不動産投資を始めたいけれど「ローンの返済が本当に続けられるのか」と不安を感じる方は少なくありません。特に未経験の段階では、物件価格や家賃収入よりも先に毎月の返済額を具体的に把握することが欠かせません。本記事では、2025年10月時点の最新金利を使ってシミュレーションの手順を丁寧に解説し、数字の読み方やリスク管理の要点まで網羅します。最後まで読めば、自分で計算し判断できる基礎体力が身に付き、失敗しない投資計画を立てられるようになります。
返済シミュレーションが必要な理由

まず押さえておきたいのは、シミュレーションが「融資を受けられるか」ではなく「返済を続けられるか」を確認するための作業だという点です。金融機関の審査を通ったとしても、空室や金利上昇が重なれば、手元資金が一気に減るリスクがあります。住宅性能評価・表示協会の調査でも、返済比率が家賃収入の60%を超える投資家は、5年以内に追加資金を投入するケースが3割を超えると報告されています。つまり、資金繰りの持続性を数値で検証することが、不動産投資成功の前提条件となるのです。
では、何をどう計算すれば良いのでしょうか。実は計算式自体は小学生の割り算レベルで済みますが、入力する前提の置き方で結果が大きく変わります。ここで「不動産投資ローン 返済シミュレーション 未経験」という検索キーワードが示すように、初心者こそ細かな設定を丁寧に見直す必要があるのです。
シミュレーションに欠かせない四つの数字

重要なのは、利息、返済期間、空室率、そして修繕費率という四つの数字を同時に扱うことです。全国銀行協会が2025年10月に公表したデータによると、投資用ローンの変動金利は1.5〜2.0%、10年固定は2.5〜3.0%が目安になっています。ここに返済期間20〜35年という幅を掛け合わせ、年間家賃から空室と修繕を差し引いたネット賃料を算出します。例えば年間家賃180万円、空室率10%、修繕費率5%であれば、手取りは153万円です。
この手取りを12で割ると、月間の純キャッシュフローは約12万7,500円になります。次にローン残債から算出した毎月返済額をここに重ね、差分がプラスなら自己資金を削らずに運営できるわけです。言い換えると、返済額がこのラインを超えた瞬間、生活費や貯蓄を取り崩すリスクが発生します。だからこそ、利息と返済期間だけでなく、空室と修繕のシビアな想定が欠かせません。
具体的な数値を当てはめてみよう
ポイントは、モデルケースでも楽観と悲観の両方を計算することです。例えば物件価格2,800万円、頭金20%(560万円)、残債2,240万円、金利1.8%、期間30年で試算してみましょう。元利均等返済なら毎月支払いは約7万9,000円です。このとき前章で求めた純キャッシュフロー12万7,500円との差は4万8,500円となり、月ベースでは黒字に見えます。
しかし、固定資産税や管理委託費を加えると年間30万円以上の経費が追加されることがあります。月額換算では約2万5,000円ですから、黒字幅は実質2万3,000円に縮小します。さらに金利が2.5%へ上昇した場合、返済額は約9万3,000円まで増え、純キャッシュフローをほぼ食い尽くします。こうした「もしも」の条件を3パターンほど並べてみると、物件の収益性が一目で浮き彫りになります。
シミュレーション結果を生かすリスク管理
実はシミュレーションは計算して終わりではなく、結果を基にした備えが重要です。まず、差額の黒字分を丸ごと消費に回すのではなく、半分を「金利上昇・修繕積立」として別口座に隔離しましょう。金融庁の家計調査でも、投資家世帯の約40%がこうした内部留保を設けることで返済遅延を防いでいます。また、保険や家賃保証サービスを必要以上に重ね掛けすると費用がかさむため、シミュレーションで黒字幅が薄い物件では慎重な見極めが欠かせません。
さらに、融資実行後も年1回は数値を更新し、空室率や経費率が当初想定とズレていないか確認します。もしズレが大きければ、繰上返済や賃料改定、リフォームによる競争力強化など、具体的な対策を検討することが大切です。このように、数字を定期的に見直しながら舵を切ることで、長期投資でも安定したキャッシュフローを維持できます。
金融機関選びと交渉のポイント
まず押さえておきたいのは、同じ金利でも審査基準や諸費用は金融機関ごとに大きく違うという事実です。地方銀行は物件エリアに強い反面、自己資金を多めに求める傾向があります。一方でネット銀行は頭金10%でも組めるケースがありますが、団体信用生命保険の特約料が高い場合もあるので総支払額で比較することが欠かせません。
シミュレーションを提示して交渉に臨むと、金融機関はリスク管理意識の高さを評価しやすくなります。言い換えると、具体的な数字で対話できる投資家は、優遇金利や諸費用の割引を引き出しやすいのです。また、2025年度の税制改正で導入された「所得合算控除」は、年間家賃収入が1,000万円以下の個人投資家であれば適用が可能です。この制度を活用することで、返済負担率を低く見せることができ、条件の良い融資に繋がるケースがあります。ただし、適用期限は2027年12月までと発表されているため、早めの活用が望ましいでしょう。
まとめ
結論として、未経験でもローン返済シミュレーションを自ら行うことで、投資判断の精度と金融機関への交渉力を同時に高められます。利息、返済期間、空室率、修繕費率の四つを軸に複数パターンを計算し、年1回の見直しを習慣づけることが安定運営への近道です。今日紹介した手順を実践し、「数字で語れる投資家」になる第一歩を踏み出してみてください。
参考文献・出典
- 全国銀行協会 – https://www.zenginkyo.or.jp
- 国土交通省 住宅局 – https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku
- 金融庁 家計調査報告 – https://www.fsa.go.jp
- 住宅性能評価・表示協会 – https://www.hyoukakyoukai.or.jp
- 総務省 統計局 家計調査 – https://www.stat.go.jp