円安が続くと、家賃収入は円建てでも、建材や修繕費などのコストは輸入価格に連動して上がりやすくなります。「収益物件を買っても本当にプラスになるのか」「管理会社の手数料が上がったらどうしよう」と不安になるのは当然です。本記事では、円安時代でも安定したキャッシュフローを守るための物件選びと管理会社の活用法を中心に解説します。さらに、海外マネーが流入するマーケット構造や2025年度の税制情報まで網羅するので、読み終えた瞬間から具体的な行動計画が描けるはずです。
円安が不動産投資に与える影響

まず押さえておきたいのは、円安が不動産価格と賃料に異なる形で作用する点です。日本銀行の為替統計によると、2022年から2025年にかけて円の実効レートは約15%下落しています。しかし、同期間で国土交通省の不動産価格指数は平均7%の上昇にとどまっています。つまり、建築コストは急騰しても、賃料は緩やかにしか上がらないため、利回りの目減りが起こりやすい状況です。
一方で、円安は海外投資家にとって日本の物件を割安に感じさせる効果があります。実際、J-REITへの海外資金流入は2023年比で1.4倍に増え、都市部の収益ビルを中心に価格を押し上げました。こうした外部需要は利回りを圧縮しますが、出口戦略としての売却益を狙う投資家には好材料となります。
さらに、円安によって設備や資材の輸入コストが上がると、修繕積立金の不足が顕在化しやすくなります。管理組合が適切に積み立てていない中古マンションは、将来の大規模修繕時に追加徴収リスクが高まるため注意が必要です。
キャッシュフローを守る収益物件の条件

重要なのは、円安によるコスト増を家賃収入でカバーできる物件を選ぶことです。具体的には、修繕サイクルが比較的長いRC造(鉄筋コンクリート造)の築浅物件が有利です。新耐震基準後のRC造は外壁や設備の耐久性が高く、当面の修繕費予測が立てやすいからです。
また、駅徒歩10分以内かつ生活利便施設が充実したエリアは、賃料改定交渉が比較的スムーズに進みます。総務省家計調査によると、単身世帯の可処分所得はここ5年でほぼ横ばいですが、交通利便性と安全性への支出意欲は高まり続けています。空室率の低さは、結果として管理費や修繕費の上昇を吸収するバッファーになります。
実は、ファミリー型よりワンルーム型の方が円安耐性は高くなりやすい傾向があります。ファミリー型は専有面積が広い分だけ修繕コストが増え、海外製キッチンやバスユニットの価格上昇が直撃するからです。一方でワンルームは設備の点数自体が少ないため、円建て家賃を維持するだけで相対的な利回り防衛が可能です。
最後に、長期固定金利を活用することも忘れないでください。住宅金融支援機構のフラット35投資用ローン(2025年度)は、20年超で年2.3%前後となっており、変動金利との差は0.8ポイント程度です。金利上昇と円安が同時進行した場合、返済額が一定である固定金利はキャッシュフローの安定装置になります。
良い管理会社を見極める三つの視点
ポイントは、円安によるコスト転嫁を最小化できる運営力を持つかどうかです。第一に、修繕の内製化率を確認しましょう。自社で職人を抱える管理会社は、輸入資材の価格変動を抑えられずとも、人件費コントロールで総費用を平準化できます。
第二に、賃料改定の実績データが開示されているかを見ます。家主と入居者双方に納得感のある交渉ができる会社は、結果として家賃の下落局面でも退去率を抑制し、総収入を維持します。たとえば直近3年間の平均改定率や入居期間の中央値を提示できる会社なら、交渉プロセスが体系化されている証拠です。
第三に、海外入居者対応の体制も無視できません。円安で来日する外国人労働者や学生が増えると、賃貸ニーズは多国籍化します。多言語サポートを持つ管理会社は、家賃の滞納リスクを抑えつつ入居者プールを拡大できます。特に24時間の多言語コールセンターを運営しているかどうかは大きな分かれ目になります。
