家賃をいくらにすべきか決められず、収益計画が立てられないと悩むオーナーは少なくありません。「月間家賃収入100万円」という目標を掲げると、一見ハードルが高いように感じるかもしれませんが、市場の動向を読み取り、物件の魅力を高め、数字に基づいた戦略を組み立てれば、初心者でも十分に達成可能な数字です。本記事では最新データと2025年度の制度を踏まえ、家賃設定の基本的な考え方からリスク管理まで丁寧に解説します。読み終えたときには、自分に合った家賃戦略を具体的に描けるようになるでしょう。
家賃設定が収益を左右する理由

アパート経営において最も重要な判断のひとつが家賃設定です。家賃はキャッシュフローの出発点であり、この決定を誤ると長期にわたって損益に影響を及ぼします。家賃が高すぎれば空室が増えて機会損失が発生し、低すぎれば利回りが縮んで投資効率が悪化します。つまり家賃設定は、賃貸経営の舵取りそのものと言えるのです。
国土交通省の住宅統計によると、2025年8月時点の全国アパート空室率は21.2%で、前年より0.3ポイント下がりました。この数字は供給調整が進んだ証拠ですが、依然として五戸に一戸が空いている状況には変わりありません。オーナーは収益と入居率のバランスを見極め、競合物件の中で選ばれる価格帯を探っていく必要があります。
家賃設定のミスが利回りにどれほど影響するか、具体的に考えてみましょう。たとえば延床面積200平方メートル、8戸構成のアパートで、1戸あたり1万円の家賃差が一年続くと年間96万円もの差額が生まれます。この金額は修繕費や広告費を圧迫するだけでなく、結果として物件の資産価値を削るリスクにもつながります。
適正家賃を導き出すためには、物件の築年数、設備レベル、最寄り駅までの距離など多面的な要素を評価しなければなりません。さらにターゲットとなる入居者像を明確にすることも不可欠です。単身者向けなのかファミリー向けなのかによって、求められる設備や間取りが異なり、それに応じた家賃設定が求められます。
市場調査の進め方と100万円ラインの考え方

家賃設定の第一歩は、競合分析と需要調査を同時に行うことです。REINSやアットホームなどの公開データを活用し、半径1キロ圏内の成約家賃を一覧化します。同築年・同間取りの平均値を抽出したうえで、自分の物件が上乗せできる要因と割引すべき要因を洗い出していきましょう。
月間家賃収入100万円という目標を達成するには、逆算して考えることが効果的です。たとえば8戸のアパートであれば、一戸あたりの平均家賃を12万5千円に設定すれば目標に到達します。12戸の物件なら約8万3千円で済むため、戸数と間取りの組み合わせが戦略に大きな影響を与えることがわかります。目標家賃収入と戸数の掛け合わせによって、どのような価格帯を狙うべきかが明確になるのです。
需要面を把握するためには、総務省の地域別人口推計と転入超過数を参照することをおすすめします。20代単身世帯が増えているエリアであればコンパクトな1Kでも高稼働が見込めます。一方で家族世帯が流入する郊外では2LDKのニーズが高く、駐車場の有無が入居の決め手になることも少なくありません。
収集した数値をExcelなどの表計算ソフトで一覧にし、家賃を5000円刻みで変えたシミュレーションを作成すると損益分岐点が視覚化できます。このとき空室率は国交省データの21.2%ではなく、保守的に25%程度で設定しておくと安心です。余裕を持った計算をしておけば、実際の運営で想定外の空室が発生しても慌てることがありません。
家賃100万円を実現する高付加価値戦略
家賃収入を増やすうえで重要なのは、単に値上げするのではなく「上げても選ばれる価値」を物件に付けることです。Wi-Fi無料やスマートロックなどのIT設備は、初期投資が比較的少なく済むうえに若年層の獲得に直結します。また共用部にワークラウンジを設けると在宅勤務者に響き、賃料1割アップも現実的な目標となります。
築古物件をリノベーションする場合は、内装のデザイン性を高めるだけでなく水回りの更新を徹底しましょう。国税庁の「住宅取得費用の耐用年数指針」によると、ユニットバスやシステムキッチンの交換は減価償却期間が比較的短く、節税メリットも得られます。そのうえ入居者満足度が向上し、退去率を下げる効果まで期待できるため、一石二鳥どころか三鳥の施策となります。
