不動産の税金

修繕費を制す者がアパート経営で稼げる理由

不動産収益が伸び悩む最大の原因は、想定外に膨らむ修繕費です。入居率が安定していても、屋根の防水や給排水管の交換など大規模な工事が重なれば一気に赤字へ転落します。実は、修繕費を計画的に管理できればキャッシュフローは大きく改善し、長期的に「アパート経営 稼げる」を実現できます。本記事では、初心者がつまずきやすい修繕費の基本から、2025年時点で使える節税策、資金計画の立て方までを順に解説します。読み終える頃には、修繕費を味方にする具体的な行動イメージがつかめるはずです。

修繕費がキャッシュフローを左右する仕組み

修繕費がキャッシュフローを左右する仕組みのイメージ

ポイントは、修繕費が支出の中でも額とタイミングの振れ幅が大きいという事実です。予測が甘いと黒字経営の裏でキャッシュアウトが進み、手元資金が尽きた瞬間に運営が行き詰まります。

まず家賃収入は毎月ほぼ一定で入りますが、修繕費は発生時期が読みにくく、数百万円単位になることも珍しくありません。国土交通省の2025年版「建築物維持管理調査」によると、RC造アパートの平均大規模修繕費は築20年時点で延べ床1㎡あたり1万8千円に達します。言い換えると、延べ床500㎡なら約900万円が一度に出ていく計算です。

さらに、修繕費には「支出」と「費用」のズレがあり、税務上の扱いがキャッシュフローに影響します。支出は工事代を払った瞬間の現金流出、費用は減価償却などで複数年にわたり経費化します。この差を理解しないまま融資返済と修繕が重なると、表面利回りが高い物件でも資金ショートに陥りがちです。

そこで実務では、毎月のCF(キャッシュフロー)から修繕積立を確実に引き当て、帳簿と実際の銀行残高の両面で備えます。積立割合の目安は家賃収入の10〜15%が一般的ですが、築年数や構造で調整する姿勢が欠かせません。

まず押さえておきたい修繕費の計画と区分

まず押さえておきたい修繕費の計画と区分のイメージ

重要なのは、修繕費を「小修繕」と「大規模修繕」に分け、計画表に落とし込むことです。小修繕はクロス張替えや給湯器交換など、5年以内に繰り返し発生する軽微な工事を指します。一方で大規模修繕は外壁塗装や屋上防水のように周期が10年以上で金額も大きい工事です。

たとえば築15年の木造アパートでは、毎年の小修繕費が戸当たり3〜4万円、外壁と屋根の改修で一度に300万円かかるケースが見られます。ここで小修繕は損金算入し、節税しながら支出を平準化できますが、大規模修繕は資本的支出として10年〜15年で減価償却するのが原則です。これを混同すると、税金だけをムダに払い手元資金を減らす結果になってしまいます。

国税庁「所得税基本通達」でも、同一目的で性能を維持する工事は修繕費に計上できると定義しています。つまり、同じ外壁塗装でも色替え程度なら修繕費、断熱性能まで向上させる工事なら資本的支出になる可能性が高いのです。判断に迷う場合は税理士へ早めに相談し、計画段階で仕訳の方向性を固めると安心です。

2025年度に活用できる補助金と節税策

実は2025年度は、省エネ改修に対する国の支援が手厚い年です。環境省が予算化した「既存賃貸住宅省エネ改修補助」は、断熱材追加や高効率設備の導入費用の最大3分の1を助成します。対象工事の完了期限は2026年3月末と決まっているため、今から計画すれば資本的支出の一部を補助で賄えます。

また、固定資産税の減額特例も見逃せません。耐震基準適合証明を取得した賃貸住宅は、工事翌年度から3年間、建物分の固定資産税が半額となります(2025年度制度、対象床面積120㎡部分まで)。長期保有を前提にすると節税効果は大きく、実質利回りの底上げに直結します。

さらに、省エネ性能向上の大規模修繕を実施する場合は「住宅ローン控除」ではなく、法人税の特別償却制度を検討するとよいでしょう。中小企業者が対象設備を取得すると、取得価額の7%が一括償却できます。こうした制度は年度ごとに内容が変わるため、2025年10月時点の最新要件を必ず確認し、着工前に申請の段取りを整えることが重要です。

修繕積立の具体的な算出方法

ポイントは、築年と構造に応じて時系列で必要額を試算することです。まず物件の長期修繕計画を作り、次に年次ごとの累積支出を現在価値に割り戻します。割引率は借入金利に近い2〜3%を用いると、実際のキャッシュ感覚に近づきます。

例えば築10年のRC造24戸、延べ床700㎡の物件を想定します。外壁塗装と屋上防水を築18年時に1,100万円、給水ポンプを築15年・25年に各120万円、室内更新を毎年90万円と見込みます。これらを表計算ソフトへ入力すると、20年間の総修繕費は約2,650万円です。年間平均では133万円、月額にすれば11万円となり、家賃収入200万円の5.5%を確実に積み立てれば資金不足を回避できます。

さらに空室率も織り込むと精度が高まります。国交省住宅統計によれば、2025年8月時点の全国アパート空室率は21.2%です。ここから想定キャッシュフローを80%に抑えて計算すれば、より現実的な積立額が見えてきます。こうして数字を積み上げると、修繕費リスクが可視化され、「修繕費 アパート経営 稼げる」の道筋が具体的になります。

コストを抑えつつ入居者満足を高める戦略

基本的に、単に安く直すだけでは家賃下落を防げません。入居者が感じる付加価値を上げる改修なら、初期費用が高くても長期的な収益増につながります。例えば、外壁塗装と同時に共用部へLED照明と防犯カメラを設置すると、見た目と安全性を一度に改善でき、家賃1,000円アップが現実的に狙えます。

同様に、空室が出たタイミングで壁紙を全室同じ白で張り替えるのではなく、一面だけアクセントクロスにすると、費用増は1部屋あたり5,000円程度ですが、ネット掲載写真のクリック率が向上します。総務省家計調査によると、20代単身者の居住費許容額は過去5年で月2,000円上昇しており、デザイン性への支出意欲が高まっています。

このように、リフォームとマーケティングを同時に考えれば、修繕費が単なるコストから投資へ変わります。最終的に家賃収入が安定するため、返済負担の軽減や追加投資の原資確保にプラスとなり、アパート経営で稼げる仕組みが完成します。

まとめ

修繕費をコントロールできれば、アパート経営は安定したキャッシュフローを生み、将来の資産形成を加速させます。要点は、①小修繕と大規模修繕を分けて見える化し、②2025年度に有効な補助金や税制を組み合わせ、③家賃収入の10〜15%を継続的に積み立てることです。最後に、入居者満足を高める工夫を加えれば、修繕費が収益拡大のエンジンへと変わります。今日から物件ごとの長期修繕計画を作り、数字と制度を味方に付けて一歩踏み出してみてください。

参考文献・出典

  • 国土交通省 住宅統計調査 2025年版 – https://www.mlit.go.jp/statistics/details
  • 国税庁 所得税基本通達(修繕費・資本的支出の区分) – https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/index.htm
  • 環境省 既存賃貸住宅省エネ改修補助 2025 – https://www.env.go.jp/policy/home
  • 日本政策金融公庫 2025年度小規模事業者向け融資概要 – https://www.jfc.go.jp
  • 総務省 統計局 家計調査 2025年速報 – https://www.stat.go.jp/data/kakei

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