチャンスがあります。とくに人口115万人を抱える政令市・広島は、安定した賃貸需要と再開発で注目度が高まっています。それでも「地方物件の利回りは本当に安全か」「REITと現物投資は何が違うのか」と迷う方は多いでしょう。本記事では広島エリアの市場特性を踏まえつつ、REIT利回りの仕組みや具体的な投資判断の手順を丁寧に解説します。読み終えるころには、地方都市を活用したポートフォリオ構築の道筋が見えてくるはずです。

REITとは何か、そして利回りの意味

REITとは何か、そして利回りの意味のイメージ

まず押さえておきたいのは、REIT(不動産投資信託)が投資家から集めた資金で複数の収益物件を購入し、そこから得た賃料や売却益を分配する仕組みです。利回りは分配金を投資額で割った指標で、株式でいう配当利回りに近い概念になります。

REITの最大の特徴は、小口化によって少額でも複数物件に分散投資できる点です。個別物件を直接取得する場合、立地や管理体制の良し悪しが全体成績を大きく左右します。一方、REITはプロが運用し、賃貸オフィスや商業施設、さらには物流倉庫まで幅広いアセットに投資するため、単一物件のリスクが薄まります。しかし、上場銘柄である以上、株式市場の値動きに影響を受けることは覚えておく必要があります。

広島関連のポートフォリオを例に取ると、オフィス主体型REITが同市中心部の大型ビルを組み入れるケースが増えています。日本取引所グループによれば、2025年8月時点の上場REIT平均分配利回りは4.1%。これに対し、地方中核市のテナントビルを多く保有するREITの平均は4.5%とわずかに高めです。つまり、広島市の安定賃料と地方特有の割安感が利回りを押し上げる起因となっているのです。

利回りを評価する際は、「分配金の継続性」と「含み損益の変動」を分けて考える姿勢が欠かせません。価格が下落しても賃料が堅調なら配当は維持される場合がありますが、空室率の上昇が続くと将来の分配金に影響します。そこで、物件所在都市の人口動態や企業立地動向を確認し、利回りの根拠を数字で把握する姿勢が重要になります。

広島市の不動産市況とREITへの影響

広島市の不動産市況とREITへの影響のイメージ

重要なのは、広島市が西日本屈指の経済圏を形成し、安定した賃貸需要を持つ点です。広島県統計年鑑によると、2024年から2025年にかけて市内法人登記数は前年同期比2.7%増を記録しました。これは中国・四国エリアでトップの伸び率です。結果としてオフィス需要は底堅く、都心部の空室率は4%台で推移しています。

加えて、広島駅南口の再開発プロジェクトが2025年春に全体竣工し、延床30万㎡の複合施設「HIROSHIMA GATE PARK」には大手IT企業が新規入居しました。こうした動きはテナント料の底上げ要因となり、オフィス主体型REITの分配金安定化に寄与します。また、観光消費の回復も見逃せません。広島平和記念資料館の2025年上半期入館者数はコロナ前比105%と好調で、ホテル系REITが保有する市内宿泊施設の稼働率向上につながりました。

住宅分野を含む実物不動産の世界も堅調です。国土交通省が公表した2025年地価調査では、中区の住宅地が平均1.8%上昇し、地方四大都市(札幌・仙台・広島・福岡)の中で2番目の伸びを記録しました。賃貸マンションの市場賃料は前年より1%程度上昇しており、住宅系REITにも好影響が及んでいます。言い換えると、広島市は複数アセットにとって「安定した賃料上昇が期待できる数少ない地方都市」といえるのです。

ただし、人口横ばいの市域でも郊外は縮小傾向にあります。郊外型商業施設を多く保有するREITの場合はテナント撤退リスクが高まりやすいので、投資前にポートフォリオ内の資産位置を確認しましょう。広島市中心部に資産を7割以上組み込んでいる銘柄なら、地方特有のリスクを抑えつつ利回りメリットを享受できます。

広島特化型REITに分散投資するメリットと注意点

ポイントは、全国型REITの中から「広島への投資比率が高い銘柄」を選ぶことで、地元固有の成長性に乗りつつ物件分散も確保できる点です。具体的にはホテル主体型とオフィス主体型の双方を組み合わせ、観光需要とビジネス需要を同時に取り込む戦略が有効です。これにより季節変動の影響を緩和し、年間分配金を安定させる効果が期待できます。

