不動産投資を始めたばかりのオーナーにとって、家賃をいくらにするかは最大の悩みかもしれません。高すぎれば入居が決まらず、低すぎれば収益が伸びません。特に2025年は空室率が21.2%と依然高水準で、適正家賃の見極めがますます重要です。本記事では最新データを交えながら、家賃設定 アパート経営 2025年の具体的な考え方と実践手順を解説します。読み終えた頃には、ご自身の物件に合わせた家賃を自信を持って決められるはずです。
市場環境を読み解く家賃設定の基本

まず押さえておきたいのは、市場全体の動きを理解することです。国土交通省住宅統計によると、2025年8月時点の全国アパート空室率は21.2%で前年より0.3ポイント改善しました。空室が減っているとはいえ、依然5戸に1戸は空いている計算です。つまり家賃を設定するときは、わずかな需要の変化も敏感に捉える必要があります。
続いて注目したいのが世帯所得の推移です。総務省家計調査では2024年から2025年にかけて可処分所得が実質0.4%増えましたが、電気料金などの固定費も上昇傾向にあります。家計の余裕は思ったほど広がっていません。家賃を上げすぎると入居時点で敬遠されるリスクが高いため、所得伸び率に見合った範囲で設定することが賢明です。
さらに、日本銀行の短期プライムレートは2025年10月時点で年1.3%と低水準を維持しています。借入コストが抑えられている今こそ、家賃を無理に釣り上げるより入居促進で稼働率を高め、ローン返済を安定させる戦略が効果的です。
需要を掴むエリア分析と賃料水準

ポイントは、同じ県内でも駅徒歩5分圏と15分圏では入居者層も賃料相場も大きく異なることです。SUUMOなどのポータルで検索し、築年・専有面積・徒歩分数が似た物件を5~10件ピックアップすると、実勢賃料の幅が見えてきます。例えば東京都杉並区の築15年1Kでは、駅徒歩10分以内で7.5万円前後、15分圏になると6.5万円程度が中央値です。1万円の差は年間で12万円、空室1カ月分に匹敵するため、立地差を見落とすと収益計画が狂います。
一方で郊外エリアでも、大学や工場など大口需要の近隣は家賃が底堅い傾向があります。厚生労働省の人口動態統計には、自治体ごとの転入超過数が掲載されています。転入がプラスの市区町村は学生や若手社員が流入している可能性が高く、やや強気の家賃でも決まりやすいといえます。
ただし、将来の人口減少リスクが大きいエリアでは、表面利回りが高めでも長期的な賃料下落を織り込む必要があります。家賃設定は現在の相場に合わせつつ、「5年後に5000円下がっても充分回るか」を試算しておくと安心です。
原価ベースで考える適正家賃の計算手順
実は、市場相場だけでなく、オーナーにとっての採算ラインを知ることも欠かせません。まず年間総支出を算出します。ローン返済、固定資産税、管理費、共用電気代、修繕積立の5項目を合計し、空室損失を平均10%見込んで上乗せします。次にその総支出を総戸数で割り、さらに期待利回りを加えると1戸当たりの必要家賃が見えてきます。
例えば、築10年・8戸の木造アパートで年間総支出が480万円、期待利回りを6%とすると、年間必要家賃は約508万円になります。月額では1戸あたり5.3万円が損益分岐点です。ここで近隣相場が6万円なら、家賃を5.8万円に設定して満室を狙うほうが総収入は高くなります。逆に相場が5万円なら思い切って共用部のWi-Fi無料化など付加価値を付け、5.3万円を目指す施策が必要です。
このように原価計算で下限を把握しておくと、キャンペーンを打つ際も「ここまでなら下げていい」と即断できます。収支シミュレーションは毎年更新し、金利や修繕費が変動したタイミングで見直すとズレを最小限に抑えられます。
募集戦略と賃貸管理で実現する家賃維持
重要なのは、設定した家賃を維持するための運営手法です。入居者が感じる価値を高めることで、相場より5000円高くても選ばれる物件になります。例えば、宅配ボックスの後付けは10万円程度の費用で成約率を大幅に向上させる事例が多く、不在受け取りに悩む単身者に響きます。
また、内装で差別化したリノベーションも有効ですが、過度な高級化は費用倒れになりがちです。壁紙を一面だけアクセントカラーにする「ワンポイントクロス」は材料費が+1万円前後で済み、写真映えするためポータルサイトで目を引きます。結果的に募集期間が短縮され、実質的に家賃を下げずに済むメリットがあります。
さらに、入居後の満足度を高めることが退去抑制につながります。設備故障時に24時間対応窓口を用意すると、修理コストは月500円程度上がるものの、早期退去が1件減るだけで年間家賃の損失を防げる計算です。2025年はチャットボットを活用したオンライン管理サービスが普及し、管理会社への委託料を抑えつつサービス向上を図る選択肢が広がっています。
2025年度の制度と補助を活用した収益改善
まず、2025年度も継続している「賃貸住宅省エネ改修補助」は、断熱性能を高める工事費の3分の1(上限120万円)が補助されます。断熱改修を行うと電気代平均8%削減との試算があり、入居者の光熱費負担を抑えられる点をアピールすると家賃据え置きでも満室を維持しやすくなります。申請は2026年3月末までなので、早めの見積もり取得が鍵です。
また、住宅金融支援機構の「賃貸住宅エコプラス融資」は金利優遇が0.3%あり、設備更新と同時に借り換えれば支払利息を数十万円単位で圧縮できます。浮いたキャッシュを原状回復費に充当し、入居者負担を減らせば口コミが改善し家賃維持に直結します。
さらに、地方自治体独自のリフォーム助成も見逃せません。東京都墨田区では2025年度、賃貸住宅のバリアフリー改修に対し最大50万円を交付しています。高齢単身者の入居が増える中、手すり設置や段差解消を行うことで新しい需要を取り込み、空室リスクを低減できます。
結論として、国や自治体の制度は家賃を直接上げるものではありませんが、支出を下げて家賃を据え置くことで実質利回りを向上させる強力な武器になります。制度の詳細は毎年更新されるため、必ず公式サイトで最新要件を確認してください。
まとめ
ここまで、2025年の市場動向を踏まえた家賃設定の考え方を見てきました。相場データと原価計算の両面で下限と上限を把握し、エリア特性に応じて賃料を微調整することが成功の近道です。さらに、設備投資や管理サービスで価値を高め、補助金や金利優遇を活用すれば、家賃を下げずとも入居率を高く保てます。まずは自物件の支出と相場を洗い出し、今日からシミュレーションを更新してみてください。適正家賃を見極める力が、将来にわたる安定経営を支えてくれるはずです。
参考文献・出典
- 国土交通省 住宅統計調査 2025年8月速報 – https://www.mlit.go.jp
- 総務省 家計調査年報 2025年版 – https://www.stat.go.jp
- 日本銀行 短期プライムレート統計 2025年10月 – https://www.boj.or.jp
- 厚生労働省 人口動態統計 2025年上期 – https://www.mhlw.go.jp
- 住宅金融支援機構 賃貸住宅エコプラス融資 2025年度概要 – https://www.jhf.go.jp
- 東京都墨田区 住宅改修助成制度 2025年度 – https://www.city.sumida.lg.jp