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投資家が知るべき収益物件の探し方入門

収益物件を探そうとすると、ネット上には膨大な情報があふれています。利回りやエリアの評判は気になるものの、数字の意味やリスクの測り方が分からず足踏みしてしまう投資家も多いでしょう。本記事では、初めての方でも体系的に行動できるように、物件探しの流れと判断基準を具体的に解説します。読了後には、情報の取捨選択ができるようになり、自分に合った収益物件を見極める力が身につきます。

収益物件探しの全体像を描く

収益物件探しの全体像を描くのイメージ

重要なのは、目的とゴールを明確にしたうえで探し方を組み立てることです。家賃収入で生活費を補いたいのか、それとも将来の売却益を狙うのかによって戦略は大きく変わります。

まず期待利回りと投資期間を設定します。国土交通省の不動産投資市場調査(2025年3月公表)によると、個人投資家が目標とする表面利回りは平均6.5%でした。これを基準に、家賃下落や修繕費を差し引いた実質利回りが4%台に落ちても許容できるか検討します。また、投資期間を10年以上と定める場合、年平均1%の人口減少が続いてもキャッシュフローが黒字になるかを試算する必要があります。

次に資金計画を立てます。自己資金は物件価格の20%が目安とされますが、日本政策金融公庫の融資統計では、自己資金10%でも購入に成功した事例が3割存在します。ただし、自己資金が少ないほど月々の返済比率が上がり、空室リスクに耐える余裕が薄くなります。数字が苦手な人ほど、保守的なシミュレーションで余裕を確保しましょう。

最後に、探し方のロードマップを作ります。エリア選定、情報収集、現地調査、融資打診という四つのプロセスを並行して進めると時間短縮につながります。つまり、全体像を早めに描くことで、途中で迷わず次の行動に移れるのです。

立地と市場データを読み解く

立地と市場データを読み解くのイメージ

まず押さえておきたいのは、エリアの賃貸需要を数値で確認することです。総務省「住宅・土地統計調査」の世帯数推計を参照し、将来の人口動態を把握すると空室リスクを定量化できます。

例えば、東京23区の単身世帯は2020年から2025年にかけて年平均1.3%増えていますが、埼玉県北部では横ばいです。つまり同じ利回りでも、後者は将来の空室リスクが高いと言えます。また、厚生労働省の平均所得統計を合わせて見ると、可処分所得が伸びている地域ほど家賃の下落幅が限定的になる傾向があります。

次に、土地価格の動きを確認します。国土交通省「土地総合情報システム」では、売買事例と公示地価を無料で閲覧できます。売買事例の平米単価を家賃相場と突き合わせ、賃料÷平米価格で求めた指標が周辺平均より高い場合、相対的に割安な可能性があります。

さらに、エリアの再開発計画も見逃せません。都市計画決定後に新駅が設置されると、家賃が平均5%前後上昇するケースが多いと東京都都市整備局は報告しています。一方で、再開発完了後は価格が高止まりし利回りが下がる傾向もあります。開発のフェーズを見極めることで、投資妙味を高められるのです。

物件情報の入手ルートを広げる

ポイントは、公開情報と非公開情報の両輪で探すことです。ポータルサイトは間口が広いものの、競争が激しく好条件の物件は早期に成約してしまいます。

まず公開情報では、掲載から3日以内の新着物件に絞り込むだけで、競合とほぼ同じスタート位置に立てます。また、検索条件を「最寄り駅徒歩15分以内」から「20分以内」に広げると、表面利回りが平均0.8%向上するという調査結果(REINS、2025年6月)が出ています。徒歩分数を広げる代わりに、駅からの高低差や夜間の安全性を現地で確認することで、リスクを抑えつつ選択肢を増やせます。

次に非公開情報の活用です。地場の不動産会社に連絡を取り、希望条件と購入意欲を具体的に伝えると、一般公開前の物件を紹介される可能性が高まります。実は、収益物件の3割が水面下で取引されているといわれ、早期アクセスが成否を分けると言っても過言ではありません。初回面談時には、購入予算や希望利回りを数値で示し、融資の事前審査結果も添えると信頼度が向上します。