しかし広島特化を深めるほど、同市の地震リスクや大型工場の景況感に左右されやすくなります。広島市の地震危険度は首都圏より低いものの、豪雨災害は毎年のように発生します。建物保険の上昇が分配金に影響を与える可能性があるため、REITの決算説明資料で「追加保険料」や「減価償却費の前倒し計上」について言及しているかを確認しましょう。

さらに、利回りだけで銘柄を選ぶと「分配金余力」の少ないREITに偏りがちです。ARESの2025年度統計によれば、分配金性向が90%を超えるREITは金融緩和が続く間は高利回りを示しますが、賃料下落局面で減配する確率が平均の2倍に達します。広島特化型を選ぶ際も、目先の4.5%という数字に惑わされず、長期視点で分配金性向70〜80%の健全な銘柄を探す姿勢が大切です。

物件選定とポートフォリオ構築の実践ステップ

実は、REIT投資だからといってデューデリジェンス(投資前調査)の手間がゼロになるわけではありません。まずIR資料を使い、ポートフォリオ内の物件所在地、賃料改定率、借入金の平均残存年数を一覧にまとめます。それを基に「賃料が下がりにくい中心部比率が高いか」「金利負担が将来増えないか」を定量的に評価します。

次に、同業種内で利回りが近い銘柄を比較し、広島への投資比率と空室率の推移を照合します。例えばオフィス主体型AとBがともに利回り4.4%でも、Aの広島比率が15%かつ空室率4%、Bが30%かつ空室率2%なら、分配金の安定度はBの方が高いと判断できます。また、管理運営会社(スポンサー)の財務体質はJ-REITの生命線です。親会社が自社保有ビルを継続供給できるかどうかを確認し、将来の資産入替え余力を推測しましょう。

最後に、ポートフォリオ全体でセクター分散を図ります。住宅、オフィス、ホテル、物流の4セクターに均等投資すれば、特定景気循環の影響を抑えられます。広島を核に据えつつ全国への分散を図るイメージです。投資資金が限られている場合は、REITと現物区分マンションを併用する方法も選択肢になります。REITが日々の市場変動を吸収し、現物は長期の資産保全を担う形にすれば、安定と成長を両立させやすくなります。

税制・制度面で押さえたい最新ポイント(2025年度)

まず、REITの分配金は「配当所得」に区分され、上場株式と同じく20.315%の源泉徴収が行われます。NISA(少額投資非課税制度)は2024年に恒久化され、2025年度も非課税枠が年間360万円(成長投資枠240万円、つみたて枠120万円)で維持されています。REITは成長投資枠の対象であり、非課税で分配金を受け取れるため利回り向上効果が大きいです。

また、2025年度税制改正により、特定口座内保管のREIT配当と上場株式の損益通算が引き続き可能です。損失が出た際は三年間の繰越控除も認められていますので、配当狙いでもリスク管理は怠らないようにしましょう。なお、不動産所得と損益通算する仕組みは存在しないため、現物投資とREITを組み合わせる場合は、キャッシュフローの源泉が異なることを理解したうえで資金計画を立てる必要があります。

国土交通省の「資産形成支援事業補助金」(2025年度継続)は、金融リテラシー講習を受けた個人投資家がJ-REITを含む投資商品を購入する際の手数料を一部補助する制度です。個別企業が実施するセミナーでも対象になるケースがあり、活用すればコスト削減に繋がります。ただし予算消化次第終了となるため、申請時期は最新情報をチェックしましょう。

まとめ

広島市は人口横ばいながら法人設立増と再開発の追い風を受け、安定した賃貸ニーズが続いています。REITを通じて広島物件に投資すれば、平均4.5%前後の利回りでリスク分散も図れます。ポイントは、広島比率と空室率、そして分配金性向のバランスを見極めることです。さらにNISAや税制優遇を活用すれば、手取り利回りを一段と高められます。まずはIR資料を読み込み、広島に強い銘柄をピックアップするところから始めてみてください。堅実なリサーチと分散投資が、地方都市で資産を育てる近道になります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 地価調査2025年 – https://www.mlit.go.jp
  • 日本取引所グループ JPX REIT Market Data 2025 – https://www.jpx.co.jp
  • 一般社団法人不動産証券化協会(ARES)統計資料2025年版 – https://www.ares.or.jp
  • 広島県統計年鑑2025 – https://www.pref.hiroshima.lg.jp
  • 日本政府税制改正大綱2025 – https://www.mof.go.jp

関連記事

TOP