最終的には、管理手数料だけで判断しない姿勢が重要です。月額手数料が1%低い会社でも、退去から次の契約までが長期化すれば機会損失が拡大します。逆に3%でも平均空室期間が半分なら、年間収支はプラスになるケースが少なくありません。
海外投資家との競合に勝つ戦略
まず、海外勢が好むのは「日本の都心×築浅×大型案件」という分かりやすい組み合わせです。そこで国内投資家が取れる戦略は、地方中核都市の優良立地に目を向けることです。国土交通省の土地総合情報システムによると、札幌・福岡・名古屋の中心部は直近5年間で地価が年平均4%上昇していますが、東京23区の商業地は同3%にとどまります。
さらに、地方都市の賃貸需要は地元企業の赴任者や学生で構成されるため、為替変動の影響を受けにくい特徴があります。つまり、円安だからといって急に賃料が跳ね上がることも下がることもなく、安定的に収益を積み上げやすいのです。
一方で、出口戦略としての売却を考える場合、人口減少リスクを見極める眼が欠かせません。総務省人口推計では、2040年までに20~39歳人口が維持される都市は全国でわずか12都市とされています。中でも福岡市や仙台市は若年人口の減少幅が小さく、長期保有に向いた市場といえます。
加えて、短期的なキャピタルゲインを狙うなら、再開発計画が進行中のエリアに注目です。名古屋駅周辺では2027年のリニア中央新幹線開業を見据えた大規模再開発が進行しており、オフィス需要の高まりが賃料上昇を後押ししています。
2025年度の税制と補助制度の基礎知識
実は、2025年度の税制改正では、不動産取得税の軽減措置が2年間延長される見通しです。課税標準の据え置きにより、購入時の初期費用を抑えられる点は投資利回りに直結します。また、長期保有特例の対象期間も拡大され、5年間保有後の譲渡所得税が14%軽減される制度が継続しています。
さらに、環境性能の高い物件を取得する場合、「2025年度 住宅省エネ投資促進事業」の補助金を使えます。補助額は最大200万円ですが、工事内容に応じて上限が変わるため、設備仕様とスケジュールを管理会社と早めに擦り合わせることが肝心です。
一方で、固定資産税の負担調整措置は2025年度で終了予定です。新築から3年経過すると税額が本則課税に戻るため、築浅物件を選ぶ際は4年目以降の税負担をシミュレーションしましょう。管理会社に固定資産税見込みを算定してもらい、家賃設定の根拠に組み込むと安心です。
最後に、消費税還付スキームについては、2025年度から区分所有一棟買いの適用要件が厳格化されます。課税売上割合が95%未満でも還付を受けるには、賃貸借契約の課税対象比率を調整する必要があり、専門家との連携が欠かせません。
まとめ
円安時代でも不動産投資で成果を上げるには、修繕コストをコントロールできる収益物件を選び、実力ある管理会社と組むことが不可欠です。RC造の築浅ワンルームや地方中核都市の中心部物件は、為替変動の影響を最小化しながらキャッシュフローを守りやすい選択肢となります。また、2025年度の税制優遇や省エネ補助金を把握し、購入時の総費用を抑える工夫も重要です。行動に移す際は、物件選定・資金計画・管理会社面談を同時並行で進めることで、円安リスクを先回りして封じ込めましょう。
参考文献・出典
- 日本銀行 為替相場(時系列統計データ) – https://www.boj.or.jp/statistics/
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/
- 総務省 統計局 人口推計 – https://www.stat.go.jp/
- 住宅金融支援機構 フラット35 金利情報 – https://www.flat35.com/
- 国税庁 令和6年度税制改正の解説 – https://www.nta.go.jp/
- 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp/
- 経済産業省 2025年度 住宅省エネ投資促進事業 – https://www.meti.go.jp/