さらに、オークションサイトや法人の任意売却情報も見逃せません。国税庁の公売物件は競争が少なく、落札価格が市場より1割低いケースがあります。ただし、瑕疵担保責任が免責となるため、リフォーム費用を含めた総額で判断することが不可欠です。

現地調査と数字のすり合わせ

実は、現地調査で得た感覚と机上の数字を擦り合わせることで、初めて投資判断の精度が上がります。オンラインで高利回りに見えても、周辺の生活環境が悪ければ長期的な入居率は維持できません。

現地では、平日と休日、昼と夜の二回に分けて訪問します。昼間の騒音や夜間の治安を体感し、最寄り駅からの歩行ルートを確認しましょう。人口密度の割にコンビニが少ないエリアは、生活利便性が低く長期入居が望みにくいという調査(LIFULL HOME’S総研、2025年4月)もあります。

次に、建物の維持管理状況を点検します。外壁塗装の劣化や共用部の清掃状態は、管理会社の質を示すバロメーターです。修繕履歴が不明瞭な場合は、想定外の出費を防ぐため追加調査費を惜しまないようにします。

最後に、現地で得た情報をキャッシュフロー表へ反映します。家賃を周辺相場より5000円下げても黒字が保てるか、固定資産税や保険料を最新データで更新しても耐えられるかをチェックします。数字が合わない場合は、価格交渉か購入見送りを即断する勇気も必要です。

2025年度の制度と資金調達のポイント

まず押さえておきたいのは、2025年度も継続する減価償却と損益通算のルールです。個人が木造アパートを取得した場合、法定耐用年数(22年)を過ぎた築古物件なら、残存年数の4年で償却できる特例が引き続き利用できます。これにより、所得税の節税効果が期待でき、キャッシュフローをプラスに転換しやすくなります。

金融機関の融資姿勢にも変化があります。日本銀行の2025年7月「金融システムレポート」によれば、地方銀行は収益物件への融資を前年より7%増やし、自己資金15%から相談可能とするケースが増えました。一方で、空室率や返済比率の審査は厳格化しており、独自の賃料下落ストレステストを求められることが一般的です。

また、2025年度の「住宅省エネ改修補助金」は、賃貸住宅の断熱改修にも適用拡大されました。工事費の三分の一、上限120万円まで補助されるため、築古物件を購入してバリューアップを狙う投資家にとって有利な制度です。交付申請は2026年3月末までと期限があるので、スケジュール管理が重要になります。

資金調達では、ノンバンクとクラウドファンディングを活用する方法もあります。クラウドファンディング型融資は金利が年4〜6%と高めですが、自己資金ゼロでも利用できる仕組みがあり、フルローンが難しい場合の補完手段になります。返済期間が短いので、中期での売却計画を同時に練ることが前提となります。

まとめ

本記事では、投資家が収益物件を探すうえで欠かせない全体像の把握、データに基づく立地分析、情報ルートの拡充、現地調査の要点、そして2025年度の制度と資金調達までを解説しました。各ステップで数値と実地の両面から検証することで、情報過多の中でも判断軸がぶれにくくなります。読者のみなさんも、自分の投資目的を再確認し、今日紹介した手順を一つずつ実践してみてください。行動を継続するほど、理想に近い収益物件と出会える確率は着実に高まります。

参考文献・出典

  • 国土交通省 土地総合情報システム – https://www.land.mlit.go.jp/
  • 総務省 住宅・土地統計調査 – https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
  • 日本銀行 金融システムレポート(2025年7月) – https://www.boj.or.jp/
  • 東京都都市整備局 都市再開発の現況 – https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/
  • REINS 市場動向レポート(2025年6月) – https://www.reins.or.jp/
  • LIFULL HOME’S総研 住まいと街のデータ(2025年4月) – https://www.homes.co.jp/

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