不動産の税金

中古 REIT 分配金を増やす5つの視点

不動産の値上がり益よりも、毎月の家計に役立つ安定収入を優先したい。そう考える投資初心者が注目しているのが「中古 REIT 分配金」です。しかし、証券口座で簡単に買えるとはいえ、配当株とも投資信託とも違う独特のルールに戸惑う人が少なくありません。本記事では、中古市場で取引されるJ-REIT(不動産投資信託)の仕組みから分配金の計算方法、2025年度の税制までを丁寧に解説します。読み終えれば、銘柄選びと資金計画のポイントが整理でき、次の一歩を踏み出す自信が得られるでしょう。

REITと中古REITの基礎知識

REITと中古REITの基礎知識のイメージ

まず押さえておきたいのは、REITそのものと「中古」の意味です。REIT(Real Estate Investment Trust)は複数の不動産をまとめて証券化し、投資家に小口で販売する仕組みを指します。その中でも既に上場済みの口数を証券取引所で売買する行為を、株式に倣って「中古REIT購入」と呼ぶことがあります。

上場直後の公募価格ではなく、市場価格で手に入れる点が中古REITの特徴です。価格は日々変動し、時には不動産価値より割安で買える場面もあります。一方で、短期的な値動きに振り回されるリスクが生じるため、長期保有を前提にした分配金狙いの投資スタンスが欠かせません。

国土交通省の「不動産証券化実態調査(2024年度)」によると、J-REITの資産残高は約22兆円と右肩上がりです。取扱銘柄が拡大するにつれ、オフィス特化型や住宅特化型、物流施設特化型など、多様な投資テーマがそろいました。つまり、自分のリスク許容度や景気観に合わせて銘柄を選べる柔軟性が高まっています。

分配金はどう決まるのか

分配金はどう決まるのかのイメージ

重要なのは、分配金が不動産賃料から生まれる点です。J-REITは法律で利益の90%超を分配すると法人税が免除されるため、利益の大部分を投資家へ還元します。分配金は通常年2回決算で支払われ、その金額は保有物件の賃料収入、運営コスト、金利負担によって変動します。

投資家が受け取る分配金利回りは、1口あたり分配金を購入価格で割って算出します。例えば、市場価格が1口10万円、直近分配金が5000円なら単純利回りは5%です。ただし、空室率の上昇や修繕費の急増があれば次期分配金は減少します。配当株より比較的安定すると言われますが、賃料収入が基礎にある以上、立地やテナント構成の質を確認することは欠かせません。

また、物件売却益が出た場合は臨時分配として上積みされるケースがあります。日本取引所グループの2025年9月データでは、全J-REIT平均で売却益由来の上乗せ分配は年間0.3%程度にとどまっています。過度な期待を避け、賃料ベースのキャッシュフローを重視する姿勢が現実的と言えるでしょう。

中古REIT投資のメリットとリスク

実は、中古REITには新規公募にはない3つの魅力があります。第一に、公募価格と比べて割安で買える可能性がある点です。基準となる一口当たりNAV(純資産価値)が1万円でも、市場価格が9500円なら、NAV比95%で購入できます。割安購入は同じ分配金でも利回りを引き上げる効果があります。

第二に、REIT全体の分配利回りが上昇している局面では、株価が調整した銘柄を拾うことで利回り5~6%台を確保しやすくなります。特に物流系や住宅系は賃料の下落が小さく、利回りが相対的に安定する傾向があります。一方で、オフィス系は景気敏感で空室率が上下するため、利回りが高くてもリスクも高い点に注意が必要です。

第三に、小口分散が容易なことです。1口数万円から購入できるため、都心の区分マンション投資のように数百万円の自己資金を必要としません。資産額に応じて複数銘柄を組み合わせることで、セクターリスクを抑えられます。ただし、価格下落リスクや分配金の変動リスクは残るため、余裕資金で取り組むのが基本です。

分配金を最大化する実践戦略

ポイントは、利回りの高さだけでなく持続可能性を見極めることです。まず、直近3期以上の分配金推移を確認し、増配傾向か安定傾向かを把握します。増配が続く銘柄は内部留保を厚くしすぎていないか、物件の追加取得により将来の減配要因を抱えていないかも合わせて検討します。

次に、LTV(負債比率)が50%を超える銘柄は金利上昇によるコスト増の影響が大きくなります。日銀の金融政策次第で長期金利が1%台を超える場面では、低LTV銘柄の方が分配金の下振れリスクを抑えられます。さらに、テナントの平均契約期間が長いほど賃料収入は安定します。住宅系REITで平均4年、物流系で平均6年が一つの目安です。

投資タイミングを考えるうえでは、東証REIT指数と長期金利の関係を見ると有効です。東証REIT指数が年初来で10%以上下落し、長期金利が上昇している局面では価格調整が進みやすく、利回りが一段と高まる傾向があります。言い換えると、市場が悲観的な時ほど割安高利回りのチャンスが潜んでいるのです。

2025年度の税制と制度面のポイント

まず押さえておきたいのは、分配金に対する課税です。2025年度もJ-REIT分配金は株式配当と同様に20.315%の源泉徴収が行われます。ただし、同年度から拡充された新NISA成長投資枠を利用すれば、年間240万円まで非課税で購入可能です。NISA口座で受け取る分配金は非課税となるため、長期保有を前提とするREITとの相性は良好です。

一方、NISA枠で取得した中古REITを売却するときは、非課税期間内であっても譲渡益は非課税となります。上限累計1800万円の投資枠をどの程度REITに配分するかは、株式や投資信託とのバランスを考慮しましょう。また、REITは流動性が高いため、必要に応じてポートフォリオを組み替えられる点もNISA活用の利点です。

さらに、2025年度税制改正で延長された「不動産所得拡大促進税制」により、REITが取得する環境性能の高い物件は固定資産税が一部軽減されます。これはREIT自身のコスト低減につながり、中期的な分配金の下支え要因となります。投資家は、ESG投資方針を掲げるREITの取り組み状況にも注目すると良いでしょう。

まとめ

ここまで、中古 REIT 分配金の仕組みと投資戦略を見てきました。重要なのは、分配金の原資となる賃料収入の安定性、財務健全性、そして割安度を総合的に判断することです。市場価格の変動に一喜一憂せず、長期のキャッシュフロー視点で保有すれば、家計を支える堅実なインカム源となります。まずは少額から複数銘柄に分散し、自分のリスク許容度を体感することが実践的な第一歩です。

参考文献・出典

  • 国土交通省 不動産証券化実態調査(2024年度版) – https://www.mlit.go.jp
  • 日本取引所グループ J-REITデータ(2025年9月) – https://www.jpx.co.jp
  • 財務省 2025年度税制改正の概要 – https://www.mof.go.jp
  • 金融庁 新NISA制度の手引き(2025年版) – https://www.fsa.go.jp
  • 総務省 人口推計(2025年7月速報) – https://www.stat.go.jp

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