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不動産投資ローン 返済シミュレーション攻略

不動産投資ローン 返済シミュレーション攻略

導入文 不動産投資に興味を持ちながらも、「毎月いくら返せるのか」「金利が変わったらどうなるのか」と不安を感じる人は多いものです。返済シミュレーションを行えば、将来のキャッシュフローを数値で確認できるため、漠然とした不安を具体的な対策へと変えられます。本記事では、2025年9月時点の最新金利データを踏まえ、初心者でも実践できるシミュレーションの手順と活用法をわかりやすく解説します。

返済シミュレーションが必要な理由

返済シミュレーションが必要な理由のイメージ

まず押さえておきたいのは、シミュレーションが単なる数字遊びではなく、リスク管理の第一歩だという点です。

不動産投資ローンは長期にわたる契約です。日本政策金融公庫の調査によると、賃貸用物件の平均借入期間は25年を超えます。期間が長いほど金利変動や空室率の影響を受けやすくなるため、購入前に複数のシナリオを比較することが重要です。たとえば、変動金利が1.5%から2.0%へ上がるだけで、毎月返済額は1億円の借入・25年返済の場合、約2万円増える試算になります。

また、金融機関の融資審査では、申込者自身が作成した収支計画書の精度が評価されるケースが増えています。シミュレーション結果を根拠として提示できれば、担当者との対話がスムーズになり、金利優遇や融資額アップにつながる可能性もあります。つまり、シミュレーションは融資審査対策としても大きな武器となるのです。

シミュレーションに使う4つの基本パラメータ

シミュレーションに使う4つの基本パラメータのイメージ

ポイントは、入力項目をできるだけシンプルにしつつ、結果を立体的に読むことです。

最も基本となるパラメータは「借入額」「金利」「返済期間」「返済方式」の4つです。借入額は物件価格に諸費用を加え、自己資金を差し引いた金額で設定します。金利は2025年9月現在、変動で1.5〜2.0%、固定10年で2.5〜3.0%が主流と全国銀行協会は公表しています。返済期間は耐用年数だけでなく、家賃下落の予測年数も考慮し25年程度が一般的です。

返済方式には「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。前者は毎月返済額が一定で資金計画を立てやすい一方、利息負担がやや大きい傾向です。後者は初期返済額が高くなるものの、総返済額が抑えられます。シミュレーションでは両方を比較し、長期的なキャッシュフローの違いを確かめましょう。

最後に空室率と修繕費のパラメータを追加すると精度がぐっと上がります。総務省「住宅・土地統計調査」のデータでは、全国の賃貸住宅空室率は2023年時点で約18%です。都市部の新築ワンルームなら5%前後に設定し、築古アパートなら20%程度に設定するなど、物件特性に応じて入力することが大切です。

金利タイプ別のシナリオ設定

実は、シミュレーションの中で最も結果がぶれやすい要素が金利シナリオです。

変動金利型の場合、金利見直しが半年ごとに行われる銀行が多く、利息軽減効果が高い反面、上昇リスクがあります。過去20年の短期プライムレートを見ると、最安値は1.1%、最高値は2.5%近辺で推移しており、この幅を前提に3段階(現状・中立・上昇)の金利で試算すると現実的です。

一方で固定金利型は10年間金利が変わらないものの、変動より金利が高めに設定されます。2025年度の固定10年特約では2.5%前後が一般的です。固定を選ぶ場合は「10年後の差し替え金利」を2.5%、3.0%、3.5%と階段状に上げ、再シミュレーションしておくとリスクを定量化できます。

さらに、日銀の金融政策にも注意が必要です。2024年以降、マイナス金利政策が解除され長期金利が徐々に上昇傾向にあります。国債10年物利回りが0.8%から1.2%に動くと、銀行の長期固定金利もおよそ0.3〜0.4%上昇する傾向にあるため、長期シナリオで1%の上振れを組み込んでおくと安心です。

無理のないキャッシュフローを作るコツ

重要なのは、最悪ケースでも自己資金が枯渇しないラインを見極めることです。

まず家賃収入から空室損や管理費、固定資産税を差し引き、「ネット収入」を求めます。次に返済額を差し引き、手元に残る「キャッシュフロー」を月ベースで確認します。一般的に、キャッシュフローが家賃収入の10%以上あれば安全圏とされます。

ただし修繕費は突発的に発生します。国土交通省「民間建築物ストック統計」によると、築20年を超えるRC造マンションでは外壁改修に平均150万円程度が必要です。毎月のキャッシュフローから1〜2万円を修繕積立に回すと、将来の大規模修繕にも対応しやすくなります。

さらに、生命保険代わりとしての団体信用生命保険(団信)も忘れてはいけません。団信保険料は金利に0.2%上乗せされるケースが多いですが、万が一の際にローン残債が完済されるため、遺族には家賃収入がそのまま残ります。シミュレーションでは団信込み金利で試算し、リスクとリターンのバランスを可視化しましょう。

シミュレーション結果を融資交渉に生かす

ポイントは、数字の裏付けを示しつつ、リスク対応策まで提示することです。

銀行担当者は「返済能力」と「リスク管理力」を重視します。たとえば、空室率20%・金利上昇1%・家賃下落5%という厳しい条件でも、毎月キャッシュフローが黒字であることを示せれば、担当者の警戒感を下げられます。また、自己資金を多めに投入し、融資比率(LTV)を80%以下に抑えるシミュレーションを提示すると、金利優遇の交渉材料にもなるでしょう。

さらに、家賃保証会社や家賃回収代行サービスを利用する予定であれば、その費用をシミュレーションに組み込み、空室リスクへの備えとして説明すると説得力が増します。返済額に対して家賃収入がどの程度上回るかを示す「返済比率」(DSCR)が1.2以上であれば、地方銀行でも前向きに検討されるケースが多いです。

最後に、シミュレーションソフトの出力だけでなく、自分の言葉で数値の意味を説明できるよう準備しておくことが大切です。数字とストーリーを結びつけることで、融資交渉はもちろん、購入後の経営判断にも一貫性が生まれます。

まとめ

本記事では、返済シミュレーションの必要性から具体的な入力項目、金利シナリオの設定方法、キャッシュフロー改善のコツ、そして融資交渉への応用までを解説しました。シミュレーションは一度作れば終わりではなく、金利や家賃相場が変化するたびに更新することで、経営の羅針盤として機能します。まずは紹介した4つの基本パラメータを使い、現実的かつ厳しめの条件で試算してみてください。数値でリスクを可視化できれば、投資判断に自信が持てるはずです。

参考文献・出典

  • 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
  • 日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」 – https://www.jfc.go.jp
  • 国土交通省「民間建築物ストック統計」 – https://www.mlit.go.jp
  • 総務省「住宅・土地統計調査」 – https://www.stat.go.jp
  • 日本銀行「金融政策決定会合議事要旨」 – https://www.boj.or.jp

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