人口減少や金利上昇が気になるいま、安定収益を求めて「REIT 広島 利回り」と検索する投資家が増えています。しかし地方都市のデータは散発的で、都心と比べて判断材料が少ないのが実情です。本記事では、J‐REIT(不動産投資信託)の仕組みから広島市の賃貸需要、そして利回りを左右する地域要因までを整理します。読めば、初心者でも広島に関連するREITのポテンシャルと注意点が明確になり、次の一歩を自信を持って踏み出せるでしょう。
REITの基本と利回りの意味

重要なのは、REITの配当利回りが「分配金÷投資額」で決まるシンプルな指標だという点です。仕組みを押さえれば、個別物件より少額で広島の不動産に間接投資できるメリットが見えてきます。
まずREITとは、多数の投資家から集めた資金で複数の不動産を取得し、その賃料や売却益を分配する投資信託です。法人税の軽減措置を受ける代わりに、利益の90%以上を分配する仕組みがあるため、安定したキャッシュフローが生まれやすい特徴があります。また東京証券取引所に上場しているため、株式と同じ感覚で売買でき、流動性の高い不動産投資という位置づけです。
配当利回りは、株式配当と同様に「過去実績」か「予想値」で表示されます。2025年10月時点の東証REIT指数平均利回りは3.6%ですが、地方資産の比率が高い銘柄では4%台も珍しくありません。分配金は年2回が主流で、権利確定日も銘柄ごとに異なるため、取得タイミングを計画すると効率的にインカムゲインを得られます。
一方、利回りが高いからといって必ずしも割安とは限りません。物件の築年数や立地に起因する空室リスク、修繕費の上振れ、さらには金利上昇時の借入コストなど、数字に表れにくい要素が潜んでいます。したがって、広島関連物件の割合やテナントの安定性を併せて確認することが大切です。
広島市の不動産市場が注目される理由

まず押さえておきたいのは、広島市が中四国エリア最大の約119万人都市であり、県庁所在地として安定したオフィス・住宅需要を持つ点です。人口推計(総務省2025年版)では微減傾向ながら、若年層の流入が続くと分析されています。
賃貸住宅に目を向けると、広島市中心部の平均空室率は2025年7月時点で9.2%(アットホーム調査)と、東京23区の7.1%よりやや高い水準です。しかし新築マンションの募集家賃は前年比2.4%上昇しており、住み替え需要が底堅いことがわかります。これは通勤時間が短い中心部回帰の流れと、共働き世帯の増加による利便性重視の結果といえるでしょう。
商業施設の開発も進んでいます。2023年開業の「THE OUTLETS HIROSHIMA」は郊外型ながら観光バスが立ち寄る新名所となり、地元消費を押し上げています。また、2026年度完成予定の「広島駅ビル再開発」ではホテルとオフィスが併設され、観光とビジネスのハイブリッド需要が期待されます。これらの大型プロジェクトは近隣賃料やホテルADR(1室当たり平均単価)を引き上げる要因となり、REIT収益にもプラスに働く可能性があります。
オフィス市況も安定傾向です。三幸エステートによると、広島CBDの平均賃料は坪当たり1万4,100円で前年同期比1.1%上昇しています。空室率も4%台にとどまり、仙台や福岡と遜色ない水準です。つまり、人口規模に対してオフィスストックが過度に増えておらず、需給バランスが保たれている点が評価されています。
J-REITが保有する広島物件と実績
ポイントは、広島をポートフォリオに組み込むREITが限定的であるため、物件選定の特徴がはっきり出ることです。代表的なのは「大和ハウスリート投資法人」「イオンリート投資法人」「日本リテールファンド投資法人」などで、いずれも商業施設や物流施設を核にしています。
大和ハウスリートは、広島市西区の大型物流施設「DPL広島観音」を保有し、2025年4月期で表面利回り5.7%を確保しています。テナントは大手EC事業者が長期契約を結んでおり、安定したキャッシュフローが期待できます。一方、イオンリートは「イオンモール広島祇園」を組み込んでおり、消費関連の収益を分配金に反映しています。直近の決算では稼働率99%と高い水準を維持し、利回りは4.4%です。
広島物件比率が5%未満でも、地域経済の拡張が全体の分配金成長に寄与するケースがあります。日本リテールファンドでは、広島県福山市の「ゆめタウン福山」からの賃料上昇が他都市の減額分を相殺し、2025年2月期のDPU(1口当たり分配金)増を後押ししました。つまり、地方物件はポートフォリオの“バランサー”として機能する可能性があるわけです。
投資家は、REITの決算短信で「地域別賃料収入」「用途別稼働率」を必ず確認しましょう。広島の割合が小さくても、将来的な賃料増分の源泉になるなら投資価値があります。また、取得価格と鑑定評価額の差異(アンリアライズドゲイン)を見れば、含み益の余力を把握できます。
利回り向上のカギとなる地域特性
実は利回り向上には、単に賃料が上がるだけでなく、運営コストの抑制が重要です。広島の場合、固定資産税評価額が首都圏より低いことが管理費率を押し下げ、結果としてネット利回りを押し上げる効果があります。
観光ニーズも無視できません。広島平和記念公園や宮島は国内外から年間約800万人の来訪(広島県観光連盟2024年度)を集め、ホテル稼働率は平均80%台を維持しています。最近は国内大手REITがホテル再生ファンドを通じて市内ホテルを取得し、ADRの改善とともに収益を取り込む動きが顕著です。
加えて、広島市は2025年度から「まちなか居住促進税制」を延長し、中心部の住宅供給を後押ししています。対象は中区・南区の一定エリアで、新築賃貸マンションの不動産取得税を最大40%軽減する仕組みです(2028年3月末までの取得が条件)。REITは法人格ゆえに個別補助金の適用外ですが、開発業者のコストが下がれば賃料水準を維持したまま利回り向上が期待できます。
交通インフラも追い風です。広島電鉄の「駅前大橋線」延伸が2025年春に開業予定で、的場町〜広島駅間のアクセスが改善します。国土交通省の試算では、沿線マンションの地価が平均4.6%押し上げられる見通しです。これにより、中心部物件を保有するREITの鑑定評価額上昇と、LTV(負債比率)の低下が実現しやすくなります。
広島REIT投資で押さえたいリスク管理
まず、地方都市ゆえの流動性リスクを認識しましょう。広島関連物件の売却先は地元企業か一部REITに限られ、東京物件ほど売買件数が多くありません。そのため、REITが出口戦略をとりにくい場合、含み損が長期化するリスクがあります。
次に、自然災害のリスクです。広島は過去に豪雨災害が多数発生しており、2023年の梅雨期には土砂災害警戒情報が延べ12日発令されました。REITは保険加入や立地分散で対策を講じていますが、テナント休業による賃料減免など間接的な影響は注視が必要です。決算資料で「賃料減額交渉件数」を確認すると、災害対応力を測れます。
金利上昇局面にも備えたいところです。日本銀行が2024年3月にマイナス金利を解除し、長期プライムレートは1.6%台で推移しています。多くのREITは変動比率を40%以下に抑えていますが、更新時に調達コストが上がれば分配金を圧迫します。借入期間の長期化や固定化比率を開示している銘柄は、金利感応度が低く安心材料となるでしょう。
最後に投資タイミングです。広島関連銘柄は市場全体に比べ出来高が少ないため、急な価格変動で利回りが歪むことがあります。月次物流レポートや商業施設の営業速報をウォッチし、市況が落ち着いたときに分散購入するのが賢明です。
まとめ
広島市は中四国の経済拠点として人口・消費・観光の三拍子がそろい、REITにとって安定収益を生む土壌が整っています。固定資産税の低さやインフラ整備による地価上昇余地がネット利回りを底支えし、商業施設や物流施設を中心に4〜5%台の配当を実現する銘柄も見られます。一方で、流動性や災害、金利といった地方特有のリスクを理解し、決算資料で広島物件の割合や借入条件を確認する姿勢が欠かせません。データに基づき銘柄比較を行い、少額から複数回に分けて投資することで、堅実にインカムゲインを積み上げられるでしょう。
参考文献・出典
- 日本不動産研究所 – https://www.reinet.or.jp
- 総務省 統計局「住民基本台帳に基づく人口動態」 – https://www.stat.go.jp
- 国土交通省 中国地方整備局 – https://www.cgr.mlit.go.jp
- 広島県観光連盟「観光統計データ」 – https://www.hiroshima-kankou.com
- 三幸エステート「全国主要都市オフィスレポート」 – https://www.sanko-e.co.jp
- アットホーム「賃貸住宅市場レポート 2025年夏」 – https://athome.co.jp
- 日本取引所グループ JPX「J-REIT 2025年10月月報」 – https://www.jpx.co.jp