観光需要の回復で民泊ビジネスに興味はあるものの、「何から始めればいいのか分からない」「本当に収益が出るのか不安だ」と感じる方は多いはずです。本記事では、民泊の市場動向から物件選び、購入の流れ、そして運営開始後の改善策までを体系的に解説します。初心者でも再現しやすい手順を具体例とデータで示すので、読み終えるころには自分に合った投資イメージが描けるでしょう。資金を無駄にせず、安全に民泊収益物件へ一歩踏み出したい方はぜひ参考にしてください。
民泊市場のいまを知る

ポイントは、インバウンド需要の回復と国内旅行の多様化が民泊の追い風になっている現状を正確に把握することです。
日本政府観光局によると、2024年の訪日外国人は年間3,040万人で、コロナ禍前の2019年実績をほぼ回復しました。円安傾向もあって宿泊需要は旺盛で、特に1泊8,000〜15,000円帯の中価格レンジが不足しています。その受け皿として伸びているのが、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)に基づく合法民泊です。さらに、国内旅行者がグループやファミリー単位で一棟貸しを選ぶ動きも強まり、稼働率の底上げに寄与しています。
しかし、需要が増える一方で供給も増加しています。観光庁の2025年4月調査では、届出件数は前年同月比18%増となり、地域によって競争が激化しています。つまり、単に物件を買うだけではなく、立地やコンセプトによる差別化が欠かせません。また、自治体ごとに条例で営業日数や設備基準が細かく定められているため、法規制リスクを把握したうえで計画を立てる必要があります。
加えて、賃貸住宅管理業法の改正でサブリース契約の透明性が高まりました。オーナーにとっては管理会社との委託条件を吟味しやすくなった反面、集客力の差が収益に直結します。こうした制度・市場の両面を把握することが、民泊投資成功のスタートラインと言えるでしょう。
収益シミュレーションの基礎

まず押さえておきたいのは、民泊の収益は「平均宿泊単価×年間稼働日数−運営コスト」で決まるというシンプルな構造です。
最初に平均宿泊単価を設定する際、周辺ホテルとAirbnb掲載物件の料金を調べ、市場価格から逸脱しない水準を見極めます。例えば京都市中心部の30㎡マンションタイプでは、2025年上期の平均宿泊単価が1泊12,500円と報告されています。この金額を基準に、繁忙期は15,000円、閑散期は9,000円と想定し、月次で平準化すると年間平均はおおむね12,000円程度になる計算です。
次に稼働率ですが、観光庁統計では届出物件の平均稼働率は52%前後で推移しています。一方、レビュー評価4.7以上の上位物件は65%を超える例もあり、品質とマーケティング施策で大きく変わります。保守的には50%で試算し、最適化後に60%へ引き上げる余地を見込むと現実的です。
運営コストは清掃費、リネン交換、光熱費、OTA(オンライン旅行代理店)手数料が中心です。清掃費を客負担にするケースもあるものの、平均して売上の25%が運営費に消えると覚えておくと計算しやすいです。つまり、宿泊単価12,000円、稼働率50%の物件では年間売上が約219万円、その25%がコストとすると純収益は約164万円となります。この数字をローン返済と比較し、キャッシュフローが黒字で回るかを確認することが欠かせません。
物件選びで失敗しないポイント
重要なのは、収益ポテンシャルと法規制を両立できる立地・物件を選ぶ視点です。
第一に、用途地域と民泊可能エリアの確認が必須です。商業地域や近隣商業地域は比較的許可を得やすいですが、住居専用地域では営業日数上限が年間180日に制限される自治体が多いです。結果として、都心郊外の住宅地よりも繁華街近隣や観光拠点周辺の混在エリアが収益化しやすい傾向にあります。
第二に、物件タイプごとの特性を理解しましょう。マンション区分所有は初期投資を抑えられますが、管理規約で民泊が禁止されていないか確認が不可欠です。一棟アパートや戸建ては自由度が高い反面、建物全体の修繕責任がオーナーに集中します。修繕積立不足に陥るとキャッシュフローを圧迫するため、築年数だけでなく屋根や配管の状態を専門家に調査してもらうと安心です。
第三に、アクセスと周辺サービスが評価の分かれ目になります。最寄り駅から徒歩10分以内か、空港リムジンバス停が近いかといった交通利便性は宿泊者の予約率に直結します。また、スーパーや飲食店までの距離がレビュー評価に影響するため、実際に歩いて生活動線を確認することが大切です。こうした条件を満たす物件は価格がやや高めでも、結果として稼働率が上がり投資効率が良くなるケースが少なくありません。
購入までの具体的な手順
実は、購入プロセス自体は通常の不動産売買と大きく変わりませんが、民泊ならではの追加確認が数多く存在します。
- 収益シミュレーション
- 法規制チェック
- 融資審査
- 売買契約
- 届出・改装
以上の流れをイメージしながら、細部を見ていきましょう。
最初に行うのは収益シミュレーションと条例確認です。物件情報を得たら、所在地の自治体サイトで条例を読み、営業日数や設備基準をリスト化します。この段階で条件に合わない物件は早めに除外すると時間を節約できます。
次に、金融機関へ融資相談を行います。2025年時点で、都市銀行よりも地元信用金庫やノンバンクの方が民泊ローンに柔軟です。金利は年2.1%〜3.5%が目安で、返済期間は20年以内に設定されるケースが多数派です。自己資金を物件価格の25%以上用意すると審査が通りやすく、金利優遇も受けやすい傾向にあります。
売買契約締結後、必要に応じて改装工事を行い、住宅宿泊事業の届出(行政のオンラインシステムで可)を済ませる流れです。届出完了には概ね30日ほどかかるので、竣工時期とオープン日から逆算してスケジュールを組むとスムーズです。なお、消防設備や簡易宿所許可が必要な場合もあるため、工事前に設計士と消防署へ相談し、追加コストや期間を把握しておきましょう。
運営開始後に収益を伸ばすコツ
ポイントは、公開後のPDCAサイクルを高速で回し、稼働率と単価の両方を最適化することです。
運営初期はレビュー獲得が最優先です。チェックインサポートや地元情報の提供でゲスト満足度を高め、★4.5以上を維持できれば検索順位が上がり予約が増えます。OTA手数料を抑えるために自社サイト予約を並行導入し、公式サイト経由での連泊割引やリピート特典を設けると収益性が改善します。
また、季節イベントに合わせて価格を調整するダイナミックプライシングが有効です。たとえば札幌雪まつり期間中の需要ピーク時は通常比150%で設定し、閑散期は長期滞在割引を実施するなど、柔軟な料金戦略が年間平均単価を底上げします。2025年から各種OTAが提供するAI価格推奨ツールの精度が向上しているため、活用することで設定時間を大幅に短縮できます。
最後に、税務面の最適化も忘れてはいけません。固定資産税は評価替えのタイミングで見直される可能性があるほか、減価償却費を活用すれば課税所得を圧縮できます。税理士と相談し青色申告特別控除を利用することで、実質キャッシュフローがさらに改善するケースも多いです。
まとめ
民泊収益物件への投資は、需要が伸びる一方で競争も激しいため、綿密な市場調査とシミュレーションが成功の鍵となります。購入前に条例と物件特性を確認し、融資条件や改装スケジュールを可視化すればリスクを大幅に下げられます。さらに、運営後もレビュー管理と価格調整を続けることで収益性は着実に向上します。この記事を参考に、まずは候補エリアの条例と宿泊単価を調べる行動から始めてみてください。
参考文献・出典
- 日本政府観光局 (JNTO) – https://www.jnto.go.jp
- 観光庁 宿泊旅行統計調査 – https://www.mlit.go.jp/kankocho
- 国土交通省 不動産価格指数 – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo
- 住宅宿泊事業法ポータルサイト – https://minpaku.mlit.go.jp
- 中小企業庁 2025年度 小規模事業者支援情報 – https://www.chusho.meti.go.jp
- 財務省 税制改正資料 2025年度 – https://www.mof.go.jp