収益物件を持っている、あるいはこれから買う予定の初心者にとって、最大の不安は「信頼できる管理会社をどう選ぶか」ではないでしょうか。家賃の入金管理や修繕の手配を任せる相手を誤ると、想定していた利回りは簡単に崩れます。本記事では、2024年時点から現在までに変化したルールや市場動向を踏まえつつ、管理会社の役割と選定ポイントを基礎から解説します。読み終えるころには、自分の収益物件を誰に委託すべきか判断できるようになるはずです。
収益物件運営における管理会社の価値とは

まず押さえておきたいのは、管理会社が家賃回収だけでなく物件価値そのものを守る存在だという点です。空室対応・クレーム処理・修繕計画まで多岐にわたる業務を一手に担い、投資家の労力を大幅に減らしてくれます。
東京都住宅政策本部の調査によると、個人オーナーの約7割は日常業務を管理会社に委託しています。これは単なる業務代行ではなく、入居者満足度を維持することで長期的な賃料下落を防ぐ効果が期待できるからです。また、管理会社が地域の施工業者とネットワークを持っている場合、修繕費用が相対的に安く抑えられる傾向があります。つまり、管理手数料の数%を支払っても、最終的なキャッシュフローが改善するケースが珍しくありません。
一方で、委託契約の内容が曖昧だと追加費用が膨らみ、せっかくの収益性が損なわれる恐れがあります。そのため、役割を正しく理解したうえで契約に盛り込むべき項目を明確にすることが欠かせません。
管理会社選びで重要なのは比較軸の整理

ポイントは、手数料の安さより「稼働率」「対応スピード」「情報開示」の三つを重視することです。これらが高いレベルで揃う会社ほど、長期的に安定した運営が可能になります。
具体的には、まず稼働率を確認しましょう。管理戸数が多くても空室が多い会社では意味がありません。国土交通省の賃貸住宅市場データでは、首都圏平均の稼働率が89%前後で推移しています。自分の候補会社がこの水準を上回っているかを指標にすると選択しやすくなります。
次に、管理会社の担当者が修繕や入居者トラブルに何時間以内で対応するか、数値で示してもらうと比較が容易です。特に災害時の初動が遅れると二次被害が拡大し、結果的にオーナーの負担が増します。さらに、毎月の入出金明細や空室レポートをオンラインで閲覧できる体制が整っているかも要点です。情報開示が遅い会社では問題の早期発見が難しくなります。
最後に、候補を三社ほどピックアップし、委託契約書案を取り寄せて細部を見比べる作業を欠かさないでください。この段階で質問に迅速かつ明確に答えられる会社は、実務でも高い対応力を発揮する傾向があります。
2024年以降に強化された制度が与える影響
実は、2024年から施行された改正住宅セーフティネット法によって、管理会社には入居者情報の適切な管理と報告義務が一段と求められるようになりました。2025年10月現在もこの制度は有効で、法令遵守が甘い会社は行政指導の対象となり、オーナーにも連帯責任が及ぶ可能性があります。
また、2025年度に継続中の「賃貸住宅管理業登録制度」では、登録会社に対し外部監査と苦情対応窓口の設置を義務づけています。登録の有無は国土交通省の公開データベースで確認できるため、候補企業が登録済みかどうかを事前に調べましょう。登録管理会社は業務品質の一定基準を満たしており、トラブル発生時の法的リスクを軽減できます。
さらに、住宅省エネ2025キャンペーンの補助対象工事を実施する際、管理会社が申請窓口となる例が増えています。断熱改修などで補助金を活用すると空室対策と光熱費削減の両面で優位に立てるため、こうした制度に詳しい会社に委託するメリットは小さくありません。
管理委託費用とキャッシュフローの最適化
重要なのは、委託費用を単なるコストではなく投資回収期間で評価する視点です。家賃の5%が相場といわれますが、実際には建物規模やサービス範囲によって3%〜10%と幅があります。
たとえば家賃月額60万円の区分マンション一棟で、手数料が5%なら月3万円、年間36万円です。管理会社の工夫で稼働率が92%から97%へ改善した場合、年間家賃収入は約36万円増える計算になり、手数料と相殺しても利益が残ります。つまり、費用を支払ったうえでキャッシュフローがプラスになれば経済合理性があるわけです。
一方、追加修繕費や広告料の発生タイミングを把握しなければ資金繰りが狂いがちです。そこで、管理会社に対し年間の修繕計画と支出予定を必ず提出させ、自身のキャッシュフロー表と照合する習慣を持ちましょう。日本政策金融公庫の賃貸経営実態調査でも、計画修繕を行うオーナーは突発的な費用発生率が約30%低いと示されています。
長期保有を前提とするなら、修繕積立金を家賃収入の5%程度プールし、必要に応じて活用する方法が効果的です。この積立を管理会社の口座とは分け、自分で管理することで費用の透明性が高まります。
管理会社との良好な関係を築くコツ
まず、オーナー自身が物件情報を正確に把握し、定期的に現地を確認する姿勢が大切です。管理会社まかせにしすぎると、軽微な劣化や入居者の不満を見逃しやすくなります。担当者と共同で現場を歩くことで、修繕の優先順位が共有でき、不要な工事を避けられます。
次に、報告体制を明文化しましょう。月次報告書に加え、設備故障時の連絡方法や緊急時の意思決定フローを事前に決めておくと、トラブル発生時の混乱が減ります。また、家賃滞納が発生した場合の督促プロセスと費用負担も細かく決めておくと安心です。
加えて、オーナーからの要望を一方的に伝えるのではなく、管理会社の業務量や休日を尊重するコミュニケーションが長期的な信頼につながります。特に繁忙期である春先は問い合わせが集中するため、優先順位を整理したうえで相談すると円滑です。
最後に、定期的な業務評価を行い、必要なら契約更新前に改善点を提示します。数値目標と期限を設定すると、双方が客観的に結果を検証でき、無駄な感情的対立を避けられます。こうした相互チェックの仕組みが、収益物件のパフォーマンス向上に直結します。
まとめ
ここまで、収益物件を安定して運営するための管理会社選びと付き合い方を解説しました。稼働率・対応スピード・情報開示を基準に複数社を比較し、2025年度も続く賃貸住宅管理業登録制度や省エネ補助金を活用できる会社を選ぶことが要となります。さらに、費用を投資回収期間で評価し、修繕計画と報告体制を明文化することでキャッシュフローを守れます。記事で紹介した視点を実践し、信頼できるパートナーを得て、あなたの収益物件を長期的に成長させてください。
参考文献・出典
- 国土交通省 賃貸住宅市場データ集(2025年版) – https://www.mlit.go.jp
- 東京都住宅政策本部 住宅実態調査 – https://www.metro.tokyo.lg.jp
- 日本政策金融公庫 賃貸経営実態調査 – https://www.jfc.go.jp
- 住宅省エネ2025キャンペーン 公式サイト – https://jutakushien2025.jp
- 国土交通省 賃貸住宅管理業登録制度ポータル – https://www.mlit.go.jp/jutaku_kanri/