高付加価値戦略を支える柱がブランディングです。物件名とロゴを作成し、SNSで内覧動画を発信すれば、仲介会社任せにしなくても直接反響を得ることができます。東京都都市整備局の調査では、オンライン内覧を経験した入居者の37%が「即日申込に至った」と回答しており、情報発信の重要性がデータからも裏付けられています。
家賃を引き上げた後は定期的なメンテナンスが欠かせません。共用灯の球切れやゴミ置き場の乱れは、想像以上に入居者の満足度を下げてしまいます。細かな気配りを続けることで高い家賃を正当化でき、長期にわたる安定収入へと結びつけられるのです。
リスク管理と空室率21.2%時代の対策
家賃設定だけでなく、空室リスクの抑制策も同時に講じることが安定経営の鍵となります。サブリースは手間を省ける一方で、家賃減額請求により収支が不透明になるリスクがあります。複数の募集経路を確保し、レインズへの登録状況を定期的にチェックすることで、自主管理でも情報不足を防ぐことが可能です。
資金繰り対策としては家賃保証会社の活用が効果的で、滞納リスクを大幅に軽減できます。ただし保証料は2年で家賃の50%程度かかることもあるため、賃料設定時にあらかじめコストとして見込んでおく必要があります。日本銀行の金融システムレポートでも、家賃保証の利用率が上がった物件は貸倒率が低下する傾向が示されています。
空室期間を短縮するには、退去予告を受けた段階で募集を開始する「先行募集」が非常に効果的です。内装工事の日程を業者と共有し、オンライン内覧を組み合わせることで、退去後一週間以内に次の入居者を確定させているオーナーも実際に存在します。工事と募集を並行して進めることで、ロスタイムを最小限に抑えられるのです。
リスクを完全に読み切ることが難しいと感じる場合は、1戸あたりのローン返済額が家賃の50%以下になるよう自己資金を厚めに入れる方法があります。返済負担率を下げておけば、万が一空室が発生しても家賃収入100万円を維持できない期間を短く抑えることができ、精神的な余裕を持って経営を続けられます。
2025年度の税制・補助制度を活用する方法
2025年度も継続される「住宅用家屋の固定資産税減額措置」は、新築後3年間にわたり税額が2分の1になる制度です。アパートを木造2階建てで建築する場合、年間固定資産税を60万円から30万円へ抑えられるケースもあり、キャッシュフローを大きく改善できます。この軽減措置を見込んだ収支計画を立てておくことで、初期の資金繰りに余裕が生まれます。
省エネ性能を高めた賃貸住宅に対しては、「建築物省エネ性能向上計画認定」による登録免許税の軽減も用意されています。認定を受けた場合、所有権保存登記の税率が0.15%から0.1%に下がります。建築費用が1億円の物件であれば5万円の節税効果があり、複数棟を保有するオーナーにとっては無視できない金額となります。
フルローンを検討する場合は、金融機関の環境配慮型ローンを活用すると金利が年0.3%ほど下がるケースがあります。この優遇は国交省の「サステナブル建築促進事業」に基づくものですが、申請にはBELS評価書の取得が必要です。設計段階から専門家と連携しておくと、手続きをスムーズに進められます。
補助金申請には期限があり、2025年12月末までに交付申請を完了させなければなりません。スケジュールを逆算して計画を立て、設計図書とエネルギー計算の準備を早めに整えることが重要です。着工の遅れによる機会損失を防ぐためにも、余裕を持ったスケジュール管理を心がけてください。
まとめ
家賃収入100万円を達成するには、市場調査による適正家賃の把握と物件の付加価値向上が両輪となります。空室率21.2%という厳しい環境においても、需要を的確に捉えた家賃設定と先行募集の活用、保証会社との連携によってリスクは十分にコントロールできます。さらに2025年度の税制優遇や省エネ関連の軽減措置を組み合わせることで、手残りを増やしながら物件の競争力も高められるでしょう。
今日からできる第一歩として、まず周辺物件の成約家賃を洗い出し、自身の収支シミュレーションを更新してみてください。小さな行動を積み重ねていけば、月間家賃収入100万円という目標は決して夢ではありません。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行 金融システムレポート – https://www.boj.or.jp
- 国税庁 税務情報 – https://www.nta.go.jp
- 東京都都市整備局 住宅市場動向報告 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp